6周年ありがとうございます企画部屋

前田利家が 片倉小十郎を おとす(ばさら)


夏も近づくとある蒸し暑い日に、その男は現れた。
背にその体が隠れるくらい大荷物を背負い、湿気を吹き飛ばすようなさわやかな笑顔で。




こんにちは伊達殿!今日もいい天気だな!

ど、どっから出やがった前田の!

城の裏からだ!

…城の裏ってお前…山だぞ?

伊達殿の言うとおり、某山を登って参ったぞ!

really?!山つったって崖だぜ!?…あーもういいそれ以上何も言うな。で、何しに来たんだわざわざ。

挨拶をしに参った!

はぁ?

中元の季節なので暑中見舞いで今まつとお礼周りで全国を巡っている次第だ!

…次第だ、ってなあ…。嫁さんは?

まつは先ほど忘れ物をとりに一旦家に帰ったので到着まではあと半日はかかると思う!某だけのご挨拶で大変申し訳ない!

…Crazy?いや待て半日じゃ無理だろいくらなんでも!つか一応一国治めてるんだろあんた!なんで謝るんだよ!嫁さんのほうが偉いのかよ!

ああ、忘れるところだった!いつもお世話になっております!

いやそこはどうでも…………ご丁寧にどうも。

いつもいつも片倉殿からうまいものをいただいているのでよろしく言っておいてくれ!







それでは名残惜しいが次に行かねば夏が終わってしまうのでこれにて!と爆風のように去っていった男から受け取った木箱を抱えたまま、男は、やっぱりあいつCrazyだよなあと呟いた。
武田の赤いのもよっぽどキてるが、あれに勝るとも劣らないだろう。
彼が決して小さくなく、決して軽くないその木箱をどうしたものかと揺すっていると(なにせ、何が入っているかわからない。おそらくあの食いしん坊城主のよこしたものだから食べられるものには違いないが、生ものだったら困る。生きていたらもっと困る)、おや前田殿が来ましたかと声がかかった。
…だから、何でわかるんだお前は。
言外で尋ねれば、政宗様を黙らせる勢いのある人間といったら武田のところ若いのか、前田殿ぐらいですからな。と心を読まれたかのようにはっきり返される。

あいつらに匹敵するほどそんなに俺はやかましいのか。

文句を言いつつそういえばお前によろしくって言ってたぜ、と伝言を伝えつつその荷物を渡せばこの季節のものは美味いですからなと部下は笑顔で受け取った。…なんで箱を渡しただけでわかるんだよお前は!!
すっかりあのとんちき夫婦に落とされちまってんだなあお前、と呆れ果てて男は言った。ああ、わからないでもない。あの夫婦の勢いには何者ものまれるなにかがある。
それがまさか片割れだけでものまれるとは思っても見なかったが。





めったに見せない笑顔で木箱を見下ろす部下をため息混じりに見やり、男はやれやれと肩をすくめる。まあ笑顔って言ってもおっかない顔には変わらないんだけどな、小十郎は。
そして加賀の賑やか担当城主が消えた方向に鎮座まします崖をぼんやりと眺めながら男はただただ苦笑いを浮かべた。
あの崖を飛び降りて、次はおそらく上杉のところへいくのだろう。

…変な奴がいくから気をつけろよと一報入れてやるべきか、男は悩んだ。








おや、なにか不満でも?そんなにお嫌ならこの貰い物のヤマメは私だけでおいしくいただきますが。

Sorry俺が悪かった。









もはや普通に前田夫婦と片倉氏は仲良しだといいなあ妄想です。それを呆れつつ、そのうちほだされてまんまと落ちる伊達くんという(笑)
神村さんリクエストありがとうございました!


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Dramatic Irony