6周年ありがとうございます企画部屋

北条じいちゃんが 小太郎を うめる(ばさら)


お給料をもらったよ、と彼は久しぶりに出会った昔なじみたちに言った。

出会い頭にそんな告白をされそんなのあたりまえじゃないのと昔なじみたちが話を聞けば、ここのところ給料らしい給料を貰っていなかったらしい。
それを聞き、二人のうち即物的なほうはああそりゃ俺なら転職すると断言し、夢見がちなほうは自分は雇い主さえ元気にやっていてくれれば金銭など一切発生しなくてもいいと大変盲目的ではあったが、それが一般的な忍の考えではないということは理解していたため、お前がそれで満足しているのならいいんじゃないかと思うがと言葉を濁した。

それでどれっくらい貰ったわけ、と即物的なほうが口を開けば、彼は首をかしげ、そして握り締めていた手のひらを開いた。なにか鈍く光る石のようなもの。なんだこれ。


「…なんだこりゃ。かすが知ってる?」

「わからん。見たこともない」

「そんでこれがどうしたわけ?」


彼は言葉にならない言葉をもって答えた。だから、これがお給金。
絶句し目を丸くする友人たちに小太郎は答えた。雇い主いわく、先日異国の宣教師の陣地を攻めぼこぼこにのしたとき、向こうからいくばくかの金銭とともに送られてきたものらしい。なんでも、異国のお守りらしいよ、良く知らないけど。

実際問題台所事情は火の車である北条家は兵の給料と武器の調達、城の修理などに金を回せばほとんど残らなくなるのだろうと二人は思った。一番良く働いた忍への褒美まで手がまわらなかったのであろう。
に、しても伝説の忍びに対してもらった石ころひとつで給料まかなうもん?普通の給料に特別恩賞足したっていいくらいじゃないの?あの北条がザビー教に勝つとはそうそう考えられないしな、明らかにこいつのおかげだろう。俺もそう思う。
二人はこそこそと言い合ったが、最終的にはいつもの答え=本人が満足ならばそれでいいだろうという結論に達した。ああそうだ、こいつは昔から何を考えているかわからんじゃないか。お前に言われたくないと思うけどな。うるさい!


二人の会話のような喧嘩のような言い合いを目の前にしても、彼は全く動じなかった。むしろ面白そうにそれを眺めた後、それでちょっと聞きたいことがあるんだけど、と尋ねた。今ま自分の”もの”なんてものはひとつもなかったんだけれど、これは一体どうすればいいんだろう。

大切なものだと思うんだけど、と声なき声で問われ、友人たちは再び絶句をした。これほどまでに物に執着しない人間もなかなかいないであろう。まあ多少愉快な性格をしていても根本は忍、使い捨てにされる生き物である。で、あるからして所持品と言うのは自分の武器以外にはほとんど持たないのが現状である。しばし沈黙をした後、二人は顔を見合わせゆっくりと頷きあい、答えてやった。


「とりあえず埋めておけば?宝物の基本でしょ」
「なくすといけないからな」













二人と別れねぐらに帰るとなぜか雇い主はご機嫌であった。
自分が外へ遊びに出かけると、彼はなぜかとても嬉しそうな顔をする。もしかしてこの人自分のこと嫌いなのかもなあ、それにしちゃ親切だけどと彼は思いつつ友人に渡されたいくつかの土産を渡した。
雇い主はそれにも上機嫌で受け取り、お前はもっと仕事以外のことをせい!あまり言うことを聞かんと穴を掘って埋めてしまうぞ!と笑顔でどやした。
彼はそれを聞き、どうせやるなら自分が貰ったいくつかのものと一緒に埋めてくれないものかなあとのんびり考え、聞いておるのか!とまたもどやされた。









仲良し忍び三人妄想ですみません。高濃度妄想ですみません(毎回のことながら)
孫はじいちゃんの優しさには全く気がつかないけれど、気がつかないなりにおじいさん孝行をすればいいと思います。おじいさんは孫を可愛がって入るんですがまったくもってツンデレ(ツンデレの使い方が違う気がします)。

リクエストありがとうございました!

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Dramatic Irony