6周年ありがとうございます企画部屋

メイリンと オタコンに せまる(MGS)


相棒からの通信はまた連絡する、という言葉で途切れた。
本来のセーブ担当が席をはずしているときは彼が代わりをこなすのだが、彼は担当女性の趣味であるところのセーブついでに何かひとつ諺を伝授する、というところまで引き受けていた。
そこまで頼んでいないと若き女性技術者は訴えたが自分の趣味に興味を持ってもらえることはまんざらでもないらしく、自分が席をはずした時のために諺をいくつか書いたメモとそれについての簡単な説明のメモの2枚を彼によこした。そこまではいい。
問題は、彼が説明のほうのメモを無くしたということである。

前にも同じようなことをしてこっぴどく叱られた記憶は新しい。何で自分はこんなにもモノを無くすのであろうか。





それならば何も言わずに淡々とセーブ業務だけをこなせばいいとは彼自身思うものの、一人厳しい戦地にいる外回り担当を少しでも和ませる効果があるならこれは必要な仕事なのである。…和んでいるかは知らないが。まあ戦場にいてもジョークが必要だといったのはほかでもないスネークなわけだし。

というわけで彼は今日も今日とて入った連絡に「石が流れて木の葉が沈むって諺知ってるかい?」などと問いかけ案の定意味を尋ねられ「石が流れるくらい激しい川の流れだと葉っぱでさえ沈んじゃうから、大変な場所にいるときには油断は大敵ってことだね、たぶん」などと適当な返答を返した。そんなこと当然じゃないかというつっこみが入ったが、まあそれはそれとして。

そんなことをつらつらと考えながら彼がやれやれ、と大きく伸びをすると背後の扉が開く音。席をはずしていた彼女が帰ってきたのであろう。お帰りメイリン、と声をかけようとしたところで彼は気がついた。

凍りついたような空気。

あ、やばいと思った時にはすでに遅すぎた。
悪魔の気配。



「ど、どうしたんだいメイリン。資料見つからなかったのかい」

「資料は見つからなかったけど、廊下の隅でこれは見つけたわ」



突きつけてくるのは紙切れのようである。彼がそれに視点をあわせれば、大変見覚えがあった。なくしたと思っていたそれ。
どうして、私が渡したメモの片割れがあんなところに落ちてるの?と大変可愛らしく小首をかしげて尋ねる彼女に、彼は最後の抵抗を試みてみることにした。




「…一応弁解しておくけど、捨てたんじゃなくて本当に無くしたんだよ…?」





その途端迫り来る彼女の怒りの言葉(前もやったのになんでまたやるの!?わざと!?わざとなの!?っていうかさっきスネークに説明してたことわざの内容また適当じゃないの!適当な知識を披露するなら言わないほうがマシじゃない!もういい加減怒ったんだから!!)に、彼は返す言葉を知らなかった。自業自得であることを良く知っていたからである。













メタルギアについて質問があるならオタコンに聞いた方が早い、とスネークに言われ雷電は物陰にしゃがんでナノマシンの通信を飛ばした。あの若き科学者が頼りなさそうに見えるものの優秀であることは彼も知っていた。どうかした?というあの軽快な物言いが聞こえてくると思われたその通信は、頭に響く猛烈な言い合いで幕を開けた。


新米スパイは思わず言葉を失った。



…え?なに?なにが起こってるんですか一体。俺回線間違ってないよね?ちょっと機械関係で聞きたいことがあったらここに通信したら良いんだよね?
自らに問いかけたところで状況は変らず、通信状況が悪いのか途切れ途切れになっている女の怒りの訴えと男の弁解が頭に飛び込む。
ええとこういうときってどうしたらいいんですか。研修では誰も教えてくれなかった。


「どうした?」


どうすることもできず硬直してしまった彼を、通信会話のために黙っていたのかと思っていたらしい男が声をかけた。後輩の頭の上にクエスチョンマークがぽかりと浮いたのに気がついたからであろう。男が彼の隣にしゃがみこむとそれが、と後輩は言いかけ、やはり聞いたほうが早いだろうと首を傾げ耳を叩いてみせた。伝説の蛇と呼ばれる男はなんだってんだ、とぼやきながらその会話を聞くべく精神を集中させた。



しばしののち。

またかと男は頭を振り、新米の肩を叩いて言った。


「いつものことだ、しばらくほっとけ」









オタコンはメイリンにはまったく頭があがらなければいいな妄想でした。
そんなメイリンをなんだかんだかわいがっていればいいな妄想で(以下略)

リクエストありがとうございました!

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Dramatic Irony