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サラ・バーリンが リーン・イプスに あたえる(楽園の魔女たち)


気がついたらこの書類を持たされてですね、こちらに飛ばされちゃったわけなんですよー。いやあ困った困った。ダナティア陛下の強引さといったらほれぼれしますよねえ、と突然わいて出た細目の帝国仕官が笑顔で言った。もしかしたら笑っていないのかもしれないが持ち前の目の細さのおかげで正確な表情は分からない。
出迎えたのは新しき楽園の主となんだかんだで一切合切の家事を取り仕切っている男。彼らは不幸か幸いかちょっとやそっとのことでは動じない性格の持ち主であったため突然空から男が落ちてこようがそれが知った顔であろうが"お客さんがきた"程度の驚きでしかなかった。「おや、リーン氏ではないですか。お久しぶりです」だの、「あっれこんちはダナティアちゃんとこの?丁度よかったお昼作り過ぎちゃったんだよね」だの声をかけられて、青年はやあ相変わらずいいところですねえと笑顔で答えた。










楽園のおさんどん係は紅茶のポットに湯を足しながら、目の前で繰り広げられる会話を聞き流しつつダナティアちゃんも相変わらずのようでなによりだね、と笑った。
遠き都会の帝国から虹の谷のようなど田舎にわざわざ派遣させるほどの用事であるはずもない。こう見えてこの青年、一応帝国内でも有能と名高いのである、賢き女王陛下がそう簡単に仕事をさぼらせるとも思えない。ということは。ああダナティアちゃん、よっぽど腹に立ったんだろうなあと男はしみじみ思った。ええいお黙りこの変態!少し頭を冷やすことねリーン・イプス!脳内で音声再生されたダナティアの怒号に彼が懐かしさで胸をいっぱいにしている前で、青年仕官と楽園の主が紅茶を片手ににこやかな会話を続ける。片方はそれ以外を表現できない笑顔で、片方は笑顔を表現できない静かな表情で。




いやあ姫様、いや女王陛下は相変わらずですよ。この間も地方貴族の背中をこうげしっと蹴り倒してましたからね。

おお、殿下が相変わらずのようでなによりです。しかし殿下も多忙だと、あなたも構ってもらえないのでは。

そう!そうなんですよ!毎日毎日ちょっかい出しに行くんですけど最近はもう相手にもしてもらえなくてですねー。私ももうすっかり相手にしてもらえなくて寂しい限りです。

それはそれはご愁傷様です。

あの方以外の蹴りでは満足できないというのに、いやはや全く困ったものです。

私もここで長く暮らしていると私の中のMの血が錆付いてしまいそうです。たまには殿下に力いっぱい罵られたいと思います。




真剣としか思えない真面目な表情で淡々と思いを語る楽園の主に、青年仕官はああそれなら、と拳を打った。今度ぜひとも帝国へおいで下さい。あなた方の力をすれば女王陛下の自室へもノーチェックですしねー。あの方の怒号が部屋中に響き渡ることを考えれば私はもう今から心が躍ってしょうがないですよ!

ぜひとも!ぜひともいらしてください!一年に一度でもいいですから!あの方にとってもあなたはいい刺激になると思うんですよー。と笑う男に、女王陛下その人に鉄面皮と罵られたことのある女はうむ、と重々しく肯いて見せた。お約束しましょうリーン殿。私は殿下に罵られるためなら世界を敵に回しても構わない。

真っ直ぐと天を見上げ宣言する彼女に、青年は幻の後光を見た。ああ、さすが姫様のお友達。







やはり頼りになりますー!ああ忘れてたついでにここへサインしてくださいね。魔術師協会の不可侵条約の更新ですからこれまでと全く代わりませんけどね。あ、それじゃあ私はこれで。大喜びの男を送り返して2人は思う。ああこれで遠き帝国首都にいる女王陛下の心が少しでも静まったのならいいのだが。女王陛下を女神と慕う民草たちのためにも。










「しっかしあれね、リーンさんも大変だね」

「そうだろうか。Mを甘く見てはいけないナハトール。彼らは挫ける諦めるということを知らない。そこにいたるまでの経緯をすべて快感とするからだ」

「なるほどねえ。前向きなのはいいことだね」

「あなたもM寄りだと思いますが」

「え、そう?」

「しかし安心して欲しいナハトール。私はTPOによりS、Mどちらでも対応可能です」

「そいつはどうもありがとう」

「礼には及びません」











変なところで結託するサラとリーン・イプス。
動じないナハさん。
不幸の連続殿下(酷い)
リーンさんが真性でMなのかキャラ作ってるのかわからないところが素敵です。

風音さんリクエストありがとうございました!
(しばらくここの誤字脱字で呼び捨てになっておりました…。大変失礼いたしました)

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Dramatic Irony