ライク・ア・ローリング息子


息子・タク(4ヶ月)が寝返りを打てるようになり、気が付くとコロリンとうつぶせになっており、

「うきゃー。うきゃー」

どうだすごいだろ、と言わんばかりの歓喜の声と得意気な顔をこちらに向けるのだ。そのタレ目っぷりから嫁は

「パンダ男」

という一見仮面ライダーに出てくる怪人のような名前で呼んでいる。そういえば昔レッサーパンダ男と呼ばれた殺人犯がいたな…。将来そんな男や電車男に化けないことを祈るばかりだ。

「タク、すごいねー」

僕はタクの得意満面の顔に対して暖かい目で褒め称える。小さな命がひとつずつ成長していく姿は美しい。我が子なら尚更である。娘・R(2才)も通って来た成長の道だが、何度見ても心が洗われる。のだが、そのままの状態にしておくと、タクはうつぶせから仰向けに戻るアビリティーを身に付けていないため、数分後には

「うー。うー」

疲れて両腕で体を支えられなくなり、ペタンと潰れることとなる。ここで親としてはどうすべきか…。

1.ほっといて自ら仰向けに戻る動作を覚えることを期待する。
2.助ける

ライオンは我が子を千尋の谷に突き落とし、這い上がってきた子だけを育てるという。おはようからおやすみまでくらしに夢をひろげる、百獣の王の教えに従うなら1を選ぶべきだ。

ある心を鬼にした親がうつぶせで苦しむ赤ん坊を敢えて放っておいたところ、その赤子は見る見る内にコロコロ転がりまくるようになり、遂には柔道の受身をマスターしてしまったという。

のちの谷亮子である(すみません嘘を書きました)

しかし僕は百獣の王ではなく白汁の王だし、タクもパンダ男なので掬い上げる事にした。

「んふー。んふー」

仰向けに戻され、息を荒くするタクはパンダ男なだけに目を白黒させていた。

「ごめんね、タク。うつぶせの君を放置していたわけじゃないんだ。パパは君を嫌ってるわけじゃないんだよ。大好きなんだよ。うつぶせの姿が可愛くてつい、ね。」

好きだったのよあなたー 胸の奥でずっとー

そりゃ「まちぶせ」だ(分からない人はその辺のおじさんに聞こう)

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