お父さんのためのソリャナイデショー講座。

娘・R(1才)は徐々に言葉を覚えて来ているが、どうしても
「パパ」と呼んでくれない。

「Rちゃん、犬、わんわん」

「わんわん!」

「猫、にゃんにゃん」

「なんなん!」

「ママ」

「まま!」

「パパ」

「まま!」

「パ!パ!」

「まま!まま!まま!」

今日もダメであった。「ママ」は言えるのに、「パパ」と呼んでくれと
請うても何故か「まま!まま!」と連呼する。「ポッポ」(鳩)は言える
のでパ行は言える筈であるのに。

そもそも僕は「パパ」ではなく「お父さん」と呼んで欲しいの
である。「パパ」などという毛唐の言葉より「お父さん」と
呼ばれた方がときめき度が高い。しかしなかなか難しそうだから
敢えて「パパ」で妥協しているのだ。

「なんか意地でもパパって言わないみたいね」

勝ち誇った嫁が苦笑いする。僕は愛されてないのだろうか。
それとも僕の愛が足りないのだろうか。愛の注ぎ方だったら
嫁へのそれの軽く7倍は行っていると思うのだが。

そもそもRは「パパ」と「ママ」の区別がついているのだろうか?
されば問いかけ方を少し変えてみよう。

「Rちゃん、ママはどこにいるかな?」

するとRは僕の元を離れ、テテテ…と歩いて嫁の腕にひしと
抱きついた。これは理解出来ているようだ。

「じゃあ、パパはどこにいるかな?」

Rはにっこりと笑って嫁の腕を離れると、僕の元に戻って来た。
そう。分かっているではないか。さあ、お父ちゃんが抱きしめて
あげよう…。

と思ったのも束の間、Rは僕を通り過ぎてしまい、ぎゅっと抱きしめた
物は、半透明の袋で「東京都指定」と書いてある…

「R、それ、生ゴミ…」

娘にとって僕は生ゴミと等しい存在だったようだ…。
生ゴミ系父親。それが僕。

「ぷぷぷ」

嫁の微かな笑い声が聞こえた。おのれ。僕が生ゴミ系なら、煮ても
焼いても食えない嫁はさしずめ燃えないゴミ系であることよ。
ベッドの上でも燃えてくれないし。

将来姥捨て山に不法投棄されないよう、
生ゴミ系父親を脱出し、せめて
ナゴミ系父親になりたい今日この頃。
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