美少女探索。池池ゴーゴー。

こう暑いとプロヴァンス辺りに避暑に行きたいざんすが、そんな金も暇も
別荘もないので、嫁と娘・R(10ヶ月)を連れてボートを漕ぎに
近場の池まで行くことにした。

その池があるところは、僕の永遠の片思いの相手であり、Rの名前の
ルーツである美少女Rちゃんが住む街。
Rちゃんとはおよそ半年前、Rをお披露目して以来音信不通である。
携帯電話が変わってしまったのか繋がらなくなってしまった。

勤め先のゲーセンに行ってもいないし、この街に住んでいる、ということは
知っていても住所までは知らない。謎多き美少女になってしまった。

電車から降り、駅前に立つ。ここがRちゃんの現在住んでいる街…。
すーはーすーはー、と大きく深呼吸をしてみた。

「あなた、何やってるの?」

「せめて同じ空気を共有したいと思って。
 Rちゃんの匂いがちょっとでも入ってるかなと思って。
 Rちゃんの吐いた息をちょっとでも吸えるかなと思って。
 せめてせめて…ああああ…」

自分で言ってるうちに感極まってきたが、トイメンから
上半身裸の爺さんがすれ違ってきたので即座に中断。
嫁の「バカ」と呟く声が聞こえた。おええ。

「あの交差点を左よ」

嫁の案内で池に向かう。これが少女マンガだと、カドを曲がったところで
僕とトーストを咥えて走るRちゃんがゴッチーン☆とぶつかって

「あらやだ、偶然ねえ」

という感動の再開になるのだが、そんなわけなかった。
途中に本屋があった。Rちゃんは本好きなので、これが少女マンガだと
本屋から出てきたRちゃんと僕がバッタリ会って

「あらやだ、偶然ねえ」

という感動の再開になるのだが、そんなわけなかった。
やがて池に着いた。Rちゃんは乙女ちっくなので、これが少女マンガだと
池のほとりでRちゃんがカルガモを眺めており

「あらやだ、偶然ねえ」

という(中略)…そんなわけねーだろコンチクショウ。

ボート乗り場に辿り着いた。このまま入水しちゃいたい気分だったが
嫁とRを置いていく訳にはいかないので気を取り直すことにした。

ボートに乗り、池の小さな波を目で追いながら感傷に浸った。
僕がもっとイケてる男だったら、Rちゃんも連絡をくれないなどという
冷たいことはしなかったろうになあ、と。

僕はこの涼やかなる池の水面になりたい。

略して池面である。
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