マヒ、言語障害、しびれなどが一過性に出現、繰り返され、大発作の続発する可能性のあるもの。⇒水際でこれら脳卒中発症をいかにしてくい止めるかということが脳ドックの大きな目的になってきている。
進行性脳卒中:progressing stroke

突発した脳局所症状が短時間内(数分−48H)に進展憎悪するもの

完成脳卒中:completed stroke
突発した脳局所症状が診断時には完成し、3週間以上ないし永久的に存続するもの

    52才 女性
このような小さなラクナだけの時、CTやMRIのみの検査では『たいしたことない』ということで帰ることになるのが多いと思われる。 ところが、MRAを見ると、中大脳動脈が極めて描出不良になっていて、将に切迫脳卒中の状態と思われた。
             
      
      69才 女性  左中大脳動脈狭窄症
一過性の失語症発作がみられ、MRIでは所見ないが、左中大脳動脈に高度な狭窄を認める。
     68才 男性  右内頚動脈閉塞、左内頚動脈狭窄
本例は、右内頚動脈の閉塞に加えて、左内頚動脈にも高度な狭窄を認め、今後重篤な再発作のリスクが高いと思われる。
           
  
脳主幹動脈狭窄、閉塞は脳ドック(2925例中)の6.5%にみられ、脳動脈瘤(4.3%)より高頻度に発見される。    年齢にきれいに相関しており、特に50才代より、より高頻度に認められ、脳ドックはできれば50才前後から始めることが望ましい。
            
脳ドックと人間ドック
  
  脳ドック受診者の母集団を健保組合の特色から、

A群退職間近な50歳代後半を中心とした群 402名、45歳〜64歳、平均年齢54.5歳
B群年齢に関係なく、人間ドックにて、高血圧症、高脂血症、糖尿病など、
   何らかの危険因子が指摘された群136名、29歳〜59歳、平均年齢47.8歳

C群新しい誘致企業で40歳前半を中心とした、見るからに若く健康そうな群119名、39歳〜61歳、平均年齢45.8歳
D群何らかの理由から脳の健康に自信が持てなくなって受診された一般脳ドック受診集団2268名、16歳〜92歳、平均年齢58.9歳

を比較検討してみると、脳梗塞発見率は
A群29.1%B群22.3%C群11.2%D群29.5%
脳主幹動脈狭窄発見率は
A群5.9%B群5.0%C群1.9%D群8.7%であり、脳梗塞と脳主幹動脈狭窄との発見率はよく相関していた。
  健康そうなC群45.8歳と人間ドックにて異常の認められたB群47.8歳では、平均年齢の差はわずか2歳であるが、脳梗塞及び脳主幹動脈狭窄の発生率は、健康そうなC群に比し、人間ドックにて異常が認められたB群の方に2倍以上の高頻度に認められ、脳梗塞、脳主幹動脈狭窄ともに危険因子の関与が示唆され、人間ドックと脳ドックの連携の重要性が伺われる。(図4)

   
脳ドックと受診年齢
 年齢も重要な因子であり、年齢構成補正後の発見率は、脳梗塞、脳主幹動脈狭窄ともに年齢にきれいに相関しており、特に50歳以上を境に、より高頻度に認められるようになり、脳ドックは、50歳前後から始めることが望ましいように思われた。(図5)
    
      
脳ドック受診母集団の特徴の違いにより、脳虚血性病変の発生率に差異が認められた。特に人間ドックにおいて危険因子を指摘されたB群では、健康そうなC群より、脳梗塞、脳主幹動脈狭窄、いずれも2倍以上の高頻度に認められた。     年齢と脳梗塞・脳主幹動脈狭窄の発生率に相関が認められ、特に、50歳以上を境に急激な増加傾向を示した。
           
     
最高血圧160mmHg以上、又は最低血圧100mmHg以上の中等度以上の重篤な高血圧に影響を受けており、高脂血症では30%、糖尿病では20%程度に影響を受けていた。         タバコでは、一日に20本以上のへビースモーカー、お酒は一日に2合以上の酒量の多い方に影響を受けている。
 更にこれら危険因子を3つ、4つと重複して持っている方は、より多大な影響を認めた。
         
症例  30代 / 福岡県 / N様
  えびな脳神経クリニック様
 
 はじめまして、私は福岡に住む○○と申します。
実は、先日姉(30代)が小脳梗塞+後頭野梗塞を起こしました。
MRIでみると梗塞範囲はかなり広く、病院に運ばれた際は視覚異常等もあったのですが、
今は後遺症らしきものもなく(細かい字を読むとちょっと酔いそうになるぐらいです)、職場にも無事に復帰しております。
 
で、ご相談したいことは、その原因です。
通常、脳梗塞を起こすようなケースでは、高脂血症や糖尿病、高血圧などが考えられるかと思いますが、すべて正常でした。自己免疫系も見ていただいたのですが、異常はなし。
ホルターをつけても不整脈は認められませんし、血管造影をしても問題なし。
凝固系を見てもむしろプロトロンビン時間は長いほうで、異常ありませんでした。
そもそも、運ばれた時の血管はたしかにつまりが認められたのですが、2日後のMRIではつまりが認められず、何がつまっていたのかさえもわからない状況です。
一応、うつ病を患っており、抗欝剤、眠剤、下剤を服用してますが、薬によって脳梗塞が起きたとは考えにくいとのこと。
 
タバコも吸っておりましたが、汗をよくかく、タバコを吸うだけで脳梗塞になりえるものでしょうか?
母親は脳出血の既往がありますし、母親の兄弟には脳梗塞の既往があるものがおりますが、いずれも太っており、高脂血症を持っております。姉はここ1年で10kg程体重は増えましたが、もとが痩せていたために太っているという程でもなく(ぽっちゃりぐらいです)、コレステロール等もすべて正常値でした。
 
本人は再発するのではないか、との恐れと原因がわからないことへの不安から、うつが少し悪化しております。
現状では放っておくしかないのでしょうか?何か予防策がありましたらお教えいただけますと幸いです。


A: ○○さま、こんにちわ。
   当クリニックホームページへのアクセスありがとうございます。
 
さて、お姉さまの脳梗塞のことについてのご質問のようですが、幸いにしてMRIで見て、かなりの大きな小脳梗塞ならびに後頭葉に梗塞をつくられておられたようですが、その後の
経過は良好とのことでなによりかと思います。
 
 この小脳梗塞ならびに後頭葉梗塞は、めまいや視野障害は見られるものの、いわゆる片麻痺などはみられないことから本当に脳梗塞の発症部位としては、比較的軽く済む場所で、なによりだったと思います。
 
今回のエピソードの原因ですが、喫煙とそして1年で10kg体重が増えたということに問題があるように思います。
すわなち、喫煙は肺がんのみの危険因子ではなくて、実は血液をドロドロにし、血管を収縮させるという非常に強い毒性があります。そのことが一番問題なのであります。
 最近10kg体重が増えるということは、たまたま今回の採血の結果はコレステロール値は正常のようですが、中性脂肪値がおそらく高いはずであります。
中性脂肪値の上昇も血液をドロドロにしますので、また、この10kgの体重増加は血管壁にも悪影響を及ぼすわけです。いわゆるプラークが不安定になるわけで、これらの相乗
効果により、脳梗塞を来したものと考えられます。
  
 尚、当院においては、24歳で喫煙のみで脳梗塞を来した患者さんがおります。私は今回のエピソードを契機に完全なる禁煙に踏み切られることと共に、今後とも果物ではなく、緑黄色野菜を積極的にとられるようお勧めします。
それにより、脳梗塞の再発作の予防に効果的かと思われます。
何はともあれ、今回の発作の病変は後遺症の少ない場所でしたということで、まずは不幸中の幸いかと思われます。
 ライフスタイル改善に向けての努力が、一番大切なわけであります。『脳卒中の予防は可能か?』のページのライフスタイル改善にむけての項目を実践にうつして下さい。


お返事: えびな脳神経クリニック様
 
早速のお返事、ありがとうございます!
喫煙というのは、そんなにリスクが高いのですね。
本人は禁煙をしておりますので、それと緑黄色野菜を多めに取るようにさせたいと思います。
本人はニンジンやピーマンが大好物なので、ちょうど良かったです(笑)
 
ライフスタイルの改善に努めさせます。
本当にありがとうございました!
         
           
狭窄性病変に対する超電導型MRAの診断能力は??
     
 62才 女性 右中大脳動脈狭窄 MRA画像 
とかく強調されすぎの傾向のある、狭窄性病変に対しても、数々の工夫により、よりDSAに近い映像が得られるようになりつつあります。
    DSA画像
右中大脳動脈に狭窄を認める。
         
脳ドックと切迫脳卒中
  脳卒中はひとたび発症すると、患者当人はもとより、家族も社会的にも大変な心身の負担と経済的損失を被り、しかも、その予後は決して満足のいくものではない。TIAの概念が臨床的に重要なのは、脳梗塞の前兆となり得るからである。単なるTIAという病名自体には意味がない。TIAを放置すれば、半数は初回TIAから1年以内に、20%は1ヶ月以内に脳梗塞発作を起こしていることから、脳梗塞の前兆、1つの病期として扱う傾向にある。
  また、いろいろな病状を呈するTIAの確定診断は実際の臨床面では難しいこともあり、TIAは、「近い将来、脳卒中発作を来し得る切迫した状態」という意味において、切迫脳卒中としてとらえた方が、より臨床的に的を射ている。脳ドックにおいても、脳主幹動脈狭窄を有する場合や血管超音波検査などで高度な頚部内頚動脈狭窄や不安定なプラークやMES(micro-embolic signal)などを認めたときにも広い意味で切迫脳卒中の一つとして考えたい。
 各種診断機器の飛躍的進歩に伴い、脳卒中発症を水際で食い止めるためにも、切迫脳卒中という概念の確立と普及は緊要であると考えている。


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