−ライフスタイルの改善による効果はあるのか?−


60才 女性
MRIにていわゆる多発性脳梗塞が認められ、初診時、眼底出血を認め、危険因子として、高血圧症、高脂血症を認めた。 MRAでも前大脳動脈や中大脳動脈などが分岐の数も減少し、描出不良な状態だった。
1年4ヶ月後
徹底した食事療法や運動療法に取り組まれ、検査データの改善とともにMRAでも著明な改善をみる。
         
6ヶ月後
             74才 男性
左手に持ったものをよく落とす、細かい操作が出来ないとのことで来院、MRAでは右中大脳動脈をはじめ全体的にボロボロ状態。
その後、禁酒、禁煙、高血圧に対するライフスタイル改善に取り組み、6ヵ月後には右中大脳動脈をはじめ、全体的に血管壁の不整が改善しスムーズに流れている。
現在、現役で活躍中。
      
1年後
         本例は  52才、男性
ウィスキーボトル半分を毎日空けていた方で、難治性のめまい発作あり、MRIでは脳幹部に小さなラクナを認めるのみであるが、MRAにて脳底動脈に高度な狭窄が認められた。
完全にお酒を断って服薬加療により、1年後、脳底動脈に狭窄性病変の改善、他の脳血管も全体的に描出が良好になり、めまい発作も消失す。
             
4年後
              69才 男性
一日3〜4合と大酒家で肝硬変を疑われながら、酒を断つことが出来ずにいた。眩暈、物忘れ、失調性歩行などを認めるようになり、受診す。初診時MRAでは、今でも崩れそうなくらい危機的な状態にあることを眼でみてから酒を断つ決意す。
              同左  73才
完全な断酒に成功し、高血圧症、高脂血症に対する加療やチクロピジン、ニセルゴリン、EPA、ビタミンEなどの服薬加療などにより、臨床的にも諸症状軽快し、車椅子状態から一人で独歩にて通院するまでに回復す。MRAでも、脳主幹動脈は明瞭に描出されるようになり、脳循環もスムーズになって改善されつつあるのが認められる。

★これらの症例はライフスタイル改善の努力に対する勇気と希望を与えるものである!★



 ★ MRAとライフスタイル改善効果について 

 狭窄性病変を認めた症例のうち、経時的観察によりMRAの改善を認めた34例(17.7%)の分析において、性別では、男性67.7%、女性32.3%で男性より女性の方に、またアルコールより禁煙へのへの取り組みが難しい傾向があった。
 年齢別では、思いの外、高齢になるほど、差し迫った危機感とともに、生活習慣病に対する真剣な取り組みが得られている。改善までの観察機関は、1年以内に3分の2以上が改善傾向が認められた。生活習慣病に対する改善の意欲のあるものは、比較的短期間のうちに改善している。
 短期間内に狭窄性所見や末梢の描出が著明に改善することは、不安定なプラークが速やかに安定し、凸凹な血管壁がスムーズになるため、狭窄部での血流コントラストの上昇などによることが大きいと考えられ、血流情報を反映するMRAはそれだけ、ライフスタイル改善による血流改善効果を直接反映できる意味においても優れた検査方法と考えられる。

   






3年後
78才 男性  左同 81才時 右内頚動脈狭窄を認む
脳ドック受診時
禁酒・禁煙中
 1年前より一日3合、タバコ30本復活。
左上肢脱力感の出現と眩暈発作を認め、MRAにて再検査。右内頚動脈、及び中大脳動脈に高度の狭窄を認めた為、禁煙・禁酒指導を強調す。
    
3年後
30才 男性 左中大脳動脈狭窄 左同 33才時 新たに右中大脳動脈閉塞を認む
脳ドック受診時
1日タバコ40本、ビール1リットルの嗜好あり。高脂血症も認む。
  禁煙、禁酒に失敗、服薬も中断す。
左上肢マヒ、眩暈を認め、MRA再検査にて、新たに右中大脳動脈の閉塞も認む。



★ 脳ドックの今後の展望

 従来生活習慣病との関連から、脳梗塞がいろいろ検討されてきている割には、人間ドックや脳ドック受診者に、ドック受診後のライフスタイル改善が得られたかどうかの検証でも、期待されるほどの成果をあげているとはいえない状況にある。長年の嗜好は変え難く、なかなかライフスタイル改善に向けての努力を勝ちうることは難しいというのが現状である。
 最近の高性能MRAは、狭窄性病変に対しても、いろいろな工夫などにより、50%以上の狭窄ならば、かなりの確度で検出可能になりつつあり、簡便、かつ低侵襲性に、目に見える形態的異常として提示できることから、単なる数値の異常として示すより、より説得力が加わり、患者の真剣なライフスタイル改善への取り組みが得られ、また、服薬のコンプライアンスも高まる。脳ドックにおいても脳動脈瘤ばかりでなく、虚血性病変においても積極的にMRA検査を加えることにより、更なる発展と活用が期待されるところ大である。

  



★MRAの再現性は??

2年3ヵ月後
42才 男性 危険因子なし 44才時
脳ドックならではの、危険因子のない42才の方ですが、撮影条件を同一にして検討してみますと、2年3ヶ月後の44才の時のMRAにおいても、主幹動脈の走行状態や分岐の状態がこのようにほぼ同様に描出されており、危険因子のない場合、MRAの再現性はかなり高いもののように思われる。


  脳卒中の予防の為のライフスタイル改善策
タバコ一日10本以下、できれば禁煙し、
飽和脂肪コレステロールの多いものは控え
  (
最近のテレビの偏った健康番組の影響などにより、刺身、ヨーグルト、卵などの摂り過ぎにも注意!
緑黄色野菜を十分に摂取する。
お酒を控えるビール350ml酒1合週2日程度  
                  特に、高血圧や高脂血症の方は禁酒
        (血圧 max 140mmHg以上、 min 90mmHg以上 の時は控える。
         中性脂肪値(TG)、γGTP値の高い時にもアルコールを控えて!!)
塩分摂取量制限(食塩6g以下,漬物、筋子、たらこ、お味噌汁も控え気味に!
                    かけ醤油はダメ!つけ醤油で!!)
糖尿病のコントロールHbA1C  6.5%以下
         ex:HbA
1C 6.5%=30.5+6.5=37℃, HbA1C 9%=30.5+9=39.5℃
          ※ HbA1Cは6.5%以上では、体温に例えれば、37℃で微熱傾向あり、
                  9%では、39.5℃と高熱状態と考えられ、早急な対処が必要な状態と考えられる。
         
◎ このようにHbA1Cを体温に置き換えてみると、その重症度が実感的にわかりやすくなります。
         ◎ よく動き、野菜を摂りましょう!!  一日30品目を目標に!

体重の適正化 (BMI(体重(kg)/身長(m)) 27以上は危険因子
有酸素運動   一回30〜40分 ・週3回以上
  
脈拍 110〜120/分以内: 決して無理してはいけない!

食生活においては”塩”は抜いても『手』を抜くな!


症例 80代 / 大阪府 / O 様
Q1
超多忙の中をこのようなメールをお送りして申し訳ありません。私は○○医大を卒業した○○と申します。実は80歳の母の小脳梗塞のことで相談したいので、どうかこのメールを送ることをお許し下さい。

母は11日前に突然のめまい、嘔気、嘔吐を発症しました。風邪症状を訴え、抗生物質を服用していたので当初は前庭神経炎を疑ったのですが、重症感を感じたので近くの病院で翌日(発症22時間後)にCTを撮ってもらいました。CTは異常なしと言われ、自宅での観察を示唆されたのですが、動くとめまい、嘔吐で転倒するため入院許可をもらいました。入院日の夜間にはポータブルトイレを使用しようとして2回転倒したため、私も翌日ようやく小脳梗塞を疑い、発症4日目でMRIを撮ってもらいました。結果は予想よりも広範に虫部、両側半球に梗塞像を認めました。脳幹にも一部病変を認め、主治医からは予後不良と云われています。今日からベットサイドリハビリを開始することになってますが、幸いFinger to Nose Test はクリア出来ています。その他、構音傷害や知覚異常などの脳神経症状はありません。

既往歴は、肥満、高血圧があります。心房細動はありません。

CT, MRIの画像を添付できないのが残念ですが、虫部、両側半球、脳幹に梗塞ということから椎骨動脈合流部から近い位置での脳底動脈閉塞を疑っています。80歳という高齢でもあり、なるべく非侵襲性の検査で脳血管の評価が出来ないかと願っています。先生のホームページにある超伝導型のMRAの画像解像度の凄さには圧倒されました。

 
A:  ○○さま、こんにちわ。
    当クリニックホームページへのアクセスありがとうございます。

通常、脳梗塞をはじめとして脳血管性障害が疑われる場合はたいていMRI画像と一緒にMRAを撮るのが普通なのですが、お母さまの場合は、MRAの検査は残念ながらやっておられないようです。

 たいていの大きな病院ですと、比較的最近、新しく製造された超伝導型のMR装置ですと、0.5テスラーでも1.5テスラーでもかなりの解像度があります。
ちなみに、○○病院 には、○○先生がおられ、脳血管障害では、かなり有名な先生であります。
 また、3D CTの場合、最近はかなりの解像度がみられ、閉塞性動脈瘤のみならず、閉塞性疾患にもかなりの解像度がみられますが、被爆のことが最近とかく問題になってきております。
 そこでまず、MRAでまず検査されてみるのがよろしいかと思います。
 小脳梗塞は、その拡がりによりますが、比較的麻痺などがある方よりは、QOLは良好なことが多く、ふらつきがみられるにしても、片麻痺や構音障害、知覚障害などが特にみられないのであれば、私は、今後の経過はよろしいかと思います。
 1ヶ月ほどしますと、現在のめまいなども、だいぶ軽減されてくるはずであります。まずは、あきらめないで、これからの治療に期待されてみてはいかがでしょうか?


お返事: 御丁寧な返答、ありがとうございました。
○○病院の○○先生は△△医大の大先輩であり、私の学生時代に○○病の特別講義を受けた記憶があります。早速、相談してみます。
今日で発症後3週間が経ちましたが、5メートルのつたえ歩き、5秒間の一人立ちが出来るようになりました。
手紙の字も震えは見られず、郵便番号欄の箱に数字を入れる時に初めて小脳症状を意識するくらいです。
先生の「今後の経過はよろしいかと思います。」という御言葉は本当に救いになりました。油断はしませんが、これからの治療を続けて参ります。どうか今後とも宜しく御願いいたします。


Q2
 
 先日は○○病院の△△先生を紹介していただき有り難うございました。結局発症後ちょうど4週間経った日に、現在入院中の病院の関連で○○病院でGE社のSigna 1.5 T の機械でMRA検査を行いました。なお検査結果はCDローム(3.3Mb)でもらいました。

先ずMRIを撮ったのですが、現在入院中の病院で撮った発症4日目のMRIとは大きく異なり、右の小脳半球に限局性の梗塞と思われるT1, T2強調像を認めました。現在入院中の病院のMRIでは虫部、両側半球に加え脳幹の一部に梗塞像を認めていました。
施設、機械が異なると、このような一見矛盾した画像が得られることはあるのでしょうか?確かに、字も書ける、刺繍も出来る、杖歩行出来る等の臨床症状を見ると今回の1.5 Tの検査結果だけを信じたくなりますが、それで良いのでしょうか?

MRA ではmajor な血管に閉塞像はありませんでした。医師の指摘では年齢相当(80歳)の動脈硬化、技師の指摘では右の内頚動脈がlow densityに映っている、という程度でした。右のPICAが責任血管かと思ったのですが、MRAではPICAの高さの撮影が残念ながらありませんでした。医師の指導は脱水の防止の一言だけでした。元々、PICA程度の枝の評価をMRAでするのは難しいのでしょうか? またの機会に聞かせて頂くことが出来ましたら、宜しく御願い致します。

A: ○○さま、こんにちわ。
 当クリニックホームページへの再度のアクセスありがとうございます。

○○さまが考えておられるように、現在の臨床症状からみますと、最初のMRIの所見は、あまりにも極端に病巣が大きすぎるような気がしておりました。
 ですから、現在の最近のMRIでの限局性の小脳梗塞ということであれば、現在の臨床症状と所見が合うことになります。
結果的には、小さな小脳梗塞であったわけです。 今後の予後は、良好なものと考えてよさそうです。

 脳梗塞の病変がどこにあるのかによって、責任血管が逆に診断できるわけですが、当院のMRAですと、PICAについてもある程度の評価ができます。
 MRI・MRA、いずれをとりましても、撮像の工夫やメンテナンス、色々なシーケンスの違い、あるいはまた、MRIの機種により画像は著しく異なったものになります。MRIというものは、磁場の強さ、製造年、永久磁石型か超電動型かなどにより、それだけピンからキリまであるものだという認識をお持ちになって頂ければと思います。



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