22才 女性  小脳腫瘍(術前)
数ヶ月前より、めまいを認めるようになり、徐々に憎悪。
           小脳腫瘍(術後)
術後、脳腫瘍(良性グリオーマ)の消失とともに症状を軽快す。現在、元気に社会復帰している。
    
      
        65才 男性  小脳梗塞
MRIにて大きな小脳梗塞を認める。突発性かつ難治性のめまい、嘔吐、歩行障害で発症。
          左同  65才 男性
MRAにて脳底動脈、上小脳動脈、前下小脳動脈などの高度な狭窄を認める。  
   
 
        48才 男性 後弯変形
パソコン業務中に後頭部痛と立ちくらみやめまい、両側耳鳴(頭鳴)などを認めるようになり、筋緊張性頭痛、メニエール病などの診断で治療をうけるも改善せず来院、脳MRIは正常。頚椎MRIにて後弯変形を認む。
         左同  48才 男性
水平断にて、後弯変形に伴い脊柱管も狭窄していた。パソコン業務の姿勢や環境の改善、工夫などにより症状改善をみる。

症例 42歳 主婦
主訴: めまい
既往歴: H14.11月 頚〜肩がこり、胸もはっている感あり。○○HP整形で頚x-p施行。
        異常なし、寝ちがいでしょうといわれたことがある。
        ・めまいの薬(内科) ・耳鼻科でも数種類服用中
現症歴: 6/5 朝起きると、ぐるぐるめまい、嘔気あり、頚〜肩、頭がすっきりしない。
       ○○HPに入院、頭CT、MRI、ECG、胸腹x-p、採血し、すべて異常なし。
       原因が分からないといわれた。
       6/16退院。ぐるぐるめまいはとれたが、軽いめまいが続いている。嘔気もとれない。
       頚〜肩のこり、痛みあり。頭がスッキリしない。両手がもたっとする。
       生あくびがでて眼が疲れやすい。車酔いしやすくなった。買い物へ行ったり、
       台所に立っていると気分が悪くなり、イライラしてくる。動悸もしてくる。
       読書が大好き。当院で診てほしく来院。

 これまでの症例を詳細に検討してみますと、後弯変形をきたし、脊柱管狭窄を伴っている場合、立ちくらみ、めまい、吐気、両側耳鳴(頭鳴)、筋緊張性頭痛、肩こり、両手指のしびれなど訴える方が多くみうけられる。特に家事、手芸、草取り、パソコン、食事中、長距離運転などの後にみられることが多く、心身症がらみのメニエール病などが疑われている時は、本症のチェックもお勧めしたい。
 局所神経症状を呈する例は意外に少ない。
 現時点での小生のspeculationでは、後弯変形に伴う脊柱管狭窄などにおいては、長時間のデスクワークなど、頚の前屈姿勢を強いられることにより、上部頚髄の微小循環障害が容易に発生しやすくなる為ではないかと考えている。頚性眩暈の機序の解明に今後とも取り組んでゆきたい。
 



 
 



 Barre(1925年)および Lieou(1928年)等により頚椎症に伴う症状の詳細な臨床研究があいついで報告され、頚椎症などを背景に主として後頭部にみられる頭痛と、いろいろな随伴症状、すなわちめまい、耳鳴り、眼の障害などを伴うものである。頭痛のもっとも強い点は、明らかに後頭部にあって、この痛みは両側の頭頂から前頭にかけて、またしばしば眼球後部に放散する。痛みは一側性のこともあり、また両側性のこともある。また他方痛みは項から肩、ときとしては一側、あるいは両側の上肢に放散する。頭痛は頭の位置の変動、前屈姿勢、頚への過度な負荷、運動、精神的興奮、頚の冷却、生理、低気圧、風邪気味などによって引き起こされ、また増強する。またある形のものでは、痛みが顔面に放散し、三叉神経痛様の焼けるような痛さ(三叉神経痛との鑑別)、あるいは顔面の違和感、知覚障害、顔面の血管運動障害、すなわち同じ側の顔面のほてりや発汗、眼の充血、紅潮のみられるものがある。

 
めまいの多くは立ちくらみ、浮動感で、地震のような揺れる感じ、歩行、起立不安定状態を招き、回転感は稀である。しばしば一側又は両側性耳鳴りを伴う(頭鳴)。またときとして耳閉感、軽度の聴力障害(多くは両側性)を伴うこともあり、あるいは耳の痛みを感ずる。眼の障害は疲れ眼になりやすく、眼の奥や周りに痛みが強く(緑内障との鑑別)、眼がぼんやり、眼のショボショボ感などがある。また角膜の知覚鈍麻をみることがある。

 Barre 症候群の経過中に、咽頭の症状を呈することがあり、多くの場合は咽の違和感で、重大なものではないが、
ノドのつかえる感じや、ときとして咽頭の灼熱感、痛み、さらには頚のほうへの放散痛をきたすことがある。また異物感、舌基部の痛み、場合によっては咽頭の知覚鈍麻、咽頭反射の減弱などもみられることがある。喉頭の障害としては、声の低下、嗄声 aphonie の急速な出現、あるいは憎悪などがみられる。”むち打ち症候群”、頚の前屈姿勢を強いられる趣味や業務などに際してしばしばみられる。
 精神状態はだいたい正常であるが、うつ状態、不安感、イライラや不眠など若干障害のみられる場合がある。診察に際し他覚的な陽性所見を認めることは、かなり少ないが、頚が回らない、寝違いを起こしやすい、頚椎棘突起の圧痛、神経根部の圧痛、その両側の筋肉の圧痛、Arnold 神経(大後頭神経)の圧痛点陽性などのみられることがある。

 Barre-Lieou 症候群の診断にとって、重要なのは、レントゲン写真、MRI所見である。正面像では、中央部において椎間部に靱帯の硬化による陰影の増強がみられ、椎体の上面および下面に異常な陰影増強がみられる。外側のほうでは、脊椎間の関節面の変形がみられ、ときには上下関節突起の融合が起こって、さらにはときとして鉤型に外に向かって骨の突起が生ずる。
側面像では、しばしば頚椎にみられる生理的な前彎の減少(いわゆるストレートネック)がみられ、ひどくなると後弯変形もみられ、脊柱管狭窄が高度なことも少なくない。これは特に Barre が指摘する点である。椎体の前面および後面の角に、鉤状の突起を生ずる。これら病変は、最近の知見では、C4,5,6椎体や椎間板に特に強く、日常生活、趣味、業務などによって、長時間頚の前屈姿勢を強いられた時に負荷のかかりやすい部である。このような頚椎の病変が、そこを通る椎骨動脈に伴って走る神経を刺激し、すなわち下頚部交感神経症候群、syndrome sympathique cervical posterieur(Barre-Lieou 症候群)を起こすと考えられている。しかしながらこのほかに頚部に存在する神経もまた、耳鼻科的、眼科的症状を引き起こすのに関与していると考えられる。


 この Barre あるいは Lieou の業績とは離れて、近年頚部の discopathie によって引き起こされる頭痛が認知されるようになった。その頭痛の特徴は、強さ、持続時間、場所はいろいろであって、
例えば痛みが眼の周辺やこめかみ、あるいは側頭部にあることもある。ツキツキ刺すような痛みしめつけられる様な痛み髪の毛に触っても痛いなどのことが多い。さらに随伴する症状として、悪心、嘔吐、眼(眼のショボショボ感、眼痛)および聴覚の症状(耳鳴、耳閉塞感)、いろいろな自律神経障害、動悸ならびに精神不安、集中力低下がみられ、痛みは頚から上肢のつけ根に放散、さらには前腕や手指のしびれや痛みなどを伴うことがある。レントゲン学的に頚椎の生理的前彎は減少して、直線化し、MRI所見では下部頚椎(C5からC7)の脊柱管が狭くなっている。これらの形態学的変形を背景に、頚の前屈(下を見る)、後屈(見上げる)などにより、容易に脊髄の微小循環の障害が発生し、多彩な症状を発生しうることが推察される。
 さらにこの頚椎の障害に伴って、虹彩異色症 heterochromie irienne,Horner 症候群、Adie 症候群などを伴うことがある。近年、本症候群の詳細は、MRI検査の発展に伴い、その病態の解明が期待される。



 平山惠造著「神経症候学」319-320頁、1971年、文光堂様、平山惠造先生のご高配により許可を頂き、転載させていただきました。(一部改変)


症例  20代 / 千葉県 / I 様   

えびな脳神経クリニック様
 
 初めてメールをさせていただきます。
 千葉県在住の○○と申します。20代男です。
 
 早速ですがめまいについてご相談させて下さい。
症状
 ・昨年の10月中旬にパソコンでの業務中に画面がすごく揺れて見えました。
  その際に、立ち上がることが出来たのですが、
  1分ぐらい目の揺れが続き、治まったと思ったら、ふらふらして、はきけがしました。
 ・その日に、救急の外来に行ったのですが、その時点では気分も落ち着いていた
  せいか、翌日に眼科に行くように言われました。
 ・その後も、主にパソコンを見ているときに同じような症状が何度も続きました。
  (夕方になることが多いです。)
 ・だましだまし生活をしていたのですが、風邪をひいた際に内科に行き、めまいのことを話すと、ストレスからではないかと言われ、『○○』という薬を処方してもらいました。
 ・その後半年間は、その薬を朝1錠飲んでゆくと、ひどい症状にはならずにいたのですが、仕事が急に忙しくなったときに、症状がひどくなってきました。
 ・最近、耳鼻科に行ったのですが、急性突発性頭位めまい症と診断されました。
  特別な薬は処方されずに、運動療法で直ると言われたのですが、症状は改善しません。
 ・最近は、朝起きるときにふらふらして起きれなかったり、歩道橋などのちょっと揺れる場所を歩くと急激にめまいを感じたりします。ふかふかのじゅうたんとかでもめまいを感じます。
 (立ち上がっているときのめまいは夕方から夜がほとんどです。)
  不思議なことにどんなにめまいを感じていても、車を運転すると症状が全くなくなります。
   なお、現在も「○○」はほぼ毎日服用しています。
 以上、とりとめの無い文章ですが、アドバイスがいただけたら幸いです。
 すみませんが、宜しくお願いいたします。

A: ○○さま、こんにちわ。
   当クリニックホームページへのアクセスありがとうございます。
 
さて、○○さまの症状は、当ホームページの『めまいについて』のページを熟読されますと、よくお解りいただけるかと思いますが、いわゆる、パソコン業務などでの、頚への過度な負担に伴うめまいのように思われます。
頚性眩暈ですが、バレーリュー症候群のような印象を受けました。
 もう一度『頚へのアドバイス』を熟読されて、日常生活において徹底的に頚へのいたわりについて工夫されてみてはいかがでしょうか。
それにより、だいぶ症状は軽減されてくるはずです。


症例  40代 / 石川県 / K様   

 はじめまして、○○と申します。石川県に住む40代女性で営業をしております。4月から課長になりましてかなりのストレスも抱えております。

昨年よりめまいに悩まされておりまして、先生のホームページにたどり着きました。お忙しい中大変恐縮ですが何卒良きアドバイスをお願いいたします。

昨年の7月22日の夜グラグラと地震かと思うゆれが来て、次の日のお昼を食べた直後から吐き気を伴い回転やらグラグラと激しいめまいに襲われて、救急外来で見てもらい、その後耳鼻科で突発性難聴と診断されました。耳鳴りもありました。1週間起きられずに寝込みました。その後回転性ではなく、グラグラと常にしています。ちょうどお酒に酔ったような感じです。仕事も集中できず、記憶力もかなり低下しています。商談をしていても、焦点が定まっていないような感じで集中できません。発症前はかなり夜更かしもしておりましたし、ストレスも抱えておりましたし、更年期も重なってはいると思います。(8月を最後に生理がありません)耳鼻科では3週間ほどで治ると当初は言われましたが一向に回復せず、(耳鳴りは治りました)薬も欠かさず飲んでおります。先日、脳神経外科でCTを撮って頂きましたが脳は異常ないとの事でした。(足にボルトが入っているためMRIが撮れません)それでその時に安定剤を頂き2週間服用いたしましたが変わりなく、現在に至っております。めまいは頭を左右に動かしたり、後ろに振り向いたりすると余計グラグラとしますしなにもしなくても常に酔ったような感じです。多分いろんな要素で起きているとも思うのですが、どうして良いか分からず困っております。先生のお手すきの時で構いませんので良きアドバイスをお願いいたします。首にも思い当たる事もあります。以前、首がギックリ腰になったようになった事が2度あります。今でも寝違えば頻繁なりますし、肩こりもひどく、それが原因の頭痛も頻繁に起こります。以上です。よろしくお願いいたします。


A:  ○○さま、こんにちわ。
    当クリニックホームページへのアクセスありがとうございます。

  さて、○○さまの現在の症状の詳細な経過をメールで頂きありがとうございます。○○さまがそれとなく感じておられるように、基本的には現在の症状が出る以前より、かなり頚への負担がかかっている毎日であったということの認識がまずとても大事なことであります。
それに加えて、最近課長になり、いささか張り切り過ぎたところで限界を超えて、現在の症状が出てきたように思います。
 すなわち、頚の過度な負担に伴う現在の症状のように思われます。『めまいについて』のページをご覧いただきますと、頚への過度な負担から現在のような船に乗っているような、フワフワした感じやユラユラ揺れるような、あるいはまた地震のような浮動感、不安定感が主としためまいの症状として出てくることが多いのであります。耳鳴りなども頚への負担から結構出てまいります。『頚と頭痛について』のページをご覧いただきますとそこに書かれてあります症状に、思い当たる点があるかと思われます。現在の肩こりや頭痛、寝違いなどの症状は、実は頚への負担がかなり進んでることによるもので、頚と枕の不具合もあるように思われます。
  
 出来れば、私であれば徹底した頚部の安静の為に、2週間休暇をとります。『頚へのアドバイス』のページをご覧いただきますとわかるかと思いますが、自宅安静療養しまして、その上で日常生活において徹底した工夫をお勧めします。
 『読者コーナー』のめまいについての質問のページをご覧いただきますと、○○さまのような症状を実にたくさんの方が訴え、そして頚をいたわることにより改善されていくことがお解りいただけるかと思われます。
 いわゆる、バレーリュー症候群と呼ばれるものの一つと考えてよさそうであります。
 単にストレスと言うかたちで捉えますと、現在の症状からはなかなか抜け出すことが出来ません。基本的には、頚をいたわること。
そのためには何をすべきか、日常生活においてどのような改善が必要かを今一度徹底して見直してみてはいかがでしょうか?


症例  九州地方 / H 様   

 はじめまして。○○市の△△科病院の○○と申します。先生のホームページを拝見し、感銘を受け、また、いくつかのご相談をさせて頂きたく、メールしました。私は、もともと神経放射線を中心とする全領域の放射線科医としてやってまいりましたが、現在は今の病院に勤務し、外来、入院、画像診断、検査等を行っています。

以前の私の仕事内容としては、CTMRIの読影、血管撮影や内視鏡等で患者さんに直接接するのは、当直の時だけでした。今の病院では外来と入院患者を受け持っていますので毎日患者さんに接していますが、頭痛、吐き気、めまい、耳鳴りの患者さんが多いこと、また、そのほとんどが頭部の検査で異常を認めないことに驚かされました。しばらくは、「頭の異常はありません。」と緊張型頭痛と考えておりましたが、頭痛の患者さんに対して腱反射を行っていくうちに、所見がある患者さんを中心に頚椎XP検査を行ったところ、変形性頚椎症が多いことに気づきました。その中には強い脊柱管狭窄の方もおられ、頚椎症性脊髄症の診断で手術になる症例もありました。

では、いくつか質問をさせてください。

1.当院の院長は「頚性めまいなんて見たことがない。」とおっしゃるのですが、私にはむしろ非常に多いと思うのですが、いかがでしょうか?

2.私も変形性頚椎症と耳鳴とは非常に関係が深く、耳鼻科で診断がつかずにメニエール病と言われている患者さんの多くは、頚椎症が原因ではないかと思っています。ただ、神経学的に頚椎と耳鳴との関連がよくわからないのですが、先生はどうお考えでしょうか?

3.頚部前屈時、あるいは背屈時に、頚椎Xpで辷りが生じる不安定な頚椎の患者さんがいらっしゃいますが、このような方にはめまいが多い印象です。椎体がずれるときに椎骨動脈に狭窄が生じ、脳幹部に虚血を起こしているのでしょうか? また、そうであるとすれば、姿勢の指導とともに抗血小板剤を投与する必要があるでしょうか?

以上、よろしくお願いいたします。


A:
○○先生こんにちわ。
      
当クリニックホームページへのアクセスありがとうございます。

 小生と同意見の先生がおられたということに、実は非常に嬉しく、感動する思いでメールを読まさせていただいております。
 先生もこれまでの臨床から、素朴な感じとして色々感じとられてこられたように小生も開業して、実に多くの患者さんの中に、めまいや耳鳴り、そしてそれらの背景となる特徴が次第に見えてきまして、現在のホームページに書かせていただいたようにまとめてきたわけです。また、患者の指導に活かしてきているわけですが、以下のごとくご質問に出来るだけお答えしたいと思います。
 
1.頚性めまいというのは、通常の先生には理解しがたいかと思います。なぜならば、 頭からそれを否定しかかっておりますし、教科書的にも、頚性めまいについてはあまり記載がないからであります。しかしながら、小生のみるところ、頚椎症、とくに前彎の減少、特に直線化ないしは後弯変形などにより、MRIでくも膜下腔の狭窄、あるいは消失により、容易に頚の前屈姿勢に伴い、脊髄の微小循環が起こりやすい状態が生じますと、めまいがでてくるような印象を受けております。MRIのない今から100年以上も前にバレー先生やリュー先生が論文に発表されているとおりです。(いわゆるバレーリュー症候群)
 特にそれに加えて、喫煙や高脂血症など、血液をドロドロにするような因子がありますと、めまい、浮揚感などが出やすいような印象を受けます。
  また、このめまいは浮動感や不安定感、立ちくらみなどのようなものが非常に多いのですが、時には頭を枕につけたとたんに回転性のような激しいめまいもひどい時には、でてくることがあるように思います。通常は、そのような真性の回転性のめまいは少ないように思います。多くは、浮動感や失調性歩行のような印象を受けております。
 私は、小脳脊髄路の一過性の微小循環障害かと思っております。
 
2.頚椎症と耳鳴との関係でありますが、頚椎症に伴う耳鳴りの多くは、むしろ頭鳴と捉えた方がいい場合が多いように思います。すなわち、一側性というよりは両側性どちらかというと頭の中で響くという感じで訴えることが多いように思います。
 頚椎症に伴う耳鳴りの詳細は、成書においては、いまだ記載はありませんので、推察の域をでないのでありますが、最近の微細解剖学の進歩とともに、例えば三叉神経脊髄路などが、第3・4頚髄後角灰白質のレベルあたりまで、ループのように下降しているということもわかってきつつあり、頚椎症に伴う眼の奥の痛みのメカニズムが解明されつつあります。おそらく、聴神経・内耳神経のレベルにおいても、同様な形態をとっている可能性があり、頚の前屈姿勢などに伴う軽い循環障害から症状がでているように思われます。
  また、頚椎症に伴う耳鳴りの場合は、聴力障害はあっても一般に軽微なものです。
 ほとんどの場合、鳴ったり止まったりしますが、鳴りっぱなしになりますと、多くの場合不可逆性のものと考えて、むしろ鳴りっ放しになる前に手当てをすべきと考えております。
 
3.まさに頚部前屈時、または背屈時に、頚椎の辷りなどが見られ、いわゆる不安定性の頚椎症がみられる場合に当然、MRIで見てみますとくも膜下腔が、圧迫される部分で消失しておりますし、一過性に脊髄の微小循環が障害されるということは、容易に推察されるわけです。必ずしも椎骨動脈そのものが圧迫されなくとも、私は、脊髄の圧迫そのものにより脊髄内の微小循環の障害により、これらの症状が出てくる可能性の方がむしろ高いのではないかと考えております。
 MRIで見ますと、我々の想像以上に本当に多くの方が、脊柱管狭窄を来しており、そして頚の前屈姿勢や後屈姿勢により、容易に脊髄そのものが一過性の圧迫を受け、そして微小循環の障害を来たし、その部位にある各神経の脊髄路の障害を惹起するのではないかと考えておりますが、脊髄の微小循環の測定は今後、医学の進歩、診断学の進歩とともに、解明されていく問題かと思いますし、微小神経学の解剖はまだまだ緒についたばかりかと思われます。
 もし、興味がありましたら、当ホームページの『頚と頭痛について』のページにあります『バレー・リュー症候群』の引用文献や日本医事新報の金沢医科大学の飯塚秀明先生の論文などを参考に読まれることをお勧めします。
 
4.尚、先生が感じておられたとおり、脊髄脳幹部の循環障害が背景にあるとみておりますが、既に私は、先生が思っておられたように脳梗塞合併例などに積極的に抗血小板製剤を投与しております。そうしますと、これらのめまいやしびれ、耳鳴りは驚くほど改善をみております。
 特に、手指のしびれなども改善します。

症例  住所不明 / S 様 / 40代

○○と申します。サイトを初めて拝見しました。欲しい情報が引き出しやすく整理されていて、悩めるヒト(私です)に、ありがたいですね。
現在、○歳の夫が、頚椎ヘルニアとくも膜下出血を発症しています。ご相談させてください。

 最初、「肩に漬物石を乗せたようにドーンと痛い。頭全体がガンガンして動かせない。」と歩くのもやっとでした。整形、脳外科を経、頚椎ヘルニアと診断される。CTでの脳出血なし。
 1ヵ月後、 左顔面と左腕にしびれが出、CT撮影、出血なし。診療内科的なものではと診断される。
 MRI検査、右頭頂部に少量のくも膜下出血発見。MRA検査、主要動脈に異常なし。
 2ヵ月後、めまいと腕のしびれを訴え救急でCT撮影、脳出血なし。

現在、当初の頭痛は治まり、以下の症状があります。
1. 起立時のふらふら感
   これは、横になるとなくなります。
2. 起立時の耳の圧迫感
   エレベータに乗ると気圧で耳の中が押される、あの感じです。横になるとなくなります。
3. こめかみのピリピリ感
   弱い痛みで、たまに起きます。
4. 不安感

くも膜下出血については血管造影検査を行うつもりですが、医師から、原因が見つからないかもと言われています。
また、現在の症状はくも膜下出血と異なるように感じます。
夫は、今の症状が辛いらしく、このまま原因が見つからないのではと不安に感じているようです。

現在の症状は、頚椎ヘルニアに由来する可能性がありますか?
また、うつぶせで寝ますが、ヘルニアに影響しますか?
 お忙しいところ恐縮ですが、アドバイスいただけると助かります。よろしくお願いします。


A:
 ○○さま、こんにちわ
    
  当クリニックホームページへのアクセスありがとうございます。

 4/20に、何らかの原因で頚椎ヘルニアを来したような印象をうけます。
基本的には、いろいろな精査を受けたうえで、CTでは出血はないということが2回の検査でチェックされてるわけです。しかも、5/20のMRIといいますと、くも膜下出血を起こしてから既に1ヶ月以上経っているわけですが、それにしてもMRAで主幹動脈には、動脈瘤など、くも膜下出血を起こす原因となり得るものは指摘されなかったということで、基本的にご主人の場合は、くも膜下出血ではなかったような印象を受けます。
 少量のくも膜下出血ですと、1ヶ月も経ちますと、たいていの出血は洗い流されて痕跡も認められなくなるはずです。
また、主幹動脈に動脈瘤などがみられないのであれば、出血源は特定できないわけですから、これ以上検索する必要もないように思います。
 
 現在の症状は、『頭痛と頚について』のページにあります、耳閉塞感、
起立時のふらつきなど、不安定歩行、こめかみのピリピリ感などが、みられるということで、基本的には、頚椎症やそれを背景としたヘルニアなどにより、これらの症状がでてきているような印象を受けます。
 軽い後弯変形やいわゆる直線化(ストレートネック)のような状態がありますと、現在の症状が出てまいります。いわゆるバレーリュー症候群の一つかと思われます。こめかみのピリピリ感などはやはり、頚椎症に伴う放散痛のような印象を受けます。
ですから、くも膜下出血は基本的にはないものと考え、頚椎症に伴うものと考えて、頚へのアドバイスに従って徹底的に頚をいたわることをお勧めします。なお、頚の悪い人は、しばしば枕をするのがかえって具合が悪かったり、仰向けに寝るのが辛くて、むしろうつぶせで寝ることを好むようです。これらも、そもそも頚が悪いことの一つの状況証拠になるわけです。
 いずれにしましても、頚へのアドバイスに従って、今一度徹底的に頚をいたわることにより、これらの状況から抜け出せるような気がいたします。
 
あまり、あれこれ悩まずにここ2〜3ヶ月の間、頚をいたわるよう工夫されてみてはいかがでしょうか?


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