このページは、『自死遺族であるということ』(PDF版)のHTML版。文章のなかに言葉と言葉、文章と文章をつなぐリンクが張り巡らされているところが大きな違い。
はじめに
この本は、2002年から2023年にかけて20年余、『烏兎の庭』と名づけたウェブサイトで書いてきた文章から、とりわけ自死と自死により遺された遺族の心情、そして死別体験から生じる悲嘆(グリーフ)について書いた文章を私家集(アンソロジー)として選んで作った。ここでは元の文章へのリンクを時系列に配置した。PDF版では縦書き用に推敲してある。
『烏兎の庭』では、本の感想だけでなく、音楽や展覧会の感想、それから取るに足らない日記も書いている。
本書は私が上梓する初めての本。今回は一冊の本にまとめるためにテーマを絞った。なぜ、自死と悲嘆なのか。
それは本文を読んでもらえばわかるように、私が思春期の初めに姉を亡くした自死遺族の一人だからであり、私自身がうつ病のため、一時期、希死念慮で苦しんだからでもある。
『烏兎の庭』について少し書いておく。
2001年、それまで働いていた米系ハイテク・メーカーから同じく米系でスタートアップと呼ばれる中小企業の日本支社に転職した。それをきっかけに、数十年ぶりに日記をノートに書きはじめた。これが冒頭の「烏兎以前」の部分。
ウェブ上で最初に文章を書いたのは「日記鯖」というブログ・サービスだった。2002年の6月頃のこと。はじめは図書館で借りた本を記録する備忘録だった。それから少しずつ読んだ感想も書くようになった。
書いたものがたまりはじめて、「日記鯖」では不便になってきたので、ウェブサイトを自作してみた。それが2002年の秋。『烏兎の庭』はこうして始まった。
それから二十年、途中で何度か中断しながらも書きつづけてきた。中断するたびに副題を変えて新しい部立てにした。これまでに第七部まで書いている。
- 第一部 烏兎の庭 2002年6月から2004年6月まで
- 第二部 草の上に腰を下ろして 2004年9月から2006年5月まで
- 第三部 土を掘る 2006年9月から2010年2月まで
- 第四部 硝子の林檎の木の下で 2010年6月から2014年12月まで
- 第五部 最後の手紙 2015年1月から2017年12月まで
- 第六部 終わりの始まり 2018年1月から2021年12月まで
- 第七部 梅の残り香 2022年1月から現在まで
部立ての区切りは気持ちの区切りでもある。心境が大きく変化したとき、あるいは、疲労困憊したとき、文章を書くことをしばらく休む。しばらく休むとまた書きたくなる。それを繰り返してきた。
この本を紙の本として上梓する。それがいまのところ、私の一番大きな夢。
著者プロフィールの代わりとして裏木戸も開く。これまで分散していた文章を一編の著作にしなかった理由、そして、今回、本として刊行しようと思い立った意図はこの文章が代弁してくれるだろう。
目次
- 烏兎以前
- 書く、ウェブに書く
- 太陽を盗んだ男(1979)、キティ・フィルム、東映、2002
- エッセイとは何か(L'Essai, Pierre Glaudes et Jean-François Louette, 1999)、下澤和義訳、法政大学出版、2003
- 神戸市街地 定点撮影 1995‐2001 復活への軌跡、関美比古、高橋勝視写真、加戸玲子、中井久夫、森反章夫、毎日新聞、2002
- 浮彫としての文章――「烏兎の庭」開園一年を迎えて
- 谷間の女たち、森山啓、新潮社、1989
- 森山啓 石川近代文学全集9、森英一評伝、解説、石川近代文学館、1985
- ふるさと石川の文学、金沢学院大学文学部日本文学研究室編、北國新聞社、2003
- 少年時代の画集、森忠明文、藤川秀之挿絵、講談社、1985
- 「生き残った傲慢さに耐えかねる苛立ち」
- おとなになれなかった弟たちに…‥、米倉斉加年文・絵、偕成社、1983
- 裏庭(1996)、梨木香歩、河合隼雄(解説)、新潮文庫、2001
- 鉢かつぎ、あまんきみこ文、狩野富貴子絵、西本鶏介監修、ポプラ社、2004
- Goodnight, My Angel: A LULLABYE, lyrics by Billy Joel, illustrated by Yvonne Gilbert, Scholastic Press, 2004
- The Saddest Time, written by Norma Simon, photographs by Jacqueline Rogers, Albert Whitman & Company, 1986
- 岸辺のふたり(Father and Daughter, Michael Dudok de Wit)、うちだややこ訳、くもん出版、2004
- 悲しい本(Michael Rosen's SAD BOOK, written by Michael Rosen, illustrated by Quentin Blake)、谷川俊太郎訳、あかね書房、2004
- 『岸辺のふたり』と『悲しい本』について
- ジェニー・エンジェル(Jenny Angel, written by Margaret Wild, illustrated by Anne Spudvilas)、もりうちすみこ訳、岩崎書店、2001
- 吉田満著作集(上下)、文芸春秋、1986
- 「戦後」が失ったもの、戦争とは何だろうか 鶴見俊輔座談、晶文社、1996
- 雨ふり花 さいた、末吉暁子文、こみねゆら絵、偕成社、1998
- 弔いの哲学 シリーズ 道徳の系譜、小泉義之、河出書房新社、1997
- 土佐日記(935頃)、紀貫之、鈴木知太郎校中、岩波文庫、1979
- 田村隆一エッセンス、青木健編、河出書房新社、1999
- 星に帰った少女(1977)、末吉暁子、こみねゆら絵、偕成社、2003
- レヴィナス 何のために生きるのか、小泉義之、日本放送出版協会、2003
- 未完の菜園 フランスにおける人間主義の思想(Le jardin imparfait: la penseé humaniste en France, Tzvetan Todorov, 1998)、内藤雅文訳、法政大学出版局、2002
- If Nathan Were Here, written by Mary Bahr, illustrated by Karen A. Jerome, Eerdmans, 2000
- 夕凪の街 桜の国、こうの史代、双葉社、2004
- 死者と生者のラスト・サパー、山形孝夫、朝日新聞社、2000
- 藤村随筆集、十川信介編、岩波文庫、1989
- 徴候・記憶・外傷(sign, memory, trauma)、中井久夫、みすず書房、2004
- 西田幾多郎の世界、石川県西田幾多郎記念哲学館、2004
- 西田幾多郎の憂鬱、小林敏明、岩波書店、2003
- 西田幾多郎の思想、小坂国継、講談社学術文庫、2002
- 記念日反応
- 生きるかなしみ、山田太一編、ちくま文庫、1995
- 二月最初の金曜日
- 奇妙な風景
- ある土曜日のこと
- 日本人の死生観を読むーー明治武士道から「おくりびと」へ、島薗進、朝日新聞出版、2012 3.18.12
- 働きすぎに斃れて――過労死・過労自殺の語る労働史、熊沢誠、岩波書店、2010
- 「もう、うんざりだ!」 自暴自棄の精神病理、春日武彦、角川SSC新書、2011
- 癒しとしての痛み―愛着、喪失、悲嘆の作業(Den nodvendlige smerte, 1987, Healing pain: attachment, loss, and grief therapy, Nini Leick, Marianne Davidsen-Nielsen, 1991)、平山正実監訳、長田光展訳、岩崎学術出版社、1998
- 自死遺族を支える、平山正実、エム・シー・ミューズ、2009
- さよならも言わずに逝ったあなたへ―自殺が遺族に残すもの(No Time to Say Goodbye: Surviving the Suicide of a Loved One, Carla Fine, 1999)、飛田野裕子訳、扶桑社、2000
- 家族・支援者のための うつ・自殺予防マニュアル、下園壮太、河出書房新社、2006
- 秘密の観点(1973)、土居健郎選集 8、土居健郎、岩波書店、2000
- 二月第一金曜日
- 喪の悲しみ (Le deuil, Marie-Frederique Bacqué et Michel Hanus, 2010)、西尾彰泰訳、白水社、2011
- 悲しみを抱きしめて グリーフケアおことわり、吉田利康、日本評論社、2013
- 死別を体験した子どもによりそう—沈黙と「あのね」の間で、西田正弘・高橋聡美、梨の木舎、2013
- 悲しみを求める心、尾崎翠、定本 尾崎翠全集(上・下)、稲垣真美編、筑摩書房、1998
- 餃子をつくる
- Saving 10,000 Winning a War on Suicide in Japan(自殺者1万人を救う戦い)、directed by Rene Duignan, 2013
- 心に傷をうけた人の心のケア―PTSDを起こさないために(Understanding your Reaction to Trauma, Claudia Herbert, 1996)、勝田吉彰訳、保健同人社、1999
- 時間薬なんてない
- グリーフケア入門: 悲嘆のさなかにある人を支える、高木慶子・上智大学グリーフケア研究所編著、勁草書房、2012
- 悲嘆の中にある人に心を寄せて -人は悲しみとどう向かい合っていくのか- 、高木慶子・山本佳世子、ぎょうせい、2014
- 「最後の手紙」について
- 寒梅忌
- 一人で、それから三人で
- 回復するちから 震災という逆境からのレジリエンス、熊谷一朗、星和書店、2016
- 寒梅忌
- 公認されない死
- 自死は、向き合える――遺族を支える、社会で防ぐ、杉山春、岩波ブックレット、2017
- 自死遺族の癒しとナラティヴ・アプローチ―再会までの対話努力の記録、吉野淳一、共同文化社、2014
- 自死と遺族とキリスト教: 「断罪」から「慰め」へ、「禁止」から「予防」へ、土井健司編、新教出版社、2015
- 自殺で遺された人たちのサポートガイド―苦しみを分かち合う癒やしの方法―(Healing After the Suicide of a Loved One, Ann Smolin, John Guinan, 1993)、柳沢圭子訳、高橋祥友監修、明石書房、2007
- 敦香祭
- 自死について
- フィルムコンサートの思い出
- 美しい自死なんてない
- 敦香祭
- ともに悲嘆を生きる グリーフケアの歴史と文化、島薗進、朝日選書、2019
- 悲嘆学入門 死別の悲しみを学ぶ、坂口幸弘、昭和堂、2011
- 希死念慮について
- 悲嘆(グリーフケア)の絵本
- 好きだった人
- もう一つのAではじまる日記
- カミングアウトについて
- 親と死別した子どもたちへ ―ネバー・ザ・セイム 悲嘆と向き合い新しい自分になる―(Never the Same: Coming to Terms with the Death of a Parent, Donna Schuurman, 2003)、松下弓月監訳、西尾温文ほか訳、島薗進監修、佼成出版社、2020
- 悲しみの乗り越え方、高木慶子、角川oneテーマ21新書、2011
- 寒梅忌
- 親と死別した子どもたちへ ―ネバー・ザ・セイム 悲嘆と向き合い新しい自分になる―(Never the Same: Coming to Terms with the Death of a Parent, Donna Schuurman, 2003)、松下弓月監訳、西尾温文ほか訳、島薗進監修、佼成出版社、2020
- 自助グループについて
- 自死で大切な人を失ったあなたへのナラティブ・ワークブック、川島大輔、新曜社、2014
- 敦香祭
- 君の膵臓をたべたい、住井よる原作、吉田智子脚本、月川翔監督、浜辺美波、北村匠海、小栗旬、北川景子ほか出演、東宝、2017
- 『君の膵臓をたべたい』に学ぶグリーフ・ワーク
- 自殺者の遺族として生きる - キリスト教的視点(Fierce Goodbye: Living in the Shadow of Suicide, G. Lloyd Carr, Gwendolyn C. Carr, 2004)、川越敏司、新教出版社、2010
- 自死遺族として生きる 悲しみの日々の証言、若林一美、青弓社、2021
- カウンセリング、初回
- カウンセリング、二回目
- 餃子の思い出
- 君は月夜に光り輝く、佐野徹夜原作、月川翔脚本・監督、北村匠海、永野芽郁ほか出演、伊藤ゴロー音楽、東宝、2019
- 寒梅忌
- 敦香祭
- 凍りついた香り(1998)、小川洋子、幻冬舎文庫、2001
- 自死遺族の文学について
- 「自殺」か「自死」か
- 公認されない死
- 語り継ぐということ
- 死者を巡る「想い」の歴史、山本幸司、岩波書店、2022 2.5.23
- 寒梅忌
- 自殺の思想史 - 抗って生きるために(Stay: A History of Suicide and the Philosophies Against It, Jennifer Michael Hecht, 2013)、沢李歌子訳、みすゞ書房、2022
- 敦香祭
ブクログ:自死遺族