硝子の林檎の樹の下で 烏兎の庭 第四部
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2012年10月


10/6/2012/SAT

iPhoneの新型が発表された。機種変更に追加費用がかからないので、すぐに手に入れようと思ったところ、中国の製造工場でストライキが起きているというニュースを聞いた。

10月1日は中国では国慶節。1週間近く休業する会社も多い。一方、この時期は年末商戦に向けたくさん製品を作りだめしなければならない時期でもある。この工場は国慶節に1日にしか休日を与えなかったという。また追加の残業や、品質基準を厳しくする指示などがあり、従業員の鬱憤が爆発したらしい。経営側は否定しているものの、何らかのトラブルは起きている模様。


これまで日米欧の企業は安い人件費をめあてに中国に生産拠点を広げてきた。中国はこの数年間、毎年8%という高い成長率を保ってきた。働き口ができて、所得が増えれば、生活水準も上がる。当然のこと。生活水準が上がった人たちはよりよい労働環境やより高い賃金を求める。これも道理。

日米欧の企業は自国内で生産コストが高くなったから、中国へ拠点を移した。その中国が成長すれば、人件費は当然高くなる。その要求を無理に押さえ込もうとすれば、ストライキなどの衝突が発生するのも必定。

賃金を上げ、製品の価格も上げるか。それとも、製造拠点をより人件費の安い場所——中国の奥地やミャンマーなど——に移すか。後者の場合、準備に時間がかかり、しかも、いずれは同じ問題に直面する。

技術革新で製造コストが安くなるのなら大歓迎。賃金を抑えて製品を安くする方法は感心できない。


iPhone 5への機種変更はしばらく見合わせる。「人道的見地」という言葉は大袈裟かもしれない。ただ、電話を見るたび劣悪な環境で働いている人々を思い浮かべるようでは楽しくない。最近、流行気味の言葉「ワクワク感」どころではない。

テレビではいつも笑顔のアイドルが、実は過密スケジュールで過労状態などと聞くと、笑顔が痛々しく見ていて辛い。

従業員が過労死するような居酒屋には行かないことも同じ理由。悲惨な光景を思い浮かべてしまうような場所で楽しく酔えるはずがない。


10/13/2012/SAT

季節の変わり目にくる恒例の「変調」。異常な高熱というわけではないのに、悪寒がする。何をする気もなく、布団のなかでじっとしている。

しばらく調子がよかった。ここ数年なかった清々しい気分は期待していたほど長くは続かなかった。まあ、ふさぎこむことはない。またいい気分が戻ることもあるだろう


10/15/2012/MON

会社ではそれなりに元気にしている。それでいて、帰りのバスを降りた途端、どんよりした気分になり、週末は何もせずに寝てばかり。俗に言う「新型うつ」とは正反対。

かかりつけのS先生に訊ねてみると、「それが普通のうつ病です」とあっさり返された。世間を賑わせている新型とは違うことを知り安堵したような、正式に病人と宣告されたような、複雑な気分。


10/18/2012/THU

最近の新書は専門家と呼ばれる人が書いていても安心できない。学会の最先端から脱落したので仕方なく一般向けの仕事をしている研究者や、まだ若いものの売りになる属性があるので出版社に持ち上げられている場合もある。

近頃の新書は、かつてのように、その筋で第一人者と呼ばれる人が一般向けに噛み砕いて書いた作品とは違う。


10/20/2012/SAT

marinba spiritual、三村奈々恵、ソニー、2009

Still Working、山中千尋、ユニバーサル、2012

図書館で偶然、見つけた2枚。手にとって理由は、三村のアルバムにはバッハ作曲「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ第2番 BWV1004」の5曲目「シャコンヌ」が入っていたから。

マリンバというと、私にはさだまさし「胡桃の日」(『帰去来』、ワーナー、1976)、特にライブで前面に出る宅間久善のマリンバ。この曲でのマリンバは、激しく叩く、音程のあるパーカッションという感じ。

「シャコンヌ」は技巧的で、早弾きの部分があるので、激しい演奏と予想していたら、いい意味で裏切られた。このアルバムでのマリンバは優しくて温かい。マリンバに対する私の先入観を覆す、おおらかで、広がりのある演奏だった。

山中千尋は、名前も知らなかった。デッカとも契約した、新進気鋭のジャズ・ピアニストらしい。彼女のアルバムを手に取ったのは、収録曲にはピアノだけではなく、オルガンとフェンダー・ローズが入っていたため。想像どおり、新しい作品ながら、どことなく懐かしい雰囲気があった。

70年代後半から80年代初頭に流行した日本のニューミュージックや米国のAORにはローズや、素人にはわからないものの、ローズのようなリバーブの多いキーボード——当時は単純にエレクトリック・ピアノとも呼ばれていたかもしれない——の音色を使った作品が多かった。

私のお気に入りは、これもまた、さだまさし「フェリー埠頭」1978)とオフコース「汐風のなかで」(1979)。オフコースの作品は、ほとんど小田和正の作詞作曲だけど、私の一番のお気に入りは鈴木康博が作詞作曲したこの歌。

二曲とも、いわゆる「エレピ」のゆらゆらした音色が心地よい。どちらも海を舞台にしているので、静かな波が思い浮かぶ。


思い出してみると、小学校に入学したときの、最初の担任の教員が「やまなかちひろ」先生だった。「ちひろ」の漢字は違う。一年生の夏休みに街の中心から郊外へと転校したので、入学した小学校には一学期しかいなかった。顔は忘れてしまったけれども、名前はいまでも覚えていた。


ほんとうは、読み終えた本の感想を書くつもりだった。書きはじめたものの、まとまらなかったので、先送り。ソースには下書きが残してある。


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uto_midoriXyahoo.co.jp