土を掘る 烏兎の庭 第三部
表紙 > 目次 > 箱庭  > 前月  >  今月  >  翌月

2008年3月


3/22/2008/SAT

新しい文章は書いていないけれど、前に書いた文章を読み返しては書きなおしたり、書き加えたりしている。

昨年12月に書いた『黙読の山』と『紙しばい屋さん』の書評に、『ルリユールおじさん』を追加し、文章も加筆した。

気に入ることがなかった本の感想を書くのは、あまり気が進まない。でも、いつまでも気になっているので、書いて忘れることにした。書けば忘れてしまうこともあれば、書けば書くほど、忘れるどころか、思い出がくりかえし甦ってくることもある。

次に書評を書く本は決めてある。感想は少しずつメモ書きしている。文章はまだ書きはじめていない。

書評を書こうと思うとき、私は余裕があれば三回その本を読む。一度目は、ただ読み流す。付箋も傍線もつけない。二度目は、気になったところを探してそこだけ読み返す。今度は付箋をつけたり、買った本なら蛍光ペンを引いておく。

三度目は、読むつもりもなくページを繰る。付箋をつけたところでも読み返そうと思わなかったところは付箋をはずす。最後に付箋が残ったところを引用データベースに転記する。

こうして読んでみると、印をつけていなくても、心にひっそり残っている文があることに気づく。そういうところに気づくためには、時間を置いてから読みなおす必要がある。

字の本を読むことが苦痛なときには、眺める本を借りてくる。以下、最近、図書館から借りてきて眺めた本。

何度も読んでいるなじみのテーマの本を眺めていると、何となく気分も落ち着いてくる気がする。

写真は、逆光に立つ梅の木。


3/29/2008/SAT

自転車を買った。古くなった前の自転車を捨ててから、歩きとバスだけになり、気持ちだけでなく、散歩の範囲も狭くなっていた。

初乗りで桜を見に、少し遠くまで出かけてみた。何かしてみようという気持ちになるのだから、ずいぶん回復してきたと自分でも思う。二週続けて文章を書くことができていることにも、安心するより我ながら驚いている。

自転車をこぎだすとつい口ずさむ歌がある。

飛び出せ おお 走ろう  おお 今日から明日へ
わんぱく坊主 ガキ大将

子ども向けのテレビドラマ『少年探偵団』の歌。少年探偵団は“BD7”と言われていた。江戸川乱歩の原作には一冊も手をつけなかったくせに、この番組はかかさず見ていた。後主題歌の背景は、少年たちが自転車で走り続ける姿。

最終回であきらかにされた怪人二十面相の正体は、演じている俳優、団次郎その人だった。まさかの結末にあっけにとられたことをよく覚えている。

いま調べてみると、脚本と主題歌作詞は、上原正三。最近まで名前さえ知らなかっただけで、正義、友情、秘密、根性などの言葉は、私のなかで上原の作品から強く影響を受けているのかもしれない。

今週は、石ノ森章太郎の没後10年の記念番組で『秘密戦隊ゴレンジャー』『仮面ライダー』『人造人間キカイダー』、『怪傑ズバット』『がんばれ!ロボコン』など、いずれも原作は石ノ森で、テレビ版では上原が脚本を書いた作品をまとめて見た。

新しい文章はまだ書き出せないでいるけれど、庭掃除は進んでいる。気づかないままつながっていなかった点と点のあいだにも少しずつ補助線を引いている。今週は『庭』のファビコンもつくった。

リンクの追加のほか、『土佐日記』に私の古文の師、土屋博映先生の名前を入れた。土屋先生の講義では、身になる話も多かったけれど、雑談や歌も多かった。

「銭形平次」の替え歌で「男だったらツチヤに賭ける」と聞いたのは22年前のちょうど今ごろのこと。

新しい自転車は、深い緑色のフレームに一文字のハンドル。ハンドルの右側に6速の変速機がついている。「BD7」を歌っていた頃に乗っていた自転車は、モンテカルロという名前のサイクリング車。オレンジ色のグリップで最新型の5段変速機がついていた。シンクロ・メモリーと呼ばれたその変速機をザ・ドリフターズが宣伝していた。

今度買った自転車は、あの時買ってもらった自転車の半分の値段だった。


写真は、若木に咲いた桜。

さくいん:上原正三『秘密戦隊ゴレンジャー』紀貫之土屋博映


表紙 > 目次 > 箱庭  > 前月  >  先頭  >  翌月

uto_midoriXyahoo.co.jp