福井の民家

初めて福井を訪れる者にとって、九頭竜川の沖積平野として拓けた福井平野の田園風景の美しさは驚嘆に値するものであろう。全国に農村地帯は数多くあれど、これほど広範囲にわたって古の集落景観が残されている地域は余りない。余程に豊かなのか、余程に頑固なのか、少なくとも今もって地に足が着いた生活を送っていることが容易に想像できる風情であることは間違いない。
坪川家住宅 国指定重要文化財 (昭和41年6月11日指定)
福井県坂井郡丸岡町上竹田30-11
建築年代/江戸時代(17世紀中頃)
用途区分/農家
指定範囲/主屋
公開状況/公開
福井県を代表する民家建築である。福井平野の北東方向に連なる山中に所在し、茅葺屋根が覆い被さり、家全体が自重で押し潰されるのではないかと思われる程の重厚感は類を見ないものである。室内に足を踏み入れると不整形で黒光りする柱や桁梁に圧倒される。その独特の雰囲気は、「千古の家」とも呼称されるが、もっともなことである。当家の祖先は北面の武士で源三位頼政の後裔とされており、当地には約700年前に定住したというから恐れ入る。主屋自体は350年前頃の建築と推定されるが、格段に古風な造作は、明らかに近世民家とは異質なものである。
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相木家住宅 国指定重要文化財 (昭和44年12月18日指定)
福井県丹生郡宮崎村小曽原26-44
建築年代/江戸時代(18世紀前半)
用途区分/農家(庄屋)
指定範囲/主屋
公開状況/公開
武生の西方に位置する比較的起伏の緩やかな山間部に所在する旧庄屋屋敷である。街道に西面して建つ長大な長屋門や門越しに窺える松の老樹林は、この地で長く歴史を刻んできた旧家の証左として、厳かな舞台装置に相応しい演出である。県内でこれほど格式を高く保つ屋敷構えは稀であろう。一方、主屋は周辺地域の上層農家が棟を直交させて破風を突き出す角屋造を採ることが多い中、地味な直屋造とする。中世の越前守護職にあった朝倉家の重臣として由緒正しい家柄と伝えられる当家の場合、殊更に虚勢を張る必要がなかったのかもしれない。
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谷口家住宅 国指定重要文化財 (昭和52年1月28日指定)
福井県越前市余川町25-17 (昭和53年移築)
旧所在地・福井県越前市横山町
建築年代/文化5年頃(1808)推定
用途区分/農家
指定範囲/主屋
公開状況/公開
広大な福井平野の南限となる旧武生市に所在する農家建築で、現在は「越前の里」と称する歴史公園の一画に移築保存されている。東西棟の主屋の西半で角屋を南北に突出させT字型の平面とする建前で、福井県内の上層農家に散見される角屋造のもっとも発達した事例とされている。浄土真宗の盛んな越前地方の民家らしく二間幅の大型の仏壇を備え、寒冷対策として土座を残す点など見所は多いが、中でも角屋が附属する主屋西側で6室もの部屋が一列に並ぶ様は壮観である。
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堀口家住宅 国指定重要文化財 (昭和44年12月18日指定)
福井県今立郡池田町稲荷32-17
建築年代/江戸時代(18世紀初頭)
用途区分/農家(庄屋)
指定範囲/主屋
公開状況/公開
JR武生駅から東に15km程の山間部に所在する農家建築である。池田町は県都・福井市を横断する足羽川の源流部に位置し、山中ながら意外にも中世からの歴史を色濃く残すことで知られる場所である。当家も延徳3年(1491)建築の本殿が残る須波阿須疑神社の十二軒衆のうちの1軒とされ、かつては庄屋を務めたとされる旧家である。住宅には土間に籾殻を敷き、その上に藁を並べて筵を敷き詰める「土座」が残り、叉柱と称される上部で枝分かれした柱が各所に用いられるなど古式を伝える。
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橋本家住宅  国指定重要文化財 (昭和44年12月18日指定)
福井県大野市宝慶寺字笠松7(移築)
旧所在地/福井県大野市宝慶寺
建築年代/江戸中期(18世紀前半)
用途区分/農家(庄屋)
指定範囲/主屋
公開状況/公開
福井県東部の旧城下町・大野市南郊の山中に曹洞宗大本山永平寺に次ぐ第2道場宝慶寺がある。当住宅はこの門前集落に所在していた旧庄屋宅であるが、国の文化財に指定後、保存管理の目的から宝慶寺山内に移築されている。主屋右手の大戸口から内部に足を踏み入れると床面積の2/3を占める広大な土間が広がっているが、本来ここは籾殻の上に蓆を敷き詰め土座として使用していた場所で、厩脇の丸太で仕切った僅かな空間が本来の土間で「ハクモンバ」と称されるらしい。
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木下家住宅 国指定重要文化財 (平成22年6月29日指定)
福井県勝山市北郷町伊地知5-3
建築年代/天保10年(1839)
用途区分/農家(庄屋)
指定範囲/主屋
公開状況/公開
九頭竜川に沿って福井市街から勝山方面に向かう途中の山裾に上野という小集落がある。当家はこの地で代々甚右衛門を名乗り庄屋役を務めたという旧家で、屋敷東側の道路境界に人頭程もある玉石垣を築き、屋敷地のかなり奥まった位置に茅葺の重厚な主屋が鬱蒼とした屋敷林に囲まれてひっそりと佇む様子は実に厳かなものである。主屋は当地方の上層農家に共通する角屋造の形態を採り、妻入の主屋下手に厩と台所を左右に突き出す造作は特に両袖造と称するものらしい。
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瓜生家住宅 国指定重要文化財 (昭和44年12月指定)
福井県鯖江市水落町 (神明社境内)
建築年代/元禄2年(1689)
用途区分/社家
指定範囲/主屋
公開状況/公開
瓜生家は代々、神明社の神職を務めた社家で、昭和50年に神明社の境内地に移築される前は、神明社と北陸街道を挟んだ向い地に所在していた。茅葺妻入の建物で、外観は一般農家と殆ど変わらないが、土間に面して板の間を設け、そこに側方向から式台を設けて玄関とする造作は格式高い社家建築の特徴である。



 
中村家住宅 国指定重要文化財 (平成27年7月8日指定)
福井県南条郡南越前町河野
建築年代/明治20年(1887)
用途区分/北前船主
指定範囲/主屋・新座敷・背戸蔵・新蔵・西蔵・バンゲ蔵・前蔵・米蔵・塩物蔵・浜蔵・正門・土地
公開状況/非公開



柴田家住宅 国指定名勝 (昭和7年4月19日指定)
敦賀市指定史跡 (平成11年2月1日指定)
福井県敦賀市市野々町1-18-2
建築年代/文化2年(1805)
用途区分/農家(郡百姓惣代・庄屋)
残存建物/書院・土蔵・塀
公開状況/公開
嶺南地方の中核市・敦賀の南郊に所在する郡中第一と謳われた豪農屋敷である。当家は江戸初期に当地の新田開発を請け負い、その後の寛文2年(1662)に現在地に屋敷を構えた。「甘棠園」と別称される庭園は邸内の天然記念物に指定されるヤマモモの古樹に由来するとされているが、本来、甘棠とは山ブドウの一種らしい。富士山にも似た野坂山を借景に整備された庭園は一般の農家身分では到底許されない規模のもので、主屋は失われているが、池畔には品格のある書院が残っている。
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荻野家住宅 福井県指定文化財 (平成23年3月25日指定)
福井県三方上中郡若狭町熊川38-17
建築年代/文化8年(1811)頃
用途区分/商家(問屋)
指定範囲/主屋・表荷蔵・後荷蔵・文庫蔵
公開状況/非公開
日本海に面する小浜の町と京都を結んだ若狭街道は鯖街道とも別称され、かつては京の都への食糧供給路として重要な役割を果たした。街道の宿駅として若狭地方への出入口の役割を担ったのが熊川宿で、当家は宿内で物資の人馬継立問屋を営んだ商家である。屋号を「倉見屋」と称し、街道に南面する短冊状の屋敷地の正面に主屋を構え、敷地西側に通路を挟んで表荷蔵と裏荷蔵を前後に並べ、当地方の標準的な問屋住宅を形成する。また当住宅は県内最古の町家建築である。
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田村家住宅 大野市指定文化財
福井県大野市



逸見家住宅 旧上中町指定文化財 (平成7年1月13日指定)
福井県三方上中郡若狭町熊川30-3-1
建築年代/江戸時代
用途区分/商家(酒造業)
指定範囲/主屋
公開状況/公開
若狭街道の宿駅・熊川は恐らく県内随一の町並であろう。平成8年に国の重伝建地区に選定されて以来、随分と年月を経たが観光地化も進まず良い塩梅で往時の風情を保っている。当住宅はその熊川宿に所在する町家建築であり、伊藤忠商事の2代目社長を輩出した家として地元では知られる。平成5年頃に建物の寄付を受けた旧上中町により外観を維持しつつ、内部を大幅に改変し現代生活に適合させる再生モデル事業が施され、残念ながら文化財としての価値は大きく損なわれている。
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京藤家住宅 旧今庄町指定文化財
福井県指定文化財 (平成22年4月29日指定)
福井県南条郡南越前町今庄68-35
建築年代/天保年間(1830-44)
用途区分/商家(造酒業)
指定範囲/主屋
公開状況/非公開
江戸時代、京都から北陸地方に向かうには北国街道を北上した。近江との県境となる栃の木峠を越えて越前の国に入ると、そこは北陸の玄関口と称された今庄宿である。天保年間の記録では旅籠55軒、茶屋15軒、酒屋15軒もあったというから、かなり規模の大きな宿場である。当住宅は町の中程に所在する町家建築で、往時は造り酒屋を営むとともに脇本陣格を務めたとのことである。宿場内には今でも豪商家が数軒残っているが、当家のような本卯建を上げる造作は他には見られない。
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安達中屋家住宅 池田町指定文化財 (昭和62年9月11日指定)
福井県今立郡池田町下小畑9-15
建築年代/宝暦3年(1753)
用途区分/山村農家(大庄屋)
公開状況/非公開 【地元自治体により解体されました】
池田町を縦断する足羽川の支流・部子川沿いに所在する間口9間半、奥行き7間半の県下最大級の床面積を誇る山村農家建築である。当家は下池田地域を統括した旧大庄屋を務めた家柄で、周囲に茅葺農家が点在する中で、手間暇のかかる榑板で屋根を葺く外観は、財力の裏付けなくしてはできない造作である。豪雪地帯の民家らしく、庇の軒下が高く、壁は重厚な土壁で土蔵造的な様相を呈している。主屋の西方に土蔵を設け、蔵前を板塀で囲む独特の屋敷構えも興味深い。
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酒井家住宅 登録有形文化財 (平成23年1月26日登録)
福井県鯖江市下深江町116
建築年代/明治43年(1910)
用途区分/商家
登録範囲/主屋・土蔵
公開状況/非公開


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瀧波家住宅 登録有形文化財 (平成25年3月29日登録)
福井県鯖江市本町3-232
建築年代/明治20年(1887)
用途区分/商家
登録範囲/主屋・大蔵・道具蔵・離れ座敷
公開状況/非公開


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あめや呉服店 登録有形文化財 (平成19年12月5日登録)
福井県鯖江市本町3-206
建築年代/大正2年(1913)
用途区分/商家(呉服店)
登録範囲/店舗兼主屋・西蔵・東蔵
公開状況/店舗として営業中

 
斎藤家住宅 登録有形文化財 (平成28年11月29日登録)
福井県鯖江市舟津町4-1421
建築年代/江戸後期
用途区分/
登録範囲/主屋・門柱・米蔵・新蔵・中蔵・離れ・東門・小屋
公開状況/非公開


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幸道家住宅 登録有形文化財 (平成20年10月23日登録)
福井県鯖江市田所町9字北川瀬山11 
建築年代/昭和12年(1937)
用途区分/
登録範囲/主屋・離れ
公開状況/非公開


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竹内家住宅 登録有形文化財 (平成21年1月8日登録)
福井県鯖江市杉本町1字清水添38-1
建築年代/昭和5年(1930)
用途区分/養蚕農家
登録範囲/主屋
公開状況/非公開


大橋家住宅  登録有形文化財 (平成23年10月28日登録)
福井県鯖江市
建築年代/明治後期
用途区分/庄屋
登録範囲/主屋・表門・土蔵
公開状況/非公開


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若狭屋 録有形文化財 (平成23年7月25日登録)
福井県南条郡南越前町今庄75字東中町13
建築年代/江戸時代末期
用途区分/旅籠
登録範囲/主屋
公開状況/非公開
北陸地方への玄関口となる北国街道の宿場町・今庄に所在する旅籠建築である。県の文化財に指定されている京藤家住宅の3軒隣に位置しているが、建物の外観はかなり両者で異なっている。現在、鉄板で覆われている屋根は、そもそもは榑板葺に石置き屋根であったらしく、壁面も木部が露出する真壁造である。また卯建は目隠し程度の袖卯建で、かなり簡素な造作である。当住宅は主に一般庶民が利用した旅籠であったらしく、それに相応しい造作も、宿の歴史を示す貴重な資料であろう。
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山川家住宅 登録有形文化財 (平成20年10月23日登録)
福井県小浜市千種1-16-52
建築年代/明治40年(1907)
用途区分/
登録範囲/主屋・表門・中門・離れ・土蔵
公開状況/公開 【山川登美子記念館】


旧野村家住宅  無指定・公開
福井県大野市和泉朝日24-9 (移築)
旧所在地/福井県大野市和泉村久沢
建築年代/江戸中期(明暦年間と推定される)
用途区分/山村農家
残存建物/主屋
公開状況/公開 【穴馬民俗館】
紅葉の名所として知られる九頭竜湖のJRの駅裏に移築され民俗資料館として活用されている山村農家である。旧所在地の久沢集落が昭和41年の九頭竜ダム建設により地域から分断されたため棄村され、住宅は廃屋寸前の状態になっていたところ、明暦年間にまで遡る貴重な民家ということで保存されることとなった。豪雪地帯の民家らしく軒が高く、屋根の中程には冬季の出入口となる猫窓が設けられている。手斧の痕跡があるものの間取りは比較的整っており、さほど古い建物とは思えない。
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内山家住宅 登録有形文化財 (平成30年5月10日登録)
福井県大野市城町10-7
建築年代/明治15年(1882)
用途区分/武家(大野藩家老)
登録範囲/主屋・離れ・味噌蔵・衣裳蔵・米蔵・門
公開状況/公開
県東部の城下町・大野に所在する上級武家屋敷の系譜を引くと云われる住宅である。当家は幕末の大野藩の藩政改革に活躍した内山良休、隆佐兄弟を輩出したことで知られる名家で、兄の良休は藩直営の地場産品販売、面谷銅山開発により藩財政の立て直しに成功、弟の隆佐は蝦夷地開拓の先鞭を付けたことで知られる。住宅は明治期の主屋と大正期の離れを中心に多数の土蔵が配されており、廃藩置県後においても地域経済の重鎮として活躍した当家の威勢を今に伝えている。
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右近家住宅 無指定・公開
福井県南条郡南越前町河野2-15
建築年代/明治34年(主屋)
用途区分/北前船主
指定状況/背後の山上にある洋館のみ登録有形文化財。
公開状況/公開 【北前船主の館】
敦賀の北方、敦賀湾に面する海岸沿いの小集落・河野浦に所在する大規模な北前船主の邸宅である。当家は江戸中期から大坂と蝦夷地を結ぶ北前船主として活躍し、最盛期には三十数隻もの廻船を所有し、日本海五大船主の一人に数えられたという名家である。屋敷は背後に山が迫る海岸沿いの狭小な土地に、邸内を縦貫する道を挟んで山側に主屋や土蔵三棟、茶室等を、海側に長屋門の他に土蔵四棟を配する独特の配置となるが、かつては屋敷の際まで海浜であった故の事である。
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