堀口家住宅 Horiguchi |
国指定重要文化財 (昭和44年12月18日指定) 福井県今立郡池田町稲荷32-17 広大な福井平野を形成する九頭竜川の支流に、岐阜県と福井県の境に所在する標高1617mの冠山に端を発し、山間を激しく蛇行したのち福井城下を横断する足羽川という大河がある。その足羽川の流れに沿って山間部に僅かに拓けた平地には早くから人が住みついたようで、現在に至るまで独特の文化を継承してきた。周辺の旧家や神社には室町時代の能面や能装束が数多く保管されるなどは、その証左である。 さて、当家は集落の中心となる稲荷地区の須波阿須疑神社の北方500mほどの山麓に所在する農家建築である。 南北に流れる足羽川の東岸の少しばかり小高い場所に南面して建てられた主屋は桁行12.3m、梁間9.1mの中規模なもので、ツノヤを設けない直屋である。地域の産土神である須波阿須疑神社の十二軒衆の一軒であったとの来歴から、かなり古い歴史を持つ旧家であったと推察されるが、江戸時代には庄屋役を務めたこともあったようである。 当住宅は、そもそもは現在地から約1km離れた足羽川西岸の寺谷集落にあったものを18世紀前半に移築したと伝えられるが、建築年代も18世紀初頭と推測されている。 向かって左手に大戸口を設け奥まで土間が続く。右手カミ側にオイエ・カミノマ・ナカノマの3室が設けられるが、オイエは完全に土座となっており、シモ側の土間と一体化した空間は山間寒冷地の造作として新鮮である。股柱を多用し、豪壮な柱・梁・桁の架構は圧倒的である。 残念なことに近年、主屋前庭の畑であったところがアスファルト舗装されてしまい、全く風情を失している。維持管理も大変であろうが、元の状態に戻すほうが宜しいのではないかと老婆心ながら思う。(2010.9.12記) |