柴田家住宅
Shibata



国指定名勝 (昭和7年4月19日指定)
敦賀市指定文化財 (平成11年2月1日指定)
福井県敦賀市市野々町1-18-2

敦賀市中心部から南西に郊外へ向かう幹線道路を走って行くと道路に面して大きな森のような屋敷が見えてくる。森厳とした門前の雰囲気と脇に建つ「甘棠園」と刻まれた石碑に誰しもが只ならぬモノを感じるに違いない。
当住宅は江戸時代初期の新田開発により財を成し、郡中第一の豪農として著名であった柴田家の本宅である。貞享元年の検地で実高95石余を保有し、郡百姓惣代の家格を与えられ、庄屋役を務めたとされる当家ではあるが、その屋敷規模は敷地面積約2800坪にも及び、さらに周濠を廻らすなど半端なものではない。
残念ながら、現在の当屋敷には主屋建物が失われ、基礎石列が並ぶのみとなっており昔日の面影は若干失われてはいる。しかしながら藩主の休憩施設として用いられたと伝えられる文化2年(1805)建築の書院と、これに面して築造された広大な庭園が今も残され、訪れる者を過去の世界へと誘ってくれる。庭園は野坂山を借景とする回遊式林泉庭園に区分されるもので、書院前の苑池の縁には玉石を敷いて磯浜の趣とする。江戸期の厳しい身分制度による家作制限があった時代に、庭園を造作することなど更に難しいことであったに違いないが、百姓身分でありながらこれほどまでに規模の大きな庭園を持つことが許されたとは驚きである。
当家は昭和7年に屋敷南西部の書院と池泉庭園部が国の名勝に指定され、早くから注目される存在であったが、平成19年には周濠部も含めた屋敷全体が追加指定された。本来、建造物主体に紹介する当HPではあるが、これほどまでの屋敷構えは類例少なく、稀有な例として紹介させていただく次第である。(2010.9.12記)




一覧のページに戻る