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「花の心・風の姿」 (第7回原稿 7月27日(火)・産経新聞掲載) 


 今年も早いものであっという間に八月が目の前となりました。本当に暑い日が続いております。天気予報を聞いても「今夜も熱帯夜。そして明日も真夏日にな<ります…」と毎日ウンザリします。さぞかし皆さんも「涼」を求めていらっしゃ<
る事と思いますが、その「涼」を求めに各地で行われている「薪能」はいかがでしょうか?。
 「薪能」とは屋外に仮設舞台を設営して篝火の灯りのもとで行う能、狂言の公演です。仮設舞台と言っても照明・音響設備も用意されますし、舞台も見所も能楽堂と同じように本格的に設営されます。夕刻に開演し、涼しい風が吹くなか篝火のやわらかな灯りの下での公演。ホールや能楽堂とはまた少し違った幻想的な世界になります。暑いせいか何かとイライラしてしまいますが浴衣などお召しになって、夕涼み、癒しを求めて薪能へ足をお運びいただき「和の涼」を体感されてみては?
 さて、まもなく「お盆休み」がやってまいります。ご実家へ帰省される方や海外旅行へ行かれる方など、とても心待ちにしていらっしゃる事と存じます。この「お盆休み」、私共能楽師も確かにお休みではありますが、実は「忙しいお休み」なのです。と言いますのも盆休みを利用して装束や道具の手入れである『虫干し』『糊付け』を行うからです。『虫干し』は日頃使う装束、面、お道具はもちろん、滅多に使用されない物まで全て一度風にあてます。『糊付け』は麻製の装束に施します。お湯で溶いた糊をハケで丁寧に塗りパリッとさせますが、糊の濃度は各家でマル秘のようです。糊が濃いとカチカチになりますし、薄いと水分を吸い込むだけで逆にヨレヨレになってしまいます。適切な濃度でしなやかに仕上げなければなりませんが、なかなかこれが思うようには…。四日間ほど掛かりますがこれらの手入れをすることによりカビや虫食いを防ぐこともできますし、糊付けを施した装束はパリッとした良い状態で舞台に使用することができます。

                  
 【善竹隆平】

* 産経新聞夕刊文化面コラム 平成16年6月8日(火)より毎週火曜日夕刊掲載 全15回(途中翌週延期有)
  善竹隆司さん、隆平さんのご好意により、掲載させていただけることになりました。
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