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「花の心・風の姿」 (第6回原稿 7月20日(火)・産経新聞掲載) 


 「能楽は年を重ねた大人が鑑賞するものである。」これもひとつの正論だとは思いますが、若い世代、とりわけ子供には受け入れられないものでしょうか。能・狂言に初めて接する年齢は、いくつからが理想なのでしょうか。今までに学生向けの狂言鑑賞の場は、教科書に狂言が掲載されていたこともあり、中・高校生を中心に昔からありましたが、ここ数年小学校低学年の小さい子供に狂言をお稽古する機会が増えました。周囲の大人達の、まだ難しいのではとの心配をよそに、子供達はとてもいきいきとお稽古しています。狂言の台本は難しい字が多く子供には読めません。しかし、何度も繰り返し台詞を言うことにより、驚くほど短時間で聞き覚えしてしまいます。何より、興味関心があるので、楽しく熱心に稽古する。それが習熟を早める好循環になっているようです。感受性豊かなこの年齢は邪念や既成観念がないので、狂言ならではの独特の台詞まわしや繰り返しの表現が新鮮にうつり、能舞台上に於いても様々な舞台空間をも素直に想像して楽しむ事ができるようです。世阿弥も「風姿花伝」の中で「この芸において、大方七才をもて初めとす」と記しています。これは子供が能役者となるべく稽古を始める年齢が、満6才が理想であるとの事ですが、能楽のみならず、この時期の子供は何事にもすっと入っていける事が、昔からわかっていたようですね。
小さいお子さんのご父兄の方は、まだ小さいからと躊躇せず、今のうちに美術館・博物館・音楽会・それと能・狂言会に是非連れて行ってあげてください。きっといい、「こころのお土産」があると思いますよ。
 それと、前回の擬音表現の答えを記します。「ビョウビョウビョウ」は犬の鳴き声。現在とは違いますが、これは当時の犬が野生の性質が強かったため、骨太な鳴き声だったようです。「ジャンーンモーンモーン」は響きの良い寺の鐘の音。いかがでしたか?。
                  
 【善竹隆司】

* 産経新聞夕刊文化面コラム 平成16年6月8日(火)より毎週火曜日夕刊掲載 全15回(途中翌週延期有)
  善竹隆司さん、隆平さんのご好意により、掲載させていただけることになりました。
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