§.デフレ論議に疑問を呈す
(Is our DEFLATION true ?)

−− 2003.02.27 エルニーニョ深沢(ElNino Fukazawa)
2003.03.21 改訂

 ■はじめに
 ここの所、日本経済は低迷して居ますが3、4年前からですかね、その景気低迷の原因としてデフレ論議(※1)が起こりデフレ・スパイラル(※1−1)という言葉が日常的に飛び交う様に成りました。そして日本経済を立ち直らす為に所謂一つの円安誘導論 −円安にしてもっと日本製品を売り易くする− がマスコミやマスメディアで声高に吹聴され出しました。しかし私はこの議論には前から疑問を持って居ますので、ここで私の考えを確りと述べると同時に私自身としても自分の意見を論理的に纏めて置こうという気持ちに成りました。本当はもっと早くこの原稿を書きたかったのですが、何しろこのサイトを立ち上げたのが昨年の11月20日なので、漸くこれに取り掛かることが出来る段階に来た所です。
 断って置きますが、私は経済学や政治学の専門家ではありませんし、私が全て解っているということでは決して有りませんが、私も会社を経営し乍ら”食って行く”立場ですので、日本の経済や政治は大いに関係有りな訳です。

 ■日本経済の現状認識 − 戦後経済の概観
 先ず今の我が国の経済をどう認識するか、全てはここが出発点です。この認識が違うと、その後の議論の方向性も全く異なって来ます。で、私の分析に拠れば
  現状認識:今の日本経済はデフレでは無く日本経済が成熟した当然の帰結
ということです。この事を戦後の日本経済の発展過程を辿って説明しましょう。
 日本はあの大戦で原爆を浴びて漸く「共同幻想」(△1)から目覚めました。全てを失い無条件降伏した後はGHQ(※2)に依る占領体制の下で文字通り「ゼロからのスタート」を余儀無くされ、再度「後進国」から再出発したのです。その中で1951(昭和26)年に戦勝各国と「サンフランシスコ講和条約」(※3)締結と同時にアメリカと二国間の「日米安保条約」(※3−1)を結んだことは、以後の日本の政治・軍事・経済のみならず日本人の意識迄を根底的に規定した戦後最大の政治的選択或いは”足枷”でした。
 以後アメリカの監督と庇護の下で、日本人は「アメリカ的豊かさ」を目標にガムシャラに働き「発展途上国」に這いずり上がり、1964年の東京オリンピック(東京五輪)と新幹線で国民の士気を高め、「所得倍増」の高度成長(※4)を為し遂げてやっと「先進国」の仲間入りを果たしました、しかし未だ「後発先進国」 −この論考では「後発先進国」と「主要先進国」の区別は重要です− ですが。これを牽引して来たのが、土建業中心の公共投資と重工業から生産される鉄や工業製品を輸出して行くという、官民一体(実態は政府主導)の護送船団「ニッポン株式会社」だったのです。土建業・重工業中心だったのは当然ですよね、だって日本は敗戦直後、空襲で破壊されインフラ(※5)やライフライン(※5−1)が全然無かったのですから。
 東京オリンピック後も高度成長を続けた日本は、1970年にはGNP(※6)がアメリカに次いで第2位 −指標が現在のGDP(※6−1)に切り替わるのは1993年以降− に成りましたが、未だ「後発先進国」です。
 70年代後半には日本の所得と物価が”先進国並み”に高騰し、鉄や工業製品などは価格競争で新興アジア諸国に市場を譲らざるを得なく成って来ました。これは嘗て発展途上期の日本が労働コストの安さに因る製品価格の安さで世界の市場を獲得したのと同じ形で、逆に日本が市場を追われ始めたのです。そこで産業の主体を後発先進国型の「重厚長大」から半導体・コンピュータ関連など主要先進国型の「軽薄短小」(※7)にシフトし、1988年には「1人当たりのGNP」が世界最上位に食い込み、スイスやアメリカと肩を並べて日本はこの時点で名実共に「主要先進国」の仲間入りを果たしたのです。しかし日本はそれに気付きませんでした。

 ■主要先進国の成長型は安定成長
 下の図をご覧下さい。これが戦後から現在(=2003年)迄、そして近未来を概観した日本経済の成長曲線です。現在迄は前述の通り、現在以降は私の予測です。

        <戦後の日本経済の成長曲線>

    ↑
    | 急成長   高度成長     安定成長
    |(後進& (後発先進国)(主要先進国=成熟社会)
    |  途上国)     1988年に主要先進国入り
    |<−−−−><−−−>:<−−−・・・・−−−>
    |  1961<−−>1970 :
    |    所得倍増   : バブル崩壊
    |           : 
    |       <転換期>/|        理想曲線
    |          _/ |___/ ̄ ̄ ̄ ̄
    |         / :▲|\__−−−−−消費税導入が無かった場合
    |      _/ ̄  :消|   \
    |    _/|    :費|   ▲\___現実曲線
    |   /  東    :税|   消  
    |  /   京    :3|   費  |現在
    | /    五    :%|   税  |
    |/     輪    : |   5  |
    |      |    :89|   %  |
    └──────+────+─+───+──+───→
   1945年     1964   1988 1991  1997 2003
   敗戦直後

 上の図で明白でしょう、日本は1980年代の最後の高度成長に依って、実際には「高度成長する後発先進国」から「安定成長する主要先進国(=成熟社会)」(※1−2)に変容して居たのです。私はその変容の時期を前述の様にバブル景気(※8)中盤の1988年頃(=88年は「1人当たりのGNP」が世界最上位に成った年)と見ているので、89年〜90年迄にそれに気付き従来の考え方からの脱皮、即ち「高度成長から安定成長へ」という発想の転換をし図の理想曲線に舵を切る必要が有ったのですが、それに気が付かず相変わらずインフレ誘導(※1−3〜※1−5)の高度成長(=後発先進国型の成長)に固執したことが、あのバブル崩壊というカタストロフィー(破局)(※9)を招いた本質だったのです。何時迄も後進国型や発展途上国型や後発先進国型の「右肩上がり」の急成長や高度成長を続けて行ける訳無いでしょう、常識で考えてみて下さい。
 バブル崩壊は高度成長所か、未だ未だ急成長出来るという「甘い見通し」に拠る過剰融資と過剰設備投資を続けた結果起きたもので、言わば限界を超えて風船に空気を詰め込み過ぎたので、パンクするの当たり前です。そして今の低迷する不況はと言うと、上の図の如く疾っくに曲がり角に来ていたのに今迄の勢いで直進しよう(=輸出型の成長を続けよう)として、曲がり切れずに道路を食み出してガタガタ道に足を取られて居る状態なのです。
 それに加えて1989年消費税3%の導入(※10)、1997年5%への引き上げ最悪のタイミングであった事が上の図から明白です。只でさえ景気が悪いのに、これで完全に日本経済は立ち直りの切っ掛けを失ったばかりか更に沈み込んだのです。日本の政治家・官僚は経済に”ずぶの素人”ですね、と言いたく成ります。

 ■現在はデフレでは無い
 今良く言われて居るデフレ論議ですが、インフレで無い状態をデフレと言うのか?、と言うとそんな事は無いのです。物価が安定した安定成長(※1−2)も有り得るのです。今の日本の経済状況はバブル崩壊消費税導入・引き上げダブルパンチ(※11)で消費が落ち込み景気が後退しているのではないでしょうか。ですから私は「デフレでは無い」とする立場です。こういう「成長の後の停滞」は歴史的に主要先進国が皆経験して来たことではありませんか?
 いち早く産業革命で近代化したイギリス然り、イギリスの後を受け継いだアメリカ然りなのです。当時イギリス始めヨーロッパ主要国は急成長を遂げる広大なアメリカに投資することに依ってハイリターンを得ました。アメリカも自国が成長すると海外の油田などに投資し、自動車を製造する技術を日本などに供与して巨大な消費マーケットを形成して安定成長に転換して行きました。こういう主要先進諸国に工業製品を買って貰ったからこそ、日本は輸出立国として急成長出来たし、復興を為し遂げることも出来たのではないですか?
 戦後同じく敗戦国から立ち上がったドイツは日本と同じ様に歩んで来ましたが、ドイツは東西合併やEUの一員としての役割を担い、最早一方的な右肩上がりの成長など望んで居らず、率先して自然環境保護や車社会からの脱却を模索して居ます。つまりドイツ型成熟社会への転換をして居る訳です。
 さて安定成長とは何かということですが、これは成長曲線で言うと、もう右肩上がりの成長はしない、ということです、つまり横這い。横這いと言っても実際には「振れ」が有る訳ですから、短期的に見たら多少上がり気味だったり多少下がり気味だったりしますので、その短いスパンを捉えて、やれインフレだ、デフレだ、と騒いでも意味の無いことです。現在は直ぐマスコミが騒ぎ立てますが、それに躍らされないことが肝要です。マスコミは騒げば新聞が売れたりテレビの視聴率が上がったりで儲かるから騒ぐ訳であって、騒いでも儲からない一般大衆が騒ぐのは愚かな行為と言う他有りません。思い出して下さい、「財テク・ブーム」(※12)を演出し個人の素人(シロウト)をも巻き込んでバブルを煽ったのはマスコミですよ!!
 今の日本の指導者やマスコミは、この景気低迷をデフレ、或いはデフレ・スパイラルと捉えている様ですが、そんな循環理論では無いのです。もう既に述べていることですが、図式的に示すと

  「後発先進国型社会」  →  「主要先進国型成熟社会」
     高度成長            安定成長
      |               |
      量  <1回限りの転換期>   質

なのです。循環理論が言う所のインフレ、デフレは何度でも繰り返し訪れますが、「後発先進国型社会」から「主要先進国型成熟社会」への転換期はこの1回限りです、再び原爆を落とされなければ!
 こういう1回限りの曲がり角(=ターニング・ポイント)で舵取りを誤ると、その国家は衰亡又は滅亡するというのが歴史の教訓です。日本史では豊臣秀吉の朝鮮出兵、世界史ではチンギス汗の元の膨張政策など、大戦に突入したドイツや日本などなど、皆そうです。
 そしてこの曲がり角のもう一つ留意すべき点は、「量」では無く「質」こそが本質的問題なのです。今迄はアメリカをモデルにしたり与えられた目標に向かって言わば舗装道路の上を突っ走って来たのに対し、これからは自分で目標を設定して道を切り開かねば為らないのです。それ故に当然今迄より走行速度を落とす(=安定成長に切り換える)必要が有りますし、”どの道を選ぶか”という目標設定や目的意識が重要に成って来ます。「後発先進国」は「主要先進国」を目標にして追い駆ければ済みましたが「主要先進国」は他国では無く自らの目標を設定する必要が有ります。この目標を何処に設定するかが、「質」の問題なのです。

 ■日本は今何をすべきか − 「目標にされる国」を目指す
 さて、以上の様な認識に立つと「安定成長する主要先進国型の成熟社会に達した日本は今何をすべきか?」という問いに対する答えも、世上言われて居ることとは全く違って来ます。当然ですよね、前提が違うのですから。つまり「円安誘導で輸出を促進し再び日本を右肩上がりの成長路線に乗せる」というマスコミで吹聴されて居る目標は、”後発先進国以前への後戻り行為”で何の解決にも成りません。寧ろ、円高に持って行くべきです。為替レート(※13)を人為的に操作或いは誘導することは、市場原理から言って好ましく無いですが、今や強い「円」で国際社会で堂々と勝負すべき時に来ているのではないでしょうか?
 そもそも、経済成長を遂げて世界のトップクラスの経済力を備え乍ら、自国の通貨安を望むという心理が理解出来ませんね、過去にも有りませんよ。嘗てのイギリスは強いポンドで7つの海を支配しましたし、これに対してドイツのマルクとアメリカのドルが名乗りを挙げたので2度の世界大戦が勃発した訳です。あの2つの大戦はそういう基軸通貨を巡る凌ぎ合いだったのです、本質的には。そして最終的に勝ったのがアメリカのドルで、アメリカは経済が落ち込んだ時でも全力を挙げて「ドル高=強いドル」を防衛して来ました。
 従って「成熟社会に達した日本は今何をすべきか?」の答えは
  [1].発展途上国の製品を積極的に買う(嘗てアメリカが日本に対してした様に購買力を高める)
  [2].日本人は発展途上国に出て行って、経済や技術よりも文化輸出で貢献する
   (例えばクラーク博士が日本人の心に足跡を残した様な)
  [3].農業を見直し、徐々に食糧自給率を高めて行く
  [4].アメリカへの依存度を徐々に下げ、EUや中国を始め全方位等距離外交・交易を展開し、複数文明圏との均衡と共存を図る
  [5].日本の経済成長の経験やノウハウを発展途上国に積極的に供与する
   (嘗てアメリカが日本に対してした様に教育指導する)
  [6].近隣諸国や発展途上国に信頼され「目標にされる国」に成ることを目指す

などに重点を移し替えて行くことです。現在、需要が落ち込んでデフレではないか?、という不安に駆られ騒いで居ますが、 [1]に記した様に為替格差を利用して購買力を高め内需を拡大する方法も在るのです。輸出で外国に売るだけが需要では無い筈です。
 つまり、安定成長とは環境保護や後発国にコストを払うので経済成長率は鈍りますが、経済指標一辺倒を脱却し「物の輸出」よりも「文化の輸出」に重点を置き、「物は寧ろ買って上げる」心構えが必要なのです。日本も嘗てそうして貰って発展して来たことを思い出して下さい。

 ■「目標にされる国」の解り易い譬え話
 以上の事の内の幾つかは、嘗て糸川英夫氏が『逆転の発想』の中でバブル前に指摘して居た様に思います。糸川氏は元来楽観的な方なので日本が経済発展を遂げたらそうなる、と仰っていたのですが、バブル期日本の有り余った金(マネー)は土地転がしや下半身の快楽の方に流れ、氏の仰っている方向には向かわなかった所か、そのツケが不良債権という形でバブル後の経済を圧迫して居ます、結局日本人が「逆転の発想が出来なかった」と言って仕舞えばそれ迄ですが。
 ま、私の言いたい事を、戦後高学歴化し高等教育が遍く行き亘って、嘸(さぞ)かし頭の良く成っている筈の日本の皆様に、解り易く説明すると以下の様に成ります。
 会社に譬えると、日本は目先の目標(=欧米並みに成る事)に向かって一生懸命働いて来て次長に成りました、次は部長を狙っているのですがどうも部下(アジアの近隣諸国や発展途上国)や同僚(EUや最近課長に成った中国など)からの信頼感が薄い。と言うのは、日本は実力専務のアメリカ(本人は社長気取り)にゴマばかり擂(す)って来たからです。部下に対する指導もこの専務に言われたことをオウム返しに宣うだけなので、引き返す時は後ろからアカンベエされて居ます。
だから私が言いたいのは
 専務ベッタリのゴマ擂りでは無く、もっと部下の中に飛び込んで行き為さい、そこで自分の考えで議論しなさい、そして部下や同僚から心底信頼される様な人間に成り為さい!
ということなのです。若い時はガムシャラに働くだけで良いのですが、歳を取り人の上に立とうとすると周りからの信頼感が大切に成るんですよ、この説明、解り易いでしょ!

 ■大人に成れない日本人
 要は嘗て日本が欧米のライフスタイルを目標にして来た様に、今度は日本が近隣諸国や発展途上国の目標にされる様に成らなくては行けない、ということです。つまり、日本は戦後高度成長を遂げて年齢的且つ肉体的には成人したのに精神的に大人に成れず自立出来ない状態なのです。この姿は成人式などで付和雷同して騒いだりする今の若者の姿にダブるのですが、これは日本社会の”[精神的に]大人に成れない姿”が若者たちに投影されて居る、と診るべきでしょう。つまり日本の社会全体が幼稚な「小児病」(※14)に陥って居て、モノ(物)に集約される文明的な面では”一応”は大人なのですがコト(事)を処理する文化的な側面では全く「ガキ(=子供)」なのです。既に指摘しましたが早期に「アメリカからの自立」(=「アメリカからの”乳離れ”」)を果たす事が必要です。
 [ちょっと一言]方向指示(次) 昔から日本では「物事(モノゴト)」と言って、「モノ」と「コト」とを同時的・一体的に扱って来ました。それを「モノ」と「コト」とに分けて仕舞ったのは明治以降に輸入された外来思想の影響が大です。昔の日本人本来の感性を見直す必要が有りそうです。

 自己責任意識を持った「大人の考え方」に脱皮することの必要性は既に「日本人の自己責任意識を問う」の中で指摘して居ますが、国際社会の中で何故「自己責任意識」を持てなかったか、と言うとこれはもう「アメリカの傘の下」に入って来たからです。戦後日本はGHQの占領体制の下でスタートを切ったのですから已むを得ない所は有りますが、もうあれから55年以上、2世代この状態が続いて居ます。この2世代に亘る時間は大きいのです。と言うのは2世代目は1世代目の中に芽生えた資質を受け継ぎますから。この2世代目の若い人から見たら、世の中の中心で活躍する殆どの人が戦後の被占領世代(=1世代目)であり、この被占領的文化風土を”当たり前”として受け入れて育って仕舞ったからです。今の若者のカタカナ英語風発音や茶髪・金髪の風俗も、こういう土壌の上に生い茂って仕舞った文化なのです。これは琵琶湖に於いて本来の日本種の魚が駆逐され、外来のブラックバス(※15)が生態系の中心で勢力を伸ばして居るのと全く同じ現象です。私はこの様な自分のアイデンティティーを見失った状態を「文化の空洞化」(※16)と名付けて居ます。そういう訳で、未だに円安に持って行って日本製品をアメリカなどに買って貰うという発想は大人に成れない”甘ったれ”の発想であるばかりか、日本を後述する被植民地型経済に固定化させて居る元凶なのです。
 又、前述の「所得倍増計画」とは結局はインフレ誘導型景気刺激策(※4)だった訳ですが、当時の日本は「発展途上国」の段階に在った為にこの政策が功を奏しました。御蔭でこの時以来、日本人は未だに途上国型経済成長信仰(=インフレ信仰に被(かぶ)れて居ます。再度言いますが日本は既に「主要先進国」なのです。今マスコミが吹聴して居るインフレ誘導論は、日本が大人として若い人々を援助したり教育したりして若者から目標にされる様に成るべきなのに、再び”甘ったれ”少年の「過去」に戻そうとする行為と言えます。

 ■「豊か感」を持て無い日本人 − 食住エンゲル係数の提唱
 上で日本の経済がGDPという指標(※6−1)では世界のトップレベルに達したにも拘わらず、日本が尚円安を望んで居ることを、私は”甘ったれ”の発想と言いましたが、では何故そうなるのでしょうか?
 その答えは、そういう指標の数字とは裏腹に「豊かであるという実感」即ち「豊か感」を持て無いからです。即ちGDPという指標と経済実態とが日本に於いては大きく乖離して居るのです。これこそが実は日本の病理なのです。
 GDPが第2位だから豊かなのだ、という概念を政府やマスコミは吹聴して来た訳ですが、はっきり言って、国内だけで稼いで国内だけで消費して居る限りはGDPという値は実感出来るものではありません。例えば外国へ行って日本の1万円でどれだけお土産が買えるか、という時にGDP格差の結果としての為替レートとして効いて来るのです。では大多数の人が感じる国内経済活動の「豊か感(或いは貧乏感)」を実感させる指標は無いのか、もし有れば何か?
 それは実に古典的ですが、エンゲル係数(※17)です。私の子供の頃は良く使われて居た指標です。これは単純に言えば、所得に占める食費の割合です。日本は国土が狭く人口密度が高い上に、前述の様に土建業を牽引役に復興して来ましたから、土地・住宅関連は他国に比べ倍以上高く、飲食費も高い。そこで私は
  食住エンゲル係数 = 100% × (食費+住関連費)/ 所得
という指標を提唱(※17−1)したいですね。この食住エンゲル係数で各国と比較したら、日本は可なり高い値に成り、家のローンをボーナス払いしたりして居るキツキツの生活実態・実感を可なり表現出来ると思いますよ。つまり日本の場合はGDPの高さをコスト高(=物価高、特に「食住」)が圧迫して居るので、一般庶民は「メシ食って寝るだけで精一杯」というのが偽らざる実感でなのです。それにしては自分の生活に関係無い事に付和雷同し過ぎですがね、一般庶民は。
 実際、GDPでは日本より遥かに低い国でも「豊か感」の有る国は世界中に20ヶ国位は在りますよ。そういう国では食住エンゲル係数が低く「ゆとり」の有る生活をして居る訳です。幾らGDPが高くて給料が高くても、物価が高ければ一緒な訳です、少なくとも国内生活では。
 GDPはその国の生産力を示す指標ですから、国際的な取り引きとか海外旅行という時に効いて来ます。ですから、日本人は国内に引き籠もって居ないで、積極的に海外に出て、今迄日本がして貰ったことを積極的に近隣諸国や発展途上国に施して、日本が彼等の目標に成る番ですよ、それと同時に、国内ではコストを下げ食住エンゲル係数を下げる様な仕組みにして行く必要が有りますよ、というのが私の主張なのです。実はこれこそが今日本に迫られて居る「構造改革」の本質です。

 ■被植民地型経済から自給自足型経済へ
 さて、もう一つ日本が尚も円安を望み、輸出、輸出と言っている背景には経済構造が”輸出せざるを得ない”形に歪んで仕舞っている点を見逃しては行けません。戦後日本は「輸出立国」を標榜し、食糧を始め自給経済を疎かにして来た嫌いが有ります。国際関係の中で色々な立場は有りますが、「自給自足経済」こそは独立国の根幹であり何時の時代でも国家経営の王道です。輸出に重点を置くのは構わないですが、自給自足を疎んじては行けません。
 日本は技術とか、先進的とか言いますが、「それが何んぼのモンじゃ」ということですね。過去を見ると、日本の先進的だった筈の”技術”は造船、鉄鋼、コンピュータ、ソフトウェア...全て新興のアジア諸国に市場を奪われ、辛うじて総合アセンブリ産業である自動車産業だけが陣地を守っている状況です。技術と言っても日本の場合、基本技術では無くアメリカ等が開発した基本技術の「改良技術又は応用技術」ですから、そうなるのは当たり前なのです。技術と言うのはそれ自体で絶対的なものでは無く、常に価格との天秤の上で評価が決まるのです、それが「技術の運命」なのです。日本も過去、今の韓国や台湾やベトナムと同じ程度の技術で造った製品を、しかし格安で買って貰ったからこそ、ここ迄来れた訳です。
 ところが国民が日々「食う」ということは、技術の運命とは無関係に存在する必然なのです。最後は「食えるか食えないか」が根本なのですよ、それを考えると「自給自足経済」は常に念頭に入れて置くべき問題です。GDPの値などよりも
  最低限X%は自給する、という目標設定をすべき
です。勿論これへの軌道修正は直ぐには行きませんが、徐々に前述の様に全方位等距離外交へと方向転換して行く必要が有ります。その為には文明のグローバリズムに呑み込まれること無く、文化のローカリズム(=文化の固有性)を大切にして世界の人々の多様性に気付くことが出発点に成ります。
 現在、カリブの砂糖黍(さとうきび)ばかり作っている島も、植民地(※18)に成る前は貧しい乍らも自給して居たのです。今は砂糖黍のみを大量生産させられ自給出来ない訳です。畢竟、砂糖黍を宗主国に只管(ひたすら)供給し食糧は全て買わなければ為らない体制にさせられて居ます。こういう歪(いびつ)な経済体制を一般には被植民地型経済(=属国型経済)(※18−1、※18−2)と言い、その本質は自給出来ず永遠に宗主国の言い成りにしなければ国が成り立たない事を指しますが、私は以上の様な意味合いから特にこれを”砂糖黍経済”と名付けて居ます。これに対し「日本は独立国だぞ」と仰る方が大多数だと思いますが、それは見掛けの形だけであって日本は実質的には被植民地に近い傀儡政権(※19、※19−1)なのです。私は「社会科」のお説教を垂れて居る訳ではありません、私が日本の皆さんに考えて戴きたいのは以下の事です。
 今、日本の唯一の輸出品目と言い得る自動車、これってカリブの島々の「砂糖黍(サトウキビ)」と同じ事に成っては居ませんか?、日本は宗主国アメリカの言い成りにせざるを得ない、被植民地型の”砂糖黍経済”に陥っては居ませんか?

 ■結び − 「目標にされる国」に成ることの文化的意味
 以上が、主に経済面での日本の現状分析と私の主張です。「はじめに」の章でも述べた通り、私は経済学や国際関係の専門家でも何でもありません。一素人の戯言の域を出ないものですが、実はバブル前や21世紀を前にして、色々予測をしたり人に語ったりして来ましたが、自分で言うのも何ですが、不思議と私の予測の方が、当たって来ました。今回は、どうなりますか?!
 為政者がデフレに全ての責任を押し付けて消費税導入の失敗を覆い隠しているのは、国民に対する恫喝と言え、恥を知れと言いたいですね。
 最後に「日本が近隣諸国や発展途上国」の目標に成るということの、文化的意味を述べましょう。近隣諸国からさえも日本がどんな国か余り知られて居ないのは何故か?、それは相手から見て「知る必要が無かった」からです。相手が日本を本当に理解し、知ろうとするのは「日本を目標にした時以降」(前述)なのです。日本も過去、イギリスやアメリカを目標にして来たので、そういう国を知ろうとし学んで来たのです。その弊害として”イギリス通”とか”アメリカ気触れ”が幅を利かせて来た訳ですが。つまり
  「目標にされる国」に成る→ 日本を理解される→ 日本文化が行き亘る
ということなのです。日本のことを諸外国に知って貰い目標にされる、それでこそ日本が本当の意味で「品位有る先進国」に成った、と言われるのではないでしょうか!

−−− 完 −−−

【脚注】
※1:デフレはデフレーション(deflation)の略で、(通貨収縮の意)通貨がその需要量に比して過度に縮小すること。通貨価値が高く成り、物価は下落するが、企業の倒産、失業者の増大など不況や社会不安を伴う。←→インフレーション。
※1−1:デフレ・スパイラル(deflationary spiral)とは、経済活動で需要が供給を下回り、物価の下落が企業の業績悪化を招いて消費が低迷し、更に物価が下落するという悪循環が螺旋階段を下降する様に繰り返される状態。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>
※1−2:安定成長(あんていせいちょう、stable growth)は、インフレやデフレ、国際収支の悪化などの大きな変動を伴わないで、経済の規模が一定の速度で成長すること。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>
※1−3:インフレはインフレーション(inflation)の略で、(通貨膨張の意)通貨の量が財貨の流通量に比して膨張し物価水準が騰貴して行く過程。その原因に依り需要インフレコスト・インフレなどに分類される。←→デフレーション。
※1−4:需要インフレ(じゅよう―、demand-pull inflation)とは、需要が供給を上回った為に引き起されるインフレーション。
※1−5:コスト・インフレ(cost inflation)とは、賃金や原材料費などのコスト・アップが生産性の伸びを上回った為に生ずる物価騰貴。コスト・プッシュ・インフレ。

※2:GHQ(General Headquarters, GHQ)とは、日本を占領した連合国軍総司令部。初代最高司令官(SCAP)はマッカーサー。占領政策を推進し、戦後改革を行なった。1951年の「対日講和条約」発効と共に廃止

※3:対日講和条約(たいにちこうわじょうやく、Treaty of Peace with Japan)とは、1951年(昭和26)9月サンフランシスコで日本と48の連合国との間に調印された第二次世界大戦の講和条約(正式名:「日本国との平和条約」)。中国は招請されず(台湾の国民政府が参加)、インドなど3か国は不参加ソ連など4か国は調印を拒否。この結果日本は独立し国際的地位が規定されたが、領土の帰属アメリカ軍の駐留など多くの問題が残された。日本全権は吉田茂首相。対日平和条約、サンフランシスコ講和条約、サンフランシスコ平和条約<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>
 補足すると、対日講和条約に言う日本独立は名目に過ぎず、同時に締結された「日米安保条約」で実体的には米軍に依る被占領体制が維持された儘現在に至って居ます。
※3−1:日米安全保障条約(にちべいあんぜんほしょうじょうやく、the U.S.-Japan Security Treaty)とは、日米二国間の安全保障を規定した条約の通称。
 [1].1951年9月サンフランシスコに於ける「対日講和条約」調印と同時に日米間に締結された条約(正式名:「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約」)。講和後も米軍が安全保障の為に日本に駐留基地を設定すること、外国の教唆・干渉に因る内乱時の出動条項を定めた。1960年に一旦失効。
 [2].1960年に新たに新条約(正式名:「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」)を調印・発効。正式名に「相互協力及び」が付加された様に軍事行動に関して両国の事前協議制等を追加、逆に出動条項を削除。1970年から自動延長。ソ連崩壊を受けて1996年の「日米安保共同宣言」では「ソ連の軍事的脅威」に替わって「アジア・太平洋の平和と安定」を掲げ、内容を一部修正。
 略称、安保条約又は日米安保条約。通常1960年以前は[1]を、以降は[2]を指す。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
 補足すると、1960年の「相互協力」云々を以て日米の同盟関係と解釈する立場が日本では支配的です。この条約の中で「駐留基地の設定」を明文化して居ますが、日本のみならず世界各地に展開されて居る米軍基地こそがアメリカの世界支配の根幹です。[2]の新条約調印時の1960年と自動延長の70年には激しい安保闘争 −安保条約反対の国会包囲デモなど− が起きました。

※4:所得倍増計画(しょとくばいぞうけいかく、income-doubling program)とは、池田勇人内閣が1960年に発表し、翌61年から10年間で実質国民所得を2倍にすることを目標に立てた経済計画。所得倍増政策。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>
 補足すると、所得倍増計画は消費意欲を促しカネ(金)を循環させるインフレ誘導型景気刺激策で、結果として所得の額面は倍増しましたが、”物価も倍増”したので個人の支出/収入の割合は何ら変わらないというトリッキー(tricky)な政策でした。しかし、これで日本人は「物持ち」には成れました、”物価も倍増”したので「金持ち」には成れなかったですが。

※5:インフラはインフラストラクチャー(infrastructure)の略で、(下部構造の意)道路・鉄道・港湾・ダムなど産業基盤の社会資本のこと。最近では、学校・病院・公園・社会福祉施設など生活関連の社会資本も含めて言う。
※5−1:ライフライン(lifeline)とは、(命綱、救命索の意)電気・水道・ガスなど、線や管などで結ばれた生活に不可欠な社会施設。地震に弱い。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>

※6:GNP(gross national product)は国民総生産。一国に於いて一定期間に生産された財・サービスの総額。国民所得に比べて正確に算定出来るので、経済指標として広く利用される様に成った。
※6−1:GDP(gross domestic product)は国内総生産。1年間に国内で新たに生産された財・サービスの価値の合計。GNP(国民総生産)から海外での純所得を差し引いたもの
 補足すると、一般にGNP国民総生産或いは国民所得)は一国民経済の福祉水準を問題にする時に有用であるが、GDP国内総生産或いは国内所得)は一国民経済の景気変動経済成長を問題にする時に重要となる。日本では指標が現在のGDP国内総生産)に切り替わるのは1993年以降のこと。<出典:「現代用語の基礎知識(1999年版)」>

※7:軽薄短小(けいはくたんしょう)とは、1983年に流行し、日本人の社会や生活の中で「軽くて、薄くて、短くて、小さい」物事、即ち半導体など先端的軽工業(=ハイテク産業)やサービス業、少数精鋭のベンチャー企業などが以後のトレンドとされた。同時にそれ以前の重工業中心の社会を「重厚長大」と呼んだ。←→重厚長大。
※7−1:ハイテク(high-tech)とは、ハイテクノロジー(high technology)の略語。
ハイテクノロジー(high technology)は、高度な科学技術。先端技術。エレクトロニクス、メカトロニクス、バイオテクノロジー、新素材などの分野を指し、その製品をハイテク製品、産業をハイテク産業と言う。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>

※8:バブル景気(―けいき)とは、1986〜91年上半期の、円高に支えられた「カネ余り」が株・債券、土地の資産価格の高騰を生み出した、投機的な実態経済と懸け離れた相場が引っ張った景気。当時は「超大型景気」と呼ばれたが、実態を伴なわない景気は90年の「バブル経済」という流行語を生み出し、遂に91年下半期に”泡”の様に弾け「バブル崩壊」を引き起こし、以後は「バブル景気」と呼ばれた。結局「伊弉諾景気」を超えることは出来ず、逆に「不良債権」という”負の遺産”を残した。
※8−1:伊弉諾(いざなぎ)景気とは、1965年から70年に掛けて5年近く続いた好景気。神武景気や岩戸景気を上回る好況という意味を込めて名付けられた。

※9:カタストロフィー(catastrophe)とは、[1].破局、突然の大変動や激変のこと。カタストロフ。
 [2].〔数〕カタストロフィー理論/破局理論(catastrophe theory)。現代幾何学であるトポロジーの一分野で、1960年代にフランスの数学者ルネ・トムが創始した数学理論。不連続な過程を扱う。急激な変化を伴う自然・社会現象の過程を図形を用いて表すことなどに応用されて居る。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>

※10:消費税(しょうひぜい)とは、[1].consumption tax。物品の消費に対して課する租税。原則として全ての物品・サービスを課税対象とする一般消費税と、特定の物品・サービスを課税対象とする個別消費税とに分けられる。又、直接消費者に課税される直接消費税と、財貨の生産者・販売者に課税しこれを消費者に転嫁させる間接消費税に分けられ、後者は内国消費税関税に分けられる。←→収得税。
 [2].value added tax。日本で1989年4月より導入された付加価値税タイプの間接税。全ての商品・サービスの取り引きに課税するのが原則。税率は3%。事業者は売り上げに掛かる消費税額から仕入れに掛かる消費税額を控除した額を納付する。消費税分は、最終的に消費者が負担する仕組みである。1997年4月より税率は5%に引き上げられた。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>

※11:ダブルパンチ(double-punch)は、ボクシングで、一方の手で2度続けて打つこと。比喩的に、同時に二つの打撃を受けること。

※12:財テク(ざい―)とは、「ハイテクノロジー(high technology)」を捩(もじ)って造語された財務テクノロジーの略。企業や個人が証券や不動産に投資するなどして、資金の効率的な運用を図ること。1986年に流行し、財テク・ブームを引き起こした。

※13:為替相場(かわせそうば、exchange rate)とは、自国通貨と外国通貨との交換比率。例えば、1米ドルに付き100円という様に表す。為替レート

※14:小児病(しょうにびょう、children's diseases)とは、[1].小児に特に多い病気。ジフテリア・麻疹・水痘・百日咳・猩紅熱の類。
 [2].幼稚で極端な性向。「左翼―」。

※15:ブラックバス(black bass)は、オオクチバス(大口バス、large-mouth bass)の通称。サンフィッシュ科の淡水産の硬骨魚。全長50cm。北アメリカから移入され全国に広がった。湖沼や流れの緩やかな河川に生息する。肉食性で日本在来の淡水魚を捕食する為、生態系に大きな影響を与える。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>

※16:文化の空洞化(ぶんかのくうどうか)とは、綿々と受け継がれて来た日本的な文化が、特に戦後アメリカの文化に席巻されて隅に追い遣られて居る現実(それにはGHQの占領政策の影響が少なからず有ると思います)を、「文化の空洞化」或いは琵琶湖などで起こっている環境問題に譬えて「文化のブラックバス現象」という言葉で呼んで居ます。これは私の造語です。日本の戦後教育は「日本人のアイデンティティー」というものを置き忘れて来たのです、それはGHQの占領政策の狙いでもあったのですが。

※17:エンゲル係数(―けいすう、Engel's coefficient)とは、家計の消費支出に占める飲食費の割合のこと。ドイツの社会統計学者エンゲルが1857年の論文で、この割合は所得が大きく成れば減少することを発表した。これをエンゲルの法則と言う。<出典:「現代用語の基礎知識(1999年版)」>
※17−1:食住エンゲル係数(しょくじゅう―けいすう、Engel's coefficient for food and shelter)は、私の造語で、エンゲル係数の概念に「住」費用を含めること。即ち、家計の消費支出に占める飲食費+住宅費用の割合のこと。

※18:植民地(しょくみんち、colony)とは、或る国の海外移住者に依って、経済的に開発された地域。本国 −しばしば帝国主義[列強]と呼ばれる国々− にとって原料供給地・商品市場・資本輸出地・低賃金労働力(その究極は奴隷)の供給地を成し、政治上も主権を有せす宗主国に直接統治される完全な属領。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
※18−1:ここで言ってる被植民地型経済とは、今日の新植民地主義の支配を指します。
※18−2:新植民地主義(しんしょくみんちしゅぎ、neocolonialism)とは、第二次世界大戦後、植民地支配から脱した新興諸国に対して、先進大国が経済援助軍事援助などの手段を通じて経済的・政治的に支配しようとすること。ネオ・コロニアリズム。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>

※19:傀儡(かいらい、puppet)とは、[1].操り人形傀儡(くぐつ)。木偶(でく)。
 [2].転じて、人の手先に成ってその意の儘に動く者。「―政権」。
※19−1:傀儡政権(かいらいせいけん、puppet government)とは、別の或る国の意思の儘に操縦される、形式的にだけ独立した他国の間接統治政権。多くは他国を占領した国が占領地に樹立して、占領軍の直接行政を代行(=間接統治)させる。嘗ての満州国やフランスのペタン政権など。
 補足すると、現在の日本は典型的なアメリカの傀儡政権。

    (以上、出典は主に広辞苑です)

【参考文献】
△1:『共同幻想論』(吉本隆明著、角川文庫)。

●関連リンク
補完ページ(Complementary):技術の運命やサトウキビ経済論▼
日本の技術立国の中身(Technology island Japan)
補完ページ(Complementary):戦後日本の世相の変遷▼
戦後日本の世相史(Shallow history of Japan after World War II)
カタストロフィーの考察▼
理性と感性の数学的考察(Mathematics of Reason and Sense)
自己責任意識や大人に成れない日本人について▼
日本人の自己責任意識を問う
(Self-responsibility consideration of Japanese)

文明のグローバリズムから「文化の固有性」を守るには▼
世界遺産登録で本当に遺跡や文化が守られるのか?(World heritage)
「食」は「文化の固有性」の基本要素▼
「肉を食らう」ということ(Carnivorous life)
「目標にされる国」に成ることと外国人観光客との相関▼
(日本人のインフレ信仰にも言及)
日本の観光立国行動計画とは(The VISIT JAPAN program)
「文化の空洞化」について▼
冷泉家時雨亭文庫(Reizei Shigure-tei library)
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狩猟民族国家アメリカの本性(United States of Hunting people, America)


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