§.2008年・年頭所感−鼠の話あれこれ
(Several Rat's topics, 2008 beginning)

−− 2008.01.02 エルニーニョ深沢(ElNino Fukazawa)
2008.02.02 改訂

 ■はじめに − 子(ね)は十二支の筆頭
 今年は子年(ねどし)、つまり鼠(※1)の年ですね。昨年は亥年(いどし)に因み猪の肉を食いに行った私ですが、猫族を自認している私流石に鼠は食いませんニャー。しかし中国は針鼠を食ったり −針鼠はフランスでも食う− 鼠酒にしたりと過激ですゾ、オッホッホ!、ニャオ、ニャーオ!!
               m(=^o^=)m

 私は今年も快調にスタートして居りますが、どうも正月の酒が入ってますので、口が勝手にペラペラと滑って困るんでありんすよ。さて、「子(ね)」は十二支の筆頭なので、まぁ、12年周期の循環が今年で改まる、言い換えると新たな循環が始まる様な気がします。十二支の並びの由来や干支(えと)については
  資料−十干十二支(Chinese zodiacal signs and 60 years cycle)
  2006年・年頭所感−十二支と猫(Chinese zodiacal signs and Cat, 2006 beginning)
で概略を述べて居ますので参照して下さい。という様な訳で、子年に因み今年の年頭所感は「鼠」を含む熟語・諺や鼠に纏わる話にしようと決めました。

 ■「鼠」を含む熟語や諺
 鼠と言うと、動物学的には【脚注】※1を参照して戴くとしますが、「鼠」という語そのものがスパイ・密告者・裏切者などを指す隠語に成って居ます。又、鼠窃(そせつ)とか鼠賊(そぞく)とかの熟語が在り何れも「こそ泥」の意味で、これは「こそこそと物を盗む習性」に由来して居ます。
 鼠色という色が在り白と黒の中間の灰色(→こんな色:■)のことですが、転じて所属・主張・態度などの「曖昧さ」をも指しスパイに通じます。銀鼠は字の通り銀色を帯びた鼠色()です。利休鼠は茶人利休からの連想で抹茶の様な緑色を帯びた鼠色()のことで江戸時代に流行し、白秋の詩『城ヶ島の雨』(←寧ろ歌曲として有名)にも「利休鼠の雨がふる」と用いられて居ます(△1のp105)。白秋には童謡『栗鼠、栗鼠、小栗鼠』が在り(△1のp167)、これは動物のリス(※1−1)のことでリスもネズミ目に属し多くは樹上で生活する為に木鼠(きねずみ)とも言われます。ところが栗鼠(くりねずみ)と訓読みすると栗色、即ち茶褐色を帯びた鼠色()のことですが、栗鼠(くりねずみ)を音読みして「りそ」→「りす」が動物のリスを指すのは、リスが栗色をしたネズミ目の齧歯類だからでしょう。又、豚鼠(ぶたねずみ)とは実験動物として有名なモルモット(※2)のことで、英名をギニアピッグと言う様に豚みたいな体形をして居るからですが、モルモットなる和名は間違って伝えられた名がその儘定着して仕舞ったものです。そして「モルモットの様な人」と言えば”されるが儘に愚鈍で従順な人”を指し、これも余り良い意味では無いですね。
 一方、鼠は野山だけで無く海にも居るのをご存知ですか?、海鼠(なまこ、※3)は旨いでっせ。冬の寒い日に海鼠酢は燗酒の当てに最高ですが、更に海鼠腸(このわた、※3−1)という塩辛は更に珍味です。
 鼠は放って置くとどんどん子が増えることから鼠算という言葉が在り、会員を鼠算式に拡大させることを鼠講と言いますが、私は鼠講式の商法・組織・商人・商品を鼠商法・鼠組織・鼠商人・鼠商品と名付けて居ます(私の造語)。例の洗剤や鍋や健康食品などを口コミで売るアレでっせ。
 「大山鳴動して鼠一匹」という諺は有名ですが、この中の鼠は小物という意味です。『徒然草』第97段では「身に虱あり、家に鼠あり、国に賊あり」と言い(△2)、これも「こそ泥」の意味です。「袋の鼠」は困りますね、万事休すです。どうも余り良くないイメージばかりですな、おっと「窮鼠猫を噛む」という諺が在りましたっけ、クワバラ、クワバラ!!
 しかし、江戸時代には鼠小僧(※4)という”善い泥棒さん”も居りましたし、実験用マウス(※5)には我々人間は大いに恩恵を受け、ミッキーマウス(※6)は世界中で人気者です。最近のコンピュータ社会ではマウスと言えばパソコンの入力器具(※5)として御馴染みです。

 ■鼠に纏わる話
 (1)昔話や民話の鼠
 鼠は寓話集のイソップ物語(※7、※7−1)にも鼠らしくチョロチョロ登場しますが、例の「猫の首に鈴を付ける話」(△3のp159)は有名ですね。イソップでは、どうも猫の方が分が悪く鼠や鶏を狙う敵役(かたきやく)に仕立てられて居るのに対し、鼠は正に”善良なる小市民”に擬せられ少し間抜けです。日本の昔話に「鼠の嫁入り」が在りますが、これも鼠の夫婦が娘鼠の玉の輿を狙ってゴソゴソ遣りますが体良く断られ結局同じ家格の鼠に嫁ぐという、やはり間抜けな小市民の擬人化です。
 ところで『竹取物語』には「火鼠の裘」 −裘(かわごろも)は皮衣のこと− の話が出て来ます(△4のp23〜27)。火鼠とは中国伝説中の「火山に棲む鼠」で、その毛で織った裘は火に燃えないとされ、赫映姫(かぐやひめ)が5人の貴公子の求婚を退ける為の難題の一つとして登場します。姫は1人の貴公子が中国の貿易船から高額で仕入れて持参した”紺青に光り輝く裘の偽物”を火にくべ燃やして仕舞います。「燃えない布」は昔は貴重で世界中で珍重され中国では火浣布(※8)と呼び、その原料は今の石綿(※8−1)だとされて居ます。我が国では”何でも屋”の平賀源内が秩父山中で石綿を発見し小さな布に織り、「火浣布」と名付け雲母に代わる香敷(※8−2)として売り出しましたが売れませんでした。今では石綿は肺癌騒ぎ(=アスベスト問題)で邪魔物扱いです、いやはや。

 (2)「ハーメルンの笛吹き男」の話の不思議
 しかし、鼠の話で一番不思議なのは「ハーメルンの笛吹き男」(※9)ではないでしょうか。小学校の授業で習ったのか図書室で読んだのか全く覚えて無いのに、今でもこの話の”名状し難い印象”が疎覚えに甦ります。この話の典拠がグリム兄弟の『ドイツ伝説集』(※9−1)だということは大分後で知ったのですが、粗筋は次の様なものです。
  『或る日ドイツのハーメルンという町に「笛吹き男」(=実は「鼠捕り男」)が現れると大量発生した鼠を退治する様に町から依頼され、笛を吹いて鼠を誘き寄せ川に連れて行って1匹残らず溺死させて町に帰って来たら、町は約束の報酬を払いませんでした。怒った「笛吹き男」は笛を吹いて、しかし今度は町の子供達を呼び寄せて何処かへ連れ去って消えて仕舞いましたとさ。』
 <不思議の第1>は、消えた子供達が出て来ない儘で終わり未解決な点で、子供用の童話としては実に奇妙なのです。私が”名状し難い印象”と言ったのは、これです。例えばイソップでは話に必ず「落ち」が付き、だから××××をしては行けません、という教訓が付加され全て綺麗に解決します。
 <不思議の第2>は、これもずっと後で知ったことですが、川や海に飛び込み集団自殺する鼠(=レミング)(※10)が実際に居るということで、この時私は遠い過去の「ハーメルンの笛吹き男」の話を20〜30年振りに思い出しました。今、このページを書く為に調べたら、大移動は大量発生して食べ物が無くなるからで、移動途中の食える物を全て食い尽くす点はイナゴの大群の移動と全く同じです。何故海や大河で集団自殺するかと言うと、レミングは或る程度泳げるので海や大河を普通の川と間違えて飛び込み渡り切れずに溺れると言うのです(『Microsoft エンカルタ総合大百科』より)。
 ところが4、5年前に<不思議の第3>に出会(くわ)した時は不思議所か吃驚仰天です。何とハーメルンの町から子供が消えた話は「歴史的事実」 −1284年6月26日に130人の子供が町から消えた− だったのです(△5のp15)。そしてこの事実の上に『チンメルン伯年代記』を基にして1565年以降に鼠のモチーフが付加されたと言い、その背景には16世紀の鼠の大量発生が有りました(△5のp24〜25、p237〜241)。しかし私は子供達が忽然と消える話で直ぐに少年十字軍(※11、△6のp174〜179)や「死の舞踏」(※12、△7のp64〜67、△5のp149〜157)を想起しましたね。
 話は益々面白く成って来ましたが、これ以上記述すると「年頭所感」を逸脱して仕舞いますので、興味有る方はや少年十字軍や「死の舞踏」などの関連図書をお読み下さい。
 [ちょっと一言]方向指示(次) 「死の舞踏」の発生は、民衆が何か終末的な事態に絶望した時に、パニックを経た後で逆に半狂乱的に踊り狂うことで没我状態に成る集団ヒステリー(※13)の一種として捉えることが出来ます。

 (3)ペストと鼠
 さて、鼠と聞くと何と言ってもペスト(※14)です。中世ヨーロッパでは原因も治療法も知れず −ペスト菌(※14−1)が発見されるのは19世紀末− 多数の人々がバタバタと死んで行くので「悪魔の病気」とされサタン(=悪魔)の仕業とばかりに、人々は只管(ひたすら)教会で祈祷して貰うしか方法は有りませんでした。1347年にイタリア北西部のジェノヴァの船に発したペストは51年迄にヨーロッパ全人口の1/4を奪う程に拡散しました(△7のp3〜9)。1348年にイタリア全土に及んだ際に”金持ち”の貴婦人達10人がフィレンツェ郊外の別荘に避難して優雅に”退屈凌ぎ”をしたという設定で書かれたのが『デカメロン』(十日物語)(※15、△8) −作者は場面設定の理由として「初日の序話」の中でペストの悲惨な状況を伝える史料価値の高いリアルな報告を記した(△8の(一))− ですが、この10人は貧乏人の大量死を尻目に10名各人が1日に1話ずつ愉快な話題を提供することに決め、楽しみ乍らペストを遣り過ごしました。つまり作者のボッカチオ(※15−1)はカネ(金)は教会より御利益絶大とした訳で、後に教会から”冒涜的”と非難されました。この話し手が1話ずつ話を持ち回る手法は40年後の『カンタベリー物語』に受け継がれて居ます。尚、私の面白半分の掲示板の議論にはペストに纏わる”吃驚仰天”の珍説も在りますゾ!!
 序でに言うと、ペスト流行の教訓でシチリア島南のマルタ島 −1530年に入植したマルタ騎士団(入植時はヨハネ騎士団(※16))の名で若干知られ、以後イタリアとは別の歴史を辿り現在はマルタ共和国− では猫を大量に島に入れて以来「猫の楽園」に成りました。日本でも宮城県牡鹿半島西の田代島 −『奥羽観蹟聞老誌』に拠ると元は多曝島(たさらしじま)(△9)− は猫伝説で昔から「猫の島」と呼ばれ現在も猫が多く、島中央には猫神様を祀る社が在ります。実は古代エジプトでが聖獣と崇められミイラにされて祀られたのも、ナイル川流域の穀物畑を食い荒らす鼠を捕るからでした。
 おっと、「鼠に纏わる話」と言い乍ら、私が猫族の所為か、どうしても猫の話に成って仕舞いますニャオ!!
                (=^v^=)

 ■鼠を大切に扱う神社
 ところで皆さん、日本には「鼠を大切に扱う神社」が在るのをご存知ですか?
 文字通りの子神社(ねのじんじゃ)を始め大国神社など、各地で大国主命(※17)を主祭神とする神社がそうです。大きい神社では東京都の大国魂神社や静岡県の小国神社ですね。大国主は大己貴神(※17−1)・大物主神(※17−2)など色々な別名を持つ出雲神話の神(※17、△10のp42)ですが、更に神仏習合で「おおくに」を「だいこく」と音読みし大黒天(※17−3)が当てられ、「七福神の大黒様」として皆さんも御馴染みかと思います。では何故、大国主と鼠なのか?、その接点は何処に有るのか?
 それは『古事記』です。大国主が素戔嗚尊の住む「根の国」(=あの世、※18)を訪れた時に尊の娘の須勢理毘賣(すせりひめ)に一目惚れし尊に結婚を願い出た所、尊は幾つかの試練を大国主に課します。その最後の試練として尊は鏑矢を野に放って「それを拾って来い」と言い、大国主が拾いに行くと野に火を放ち逃げ場を失い危機一髪と為ります。その時、
  『来て云いけらく、「内はほらほら、外はすぶすぶ」といひき。かく言へる故に、其処を踏みしかば、落ちて隠り入りし間に火は焼け過ぎき。』
と為って大国主は命拾いをし、鼠が銜えて来た矢を尊に奉り、尊が寝ている隙に毘賣を負ぶって「根の国」から逃げ帰り毘賣を嫁にしました(△10のp45〜48)。
ここで「内はほらほら」とは内側が洞(ほら)の様に広い、「外はすぶすぶ」とは出入口が窄(すぼ)まっている状態の擬音で、即ち鼠の巣穴を言い表したものです。この故事に因んで鼠は大国主命の神使(※19)とされ大黒鼠(※5−2)と呼ばれます。それにしても【脚注】に在る様に、大黒鼠が実は白鼠とは面白いですね。
写真1:横浜市西区の杉山神社境内の大黒鼠の回転石像。 左は横浜市西区中央1丁目の杉山神社(主祭神:大己貴神)という小さな神社の境内で、打出の小槌を持って大己貴神に仕える大黒鼠の回転石像(05年4月9日撮影)で、円形の台座が回転します。狛犬為らぬ狛鼠(こまねずみ)ですね、動物のコマネズミ(独楽鼠、※20)と紛らわしいですが。雌雄1対 −狛犬を始め対を成すことが多く、狛虎なども居ます− で、写真の鼠はです。説明板には大国主命と鼠の故事と共に、男性は雄に女性は雌に願掛けして下さい、と書いて在りました。
 大国主命を主祭神とする神社が何処もこの様な彫像を置いている訳では無く、拝殿の梁や欄間に彫刻や透かし彫りを施す場合も有りますし、目に見える形では何もして居ない所も在ります。しかし、今年は「鼠を大切に扱う神社」に初詣に行くのも良いかも知れませんね、私も狛鼠が居る神社に行きまっせ!
 皆さんも時間が有れば鼠を探してみて下さい。

 ■食肉偽装に一言
 鼠の餌の様な”形無き物”を食うから食肉偽装という鼠捕りに引っ掛かるのです。あれは騙した業者も悪いが騙された消費者の方がもっとアホと言わざるを得ません、「違いが判らん奴」が生半可な知識で能書きに拘泥ったり値段が変に高い物にカッコ付けて手を出すからです(←私は先見的に既に2002年に指摘し吼えてまっせ!)。私の様に「形有る物をバリバリ食う」人間には偽装騒動は全く関係無かったですね。つまり「違いが判らん奴」が騙されるのは道理から言えば当然の因果応報自己責任なのです。
 しかし食った奴が死んだり腹壊したりして無いのに、問題があちこちで表面化したのは、業者の内部にタレコミ(=密告)する”鼠”(※1)が居たのでは?!、と私は勘繰って居りますよ。そう言えば2〜3年前には建築の偽装が流行りましたね。偽装も困りますが、旧ソ連や戦時中の日本の様な密告社会はもっと怖いでっせ!

 ■年頭のご挨拶 − 「形有る物」を食べ、緩りと進む
 最後に恒例の「年頭のご挨拶」です。世の中が少し世知辛く「足の引っ張り合い」の様相を呈して来て居ますので、鼠みたいにチョロチョロせずに、「形有る物」を食べ、心を落ち着けて、緩りと進みましょう。原油高で世界経済が減速して居る昨今、急ぐ必要は有りません。呉々もヤバイことをして「袋の鼠」に成らないで下さいね、ブヲッホッホッホッホ!!

 皆さん、今年も宜しく。そして幸多き年であります様に!
 私は再び酒を飲んで、それから寝るとしましょう。では では では ZZZ zzz

 >>>■その後
 1月の最後の日に私も地元大阪の「鼠を大切に扱う神社」に初詣しました。「えろう遅いやんけ」と思われるでしょうが、今年は年始に四国・九州を旅して居たので行けなかったという訳です。
 大国町交差点の少し北に国道26号に面して大国主神社(大阪市浪速区敷津西1−2)が在ります。「大国町」の地名起源の神社ですが、大国町は交差点の南に在り当神社は何故か「大国町」北隣の「敷津西」に在ります。実は大国主神社は敷津松之宮の摂社で、神功皇后に纏わる松之宮が先に在り大国主神社は1744(延享元)年に出雲大社から勧請されたと伝えられて居て、同一境内に南向きに松之宮が東向きに大国主神社が配置されて居ます。境内の西1km位の所を南北に木津川(=淀川下流の分流)が流れて居て、この辺りを木津と呼び慣して来た為に「木津の大国さん」として親しまれて居ます。又、境内には木津勘助の銅像 −本姓は中村で江戸時代初期に木津川を開削しこの地を開発した− や折口信夫の歌碑が在ります。ここは折口信夫の生家から近く、ここから北西約300mの鴎町公園には折口信夫生誕の地の碑勘助橋跡の碑が在ります。
写真2:大国主神社の「吽」の大黒鼠。写真3:大国主神社の「阿」の大黒鼠。 大国主神社の祭神は大国主命 −「日出大国」と呼ばれる坐像が鎮座− と素盞鳴尊で、ここに狛鼠が居ます(左右の写真、この日に撮影)。左が社(やしろ)の左に居る打出の小槌を持った「吽」の大黒鼠(※5−2)、右が社の右に居る米俵を抱いた「阿」の大黒鼠です。2匹1対で「阿吽」です。
    {この記事は08年1月31日に追加}

 鼠が居れば猫も居るのが道理で、この神社境内を寝座にして居る猫が狛鼠を守って居ますゾ、ムッフッフ!
 尚、ここから東南東に500m程の所に私が毎年1月10日の「えべっさん」の日に初詣し新年会をする今宮戎神社が在ります。又、ここから北北西に500m(=上述の鴎町公園から北に300m)程の所に「浪速のケッタイ」で既にご紹介した難波八阪神社、更にその北に300m程の所に瑞龍寺(通称:鉄眼寺)が在る、という立地です。{この段は08年2月2日に追加}

−−− 完 −−−

【脚注】
※1:鼠(ねずみ、rat(大形), mouse(小形))は、[1].広くはネズミ目(齧歯類)のネズミ亜目及びリス亜目のホリネズミ、更にモグラ目のトガリネズミを含む小形哺乳類の総称。2百以上の属、約千8百種を含み、種数としては哺乳類の約3分の1。その内ネズミ亜目ネズミ科はカヤネズミ・クマネズミ・アカネズミ・ハツカネズミなどの属を含む。普通はドブネズミ・クマネズミなどのイエネズミを言う。〈和名抄18〉。
 [2].鼠色の略。
 [3].密かに害を為す者(スパイ、密告者、裏切者など)の譬え。
※1−1:栗鼠(りす、squirrel)は、(リスは漢字の音読み)[1].ネズミ目リス科の哺乳類の総称。木鼠(きねずみ)〈日葡〉。
 [2].特にニホンリス(Japanese squirrel)のことで、頭胴長20cm、尾長15cm程。夏毛は赤褐色冬毛は黄褐色で、腹は白い。森林に生息し、木の実や木の葉、昆虫などを食べる。小枝や葉を集め、枝の間に巣を作る。日本特産。北海道には類似種のキタリスが居る。又各地で、より大形のタイワンリスが野生化。

※2:モルモット(Guinea pig)とは、(オランダ人がリス科のマーモット(marmot)と間違えて日本に伝えた為の誤名が定着したもの)
 [1].ネズミ目テンジクネズミ科のテンジクネズミ(天竺鼠)の一種を指す。尾が無い(←マーモットは有尾)。耳が小さくて丸いネズミに似た小動物。体長22〜30cm。体色は白・茶・斑(まだら)など様々。草食性。夜行性。年間を通じて繁殖する。ペルー原産で、愛玩用・各種実験用に改良。豚鼠。ギニアピッグ
 [2].比喩的に、実験台にされる従順な人。
<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>

※3:海鼠(なまこ、trepang, sea cucumber)は、[1].ナマコ綱の棘皮動物(きょくひどうぶつ)の総称。体は円筒状で左右相称。腹面には3列の管足、背面には疣足、口の周りには多くの触手が有り、柔軟な外皮中には微細な骨片が有る。浅海から深海に広く分布し、深海のものは体が寒天質に成る。マナマコキンコフジナマコなどは生食して賞味される他、乾燥したものは海参(いりこ)と称して中国料理の材料と成り、内臓は海鼠腸(このわた)、卵巣は海鼠子(このこ)とする。俵子(たわらご)。季語は冬。
 [2].狭義にはマナマコの別称。
※3−1:海鼠腸(このわた)は、ナマコの腸(はらわた)で作った塩辛。寒中に製したものが良いとされ、珍味の一。季語は冬。

※4:鼠小僧(ねずみこぞう)は、江戸末期の盗賊。名は次郎吉。背が低く身軽で、武家屋敷奥向にのみ忍び入ったという義賊。1832年(天保3)獄門に処せられた。小説・講談・戯曲などの題材と成る。

※5:マウス(Maus[独], mouse[英])とは、[1].ハツカネズミ。特に、医学・遺伝学などの実験用動物としての名
 [2].(形状がネズミに似るから)コンピュータの位置入力装置の一。操作者の手元の平面で動かした時の前後左右の移動量を利用する。カーソルや図形情報の移動に用いる。
※5−1:二十日鼠(はつかねずみ、mouse)は、ネズミの一種。頭胴長7cm、尾長5cm位。野生種は背面黒褐色、又は赤褐色。世界中に分布し、家鼠の一種と成っているが、本来は草原性で、畑地に多い。野生種はヨーロッパ/アジア/アフリカに分
布。実験用に飼育した白変種の系統はマウスと呼ばれ、医学などの研究に重要。名は成長が早いからと言われる。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
※5−2:大黒鼠(だいこくねずみ)とは、シロネズミ(白鼠)の別称。全身白色で目が赤い大形のネズミ。哺乳綱ネズミ目ネズミ科。体長約25cm。ドブネズミの飼育に依る変種で、実験に使われる。ラット。大国主命(大黒様)が素戔嗚尊の娘の須勢理毘賣(すせりひめ)に求婚した際に、尊の難題をシロネズミが助けたことから大黒様の使いとされた。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>

※6:ミッキーマウス(Mickey Mouse)は、W.ディズニー製作の漫画の主人公である鼠の名。
※6−1:ディズニー(Walt Disney)は、アメリカの映画製作者・監督(1901〜1966)。アニメーション映画の開拓者。「ミッキーマウス」「白雪姫」「バンビ」「シンデレラ」、生物記録映画「砂漠は生きている」など。又、1955年には遊園地「ディズニーランド」を建設。

※7:イソップ(Aesop)/アイソポス(Aisopos[ギ])は、「イソップ物語」の作者と伝えられる前6世紀頃古代ギリシャの寓話作者。サモス島の奴隷であったが、後解放されたと言う。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
※7−1:イソップ物語(―ものがたり、Aisopi fabulae)は、イソップが物語ったと伝えられる寓話集前3世紀頃散文で編集、以後次々に増補された。1593年(文禄2)九州天草の切支丹学寮から刊行した邦訳が在る。伊曾保物語

※8:火浣布(かかんぷ)とは、[1].中国の南方の火山に住んでいる火鼠の毛で織ったと言う説話に拠る布。火に入れても焼けず、却って白く成ると言う。火鼠の皮衣。浄、国性爺合戦「虎の皮豹の皮。南海の―、到支国の馬肝石」。
 [2].石綿を混ぜて織った布。良く火に堪える。日本では1764年(明和1)平賀源内の創製と言う。香敷・防火用に使用。
※8−1:石綿(いしわた/せきめん、asbestos)とは、蛇紋石(じゃもんせき)の繊維状を成すもの。希に角閃石(かくせんせき)も有る。絹糸の様に光り、綿の様に柔らかで、しかも強靱。熱・電気の不良導体で、保温・耐火材料として用いられたが、石綿の吸入と肺癌の発生率には深い関連があり、使用規制されて居る。アスベスト
※8−2:香敷(こうしき)とは、香を焚く時に加熱を調節する為に火を埋めた灰の上に置くもの。雲母の薄片を金銀で縁取りして作る。銀葉(ぎんよう)。銀盤。

※9:ハーメルン(Hameln)は、ドイツのニーダーザクセン州南部、ウェーザー川中流沿岸の小都市。メルヘン街道の都市の1つ。「ハーメルンの笛吹き男」(ドイツ原題は「ハーメルンの鼠捕り男」)の伝説の舞台。ハメルン。旧名ハメリン(Hamelin)。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>
※9−1:グリム兄弟(―きょうだい)は、ヤコブ・グリム(Jacob Grimm)ヴィルヘルム・グリム(Wilhelm Grimm)の兄弟。ドイツヘッセン州ハーナウの生まれで共同で研究・著作をした。
 ヤコブ・グリム(兄)は、ドイツの文献学者・作家(1785〜1863)。ゲルマン文献学・言語学の創始者。グリムの法則を確立。弟との共同編著「子供と家庭の童話集(グリム童話)」「ドイツ伝説集」「ドイツ語辞典」(死後、多くの学者の協力で1961年完成)など。
 ヴィルヘルム・グリム(弟)は、ドイツの文献学者(1786〜1859)。兄との共同編著の他「ドイツ英雄伝説」など。

※10:レミング(lemming)は、ネズミ科ハタネズミ亜科の内レミング属・クビワレミング属などのネズミの総称。ヨーロッパとアメリカの北部の湿地に棲み、体長10〜15cm程、尾は無いか、有っても極短い。普通は山地の岩の下や地下の巣穴で生活して居るが、3〜4年の周期で大繁殖し、時として大群で大移動をし、途中の川を泳ぎ一直線に海岸迄移動し海中に没し集団自殺する例も有る。代表的な種はノルウェーレミング(=タビネズミ(旅鼠))・クビワレミングなど。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>

※11:少年十字軍(しょうねんじゅうじぐん、Children's Crusades)とは、1212年ドイツとフランスの少年たちが啓示を受けたと称する少年を中心に集団でエルサレム奪還に向かったこと。民衆の信仰の高まりを表すものとされる。少年たちは途中で難破し、或いは奴隷商人に売られた。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>

※12:死の舞踏(しのぶとう、danse macabre[仏], Totentanz[独], the dance of death)とは、中世後期のヨーロッパに出現した絶望的な集団的舞踏で、絵画・文学・音楽などに於いて「死」は重要なテーマに成った。14世紀に大流行した黒死病(ペスト)や、百年戦争の体験が背景に有った。ダンス・マカブル。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>

※13:ヒステリー(Hysterie[独], hysteria)とは、(hystera[ギ](子宮)から)
 [1].神経症の一型。劣等感・孤独・性的不満・対人関係などの心理的感情的葛藤が運動や知覚の障害などの身体症状に無意識的に転換される反応。歩行不能・四肢の麻痺・痙攣・自律神経失調・皮膚感覚鈍麻・痛覚過敏・失声・嘔吐など多彩で、健忘・昏迷などの精神症状を示すことも有る。何れも、他者の注意を引き、その支持を期待するという合目的性が本人の意識しない形で含まれて居ると見られる。これらの症状が急に起る場合をヒステリー発作と言う。女性に起こることが比較的多いが男性にも在る。
 [2].転じて、病的な興奮を示し、感情を統御出来ず、激しく泣いたり怒ったりする状態一般を言う。「―を起す」。
 [3].性格障害の一。ヒステリー性格。自己顕示欲性格。
<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>

※14:ペスト(plague, Pest[独])は、ペスト菌の感染に因って発生する急性伝染病。ペスト菌は本来は鼠類の病原菌で、鼠類に付いたがペスト菌を含む血液を吸って人間に伝播する。又、ペスト患者の皮膚・粘膜から伝染し、飛沫伝染もする。潜伏期は1〜7日で、突然悪寒を覚え、高熱を発し、頭痛・倦怠・目眩などの症状を起し、皮膚は乾燥して紫黒色を呈する。腺ペスト・ペスト敗血症・肺ペストなどの病型が有り死亡率が高い。古来欧州で、度々大流行を繰り返した。黒死病(black death)。
※14−1:ペスト菌(Yersinia pestis[ラ])は、ペストの病原菌。短く太い非運動性グラム陰性桿菌。1894年北里柴三郎及びスイスのイェルサン(A.Yersin)(1863〜1943)がそれぞれ独立 −ペスト菌の学名にはイェルサンの名が採用された− に発見し、イエルシニア属に分類される。

※15:デカメロン(Decameron[伊])は、ボッカチオ(又はボッカッチョ)の小説。1348〜53年作。10人の男女が各々1日一つずつの物語を10日間話すという形式。喜劇・悲劇・諷刺・好色など種々の要素に富み、近代都市勃興期の社会を良く描写して居る。十日物語
※15−1:ボッカチオ/ボッカッチョ(Giovanni Boccaccio)は、イタリアの作家・人文主義者(1313〜1375)。ペトラルカと共に人文主義の発展に貢献。作は恋愛物語「フィローコロ」「フィアンメッタ」の他、「ダンテ伝」など。殊に主著「デカメロン(十日物語)」は最初の近代散文小説の傑作。

※16:ヨハネ騎士団(―きしだん、Order of St. John)とは、第1次十字軍時代(1096〜1099)に、エルサレムで設立された宗教騎士団(騎士修道会)。当初は戦地の負傷者や病人の看護に当たったが、対異教徒戦争でも活躍した。本部は後に転々とし、フランス革命時に解体されて修道会と成った。マルタ騎士団ロードス騎士団とも言う。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>

※17:大国主命(おおくにぬしのみこと)は、日本神話で、出雲国の主神素戔嗚尊の子とも6世の孫とも言う。少彦名神と協力して天下を経営し、禁厭(まじない)・医薬などの道を教え、国土を天孫瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に譲って杵築(きずき)の地に隠退。今、出雲大社に祀る。大黒天と習合して民間信仰に浸透。大己貴神国魂神葦原醜男(あしはらしこお)・八千矛神(やちほこのかみ)などの別名が伝えられるが、これらの名の地方神を古事記が「大国主神」として統合したもの。古事記の「因幡の素兎」の話は有名。
※17−1:大己貴神/大穴牟遅神/大汝神(おおなむちのかみ)とは、大国主命の別名。大名持神(おおなもちのかみ)とも。
※17−2:大物主神(おおものぬしのかみ)とは、奈良県大神神社 −おおみわじんじゃ、我が国最古の神社− の祭神。蛇体で人間の女に通じ、又、祟り神としても現れる。一説に大己貴神(おおなむちのかみ)即ち大国主命と同神。
※17−3:大黒天(だいこくてん)は、七福神の一。頭巾を被り、左肩に大きな袋を負い、右手に打出の小槌を持ち、米俵を踏まえる。我が国の大国主命と習合して民間信仰に浸透、「えびす」と共に台所などに祀られるに至る。

※18:根の国(ねのくに)とは、地底深く、又海の彼方など遠くに在り、現世とは別に在ると考えられた世界。死者が行くとされた。黄泉の国。根の堅洲国(かたすくに)。神代紀上「当(まさ)に遠く―に適(い)ね」。

※19:神使(しんし/かみのつかい)とは、[1].神の使い。多くはその神に縁故の有る鳥獣・虫魚を言う。使わしめ。神社に付属して、その使と成る例としては、天神の牛/日吉の猿/稲荷の狐/八幡の鳩/春日の鹿/熊野の八咫烏/大黒天の鼠の類。
 [2].(かみのつかい)神社に遣わされる勅使・奉幣使。夫木和歌抄27「たれもみなそのうまやどに馬はあれど―にかちよりぞ行く」。

※20:独楽鼠(こまねずみ)は、マイネズミの俗称。忙しく動き回る人の譬えにも言う。「―の様に働く」。
※20−1:舞鼠(まいねずみ)は、ハツカネズミの飼養変種。白色で、平面をくるくる回る習性が有る。独楽鼠(こまねずみ)

    (以上、出典は主に広辞苑です)

【参考文献】
△1:『日本詩人全集7 北原白秋』(河盛好蔵・木俣修編、新潮社)。

△2:『徒然草』(吉田兼好著、西尾実校注、岩波文庫)。

△3:『万治絵入本 伊曾保物語』(武藤禎夫校注、岩波文庫)。

△4:『竹取物語』(島津久基校訂、岩波文庫)。

△5:『ハーメルンの笛吹き男(伝説とその世界)』(阿部謹也著、ちくま文庫)。

△6:『十字軍』(橋口倫介著、岩波新書)。

△7:『死の舞踏』(木間瀬精三著、中公新書)。

△8:『デカメロン(十日物語)(一)〜(六)』(ボッカチオ作、野上素一訳、岩波文庫)。

△9:『SHIMADAS’94』(SHIMADAS編集委員会編、日本離島センター)。

△10:『古事記』(倉野憲司校注、岩波文庫)。

●関連リンク
参照ページ(Reference-Page):十干や十二支について▼
資料−十干十二支(Chinese zodiacal signs and 60 years cycle)
補完ページ(Complementary):十二支の並びや干支について▼
2006年・年頭所感−十二支と猫
(Chinese zodiacal signs and Cat, 2006 beginning)

昨年猪を食いに行った理由▼
2007年・年頭所感−猪食いに吉有り
(Eating boar brings good luck, 2007 beginning)

私は猫族▼
ノラ猫狂詩曲(What's new PUSSYCATS ?, Japan)
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(昨年の牡丹鍋も有り)
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(Self-responsibility consideration of Japanese)

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