ξ.2003年・SARS-感染源はハクビシン?!
[2003年・海外の話題#2:衝撃の告白
(The SARS, what is the source ?, 2003)

-- 2003.06.07 エルニーニョ深沢(ElNino Fukazawa)
2003.12.18 改訂

 ■はじめに
 世界的な問題に発展したSARS重症急性呼吸器症候群、日本では新型肺炎、中国では非典型肺炎について、私は既に2003年4月15日に
  「2003年・新型肺炎SARSとは?!」
を発表し、SARSについての第1報からその後の推移を随時追加してお伝えして居ますが、5月26日SARSの感染源判明というニュースが飛び込んで来ました。
 そこで「SARSの感染源」についての特集をこのページに纏めることにしました。そして私の衝撃の告白を発表しますので、乞う御期待!!!

 ■SARS感染源判明のニュースとその詳細
 そのニュースを再度ここに記すと5月26日世界保健機関(WHO)が、中国南部の市場で食用として売られて居た野生動物のハクビシンタヌキアナグマから、新型肺炎SARSウイルスと酷似したウイルスが確認されたと発表した。」という内容です。これを受け厚生労働省は同日「これらの動物の中国からの輸入実態や飼育状況を調べると共に、輸入を自粛する様業者に要請した。」という措置を取りました。原因不明と言われて居たSARSも遂に感染源が絞り込まれて来ました。
 私は気に掛かったのでこの感染源のニュースを更に詳しく追跡しました。すると
  「中国広東省の疾病予防対策センターと合同で調査を進めていた香港大学の研究チームは、SARS感染が最初に確認された中国広東省の「野生動物を食べる食習慣」(※1、△1のp10~13)に着目。中国広東省で食用にされて居るシカ、ウサギ、ハクビシンなど8種類計25匹の野生動物とSARSウイルスとの関連を調べた結果、シカやウサギからはコロナウイルスが発見されなかったが、タヌキアナグマハクビシンからコロナウイルスを検出。特に検体に用いたハクビシン6匹全ての便などから、SARSウイルスと遺伝子の塩基配列が極めて酷似して居るコロナウイルスを検出した。又、ハクビシン、タヌキ、アナグマの血清が、SARS患者から採取したウイルスの増殖を抑えたことから、SARSウイルスに対する抗体を持っていることも分かった。
 更に広東省で昨年11月に感染が確認された仏山市の男性は、発症前に野生動物を食べていたと地元紙などが報じている。又、昨年12月に発症した調理師は、深圳市のレストランで野生動物を扱っていたとされて居る。
 そして研究チームは5月23日、「SARSの感染源」について、ハクビシンなど野性動物の可能性が大きいと発表した。」

というニュース(5月24日の毎日新聞ネットニュースを要約)に行き当たりました。この発表の基づいて冒頭のWHOや厚生労働省の発表が有った訳です。
 ところで広州と香港は地理的にとても近く、飛行機を乗らなくても時速200kmの新型特急列車で正味1時間40分位で互いに往来出来るのです(広州東駅と香港ホンハム駅間)。

 ■中国政府の態度と人と自然との共生
 中国政府はこの事実について、5月31日に北京市共産党委員会常務委員で宣伝部長の蔡赴朝氏がコメントを発表し
  「人類と動物は調和して共存することで、互いに安心して暮らすことが出来る」と強調し、野生動物を珍味として食することを批判し、更に「SARSが去った後、人類は総括が必要な経験と反省すべき問題が数多く有る。その一つは健康的、文化的、科学的生活様式を提唱することである。」
と述べたそうです。
 上の蔡氏のコメントの中で「人類と動物は調和して共存することで、互いに安心して暮らすことが出来る」と述べている箇所は、既に5月6日の段階で私が「考察」の中で述べている主張と、期せずして一致して居ます。私はその中で「人間同士の共生人間と自然との共生という目的意識と生活態度が必要に成ります。」と明言して居ます。
 しかし「健康的、文化的、科学的生活様式」とは一体何でしょうか?、憲法みたいな文言ですが。もう狗や猫や蛇や蠍(サソリ)やハクビシンやパンダ(←パンダを食った事がバレたら中国では死刑ですよ)などの”珍味”を食うことを止め、更に又、食った後「ペッペッ」っと床に骨などを吐き捨てるあの習慣を止めるということでしょうかねえ?、ムッフッフ。

 ■ハクビシンとは驚き!
 いやあ驚きましたねえ、これには。野生動物からの感染予想通りだったのですが、驚いたのはハクビシン(※2)にです。何故?、それは「衝撃の告白」として後で述べましょう。ハクビシンは日本のペットショップでも売られて居て、インターネットで検索した或るペットショップでは定価49,800円と在ります。厚労省に拠ると、何処の国からどれ位輸入されて居るかは掴めて無いということです。

 ■衝撃の告白 - 私は食用ハクビシンに会っていた!
 では愈々告白しましょう。上の詳細ニュースの中で「広東省で昨年11月に感染が確認された仏山市の男性は、発症前に野生動物を食べていたと在りましたが、
 実は私は昨年の2002年11月2日中国の広州(広東省の省都)の新源蛇鳥禽蓄綜合市場(通称:動物市場)で、感染源の食用ハクビシンをそれとは知らず至近距離に近付き、じっくり見て写真に撮っていたのです。後日、「この日この場所」が決定的にヤバイことが判明!
写真1:広州動物市場の外観。 左がその広州新源蛇鳥禽蓄綜合市場の外観です。市場の中の様子は既に
 「中国のヘビーなお食事」
でも紹介しましたが、凡そ有りと有らゆる”食べる為の哺乳類・鳥・爬虫類”などを、陳列販売して居る市場で、宛(さなが)ら動物園です。その中の猫の檻が固まって在るブースの中に檻に入った珍しい動物が居たのです。その時何でこれが猫のブースに居るのかなあ?、と思いつつ至近距離から写真を撮って居ました。
写真1:広州の動物市場の食用ハクビシン。 そこへ今回のニュース。?!、ムッ...ピンと来ました、あれはハクビシンだったのです。それで納得ですね、猫のブースに居たのが、ハクビシンはジャコウネコ科、即ち麝香猫(※2-1)の仲間なのです。
 そこで問題の写真を”ご開帳”しましょう。右の写真です。【脚注】※2に在る様に、褐色の顔に鼻から脳天に掛けてスーッと通った白い線目の下、耳の下の白斑が特徴です。時期的・場所的に私はこれに感染して居た可能性は充分有ったのです!
 そう言えば帰国して10日位経った時にちょっと風邪を引いて熱を出しました、あれがSARSだったかも?!、ムッフッフ。しかし、私は中国で狗(イヌ)と蛇を食べていたのでSARSに打ち勝つことが出来ました。正に”食狗蛇蠍的”です、ブワッハッハッハッハ!
    {「はじめに」の章からこの章迄を03年6月7日に掲載}

 ■■新情報追加記事(6月7日以降)
  ◆ハクビシン解禁
  <03年7月18日追加記事>
 ところが7月18日の共同通信ニュースに拠ると、中国国家林業局はSARS感染の恐れが有るとして販売や食肉を禁じていた動物の内、ハクビシンなど動物40種類の販売を許可した様です。これで「野生動物料理」を又食べられそうですよ。食用に際しての審査基準は
  [1].飼育量が多い、[2].飼育技術が成熟、[3].市場が大きい
という3条件を満たすこと、だそうでハクビシンダチョウイノシシなどを許可しましたが、ヘビウシガエルセンザンコウ(※3)などは不許可としたそうです。

  ★★★ハクビシン感染源説確定!
  <03年12月18日追加記事>
 年末に成ったので「感染症情報センター(IDSC)」のサイトを見たら、最初のSARS患者について「中国広東省で02年11月16日から2月下旬迄に、SARSと同様な症例が300人以上発生し、中国当局は当初肺炎クラミジアに因ると発表して居ましたが、これがSARSの始まりだったのではないか?」
という事に成り、WHOの調査チームが広東省で詳細な調査を行った結果
  WHOは「SARSは2002年11月中旬に中国広東省で最初の症例が発生した」という結論を下し、中国政府もこれを承認した。
と出て居ました。
  ヤバイ!、「02年11月中旬、広東省、ハクビシン」、潜伏期間の10日を差し引くと、私が広東省広州でハクビシンを撮影した11月2日は...。
 ヤバイ、非常にヤバイのです。私はその「最初の症例」の人と、同日同所に居た可能性が有ります、オヒョ~!!
 →「衝撃の告白」を見よ!
                (>O<)
    {この章は03年12月18日に最終更新しました。}

 ■考察 - これで中国人もマナーが良く成るか?
 嘗ては世界的な帝国を作り上げ、「儒教」というマナーの手本を生み出した中国人も、まあ、人口が多いとは言え阿片戦争以降麻薬で眠らされ、列強の餌食と成った”停滞”は、単に経済的遅れだけで無く、心の部分にも深い陰を落としました。その結果中国人のマナーは地に堕ち「自分さえ良ければ構わない」という風潮を生みました。他人が並んで居る列に割り込んだり、自分の利益の為には平気でウソを吐(つ)いたり、狭い乗り物の中でもデカイ声で喚く様に話したり、と彼等の公衆道徳の無さには閉口します。床に「ペッペッ」っと吐き出す行為もその一つに過ぎません。
 逆に日本人は拝金主義に堕ち入り、何でも経済で片付けようとします。そんな日本人の多くは、中国人のマナーの悪さも経済の所為だと決め付けて、経済復興すればマナーも良く成る様な見方をして居ますが、”心の部分の陰り”は経済で全て解決されるものでは無い、と私は考えて居ます。
 封建時代の日本も貧しかったのですが、日本人のマナーの良さはフランシスコ・ザビエル(※4)が
  日本人ほど盗みを嫌う者に会った覚えはありません
と記して居る如く(△2のp56)、日本に来た”先進”西欧人が皆一様に賞賛を込めて書き残して居ます。マナーには個人差が有って、日本人でもマナーの悪い人間は沢山居ますが、押し並べて平均値としては日本人のマナーは貧しい時代から良かったのです。「貧すれど鈍せず」の心意気なのでしょう。しかし日本人もバブル崩壊以後、「貧すれば鈍する」の諺通り(※5)に堕してマナーも悪く成りました、いやはや。
                (>_<)

 以上の様に考えると、今回のSARS騒動を中国は今後にプラスに成る様に生かして欲しいと思います。その一つがマナーの改善であり、情報公開ですね。

 ■結び - 中国版『十日物語』を期待
 このSARS騒動で中国人でも他県への越境が禁止され、言わば自宅等に幽閉状態に成り、御蔭で中国の各観光産業は壊滅的打撃を受けました。何しろ観光客が全く来ない訳ですからね。
 実はこれと同じ様な状況は過去に有りました。ペストです。ペストと言えば私は『デカメロン(=十日物語)』(※6、△3)を思い浮かべます。1347年からヨーロッパを襲ったペストの大流行で人々は幽閉状態に置かれ、その”退屈凌ぎ”という設定でこの物語は生まれたのです。
 私は嘗てのペストと同じ様な状況のSARSの中国から、中国版『十日物語』が生まれ出ることを期待して居ます。ほんま、期待してまっせ!

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ξ-- 完 --ξ

【脚注】
※1:昔から「食在広州(食は広州に在り)」と言われて居ます。

※2:ハクビシン(gem-faced civet, 白鼻心)は、(中国語では花面狸食肉目ジャコウネコ科の哺乳類。体長50cm程。毛色は全体に黒褐色で、顔、四肢、尾は黒い。名は鼻の白い線に由来。目の下、耳の下に白斑を持つ。インド/マレーシア/中国など東南アジアに広く分布。日本では、移入されたと思われるものが野生化。雑食性・夜行性で、ミカンなどを食害。生殖器の近くに麝香腺を持ち、特殊な香りの分泌液(霊猫香)を出す。
※2-1:麝香猫(rasse, Asian civet)は、食肉目ジャコウネコ科の哺乳類。東南アジアに分布。雑食性で、夜行性。生殖器の近くに麝香腺を持ち、特殊な香りの分泌液(霊猫香)を出す。

※3:穿山甲(せんざんこう、pangolin)は、(中国名から)センザンコウ目(有鱗類)センザンコウ科の哺乳類の総称。1科1属7種が現存。体長30~90cm、体の外側は角質の鱗に覆われ、長い尾を有す。鱗の色は黒褐色から黄褐色。東南アジアアフリカに分布。前足に鋭い鉤爪が有り、木に登ることも出来る。歯は無い。昼は穴に隠れ、夜出て、長い舌で専らアリシロアリを食べる(アリクイ目の近縁)。敵に会えば体を丸めて身を守る。鯪鯉(りょうり)。ラーリー。石鯉

※4:フランシスコ・ザビエル(Francisco de Xavier)は、日本に渡来した最初のイエズス会士(1506~1552)。スペインのナバラ王国の貴族。1541年東洋伝道の為インドからマラッカなどを遍歴、49年(天文18)鹿児島に来り、平戸・山口など日本各地に伝道。51年離日、中国に入ろうとして広東付近で病没。「インドの使徒」の称号を贈与された。漢名は方済各。シャビエル。ザベリヨ。

※5:「貧すれば鈍する」とは、貧乏に成ると頭の働きが鈍く成る、又、品性がさもしく成る。

※6:デカメロン(Decameron[伊])は、ボッカチオ(又はボッカッチョ)の小説。1348~53年作。10人の男女が各々1日一つずつの物語を10日間話すという形式。喜劇・悲劇・諷刺・好色など種々の要素に富み、近代都市勃興期の社会を良く描写して居る。十日物語

    (以上、出典は主に広辞苑です)

【参考文献】
△1:『食は広州に在り』(邱永漢著、中公文庫)。しかし著者は台湾の台南市の生まれです。

△2:『ザビエルの見た日本』(ピーター・ミルワード/松本たま訳、講談社学術文庫)。

△3:『デカメロン物語』(ボッカチオ作、野上素一訳、現代教養文庫)。

●関連リンク
参照ページ(Reference-Page):広州の地図▼
地図-中国・広東省の広州(Map of Guangzhou of Guangdong, -China-)
参照ページ(Reference-Page):感染症や免疫関連の用語集▼
資料-最近流行した感染症(Recent infectious disease)
参照ページ(Reference-Page):儒教の徳目について▼
資料-聖徳太子の事績(Achievement of Prince Shotoku)
補完ページ(Complementary):その後のハクビシンの運命とSARS▼
2004年・今年もSARS流行か?(Is the SARS prevalent ?, 2004)
私の「共生の哲学」▼
「動物の為の謝肉祭」の提唱(Carnival for Animals)
2005年・年頭所感-幸せ保存の法則
(Law of conservation of HAPPINESS, 2005 beginning)

ハクビシンが居た動物市場と中国「食」事情▼
中国のヘビーなお食事-”食狗蛇蠍的!”(Chinese heavy meal)
阿片戦争について▼
日本産アヒルと米国産白鳥(Japanese duck and American swan)
バブル崩壊以後の日本▼
戦後日本の世相史(Shallow history of Japan after World War II)
「感染症情報センター(IDSC)」のサイト▼
外部サイトへ一発リンク!(External links '1-PATSU !')


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