ξ.2004年・今年もSARS流行か?
[2004年・海外の話題#1:哀しきハクビシン
(Is the SARS prevalent ?, 2004)

−− 2004.01.09 エルニーニョ深沢(ElNino Fukazawa)
2004.05.21 改訂

 ■はじめに − 今年のSARS第1号患者発生
 お屠蘇気分の覚め遣らぬ2004年1月5日のネットニュースで、中国は広東省広州に於いて遂に今年のSARS重症急性呼吸器症候群又は新型肺炎<日本>又は非典型肺炎<中国>)第1号患者が発生したことを知りました。それに拠りますと
  中国衛生省は5日、先月16日に発熱を訴え24日にSARS感染の疑いで広州市内の病院に隔離されて居た広東省広州市の男性(32歳)について、「感染が確認された」と正式発表した。
ということです。これは昨年7月5日に世界保健機関(WHO)がSARSの事実上の感染収束宣言以来初めてです。

 ■哀しきハクビシン
 昨年事実上の感染収束宣言が発せられた時、SARSウイルス(=コロナウイルスの一種)は熱に弱いので夏場より冬場、次の冬に再発生するかどうかが問題だ、という指摘は多くの専門家に依って為されて居ましたが、やはり冬に成って出て来ましたね。そしてSARSのコロナウイルスの遺伝子配列と酷似して居るコロナウイルスを持つハクビシン(※1)がその感染源、ということで広東省政府は同1月5日、省内全ての野性動物市場を閉鎖し、食用に養殖・販売されて居るハクビシン計1万匹の処分を決定した。」そうです。広州の男性患者はハクビシンに接触して無いそうですが、可哀相なのはハクビシンですね。

 ■続報 − 第2号、3号患者の発生の疑い有り
 ところがです。私がこの記事を書き始めた頃の1月8日のニュースで第2号の疑いの有る患者が現れました。今度は「広州市の20歳の女性で、先月26日に発熱し現在広州市内の病院に隔離されて治療を受けているそうです。しかも、香港のメディアはこの女性を、何とハクビシンなどの野生動物を扱うレストランのウエートレス。」だと伝えて居ます。第2号です。
 更に同日香港のテレビ局の記者ら3人が高熱を出して現在香港の病院で検査中。この3人は先週、広州市内の病院や野生動物市場を訪れ、その内1人は野生動物を食べたらしい。」というニュースも有りました。第3号です。
 一方、第1号氏は症状が完全に収まったとして8日退院するそうです。
 昨年もそうだったのですが、中国はこれから旧正月(=春節)、帰省ラッシュで感染が地方へ拡大する恐れが有ります。ムムッムッ、俄然ヤバイ雰囲気に成って来ました!
                (>_<)

 ■広州とは、野生動物市場とは、ハクビシンとは
 昨年のSARSも広州から発生したのですが、広州とはどんな所かと言うと「食在広州」と言われる広東料理のメッカ、極めて日常的にヘビやイヌ(狗)や猫を食って居る、まあ食に関するタフ・マン&タフ・レディーの街です(△1のp10〜13)。広東料理の味付けは非常にマイルドで日本人の口には最も合う味付けです。食材は豊富、と言うか豊富過ぎるのがこういう騒ぎの原因ですね。
 広州人は昔から野生動物を食っていたので抗体が出来て免疫が有るのでウイルスに強く成ってる人も多いでしょう。その反面、昔からウイルス性の病気で毎年死んで居た筈ですね、屹度。しかし今日の様にマスコミが発達して無かったので別に話題にも問題にも成らなかったのです。昨年でも世界中合わせてSARS患者は1万人居なかった訳です、中国は俗に15億とか言われてますから、仮に中国人が1万人発症したとしても全体から見れば高々
  1万/15億=1/15万人=0.0007%
の発症率、しかも死亡者は発症者中の約1割の千人未満です。マスコミが発達して無い時代には屁の様な数に過ぎなかったのです。逆に言えば「屁の様な数字」で大騒ぎする様に成った、ということは中国が「先進国」に成ったということなのです。アフリカの奥地で千人単位で飢え死にしても何のニュースにも成りません。
                (-_*)

 さてSARSの感染源という話題に及ぶと決まって登場するのが、我々が動物市場(又は野生動物市場)と呼ぶ所です。SARSの発生源と目されて居る野生動物市場はずばり広州新源蛇鳥禽蓄綜合市場のことで広州市の西の外れに在ります(→広州市の地図を参照)。街中の清平市場にもヘビやイヌ(狗)や猫や蠍(サソリ)やゲンゴロウを売って居ますが、これらは広州市民から見れば”通常食材”です。”野生”と敢えて言われる動物、即ちネズミや孔雀や山猫や大型のイヌやハクビシンを売っているのは、市街地から外れた所に在る広州新源蛇鳥禽蓄綜合市場なのです。この市場やハクビシンについては既に
  「2003年・SARS−感染源はハクビシン?!」
の中でご紹介してますので、そちらを参照して下さい。

 ■■新情報追加記事(1月10日以降)
  <1月16日追加記事>
 1月16日のニュースに拠ると、10日から中国広東省広州に現地調査に入った世界保健機関(WHO)の専門家は16日、「感染が疑われる20歳の女性(←第2号嬢)が勤めるレストランのハクビシンの檻(おり)から、SARSウイルス遺伝子の一部が検出された。又、この遺伝子は同市内の野性動物市場からも検出された。」として居り、これでハクビシンとSARSウイルスとの関連性が決定的に成りました。

  <1月22日追加記事>
 ところがSARSだけでは無く、昨年暮れから今年に掛けて
  昨年11月に茨城県で発生した鯉ヘルペスウイルスに因る鯉の大量死
  今年1月のアメリカの狂牛病(BSE)発覚で牛の輸入制限騒ぎ
  今年1月のベトナム、山口県、タイでの鳥インフルエンザの流行

など、自然システムの”何か何処か”が可笑しく成っているみたいです。その為に私は「動物の為の謝肉祭」を提唱しました。
 私は実は昨年から「可笑しいな」と思っていたんですが、あの阪神タイガースの18年振りのリーグ優勝、あれは何か天変地異の”前触れ”ではないかと密かに感じていたのですが、どうも「虎の逆襲」「動物たちの反乱」の前兆だった可能性が有りまっせ、グゥワッハッハッハッハ!!

  <2月2日追加記事>
 今迄鳥インフルエンザのニュースを併記して居ましたが、今年はこちらの方が猛威を奮いそうなので、新たに別ページを作り鳥インフル関連の記事をそちらに移しました。
  鳥インフルエンザ情報→ 「2004年・鳥インフルエンザ流行」

  <2月3日追加記事>
 中国衛生省は1月31日「広東省広州市内の40歳の男性がSARSに感染したことが新たに確認されたと発表しました。男性は1月7日に発熱症状を訴え、通常の肺炎と診断されたが、その後の検査でSARS感染が確認されたもので、今の所感染ルートは不明。」中国では今冬4人目で、感染者は何れも広州の住民です。

  <5月21日追加記事>
 前回更新の2月3日以降、中国では北京の国立ウイルス学研究所の研究者3月末4月中旬に1名ずつ発症しましたが、この最後の発症から3週間以上が経過しても新たな感染が認められなかった為、WHO5月18日ヒトからヒトへの感染の連鎖は断たれた。」と宣言しました。
 この安全宣言を受けて、このページでのSARSの”追っ掛け”記事は2004.05.21の更新を以て終了します。どうも有り難う御座いました!!
                m(_=_)m

    {このの章は04年5月21日に最終更新しました。}

 ■結び − 今年は鳥インフルエンザ
 昨年1年はSARSの為に外国に行くのを控えていたんですが、今年は3月頃広州へ行こうかなどと考えていた矢先なんですがねえ、困っちゃったなあ、トホホ!
 今年は鳥インフルエンザの方が大きな問題に成り、日本では自殺者を出したりして刑事告発に発展し、SARSは今年はその陰に隠れて仕舞った感が有りましたが良い事です。昨年の「学習効果」が寄与した結果でしょう。
    (>_<) (-_<) (-_-) (*_-) (@_-) (@_@) (@_^) (^_^) (^o^)/~~~

 尚、[2004年・海外の話題]シリーズの他画面への切り換えは最下行のページ・セレクタで行って下さい。(Please switch the page by page selector of the last-line.)
    {このの章は04年3月22日に最終更新しました。}

ξ−− 完 −−ξ

【脚注】
※1:ハクビシン(gem-faced civet, 白鼻心)は、(中国語では花面狸食肉目ジャコウネコ科の哺乳類。体長50cm程。毛色は全体に黒褐色で、顔、四肢、尾は黒い。名は鼻の白い線に由来。目の下、耳の下に白斑を持つ。インド/マレーシア/中国など東南アジアに広く分布。日本では、移入されたと思われるものが野生化。雑食性・夜行性で、ミカンなどを食害。生殖器の近くに麝香腺を持ち、特殊な香りの分泌液(霊猫香)を出す。

    (以上、出典は主に広辞苑です)

【参考文献】
△1:『食は広州に在り』(邱永漢著、中公文庫)。しかし著者は台湾の台南市の生まれです。

●関連リンク
参照ページ(Reference-Page):広州の地図▼
地図−中国・広東省の広州(Map of Guangzhou of Guangdong, -China-)
参照ページ(Reference-Page):感染症や免疫関連の用語集▼
資料−最近流行した感染症(Recent infectious disease)
補完ページ(Complementary):広州の動物市場とハクビシン▼
2003年・SARS−感染源はハクビシン?!
(The SARS, what is the source ?, 2003)

昨年のSARS終息宣言▼
2003年・新型肺炎SARSとは?!(The SARS, new pneumonia, 2003)
自然システムの”何か何処か”が可笑しく成っている▼
(SARS・鳥インフルエンザ・鯉ヘルペス・BSEなどに言及)
「動物の為の謝肉祭」の提唱(Carnival for Animals)
昨年から「可笑しい」と思っていたこと▼
2003年・雲南で大地震、ヨーロッパは熱波
(The earthquake and heat-wave, 2003)

「虎の逆襲」は天変地異の前触れか?▼
2003年・阪神、御堂筋パレード
(The victory parade of HANSHIN Tigers, 2003)

「感染症情報センター(IDSC)」のサイト▼
外部サイトへ一発リンク!(External links '1-PATSU !')


Select page:|1:新型肺炎(SARS)|2:鳥インフルエンザ(Avian Influenza)
          3:スマトラ島沖地震(Sumatran EQ)

総合目次に戻ります。Go to Main-menu 上位画面に戻ります。Back to Category-menu