資料−最近流行した感染症
(Recent infectious disease)

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 ■感染症とは(Infectious disease)

 当ページは最近世界的に大流行した感染症についての項目説明集で、各本文ページから参照の便宜を図る為に作成しました。尚、各項目説明の出典の記載無きは「広辞苑」か「学研新世紀ビジュアル百科辞典」です。

 ○感染症(infectious disease)とは、微生物(細菌・ウイルスなど)や寄生虫などの病原体が体内侵入(=感染)に因って起きる病気。伝染病。但し日本では「感染症予防・医療法」(1999年施行)に依り従来の伝染病は感染症と称することに成った。

 ○伝染病(infectious disease)とは、病原体の伝染で起る病気。旧伝染病予防法では、法定伝染病11種の他、指定伝染病2種(急性灰白髄炎/ラッサ熱)と、届出伝染病13種(インフルエンザ/狂犬病/炭疽/伝染性下痢症/百日咳/麻疹(はしか)/急性灰白髄炎/破傷風/マラリア/つつがむし病/フィラリア/黄熱(おうねつ)/回帰熱)を、別に単独立法で、結核/性病(=梅毒/淋病/軟性下疳/鼠径リンパ肉芽腫)/ハンセン病/日本住血吸虫病などを伝染病として、届出義務や予防措置を定め、又ラッサ熱/マールブルグ熱/エボラ出血熱などは厚生省が国際伝染病として指定して居た。人間以外の動植物にも、諸種の伝染病が在る。流行り病(はやりやまい)。疫病。1999年制定の「感染症予防法」に依り現在その殆どを感染症と呼ぶ

  ・疫病(epidemic, plague)は、
   [1].(えきびょう)流行病。伝染病(現在の感染症)。流行り病(はやりやまい)。
   [2].(古く「やくびょう」と読んで)特に猛烈な伝染性の熱病。流行病。疫病(えやみ)。「―神(やくびょうがみ)」

 ○感染症予防・医療法(Law of infectious disease prevention)とは、危険性の極めて高い感染症に備え、その予防対策、患者・感染者への適切な医療の提供、早期に社会復帰が出来る仕組みなどを定めた法律。1999年成立旧伝染病予防法・エイズ予防法・性病予防法の3つの法律を一本化したもの。
 この法律に基づき、感染症は感染力や感染時の危険度などから一類〜四類感染症指定感染症新感染症に分類される。

  ・一類感染症(1st-class infectious disease)とは、感染力や感染時の症状などから、危険が極めて高い感染症エボラ出血熱ペストラッサ熱など。入院が原則。

  ・二類感染症(2nd-class infectious disease)とは、危険性が高い感染症急性灰白髄炎(ポリオ)コレラ細菌性赤痢ジフテリアなど。状況に依り入院が必要。

  ・三類感染症(3rd-class infectious disease)とは、危険性は高く無いが、特定の職業への就業に依り集団発生を起こし得る感染症腸管出血性大腸菌感染症(O−157が原因)を指す。

  ・四類感染症(4th-class infectious disease)とは、国が感染症の発生状況を調査し、国民や医療機関にその情報を提供・公開することで、発生・拡大が防げる感染症。通常のインフルエンザ黄熱(おうねつ)/狂犬病後天性免疫不全症候群(エイズ)梅毒麻疹(はしか)など。

  ・指定感染症(specified infectious disease)とは、1年に限って政令で指定される感染症一〜三類感染症に準じた対応が必要。

  ・新感染症(new-type infectious disease)とは、人から人へ感染する病気で、既に解って居る感染症とは異なる新型の感染症で、その感染力や感染した時の症状などから、危険性が極めて高い感染症一類感染症に準じた対応が必要。

 ○家畜法定伝染病(notifiable disease)とは、家畜伝染病予防法に依って定められた伝染病。

  牛疫、牛肺疫、口蹄疫、流行性脳炎、狂犬病、水胞性口炎、リフトバレー熱、
  炭疽(たんそ)、出血性敗血症、ブルセラ病、結核病、ヨーネ病、
  ピロプラズマ病、アナプラズマ病、伝達性海綿状脳症(BSE)
  鼻疽(びそ)、馬伝染性貧血、アフリカ馬疫、豚コレラ/アフリカ豚コレラ、
  豚水胞病、家禽コレラ、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)
  ニューカッスル病、家禽サルモネラ感染症、腐蛆病

25種類が定められて居る。病気に罹って居るか、その疑いの有るものを発見した獣医師は市町村長に届け、必要な処置を取る。

 ■各種の感染症の項目説明
  (Explanation of various infectious diseases)

  ●最近の感染症の流行

    1981年:HIV(エイズ)    アメリカ
    1992年:BSE(狂牛病)    イギリス、EU
    1996年:O−157       日本
    2003年:SARS        中国
          KHV(鯉ヘルペス)  日本
    2004年:鳥インフルエンザ    ベトナム、中国、韓国、日本
          BSE(狂牛病)    アメリカ
    2006年:ノロウイルス      日本
    2007年:馬インフルエンザ    オーストラリア、日本(競馬)
    2009年:豚インフルエンザ    メキシコ、アメリカ、日本
    2010年:口蹄疫         日本(宮崎県)

  ●各種の感染症

 (1)後天性免疫不全症候群
    (Acquired Immunodeficiency Syndrome, AIDS/AIDS)

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に因って起こる病気。エイズ1981年アメリカ合衆国で世界で初めて新しい病気としてエイズと思われる症例が報告され、1983年にフランスでエイズと思われる患者のリンパ節から新しいヒトレトロウイルスが発見されたのがHIV−I型で、86年にはHIV−II型も発見された。
 このウイルスは血液の中に入るとT4リンパ球などを破壊する。その結果、全身の免疫機構が破壊されて抵抗力が無くなる。普通なら病気の原因に成らない様な病原性の弱い微生物(例えばニューモシスチス・カリニ)が肺炎を起こす様に成る。HIVに感染しても直ぐに症状は出ない。しかし数週間後にインフルエンザに似た症状、即ち咽頭痛、筋肉痛、倦怠感などを示すことも有る。これは一時的な症状で三日から二週間で治る。本当の症状が現れるのは感染して5〜10年後、早くて約1年である。感染から10年後の発症率は約50%で、症状は微熱、寝汗、リンパ節腫脹、食欲減退、体重減少、疲れ易いなどである。これをエイズ関連症候群(ARC: AIDS Related Complex)と言う。これにカリニ原虫に因るカリニ肺炎の症状(呼吸困難、激しい咳、たん)やカポジ肉腫(皮膚に紫がかった皮疹が出来る)が出ればエイズが発症した事に成る。発症すると死亡率が高い
 エイズのウイルスは血液・精液・腟分泌物や母乳に含まれて居り、これが粘膜や皮膚の傷などから他人の血液の中に入ると感染が起きる。このウイルスは熱やアルコールに弱く56℃、30分加熱で感染力を失う。現在の感染経路は大別して三つに分けられる。汚染された血液又は血液製剤を介するもの(血友病患者や同じ注射針を共有する麻薬の静脈内回し打ちなど)、男性同性愛又は異性間性行為に因るもの及び母子感染である。男性同性愛では肛門性交が出血を起こし易く多量のウイルスを含んだ精液が血液中に入り易い。<出典:「現代用語の基礎知識(1999年版)」>

  ・レトロウイルス(retro virus)とは、逆転写酵素を持つRNAウイルス。感染後ウイルスの遺伝情報が逆転写されて宿主細胞のDNAに組み込まれる。腫瘍ウイルス/スプマウイルス/レンチウイルス(遅発性ウイルス)の三つの亜科に分けられ、家鶏肉腫/マウス乳癌/マウス白血病など動物の各種腫瘍のウイルス、ヒト成人T細胞白血病ウイルス、エイズウイルス(HIV)などを含む。

 (2)牛海綿状脳症(Bovine Spongiform Encephalopathy, BSE/BSE)

 俗に狂牛病1986年にイギリスで発生が確認されたBSEは、ウシの屑肉で作られた肉骨粉に混入したBSE病原体が、それを飼料として食べた他のウシに感染して行くという”共食い”の連鎖で広まりました。1992年にイギリスで36,000頭が感染、その後EU諸国に広まりました。
 BSEは体内蛋白質プリオン(prion)が異常型に変わり、脳がスポンジ状(海綿状)に成って起立不能や更には錯乱状態に陥り、2週間〜半年でに至る病気。潜伏期間は2〜8年。異常型プリオンに汚染された脳・脊髄・腸等の飼料としての摂取が主原因と考えられ、同じプリオン病に属する動物の

  羊・山羊のスクレイピー(海綿状脳症)→ 牛のBSE
   → 人の新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)


という感染連鎖が指摘が1996年イギリスで発表されて大騒ぎに成りました。決定的な治療法は未だ無く、焼却するしか無い。牛肉や牛乳自体には異常型プリオンは見付かって居らず、食べても安全とされるが、屠殺時の脊髄の処理に依っては肉などに異常型プリオンが付着する可能性が有る。
 日本では2001年9月に1頭目が千葉県の農場で確認され、これを受けて01年10月から屠殺牛の全頭検査が実施されBSE感染牛は市場に出回らない体制が構築されて居る。03年10月には8頭目が確認された。感染源として輸入肉骨粉飼料が疑われて居るが、感染経路は特定されて無い。日本では薬害エイズと同様に脳硬膜移植でCJDが感染し問題に成って居ます。伝達性海綿状脳症。
 そして2004年にはアメリカで大量発生して居ます。<出典:「現代用語の基礎知識(2004年版)」>

  ・クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob Disease, CJD/CJD)とは、大脳皮質を中心とする神経細胞の脱落、脳組織が海綿状に変性を来す疾患。潜伏期間5〜15年。性格変化・記銘力低下で発症し、痴呆が進み、多彩な神経症状を伴う。数ヵ月から1年半の経過で死亡。病原体はプリオンとされ症状的に狂牛病(BSE)との関連が疑われて居る。ドイツの神経病学者クロイツフェルト(H. G. Creutzfeldt1885〜1964)、ヤコブ(A. M. Jakob1884〜1931)が記載。

  ・スクレイピー(scrapie)とは、脳の変性・破壊を主徴とするヒツジの疾患。病原体はプリオンと考えられて居る。

  ・プリオン(prion)とは、クールー/スクレイピー/狂牛病/クロイツフェルト・ヤコブ病などの病原体と考えられる蛋白質性の感染因子。一種の糖蛋白質でDNAやRNAを含まずウイルスでは無い正常の脳に含まれて居るが、変異を来すと病原性と成り、正常なプリオンに接着して異常なプリオンに変え、脳に広汎な破壊を起す。

  ・クールー(kuru)とは、(原地語に由来)パプアニューギニアの一部族に見られた慢性進行性神経疾患成人女性に多く、歩行失調と震えに始まり、言語障害・情動変化を伴い歩行不能と成って数ヵ月で死亡食人(=人同士の”共食い”)の習慣に因り伝染するプリオン病で、食人を廃して後減少消失した。

 (3)重症急性呼吸器症候群
    (Severe Acute Respiratory Syndrome, SARS/SARS)

 日本語正式名称は「重症急性呼吸器症候群」(略称は「新型肺炎」)、中国では「非典型肺炎」と呼ばれる感染症で、主な症状は38℃以上の発熱、咳、息切れ、呼吸困難などで、胸部レントゲン写真では肺炎に似たスリガラス状の影が見られます。原因と成る病原体は新型のコロナウイルスでSARSコロナウイルスと名付けられた。
 2002年11月に中国広東省に端を発し(←後から解明された)、2003年春から香港、北京、台湾、カナダ、シンガポール、ベトナムなど世界に跨って猛威を奮い、延べ8000人以上が感染し800人以上が死亡。04年も広東省で3人が認定され、これから広がるのかどうか注目されて居ます。03年から広州市のハクビシン等から同様のコロナウイルスが検出され疑われて居たが、03年後半に世界保健機関(WHO)広州の野生動物市場のハクビシンが感染源と断定した。SARSコロナウイルスは熱に弱く冬季に流行する。

  ・コロナウイルス(corona virus)とは、コロナウイルス科のウイルスのことで、顕微鏡で光輪や王冠の様な光冠(コロナ)の形に見える一群のウイルスです。この中には感冒(風邪)の原因と成るウイルスが含まれ、感冒の原因の約15%という文献記載も在る。これらのウイルスは人の軽症から中等症の上気道感染症の一般的な原因ウイルスであり、動物では、呼吸器・胃腸・肝臓・神経の病気を起します。コロナウイルスは環境中で3時間も生き延びる。

  ・パラミクソウイルス(paramixo virus)とは、パラミクソウイルス科のウイルスで、この中には麻疹(はしか)ウイルス、ムンプスウイルス(流行性耳下腺炎:お多福風邪)、パラインフルエンザウイルス、RSウイルスなどが含まれる。

 (4)鯉ヘルペス − KHV(Koi herpes virus)

 KHV(鯉ヘルペスウイルス/コイヘルペスウイルス)は、マゴイとニシキゴイにのみ感染し、鯉養殖が最も盛んな国イスラエルで1997年に初めて確認され、その後アメリカ、ヨーロッパや東南アジア等で発生して居ます。エラが白く成り体表が爛れ、に至る。死亡率は高く現時点では治療法は無い人には感染せず仮に食べても人体に影響は無い
 2003年11月に日本で突然大量発生、茨城県の霞ヶ浦と北浦で養殖して居た約1124トンの食用コイがKHVに感染し死にました。感染したコイが居ると接触や水を介して他のコイに感染します。感染源としては輸入コイ媒介説餌媒介説など幾つかの可能性が挙げられて居ますが、日本のコイの最初の感染ルートは未解明。イスラエル起源のKHVに対し、何でも霞ヶ浦地区の養殖漁業協同組合のオジサンが「人為的持ち込み説」を唱えたことから、巷ではユダヤのエージェント説迄飛び出して居ます、爆笑!

 (5)鳥インフルエンザ(Avian influenza)

 鳥インフルエンザウイルス/トリインフルエンザウイルスはヒトで流行して居るロシア型(=旧ソ連型、H1N1型)や香港型(H3N2型)とは異なりますが、大きな分類では何れもA型インフルエンザウイルスに属するものです。鶏、七面鳥、鶉(うずら)等が感染すると、全身症状を起こし、神経症状(首曲がり、元気消失等)、呼吸器症状、消化器症状(下痢、食欲減退等)等が現れ、大量死する場合も有ります。
 鳥インフルエンザの人への影響を見ると、これ迄にヒトからヒトへの感染は無く、ヒトの症状としては結膜炎が主な症状で、発熱、咳などのヒトの一般的なインフルエンザと同様なものから、多臓器不全に至る重症なもの迄様々な症状が有り、主な死因は肺炎でした。潜伏期間は4〜5日とされ、有効なワクチンは現在未だ無いのが現状。しかし鳥インフルエンザウイルスは加熱(75℃で1分)に因り死滅します。又、紫外線にも弱く、夏に成れば流行は収まるだろうと言われて居ます。
 これ迄香港(H5N1型:1997年,2003年)、米国(H5N2型:1983年,2003年)、オランダ(H7N7型:2003年)、ドイツ(H7N7型:2003年)、韓国(H5N1型:2003年)など世界各地で発生し、今問題に成っているのはベトナム(H5N1型:2004年)で発生して居るもので、既に5人の死者が出て居ます(1月20日現在)。又、04年1月22日にはタイで鳥インフルエンザが発生した疑いが有るとして、農水省は鶏肉などのタイ(=鶏肉の最大輸入先)からの輸入を一時停止しましたが、後日これもH5N1型と判明。この様に全身症状を出したり死亡したりと強い病原性を示すものを高病原性鳥インフルエンザ(Highly Pathogenic Avian Influenza, HPAI/HPAI)と呼び、03年秋〜04年春の流行ではH5N1型です。
 日本では1925年以来発生は有りませんでしたが、2004年1月16日に山口県阿東町の採卵養鶏場で高病原性鳥インフルエンザの発生が確認され、2月13日にやはりH5N1型と判明しました。感染経路としては餌媒介説も出て居ますが、ベトナムや韓国などとの関連性に於いて渡り鳥媒介説が有力です。渡り鳥媒介説の媒介者として可能性が高いのは水鳥、特に野ガモです。野ガモはは鳥インフルエンザウイルスの自然界保有体で、ウイルスに最も抵抗性が有るからです。
 → その後2004年2月6日に嘗て猛威を奮ったスペイン風邪と鳥インフルエンザの関連性がイギリスの研究グループに指摘されて居ます。

  ・スペイン風邪(Spanish influenza)は、1918年スペインから起り、翌1919年に掛けて世界各国に広まったインフルエンザ。死亡率が高く人類の半数が罹り4000万人が死亡し、第一次世界大戦の戦死者よりも多かったことで有名。世界風邪。病原体はインフルエンザウイルスA型(H1N1型)。

 (6)ノロウイルス(Norovirus, NV/NV)は、非細菌性急性胃腸炎を引き起こすカリシウイルス科(Caliciviridae)のウイルスの一種で、エンベロープ(envelope、外被)を持たないプラス一本鎖RNAウイルスに分類される。カキ(牡蠣)などの貝類に因る食中毒の原因に成る他、感染したヒトの糞便や嘔吐物やその乾燥物から出る塵埃を介して経口感染する。感染防止策は充分な手洗いと食品の加熱
 1968年米国オハイオ州ノーウォーク(Norwalk)の小学校で集団発生した食中毒で検出されノーウォークウイルス(Norwalk virus)と呼ばれ、直径30〜38nmの正二十面体という形状から小型球形ウイルス(Small Round-Structured Virus, SRSV/SRSV)とも呼ばれた。その後、1977年札幌での集団食中毒から異なった種が発見されサッポロウイルス(Sapporo virus)と呼ばれたが、2002年の国際ウイルス学会で正式にノーウォークウイルスをノロウイルス(Norovirus)、サッポロウイルスをサポウイルス(Sapovirus)と正式に命名された。
 そして牡蠣を食する日本で再び2006年暮れに流行。<出典:「フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)」>

 (7)口蹄疫(foot-and-mouth disease, FMD/FMD)は、牛・豚・羊など偶蹄類が罹るウイルス性の家畜法定伝染病。感染獣は発熱・流涎(りゅうぜん)し、口腔粘膜・蹄部皮膚などに多くの水疱を生じ、食欲不振に成る。伝染力が強く治療法が無い為、感染すると殺処分する。ヒトにも感染することが有る。1997年台湾で猛威を振るった。

  ●感染症に関わる基本用語

 ○細菌(bacillus, bacterium, bacteria)とは、原核生物に属する単細胞の微生物。幅0.1〜3.0μmで、球状・桿状・螺旋状などを呈する。細胞壁・細胞膜で囲まれた細胞質内には膜で包まれた核や小器官を欠き、種類に依り莢膜(きょうまく)・鞭毛・線毛を持つ。二分裂を繰り返して増殖し、一部のものは芽胞(胞子)を作る。無機物の酸化に依りエネルギーを得る化学独立栄養菌有機物を栄養源とする化学従属栄養菌とが在り、生態系の中で物質循環に重要な役割を果す他、在る種のものは動植物に寄生して病原性を示す。黴菌(ばいきん)。バクテリア

 ○ウイルス(virus[ラ])は、遺伝情報を荷う核酸(DNA又はRNA)とそれを囲む蛋白殻(カプシド)から成る微生物。蛋白・脂肪・糖質を含む外被(エンベロープ)を持つものも在る。細菌濾過器を通過する程小さく、大きさ20〜300nm。代謝性を持たないので生きた細胞内でしか増殖出来ず、それぞれのウイルスに特異な宿主細胞に寄生し、その蛋白合成やエネルギーを利用して増殖し、それに伴い細胞障害・細胞増殖、或いは宿主生物に種々の疾病を起す。宿主と種類に依り動物ウイルス/植物ウイルス/昆虫ウイルス/細菌ウイルス(バクテリオファージ)に大別。人や動植物の病原体。濾過性病原体ヴィールス。バイラス。ビールス。

 ○寄生虫(parasite, parasitic worm)とは、他の生物に寄生し、それから養分を吸収して生活する小動物。シラミダニ条虫回虫十二指腸虫など。

 ○インフルエンザ(influenza)とは、インフルエンザ・ウイルスに因って起る急性伝染病。多くは高熱を発し、四肢疼痛・頭痛・全身倦怠・食欲不振などを呈し、急性肺炎を起し易い。流行性感冒流感

 ○感冒(かんぼう、cold)とは、身体を寒気に曝したり濡れた儘放置したりした時に起る呼吸器系の炎症性疾患の総称。風邪現在、有効な化学療法剤が無く、対症療法剤を服用し安静にする。肺炎などの二次感染を防ぐ為に抗生物質を投与。日葡辞書「カンバゥ」。「流行性―」。

 ○抗原/抗元(antigen)とは、生体内に入ると抗体を形成させ、体内又は試験管内でその特定の抗体と特異的に反応する物質。細菌・毒素、異種蛋白など生体にとって異物的な高分子物質が抗原として作用する。アンチゲン。←→抗体

 ○抗体(antibody)とは、生体が抗原の侵入に反応して体内に形成する物質。その特定の抗原と特異的に反応して凝集・沈降、又は抗原毒素を中和するなどの作用が有り、生体にその抗原に対する免疫性過敏性を与える。抗体として働くのは免疫グロブリンで、Bリンパ球・形質細胞に依って産生され、血清のガンマグロブリン分画に含まれる。免疫体。←→抗原

 ○抗原抗体反応(antigen-antibody reaction)とは、抗原と、これに対応する抗体とが結合して起こる特異的反応。試験管内では凝集・沈降・溶血などの現象として肉眼的に観察され、又、人や動物体内では、免疫アレルギー過敏症(特にアナフィラキシー)などの原因と成る。

 ○ワクチン(Vakzin[独], vaccine)とは、(元「牝牛」の意のラテン語 "vacca" から出た語で、牛痘の意、イギリスの医者ジェンナーの牛痘種痘法発明に因む) 免疫原(抗原)として用いられる各種伝染病の弱毒菌・死菌・無毒化毒素。生体に接種して抗体を生じさせる。死菌(チフス/コレラ/インフルエンザ/ポリオソーク・ワクチンなど)、弱毒の生ワクチン(BCG/痘苗/ポリオ生ワクチンなど)、無毒化したトキソイド(ジフテリア/破傷風など)の3種がある。

  ・種痘(vaccination)とは、痘苗(とうびょう)を人体に接種し、天然痘に対する免疫性を得させ、感染を予防する方法。牛痘種痘法はジェンナーの発明。植え疱瘡(ぼうそう)。

 ○免疫(immunity)とは、生体が疾病、特に感染症に対して抵抗力を獲得する現象。自己と非自己を識別し、非自己から自己を守る機構で、脊椎動物で特に発達。微生物など異種の高分子(抗原)の体内への侵入に対してリンパ球・マクロファージなどが働いて特異な抗体を形成し、抗原の作用を排除・抑制する。細胞性免疫体液性免疫とが在る。

  ・細胞性免疫(cell immunity)とは、Tリンパ球マクロファージが関与する免疫反応。

  ・マクロ・ファージ(macrophage)とは、細菌・異物・細胞の残骸などを細胞内に取り込み消化する力の強い大型の単核細胞炎症の修復免疫に与(あずか)る。大食細胞

  ・体液性免疫(humoral immunity)とは、液性抗体、即ち免疫グロブリンに依って行われる免疫反応。

 ○アレルギー(Allergie[独], allergy)とは、抗原として働く物質の注射・摂取に依り抗体を生じ、抗原抗体反応を起こす結果、抗原と成った物質に対する生体の反応が変わる現象。広義には免疫即ち抗原の害作用への抵抗の増大も含まれるが、狭義には反応の変化の結果傷害的な過敏症状を呈するものを言い、アナフィラキシー反応/アレルギー性細胞傷害/免疫複合体反応(アルツス反応)/遅延型過敏症(細胞性免疫反応)の各型が在る。アレルギーの原因と成る抗原物質をアレルゲン(Allergen[独])と言う。1906年オーストリアの小児科医ピルケ(C. Pirquet、1874〜1929)の命名

 ○過敏症(hypersensitivity)とは、特定の刺激に対して異常に強い反応を起す状態。抗原抗体反応に基づくアレルギー、殊にアナフィラキシーはその典型的なもの。免疫反応と無関係な特異体質に依るものも在る。

 ○アナフィラキシー(Anaphylaxie[独])とは、(「無防備」の意)アレルギーの一種。抗原抗体反応に依り急激なショック症状を発し、著しい場合に至る現象。平滑筋の攣縮(れんしゅく)が基本的現象で、血液循環障害・呼吸困難等を来たす。

 ■感染症の監視体制(Monitoring system of infectious disease)

 感染症の監視体制として現在、国際的には世界保健機関(WHO)、国内的には国立感染症研究所が在る。

 ○世界保健機関(World Health Organization, WHO/WHO)とは、保健衛生分野の国連専門機関で、1948年に設立された。WHO憲章では「健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態」であるとし、その目的を、「全ての人民が可能な最高の健康水準に到達すること」と定める。この目的達成の為にWHOは、国際保健事業の調整、保健事業援助、伝染病・風土病撲滅、衛生状態改善、保健関連条約の提案・勧告、医療・衛生等の国際基準策定などの幅広い任務を与えられて居る。80年には天然痘の完全撲滅を宣言した。近年は、HIVエイズやエボラ熱等の新種感染症への対処やリプロダクティブ・ヘルス、生命倫理等の分野でも積極的に貢献して居る。
 WHOは世界保健総会、執行理事会、事務局の三者から構成される。総会採択の保健規則は、一定期間内に拒否又は留保を通告しない限り、加盟国を拘束する。又、神戸には健康開発総合研究センターが設置されて居る。本部はジュネーブ、加盟国数は2001年12月現在で191。日本は51年に加盟。<出典:「現代用語の基礎知識(1999年版)」>

 ○国立感染症研究所(National Institute of Infections Diseases, NIID)は、感染症・癌・エイズなどを中心に病因・病理、予防・診断・治療法などを研究し、ワクチンの開発・製造も行う厚生労働省所管の研究所。1947年設立の国立予防衛生研究所が前身、1997年現名に改称。東京都新宿区戸山に所在。世界保健機関(WHO)の日本センターでもある。2001年4月、独立行政法人化。

  ・感染症情報センター(Infectious Disease Surveillance Center, IDSC)は、国立感染症研究所の一部署で、感染症に関する情報の広報を担当。現在流行中の感染症情報をインターネットで速報して居る。


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