硝子の林檎の樹の下で 烏兎の庭 第四部
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2011年2月


2/5/2011/SAT

イエスの父はいつ死んだか―講演・論文集、佐藤研、聖公会出版、2010

Pen、2011年1月15日号、特集―キリスト教とは何か。Ⅱ、阪急コミュニケーションズ、2011

2月の第一金曜日。自分の人生を変えてしまうような大きな出来事が起きそうな気がする日ちょうど30年前、そういう出来事が確かに起きた日

今年も、確かに思いがけない出来事が起きた。

念願のエジプト旅行へ出かけた両親が、帰国予定日だった先週土曜日、カイロ空港で足止めとなった。

ローマ行きの政府チャーター機は、ローマまでの費用も自費、ローマから日本まではフライトさえ自力で探して購入しなければならないというのであきらめた。そもそも、この救援は初動が遅かった。

カイロからの帰国便の席がとれるまで空港近くのホテルで待つことにしたという連絡を受けたときは、驚いた。亡命しようとする大統領を空港で反体制派が阻止しようとすれば空港はもっとも危険な場所になる。なぜ、一刻も早く出国しないのか、危機感を煽る報道ばかり見せられていた方は訝しがった。

当人たちにしてみれば、空港付近でデモや銃撃戦を見たわけではなく、危機感はそれほどなかったらしい。それよりも、すでに一週間の旅で疲れているうえに、空港ロビーで一晩過ごしただけで疲労はかなりたまっていた。

だから、いつ再開するかわからない直行便を待って空港で待ち続けることはできなかったし、ローマからは自力でフライトを確保しなければならない政府救援ルートを選ぶ気力もなかったという。

結局、2日間郊外のホテルでゆっくり休んでからドバイ経由で帰国した。これは正解だった。旅の疲れも、空港での大混乱の疲れも現地で落としてこられた。思いがけず、豪華な航空会社に搭乗し、最新のドバイ空港も見物できたと言う。

どれほど疲れているのか、心配して羽田空港まで出迎えに行くと、思いのほか元気そうで拍子抜けした。


夕べは、もう一度両親の顔を見に会社から出かけて行った。ギザのピラミッドからアブシンベル神殿まで、800枚以上の写真を見ながら、たっぷりみやげ話を聞いた

次はサンクトペテルブルクに行ってみたいと言う。まったく懲りない、というべきか、昭和ひとケタの逞しさか。美田を残す必要はない。好きなだけ旅すればいいだろう。


金曜日の晩、一階の和室で寝た。30年前の今ごろ、ここには白い木箱が置いてあり、家中がとてつもなく重い空気で満たされていた。

あの日のことを思い出そうとしながら、私は目を閉じた。

今夜、この屋根の下で眠っている人は誰も、同じことを思い出し、同じことを考えている。でも、誰一人それを口に出すことはなかった。

法事もミサも、墓参さえなく、静かに31回目の2月最初の金曜は過ぎた。

もちろん「復活」もなかった。

朝、目を覚ましたとき、夢を見ていたたような気がしたけれど、起きた時にはなにも覚えていなかった。


危機や困難に幾度となく遭遇しているのに、生き延びている生命がある。その一方であっけなく立ち去る生命もある

「運命」という言葉は使いたくない。不幸な出来事で「悲劇」であったことは否定しない。でも後者が「軽率だった」「弱かった」と責めたくはない。そんな単純なことではない。

イエスの磔刑について「愚かな指導者」とか「過激すぎた当然の結果」などと弟子たちが思っていたら、「キリスト教」という宗教は生まれなかっただろう。

つい最近、期待を持って読みはじめたある本のなかでは「最悪の事態」と書かれていた。これほど遺された者を傷つける言葉はない。

感想文を書くつもりで読みはじめたこの本について、何か書き残すことはないだろう。


2/19/2011/SAT

「復活」と書いて思い出した小説がある。朱川湊人「いっぺんさん」(2007、『きみが見つける物語 十代のための新名作 友情編』、角川文庫、2008) 。

朱川湊人は日経新聞夕刊のすこし長いコラム、「プロムナード」の欄で読んだことがあった。軽妙な文体のなかに優しさを感じる文章だった。ウルトラマンやガンダムが話題になっており、おそらく、年齢も近いだろうと思っていた。娘が買った人気作家の短編を集めた文庫本に朱川湊人の作品があると教えてくれた。

この物語では、時代も場所もまったく違うけれども、その構造は石井研が解き明かした「イースター事件」とまったく同じ。


2/26/2011/SAT

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