日蓮宗妙厳山信隆寺(茅ヶ崎市) | トップへ |

ひとこと

寺報第41号より

合掌。残暑お見舞い申し上げます。この夏は記録的な猛暑でした。流石に九紫火星年 火の年です。九紫に九紫が重なると強烈な水の現象が起こるとされますが、それが七月(年盤九紫 月盤九紫)でした。

西日本豪雨災害によって亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。

七月のお盆棚経を終えて、そのまま車内で着替えて岡山へ行きました。夜の到着で、当時は宿泊もままならなかったので、取り敢えず車を借りて山奥まで走らせてキャンプ場に隣接している小さな宿を訪ね、寝かせてもらいました。翌朝。真備へ向かい眼前の光景に愕然としました・・・

思い出したのは七年前の東日本大震災の津波です。規模は違うけれども景色は一緒でした・・・5mの水に浸かった町並みは水の恐ろしさを見せつけます。泥に埋もれた道、全てが水に浸かった家具や寝具、転がった車、積まれた瓦礫の山々・・・自衛隊の方々が昼夜を問わずに働いていました。私も微力ながらお年寄りのご家庭で家の中に溜まった泥のかき出しや家具の廃棄を手伝わせて頂きましたが、大変な作業でした。暑さがもの凄く、まさに滝のような汗が吹き出します。状況を伺えば、あっという間の出来事だったそうです。水が来てしまうと気がついたときには既に逃げられない。水の力は恐ろしい・・・と語ります。

状況を把握するために人に話を聞いて一旦戻り、再度仕事の合間を探してもう一度真備へ。今度は作業道具を用意して重機の入らない場所での堆積した泥の撤去作業をしました。泥の重さに仰天です。普段から体を動かしていない事がたたり、全身が筋肉痛です。水の力も強いのですが泥は強烈です。全てをなぎ倒し辺りを茶色一色に変えてしまいます。水分を含んでいるときは重く、乾けばカチカチになり除去するのも大変になります。想像以上でした。

こうして現地を回っていると、お坊さんとしての一コマもあります。家の中が泥だらけと言うことは仏壇や神棚も滅茶苦茶になってしまっています。そこで私達の出番がやって参ります。ご先祖様に申し訳ないから是非ともお経をあげて下さいと頼まれます。お経をあげ、お題目を唱えます。一般のボランティアの方には、やりたくても出来ない特別な作業です。お坊さん冥利に尽きます。東北でも同じような経験がありますので頼まれた先で次々と回向をしていきます。宗派を問わず、南無妙法蓮華経 南無妙法蓮華経と・・・時間に限りが有り、短い滞在期間でしたが少しでもお手伝いが出来たことに感謝します。被害に遭われた方には心よりお見舞い申し上げます。そして亡くなられた方の冥福を祈らずにはいられません。先日のお寺での施餓鬼供養でも回向をさせて頂きました。当日に参拝をなされ、一緒に手を合わせて供養を捧げて下さった方々、有り難うございます。また災害犠牲者へのお塔婆供養、義援金の協力等 感謝致します。皆様のお気持ちは現地へと届けさせて頂きます。

法要の中で犠牲者の為に皆で唱えたお題目、捧げた祈りは必ず届いていると信じています。言うことは易し、行うことは難しです。自分の為にするのでなく、他のためにすることは意義があります。あの時に一緒に祈って下さった皆様は菩薩の行いを実践したのです。お寺の行事に参加すると言うことはそのような行いにも繋がるのですね。

ここでお塔婆(卒塔婆)のお話しを少し致しましょう。先号で聖人佐渡在住のおりに熱心な信者となった阿仏坊夫妻の話を致しましたが、他にも何人かの信者が居りました。その中に中興入道という方が居て夫婦で信仰をしていました。後日、聖人は身延から佐渡の信者達に沢山の手紙を出していますが、そのひとつに「中興入道御消息」という手紙があります。そこには卒塔婆を建てて供養をする功徳が記載されています。

(卒堵波)をたてゝ、其面に南無妙法蓮華経の七字を顕してをはしませば、北風吹ば南海のいろくづ(魚族)、其風にあたりて大海の苦をはなれ、東風きたれば西山の鳥鹿、其風を身にふれて畜生道をまぬかれて都卒の内院に生れん。況やかのそとばに随喜をなし、手をふれ眼に見まいらせ候人類をや。過去の父母も彼そとばの功徳によりて、天の日月の如く浄土をてらし、孝養の人並に妻子は現世には寿を百二十年持て、後生には父母とともに霊山浄土にまいり給はん事、水すめば月うつり、つづみ(鼓)をうてばひびきのあるがごとしとをぼしめし候へ等云云。

お解り頂けますか? 塔婆を建ててお題目を記せばその功徳甚大なるを聖人直々に書かれているのです。お釈迦様の経典「妙法蓮華経第二十一」には 皆 塔を建てて供養すべし と説かれます。これは仏舎利塔や五重塔を指しますが実は卒塔婆は五重塔なのです。よ~く見れば五重塔になっていることに気がつくと思います。本物の塔は中々建てられませんが卒塔婆を建ててその功徳の一端を頂けるのはそれこそ有難いことです。ありがたや、ありがたや・・・

お盆・施餓鬼で教えるところの「誰にも供養されないもの達への供養」「自分や身内の為でなく 他へ施すべし」を実践するには無縁の霊や水子霊、癒やしをくれたペット達の供養に卒塔婆をあげるのはとても良いことかも知れません。回向という字は、回り向かう と書きます。その功徳は巡り巡って皆様の元へ帰ってくることでしょう。

行事報告

7月27日 盂蘭盆施餓鬼供養会
今年も沢山の方がお参り下さいました。誰にも供養されない悲しい霊達に供養を捧げることの大切さ・・・
自分の為でなく他の為に施すことの大切さを教える大事な行事です。
7月13日~15日 8月13日~15日 お盆棚経
お盆にご自宅であげるお経を棚経またはお棚参りと言います。棚という字に注目して下さい。精霊棚です。仏壇から位牌を出して沢山の供物を棚に載せて下さい。いつか自分も供養される側になるのです。自分が逝った後にそっぽを向かれたら淋しいですよ。それこそ浮かばれない・・・
日本では既に八世紀頃から夏期の祖霊供養が行われていたと言います。一説に棚経はキリシタン捜しと言われていますが、仏教的お盆のいわれと祖霊信仰を合わせて考えれば、そうではない先祖を思う日本人の心が覗えます。お坊さんを家に呼んで施すことで、地獄に行ってしまったかも知れないご先祖様を救い出せる。
13日の夕方(朝の場合あり)に迎え火を焚き、早馬に乗って一時も早く帰ってきてと願いを込めてキュウリの馬を家に向け、16日の夕方に送り火で、沢山の供物を持ってゆっくりと牛に乗って帰って下さいとナスの牛を外に向ける。優しさにあふれた素晴らしい習慣です。小さな頃からこのようなことを家族で一緒にやっていれば自然と心豊かな人間が出来上がるはずです。世界に誇れる日本人の心持ちです。

行事案内

10月1日 お会式
一番大きな行事で私自身がとても大切だと思っている報恩行事です。日蓮聖人の法事にお塔婆をあげましょう。詳細は別紙・別冊にて・・・
※お手伝い募集
9月29日の準備 10月1日当日 2日の後片付けのお手伝いをお願いします。人の手が足りなくて困っています。どこかの一日でも半日だけでも結構です。老若男女問わず歓迎します。

※今回送りました冊子は自分たちで作成した日蓮聖人の本です。進呈しますので出来れば(いや必ず)読んで下さい。聖人がどれほどこの国と私達を思い、命を懸けたのかを分りやすく書き上げました。いずれ大人の寺子屋が再会したときに解説が出来ればと思っています。

南無妙法蓮華経