日蓮宗妙厳山信隆寺(茅ヶ崎市) | トップへ |
合掌。啓蟄の候。梅の花がほころび始めました。メジロに話しかけたくなる気分です。ソチオリンピック盛り上がりましたね。みんな頑張りました。殊に羽生結弦選手、やってくれました!感動しました!演技は勿論最高でしたが、彼の精神面の素晴らしさに感動を覚えました。
羽生選手はリンクに入る際、必ず一礼をし演技に臨んでいます。人だけでなくあらゆるものや場所にも感謝の念を持っているのが解ります。彼は仙台に居て被災しました。相当に落ち込み、一時はスケートをやめようかとも思ったそうです。ですが色々な形でみんなが頑張っている姿を見て立ち上がる勇気を得たそうです。自分に出来ることとして全国各地の復興支援アイスショーに参加したり、たくさんのチャリティーイベントに参加をしました。そしてイベントを重ねるうちに、与える側でなく支えられている側であると気づいたそうです。その思いが力になったのでしょうか。
また、ある番組のインタビューではこんなことも言っています。「している」つもりが「させてもらっていた」のだと・・・彼の精神に成熟した大人の姿を見た気がしました。人に勇気を与えたいとか、役に立ちたい、助けてあげたいという気持ちを持って、参加したはずなのに逆に自分が勇気づけられたり、助けられたりする。相手の為にしているつもりが、元気や笑顔、ありがとうを貰って帰ってくる。この喜びは頭で考えて解るものではありません。心の喜びではないでしょうか・・・
私たちは生まれてきたとき、何も出来ません。母に乳を飲ませてもらい、抱いてもらい安心を得ます。「してもらう喜び」を存分に味わいます。やがて成長すると自分ですこしずつ色々なことが出来るようになります。「出来る喜び」です。そのうち今度は自分が他に世話をしたりして「してあげる喜び」が生じます。そして最後にはいつか「させて頂ける」感謝に変わるのです。私も震災後に被災地に行かせて頂いたときに「してあげる喜び」から「させて頂ける喜び」に変わったのをはっきりと覚えています。今では行かさせて頂けた縁に感謝しています。ただ普段の生活に戻るとこの感謝の気持ちを持ち続けることが容易でなくなりますね。凡人です・・・修行が足りません。
先日、大雪が降りました。皆さんも大変だったことでしょう。被害はありませんでしたか? 寺は雪の重みで屋根のトヨが壊れてしまいました。辻堂でお経があったので出かけましたが往復二時間半以上費やしました。次の日はもっと大変で、一日中雪かきです。頼りの文敬上人も雪で来れません・・・ ありがたいことにお庭が広いので目眩がするほどの雪かきでした。汗はびっしょり、当然にして体全体の筋肉痛です(笑) 豪雪地帯の人たちは毎年毎日こんな思いをしているのですね。大変な苦労だと思いました。この雪かきで良いこともありました。一号線の歩道を雪かきしてましたら通りすがりの方に「ご苦労様~」とか「大変ですね~」とか「頑張りますね~」とかたくさん声をかけられ、思わぬ会話と褒められる喜びを味わいました。褒められると頑張って働いてしまいます(笑) この時、久しぶりに「させて頂ける喜び」を感じました。
住宅街で道を掃いている人がいます。自分の家の前しか掃かない人。自分の前だけでなく他のところまで掃く人。掃いてやったんだと思う人。そうでない人。色々な方がいると思います。もっと言えば、自分のゴミを他人の場所へ捨てる論外な人もいれば、人知れずこっそりと他人の場所を掃く人もいます。陰徳を積める人です。菩薩の道を歩きます。私などはまだまだ未熟ですから「私が掃きました」と自画自賛のタイプです。凡人です・・・
皆さんは如何ですか?・・・ さてもうすぐお彼岸です。お彼岸は本来こちらの世にあって悟りの世界に近づくための修行の一週間です。何か一つ、心に決めて、善き行いをしてみませんか? 何でもOK。町の清掃。夜回り。他人のお手伝い。困っている人に声をかける。毎日誰かを褒める。何でも良いんです。見えなかった自分が見えるかも知れません。ただその中の一日だけは時間をつくってお寺にお参り下さい。仏さまに会いに来て下さい。良いことをした後に見る仏さまのお顔はにこやかに見えますよ。逆も然りですが・・・
昔ながらの風習がドンドンと失われてゆく昨今です。スピードが速すぎて目が回ります。ご先祖様や霊魂、八百万の神々も目を回してしまいますね。急いで生きてる感じがしませんか・・・ 仏さまに手を合わせ、先祖と語らう時間を作りましょう。お墓の草むしりをしていたら、ご先祖様の声が聞こえるかも知れません。道を掃いていたら普段は目につかなかった道祖神やお稲荷さんの祠と出会えるかも知れません。池波正太郎さんの著書の一節にこんな文章があります。「○○権現は・・・中略・・・まことに広大な神域であって、山あり、森あり、谷あり、現代の風景からは到底その面影をしのぶことはできない・・・中略・・・稲荷が各地に勧請されたわけだがこの稲荷の神の使わしめが狐ということになっている。これと同様に八幡神に奉仕をするのが鳩である。ゆえに諸国の稲荷社と狐は切っても切れぬ関係にあるのだ。俗信と言ってしまえばそれまでだが、むかしむかしから現代に至るまで、こうした神と動物の関係が縁起として伝え、残され、われわれの生活にまで深い影響を及ぼしていることは、まことにたのしいことでもある。」と・・・ この「まことにたのしいこと・・・」と言う表現が私はとても好きです。
出会えた祠に手を合わせ、お供物の一つ、お水の一杯でも捧げられたら良くないですか?「今日は良い天気ですね」とか「今日はPM2.5がひどいですね」とか「いつもありがとうございます」と呟いて、心が何かを感じたら、世界が広がる瞬間です。 仏さまの教えには「一念三千」という言葉がありますが、私たちはすべてのものとつながっているのです。仏さまの願いは私たちすべてが仏となることで、私たちにはその可能性があるのです。このお彼岸で自分自身の中に備わる己の仏を感じてみて下さい。感じようと試みて下さい。日蓮聖人はこのような言葉を残しました。
「衆生の心けがるれば土もけがれ、心清ければ土も清しとて、浄土と云い穢土と云うも土に二つの隔てなし 只、我等が心の善悪によると見えたり、 衆生と云うも、仏と云うも亦此くの如し 迷う時は衆生と名づけ悟る時をば仏と名づけたり」 また「楽も苦となり 苦も楽となる」と・・・
§ちょっと語りすぎてしまいました。お釈迦様の話の続きは今回、お休みします。
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この写真は七面山の麓です。雪つながりで掲載しました。上は屋根に歩いて上がれるほどに雪があるそうです。
南無妙法蓮華経