−− 2004.02.28 エルニーニョ深沢(ElNino Fukazawa)
2006.12.04 改訂
{このページは、元々「私の昆虫アルバム・日本編(My photo album of INSECTS in Japan)」というページの中で全ての昆虫を同一ページに扱っていたのを、数が増えたので06年9月15日に分類学の「目」毎にページ分割し、構成を一新しました。その後は個々の「目」毎に個別に改訂されて居ます。}
蜂の仲間は昆虫綱ハチ目(旧:膜翅目)に分類され、蟻も同じ仲間です。しかし蜂が完全変態の昆虫であることは案外知られて居ません。
現在の様にマンションでは無く、都会で平屋建ての木造家屋が主流だった幼少の頃は蜂は蟻と共に最も身近な昆虫でした(蜂も蟻もハチ目です)。家の中で砂糖や甘い物を溢すと、どう嗅ぎ付けたものか蟻が列を成して畳の上にゾロゾロ上がり込んで来たものです。思えば旧き佳き時代でした。
大阪城公園は「私の庭」の一部ですが、下の2枚は何れも大阪城公園で撮影したミツバチ(蜜蜂)です(♂♀は不明)。
<撮影日=04.02.28:撮影場所=大阪市>左下は大阪城公園梅林の一重の白梅の蜜を吸うミツバチで、ほぼ実物大です。体長は13mm位です。
<04.03.16:大阪市>右下は大阪城公園の桃園です。紅色の桃の蜜を吸うミツバチで、ほぼ実物大です。
ミツバチとはミツバチ科の小型の蜂類の総称で、現在では養蜂用に輸入されたセイヨウミツバチ(西洋蜜蜂) −又はヨウシュミツバチ(洋種蜜蜂)とも呼び、繁殖力旺盛で腹部地色が橙色− を指すことが一般的の様ですが、セイヨウミツバチは天敵のオオスズメバチに対する対抗手段を持たない為に完全な野生化は出来ません。それに対しニホンミツバチは日本産の野生種で、林間の木の洞に蝋で巣を作ります。
社会生活を営むミツバチの社会は完全な階級社会で、こうして密を集める働き蜂は生殖機能が無いのでひたすら花蜜や花粉の採集・営巣・育児などの労働に従事します、女王蜂の為に。身体全体に微毛が密生し、これで花粉が身体に着き受粉を促します、花の為に。その性質を利用され蜂蜜・蜜蝋・ロイヤルゼリーを採る為に広く飼養されて居ます、人間の為に。私が子供の頃はミツバチの幼虫(=蜂の子)を炒って食いました、結構行けまっせ。しかし中国雲南省でスズメバチの蜂の子が出て来たのにはタマゲました。正に清く正しく美しく、そして旨い利他的な存在です。
そんな訳で品種改良が施されて、一口にミツバチと言っても品種が多いのだそうです。
[ちょっと一言] 1つのミツバチの社会は1匹の雌蜂(女王蜂)(=帝王階級)と少数の雄蜂(=貴族階級)と数万匹に達する働き蜂(=宦官的労働者階級)で構成されます。
<06.01.29:大阪市>左は大阪城公園梅林の蝋梅(ろうばい)の花に飛来するミツバチです。これは実物のほぼ2倍です。
以下にスズメバチ科のアシナガバチ(脚長蜂)やその近縁種を纏めて載せます。
<06.08.15:大阪市>左は大阪城公園の砲兵工廠跡近くの林の樹木に止まっていたセグロアシナガバチ(背黒脚長蜂)で、名前の如く後脚が長く腰が極細なスリムな体形をして居ます。ほぼ実物大で体長は目測22〜23mm位、直ぐ下にクマゼミが止まって居ました。
左上の写真のハチだけ拡大したのが右の写真です(実物の約3倍)。胸部の橙色の太い環条と腰との間に斑紋が無いのと翅が暗褐色なのがキアシナガバチ(黄脚長蜂)との違いです(△1)。
<06.08.23:大阪市>左下はセグロアシナガバチの顔です(実物の約3倍)。「私の庭」の一部である桜之宮公園の春風橋脇で、アオスジアゲハが好むヤブガラシ(藪枯、※1)の花に止まった所を撮りましたが、複眼が薄茶色で剽軽(ひょうきん)な顔をして居ますね。
<06.09.25:大阪市>右下が約1ヶ月後に春風橋の北、毛馬の春風フラワーガーデンで撮ったセグロアシナガバチです(実物の約2倍)。腹部側面の斑紋をご覧下さい。
アシナガバチは人家の庭などに巣を作りますので、庭付きの家に住んで居る方には御馴染みの蜂です。私はこれの幼虫(=蜂の子)も炒って食べた事が有ります。
ミツバチに刺されてもそれ程痛く無いですが、アシナガバチに刺されると可なり痛いですよ。
<06.09.25:大阪市>左も春風フラワーガーデンで撮ったフタモンアシナガバチ(二紋脚長蜂)で、実物の約3倍です。上のセグロより小型で体長は目測で約15〜17mm、体の地色は黒、腹部の4本の黄条が明瞭で、名前の元である第2復節の2つの黄色円紋の1つが見えて居ます。複眼は黒、翅は薄い褐色、脚は橙色です。
日本や朝鮮に分布します。
アシナガバチ類はこうして花の蜜も吸いますが、幼虫の餌の為に所謂アオムシ、ケムシ類の「狩り」も行い、狩猟性を具えて居ます。
<06.09.28:大阪市>右はこれ又「私の庭」の一部である淀川の毛馬下流河川敷で撮ったキボシトックリバチ(黄星徳利蜂)で、実物の約2倍です。体長は目測18mm位です。写真は地面の上に止まって居ますが、その前は花に止まって居ました。
これもスズメバチ科で泥で徳利形の巣を作るのでこの名が在ります。黒地に黄色の斑紋で丸形腹部の中に2つの黄色円紋が「黄星」です。身体に光沢が無いのは微毛に覆われて居る為です。
狩猟性のドロバチ(泥蜂)類の近縁でシャクトリムシ(=シャクガの幼虫)を捕食します。日本の本州以南に分布します。
しかし、この腹部は瓢箪に似た徳利型で、図鑑(△1)で見るとトックリバチの仲間は皆徳利型の腹部をして居て、ビックリでした!!
次は再びミツバチ科の蜂を纏めて載せます。
<06.09.28:大阪市>左は淀川の毛馬下流河川敷 −上のキボシトックリバチが居た近く− で撮ったミツバチで、この花に沢山群れて居ました(実物の約2倍)。勿論ミツバチ科の代表選手で、説明は初出の段をご覧下さい。
<06.09.30:大阪府枚方市>下の3枚は山田池公園の花壇に居たクマバチ(熊蜂)です。
左の2枚は花に止まるクマバチで、ほぼ実物大です。この日花壇にはクマバチが数匹飛来して居ました。
「熊」の名を冠した大型のハチで世間では恐れられて居ますが、実はミツバチ科に属し攻撃性は殆ど無いハナバチ(花蜂)の仲間です。大型のミツバチ(蜜蜂)と思って下さい。但し、ミツバチの様に集団生活をせず枯れ木などに穴をあけて巣を作ります。幼虫の餌は花粉と蜜を練り合わせたものです。
右は実物の約2倍です。光沢の有る黒い身体で胸部が黄色い毛で覆われて居ますが、胸部背面の中央部だけ毛が無く地肌が見えて居ます、円形脱毛症みたいです!
体長は約21〜24mm、アシナガバチでもこれ位の体長の種が居ますので、大きく見えるのは寧ろ横幅です。つまり、アシナガバチが狩猟性でスリムなサッカー選手だとすれば、クマバチは草食性で相撲力士です。
それにしても、”ずんぐりむっくり”した体形はユーモラスですね。
蜂は刺されると痛い −中にはオオスズメバチの様に命に係わるものも居ます− ので普段近寄りませんが、こうして生態を観察すると種に依って生活様式が大きく異なるので中々興味が尽きない面が有ります。例えば、社会生活を営む種(←女王が居るのはコレ)と営まない種、草食性の種(←蜜を作るのはコレ)・肉食性の種・雑食性の種などなど多様です。
そして、あの針ですが蜂の針は産卵管が変じたもの、つまり刺すのは雌(♀)だけなのです、ご存知でしたか?
ミツバチなどは刺すと針と共に内臓が抜け出して間も無く死んで仕舞います。向こうも命懸けな訳です。
危険な蜂は別にして、花に群がるミツバチやクマバチなどを、”御用とお急ぎで無い方”は是非一度観察を試みて下さい。
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【脚注】
※1:藪枯(やぶからし)。ブドウ科の多年生蔓草。路傍・空地などに生える雑草。二岐に成った巻鬚で樹木などに巻き付いて茂り、往々それを枯らす。葉は5小葉から成る複葉。若葉は紫褐色であるが、後に淡緑色に変わる。夏、葉腋に黄緑色の小四弁花を多数散房花序に付け、後に黒色・球形の液果を結ぶ。北海道南西部以南・中国などに分布。ビンボウカズラ、ビンボウヅル。
(以上、出典は主に広辞苑です)
【参考文献】
△1:『学研生物図鑑−昆虫III バッタ・ハチ・セミ・トンボほか』(石原保監修、学習研究社)。
●関連リンク
@参照ページ(Reference-Page):昆虫の分類学と特徴▼
資料−昆虫豆知識(Insect Trivia)
「私の庭」とは▼
ここが「私の庭」だ!(Here is the territory of Me !)
「私の庭」の大阪城公園や桜之宮公園▼
2003年・大阪城の梅便り
(Japanese apricot blossoms of Osaka castle, 2003)
大阪城の桃の花(Peach blossoms of Osaka castle)
日本全国花見酒(Cherry blossoms and banquet in Japan)
「私の庭」の淀川や春風フラワーガーデン▼
私の淀川(My Yodo-river, Osaka)
中国雲南省のスズメバチの蜂の子▼
中国のヘビーなお食事−”食狗蛇蠍的!”(Chinese heavy meal)