(1)分類学的階層
生物分類の最も基本的な単位を種(しゅ)(※1)と呼びますが、現在全生物の[種]は下の様な各階層の分類単位に拠って区分(=グループ化)され、7段階の分類学的階層に拠って[種]が決定され区分分けの分岐図が出来上がります。
各階層の分類単位の中の更なる小区分には「亜」が冠せられ、[亜目][亜科][亜種]などと用いられます。
但し、この様に決定された[種]は飽く迄も「互いに同類と認識し合う個体の集合(※1)」であって個体と1対1では無い、という点を押さえて置く必要が有ります。ヒトという同一の[種]の中に様々な国籍の数10億の人間が包含される訳ですから、シオカラトンボという同一の[種]の中に様々な変異や個体差が有って寧ろ当然なのです。
全生物──[界]──[門]──[綱]──[目]──[科]──[属]・・[種]....各個体
かい もん こう もく か ぞく しゅ
kingdom phylum class order family genus species
division
(2)最上階分類単位の「界」
生物の分類は、アリストテレス(※2)が前4世紀に初めて分類学を確立して以来、生物を動物[界]と植物[界]の「2つの界」に区分する考え方が、永らく受け入れられて来ました。その間18世紀にリンネ(※3)の二名法(※3-1)よる世界共通の学名が採用され分類学は体系的に整備されましたが依然として「2つの界」でした。漸く19世紀に成って単細胞生物が動物・植物のどちらの[界]にも属さないことが解り「3つの界」に成り、更に新生物の発見に依り修正が加えられ、現在ではその生物の栄養摂取の方法 -光合成・吸収・摂取- を加味して下の様な「5つの界」に区分されて居ます(<>内は栄養摂取法)。
全生物─┬─植物[界]・・・・植物<光合成>
├─動物[界]・・・・動物<摂取>
├─菌[界]・・・・・菌類<吸収>
├─原生生物[界]・・原生生物<摂取>、藻類<光合成>
└─モネラ[界]・・・原核生物<吸収>
次ぎに昆虫の分類学的位置と他の動物との関係を明らかにする為、全動物を分類した動物[界]の分岐図を示しましょう。
動物[界]─┬─脊椎動物[門]─┬─哺乳[綱]・・・ヒト、サル、ネコ
無 ├─鳥[綱]・・・・スズメ、ハト
脊 ├─爬虫[綱]・・・ヘビ、トカゲ
椎 ├─両生[綱]・・・カエル、サンショウウオ
動 ├─硬骨魚[綱]・・カツオ、タイ、コイ
物 └─軟骨魚[綱]・・サメ、エイ
│
├─節足動物[門]─┬─甲殻[綱]・・・エビ、カニ
│ ├─昆虫[綱]・・・トンボ、チョウ、
│ │ カブトムシ、セミ、
│ │ ノミ、シラミ
│ ├─クモ[綱]・・・クモ、ダニ、サソリ
│ ├─ムカデ[綱]・・ムカデ、ゲジ
│ ├─ヤスデ[綱]・・ヤスデ
│ ├─エダヒゲムシ[綱]
│ └─コムカデ[綱]
│
├─棘皮動物[門]・・・・・・・・・・ヒトデ、ナマコ、ウニ
├─環形動物[門]・・・・・・・・・・ミミズ、ヒル、ゴカイ
├─軟体動物[門]・・・・・・・・・・カイ類、イカ、タコ
├─扁形動物[門]・・・・・・・・・・サナダムシ、ジストマ
├─刺胞動物[門](=腔腸動物)・・・クラゲ、サンゴ、
│ イソギンチャク
└─海面動物[門]・・・・・・・・・・モクヨクカイメン
即ち昆虫とは、節足動物[門]昆虫[綱]に属する無脊椎動物の総称です。エビやカニやクモと同じ[門]で近縁であることが解ります。又、ノミ(蚤)やシラミ(虱・蝨)は昆虫ですが、ダニ(壁蝨)は昆虫では無いことも解ります。
ところで、良く言われる霊長類とは哺乳[綱]サル[目]に属する動物の総称で、ヒトやサルを指します。又、ヒトは哺乳[綱]サル[目]ヒト[科]に属する動物で、学名はホモ・サピエンス(Homo sapiens)です。
(1)昆虫の体の構造
昆虫の体は頭・胸・腹の3部に分れ、頭部に各1対の触角と複眼(※4) -複眼の間に単眼(※4-1)を有する種も在り- と1つの口器、胸部に2対の翅 -中には1対のみや退化して無い種も在る- と3対の脚を有するのが基本です。
中でも特徴的な複眼(compound eye)は多数の個眼がハチの巣状に集合した眼で物の形や運動を見分け、複眼と並存する単眼(ocellus) -1~数個- は簡単な構造の眼で光の強弱(=明暗)を感じ取る器官とされて居ます。因みに、クモ(蜘蛛)類には単眼しか有りません。
(2)特徴1 - 変態
昆虫は卵(らん) -所謂「たまご」- の形で♀の胎内から外へ産み出され、卵が孵化して幼虫に成りますが、特徴的なのは幼虫が幾度かの変態を経て成虫に成ることです。中でも重要なのは幼虫の最終期に於いて、一定期間食物の摂取を止め休眠状態に成る蛹(※5)の段階を経るか否かが、分類上の大きな分かれ目に成ります。
変態には、卵・幼虫・蛹の3段階を経過する完全変態(holometaboly, complete metamorphosis)と、蛹の時期を経過せず幼虫から直ちに成虫に成る不完全変態(incomplete metamorphosis)、幼虫の間に外部生殖器を除いて殆ど変化しないで成虫に成る不変態(ametaboly)の3つの型が在ります。そして不完全変態の幼虫を若虫/ニンフ(nymph)と呼ぶことが有ります。
各昆虫がどの変態型に属するか下に図示します。
昆虫の変態─┬─完全変態・・・・チョウ、カブトムシ、ハチ、ハエ
│
├─不完全変態・・・バッタ、カゲロウ、トンボ、
│ セミ、シロアリ、シラミ
│ (不完全変態の幼虫を若虫と呼ぶ)
│
└─不変態・・・・・シミ、トビムシ
変態をするのは昆虫に限られたことでは無いですが、昆虫以外には蛹に成る動物は居ないので、完全変態は昆虫のみという訳です。例えば、両生類のオタマジャクシがカエルに成るのは不完全変態に相当します。
又、言葉の問題として、完全変態の蛹から成虫に成ることを本来の意味で(=狭義に)羽化と呼びますが、不完全変態でも幼虫が成虫に成ること一般に(=広義に)羽化と呼びます。
(3)特徴2 - 季節型・体色型
同一種の昆虫が、1年の中で異なった季節に跨り複数回羽化するものが在り、羽化する季節に依って差違が生じる場合が有ります。その様な種に対しては羽化時期に依り春型・夏型・秋型・成虫越冬型などと呼び区別して居ます。
又、昆虫は鳥などと同様に性別に依って体色が異なる種が多いですが、同一種・同性でも体色の全体又は一部が異なる種が存在し、それらを×色型と呼びます。この体色の違いは季節型に依存する場合とそうで無い場合が有り、前者は季節型で呼ぶのが通例です。
(4)特徴3 - 擬態・隠蔽色(保護色)
擬態・隠蔽色で装うのは昆虫に限ったことでは無く、動植物一般に広く行われて居る生き残り戦略の一方法です。
擬態(mimicry)とは、或る動植物の形・色・斑紋が他の動植物又は無生物に似て居ることを指します。擬態には周囲の環境に似せて目立たなくする隠蔽的擬態、即ちカムフラージュ(camouflage[仏])と、逆に捕食者に有害と思われて居る他の動植物に似せて目立たせる標識的擬態、即ちディスプレー(display)とが在ります。
この内特に色と斑紋、即ち色彩で目立たなくするものを隠蔽色と呼び、色彩で捕食者に有害と思わせるものを標識色 -警告色・威嚇色の総称- と呼びます。隠蔽色の中には色彩を周囲に合わせ自在に変化させる体色可変型も在り、ホルモンの分泌に依り制御されます。
保護色(protective color, protective coloration)という語は隠蔽色(concealing coloration)の一部として定義され、狭義には被捕食者の視点から見た場合の隠蔽色を指しますが、広義には隠蔽色(捕食者と被捕食者の両方を含む)と同義に用いられます。
以上の説明を図示し、具体的にどんな擬態・隠蔽色が在るかの例を幾つか挙げて置きましょう。
擬態─┬─隠蔽的擬態─┬─隠蔽色・・・カメレオン、ライチョウの色可変、
│ camouflage │(保護色) カマキリの色可変、
│ │ イシガケチョウの石崖斑紋
│ │ コノハチョウ・コノハムシの葉色
│ │ オオシモフリエダシャクの
│ │ 工業暗化(※6)
│ │
│ │
│ └─形態模倣・・シャクトリムシ、ナナフシの枝形
│ コノハチョウ・コノハムシの葉形
│
│
└─標識的擬態─┬─標識色・・・ギフチョウの虎紋、
display │ ヒョウモンチョウの豹紋
(警告・威嚇)│ 毒キノコの毳毳しい色(植物の擬態)
│
│
└─形態模倣・・無毒ヘビ・チョウ・ガなどが
(※7) が有毒種に似る、
アブがハチに似る、
チョウ・ガの大きな眼状紋で
猛獣やヘビに見せる
上図で、隠蔽的擬態に於いて形態模倣は色彩も含めて行われる場合が多く有ります。コノハチョウやコノハムシなどは色彩と形態の両方で偽装します。ところでコノハムシは色彩・形態が似て居る広葉樹よりも前に地球上に出現して居たとされて居ます、広葉樹の出現を予期して居たのでしょうか?!
又、これらの擬態はその生物の行動様式と組み合わされて初めて効果を発揮します。例えばイシガケチョウが花に集まって飛来したら直ぐに目立って仕舞います。そういう意味でヒカゲチョウやクロアゲハが日陰を好むのは理に適った行動と言える訳です。
(5)特徴4 - 圧倒的多数派
昆虫[綱]は動物[界]最大の[綱]で、全動物の種数の凡そ3/4を占めて居て、現在は約120万種が登録されて居ます。
(6)特徴5 - 速い世代交代と多用な生態
昆虫の寿命は1年以内のものが多く、長くても10年未満です。つまり世代交代が速いのです。この事は言い換えると環境順応性が高いということです。そして驚く程多様な生態を示し、水と植物の環境さえ整って居れば昆虫だけで生存して行くことも可能です。つまり昆虫は個体としては”弱い”存在ですが、種の永続性という観点から見ると”強い”存在なのです。
(7)特徴6 - 天敵
これは昆虫[綱]だけの特徴では無いですが、昆虫には天敵が多いのです。
天敵(natural enemy)とは、自然界で或る特定の生物の捕食者・寄生者と成り、それを殺したり増加を抑制したりする他の特定の種の生物。一般的な害を為す敵では無くAにはXのみが、BにはYのみが、という具合に殆ど1対1の特定グループ間の対応関係で害を為す敵を指して言う。これを利用して特定の害虫・害獣だけを駆除するのに利用される(生物的防除)。動物ではハブに対するマングース、昆虫ではイセリアカイガラムシ(イセリア貝殻虫)に対するベダリアテントウ(ベダリア瓢虫)など。
(8)フェロモン(pheromone)
これは「運ぶ」の意のギリシャ語 phero とホルモン hormone の合成語です。動物の体内で作られて体外に分泌され、特定の反応を引き起こす生理活性物質。種に特異的で種内の信号として働く。雌が放出する性フェロモン、アリやミツバチの警報フェロモンなど、特に昆虫に発達して居る。その機能に依り誘引・警報・集合・密度調節フェロモンなどと呼ぶ。害虫駆除にも利用出来る。
生物の名称には国際基準に基づいた学名と、日本でのみ通用する和名・慣習名とが有ります。
(1)学名
学名(scientific name)は、学術上の便宜の為に生物(化石生物を含む)の種(しゅ)に付ける世界共通の名称。国際命名規約が在り、植物学者リンネが創始した二名法に従ってラテン語で、斜体文字の一種のイタリック体(italic)(※8)で表記します。初めに[属]の属名を名詞で(頭文字は大文字)、次に[種]を表す種小名を形容詞又はその相当語(小文字)で書き、合成したものを学名とします。
(2)和名
国際標準という意味で学名の意義は大きいですが、学名を理解出来る人は極一部の専門家しか居ません。
和名(Japanese vernacular name)は、その様な学名の認知度の低さを補完する目的で決めた日本での分類学的標準名のことで、原則として片かな(カタカナ)で書かれます。例えば
学名:Homo sapiens(現生人類) ─→ 和名:ヒト
の類です。日本の昆虫図鑑も和名を主とし学名を併記し、説明文には和名を用いるのが通例です。このページも一般の読者を対象にして居ますので和名で説明します。
(3)慣習名
慣習名とは、日本で昔から慣習的に呼び習わされて来た俗称で、日常会話の中では度々使いますが、分類学的標準名では無く種と1対1の関係に無い場合が多い点は注意を要します。
例えばシオカラトンボの♀をムギワラトンボと呼び、ナツアカネやアキアカネなどのアカネ属の他に、時にはウスバキトンボも含めて一括してアカトンボ(赤トンボ/赤とんぼ/赤蜻蛉)と呼ぶ類です。
(4)和名・慣習名の中の「ヒメ」と「クマ」
「ヒメ(姫・媛)」は、お姫様の様に「小さくて愛らしい意」を表す接頭語です。ヒメユリ・ヒメバショウ・ヒメマス・ヒメアカタテハ・ヒメトンボなどです。
「クマ(熊)」は熊の様に「強く荒く恐ろしい様(さま)、又、大きい意」を表す接頭語です。クマネズミ・クマゼミ・クマバチなどです。
「ヒメ」「クマ」は接頭語ですから、これを省いた元の名前の生物が基準に成って居て、それと比較して小さい場合に「ヒメ」、大きい場合に「クマ」が冠されて居ます。
最後に昆虫が現在どの様に分類されて居るかを分岐図で表しましょう。基本的には変態の型に拠り分類されて居ます。
尚、{}内は旧分類名称です。
(1)昆虫[綱]の大分類(Large classification)
昆虫[綱]─┬─有翅[亜綱]─┬<完全変態>──内翅類→[1]
不 └<不完全変態>─外翅類→[2]
変
態
├─カマアシムシ[亜綱]───カマアシムシ[目]{原尾[目]}
│ ・・カマアシムシ
├─トビムシ[亜綱] ───トビムシ[目]{粘管[目]}
│ ・・ベニイボトビムシ
└─無翅昆虫[亜綱] ─┬─コムシ[目]{倍尾[目]}
│ ・・ヤマトハサミコムシ
├─シミ[目]{総尾[目]}
│ ・・ヤマトシミ
└─イシノミ[目]{総尾[目]}
・・イシノミ
(2)完全変態と不完全変態の昆虫の中分類
(Complete and Incomplete metamorphosis Insects)
<完全変態>
[1].内翅類─┬─チョウ[目]{鱗翅[目]}─┬─チョウ類・・アゲハ
│ └─ガ類・・・・カイコガ
├─コウチュウ[目]{鞘翅[目]}・・・・カブトムシ、ゲンジボタル
├─ハチ[目]{膜翅[目]}・・・・・・・ハチ類、アリ類
├─ハエ[目]{双翅[目]}・・・・・・・ハエ類、カ類、アブ類
├─ノミ[目]{隠翅[目]}・・・・・・・ヒトノミ、ネコノミ
├─アミメカゲロウ[目]{脈翅[目]}・・ウスバカゲロウ、
│ ヘビトンボ
├─トビケラ[目]{毛翅[目]}・・・・・ゴマフトビケラ
├─シリアゲムシ[目]{長翅[目]}・・・ベッコウシリアゲ
└─ネジレバネ[目]{撚翅[目]}・・・・ツチカメネジレバネ
<不完全変態>
[2].外翅類─┬─トンボ[目]{蜻蛉[目]}・・・・・・イトトンボ類、カワトンボ類、
│ トンボ類、ヤンマ類
├─カゲロウ[目]{蜉蝣[目]}・・・・・モンカゲロウ
├─カワゲラ[目]{襀翅[目]}・・・・・モンカワゲラ
├─カメムシ[目]{半翅[目]}・・・・・カメムシ類、セミ類
├─バッタ[目]{直翅[目]}・・・・・・バッタ類、イナゴ類
├─カマキリ[目]{直翅[目]}・・・・・カマキリ類
├─ナナフシ[目]{直翅[目]}・・・・・ナナフシ、コノハムシ
├─ゴキブリ[目]{直翅[目]}・・・・・ゴキブリ類
├─ガロアムシ[目]{直翅[目]}・・・・ガロアムシ
├─マントファスマ[目]・・・・・・・・マントファスマ
├─ハサミムシ[目]{革翅[目]}・・・・ハサミムシ
├─シロアリ[目]{等翅[目]}・・・・・イエシロアリ
├─シロアリモドキ[目]{紡脚[目]}・・コケシロアリモドキ
├─ジュズヒゲムシ[目]{絶翅[目]}・・ジュズヒゲムシ
├─チャタテムシ[目]{噛虫[目]}・・・ハグルマチャタテ
├─ハジラミ[目]{食毛[目]}・・・・・ニワトリハジラミ
├─シラミ[目]{虱[目]}・・・・・・・ヒトジラミ、ケジラミ
└─アザミウマ[目]{総翅[目]}・・・・アザミウマ類
・ウスバカゲロウ(薄羽蜉蝣)はカゲロウ[目]では無くアミメカゲロウ[目]ウスバカゲロウ[科]に属し完全変態、即ち蛹に成ります。幼虫はアリジゴク(蟻地獄)。
・セミ(蝉)類はカメムシ[目]に属します。
・マントファスマ(※9)とは、4500万年前の琥珀の中から発見され、2002年4月に新たに登録されたバッタ近縁のグループです。
以上の大分類・中分類の分岐図を見ると、大分類が変態の型、中分類が翅の構造と形に依拠して居ることが解ります。しかし翅は退化したり変形したりで、例えば多様な種を擁するカメムシ[目](後述)が何故1つの分類単位[目]に括られて居るかは翅だけでは理解し難いでしょう。それを補うのは栄養摂取法と密接に関わる口器の構造が決め手に成ります。
(1)-1.チョウ[目]チョウ類の小分類(Butterflies)
旧名:鱗翅[目]、学名:Lepidoptera、完全変態型の代表。2対の翅の翅膜が鱗粉で覆われ、口器は柔らかい吸収管型(←普段は螺旋状に畳まれて居る)で、食性は主に草食(一部雑食)で花の蜜や動物の排泄物や地面から養分や水分を吸うのが、ガ類と共通したチョウ[目]の特徴です。
ガ類との比較では、相対的に体は細く、触角は先が膨らんだ糸状で昼行性で良く飛翔し、翅の斑紋は多様・多彩で美しいものが多い、と言えます(△1)。しかし幼虫はグロテスクです。
チョウ[目]チョウ類─┬─シロチョウ[科]・・・・モンシロチョウ、キチョウ
├─アゲハチョウ[科]・・・アゲハ、クロアゲハ、アオスジアゲハ、
│ ギフチョウ、ウスバシロチョウ
├─タテハチョウ[科]・・・アカタテハ、キタテハ、ルリタテハ、
│ ツマグロヒョウモン、ゴマダラチョウ、
│ オオムラサキ、コノハチョウ
├─テングチョウ[科]・・・テングチョウ
├─ジャノメチョウ[科]・・ヒメジャノメ、ベニヒカゲ、
│ キマダラヒカゲ
├─マダラチョウ[科]・・・アサギマダラ、カバマダラ
├─シジミチョウ[科]・・・ヤマトシジミ、ベニシジミ、
│ キマダラルリツバメ
├─ウラギンシジミ[科]・・ウラギンシジミ
└─セセリチョウ[科]・・・イチモンジセセリ、アオバセセリ
・オオムラサキ(大紫)は大型のタテハチョウで日本の国蝶。
・アサギマダラ(浅黄斑)は海を渡り長距離移動します。
(1)-2.チョウ[目]ガ類の小分類(Moths)
旧名:鱗翅[目]、学名:Lepidoptera、完全変態型。チョウ[目]共通の特徴はチョウ類と同じで、チョウ[目]の内チョウ類以外の全種を包含。ガ類の一般的特徴は、相対的に体は太く、触角は猫髭状先細り型又は櫛歯状で夜行性で余り飛翔せず、翅の斑紋はグロテスクな印象を与える種が多いですが、中には美しい種も居ます(△2)。
幼虫は成虫よりもチョウ類よりも更にグロテスクで、多くの場合「害虫」とされますが、一部の種は絹などの繊維や最高級漢方薬の原料に成り、人間生活に大いに寄与して居ます。
チョウ[目]ガ類─┬─同脈[亜目]→[1]
└─異脈[亜目]─┬─異脈単門類→[2]
└─異脈二門類→[3]
[1].同脈[亜目]─┬─コバネガ[科]・・・・・・・マエモンコバネ、ヒロコバネ
├─スイコバネガ[科]・・・・・オオスイコバネ
└─コウモリガ[科]・・・・・・コウモリガ、キマダラコウモリ
[2].異脈[亜目]─┬─マガリガ[科]・・・・・・・ヘリモンマガリガ
単門類 ├─ヒゲナガガ[科]・・・・・・ミドリヒゲナガ
├─ムグリチビガ[科]・・・・・リンゴクロムグリチビガ
├─ツヤコガ[科]・・・・・・・ムラサキツヤコガ
└─ムモンムグリガ[科]・・・・クヌギキハムグリ
[3].異脈[亜目]─┬─ミノガ[科]・・・・・・・・ミノガ、オオミノガ
二門類 ├─スカシバガ[科]・・・・・・ブドウスカシバ
├─キバガ[科]・・・・・・・・サクラキバガ
├─シンクイガ[科]・・・・・・コブシロシンクイ
├─ハマキガ[科]・・・・・・・チャハマキ、ビロウドハマキ
├─メイガ[科]・・・・・・・・ゴマダラメイガ、ツトガ
├─マダラガ[科]・・・・・・・ホタルガ、サツマニシキ、
│ オキナワルリチラシ
├─イラガ[科]・・・・・・・・イラガ、アオイラガ
├─ツバメガ[科]・・・・・・・ギンツバメ
├─アゲハモドキガ[科]・・・・アゲハモドキ
├─シャクガ[科]・・・・・・・ヨツメアオシャク、
│ オオシモフリエダシャク
├─イカリモンガ[科]・・・・・イカリモンガ
├─カイコガ[科]・・・・・・・カイコガ
├─カレハガ[科]・・・・・・・カレハガ、マツカレハ
├─ドクガ[科]・・・・・・・・ドクガ、チャドクガ
├─シャチホコガ[科]・・・・・モクメシャチホコ
├─ヤガ[科]・・・・・・・・・シンジュキノカワガ
├─ヒトリガ[科]・・・・・・・アメリカシロヒトリ、
├─ヤママユガ[科]・・・・・・ヤママユガ、クスサン、
│ オオミズアオ、シンジュサン、
│ ヨナグニサン
├─スズメガ[科]・・・・・・・ベニスズメ、クロメンガタスズメ、
│ オオスカシバ
├─.....
├─.....
・メイガ(螟蛾)[科]とシャクガ(尺蛾)[科]とヤガ(夜蛾)[科]は[種]の数が非常に多いグループです。
・ドクガ(毒蛾)は文字通り毒を持つ蛾です。
・ミノガ類はミノムシ(蓑虫)の成虫、シンクイガ類はシンクイムシ(芯食虫)の成虫、カイコガはカイコ(蚕) -絹の原料を産出- の成虫、シャクガ類はシャクトリムシ(尺取虫/尺蠖虫)の成虫です。オオシモフリエダシャクは隠蔽色に因る工業暗化(※6)が典型的に観測されました。
・アメリカシロヒトリ(アメリカ白灯)は戦後駐留米軍に依り齎された北アメリカ原産の帰化昆虫で、大量発生し桜・桑などに被害を及ぼし、悪名を轟かせました。
・マダラガ(斑蛾)[科]にはサツマニシキ(薩摩錦)やオキナワルリチラシ(沖縄瑠璃散)の様な美しい色彩のガが居ます。
・ヤママユガ(山繭蛾)[科]の蛹の繭(まゆ)は山繭織の原料 -これを天蚕(てんさん)と言う- に成り、幼虫からは釣糸の原料である天蚕糸(てぐす)(※10)を採取します。大型種が多くシンジュサン(神樹蚕)は日本本州で最大のガ、ヨナグニサン(与那国蚕)は世界最大のガです。蚕の家蚕(かさん)に対し野蚕(やさん)と言います。
・メンガタスズメ(面型雀)類は胸部背面に人面又は人の骸骨紋様が有ります。
・オオスカシバ(大透翅)は翅が透明で敏捷・活発に飛び乍ら花に集まります。スカシバ[科]では無くスズメガ[科]。
・中国漢方の冬虫草(和名:冬虫夏草)はコウモリガ(蝙蝠蛾)の幼虫に菌が寄生した物を最高品とし、他に蝉茸(せみたけ)・蜘蛛茸(くもたけ)などが在ります。
(2)コウチュウ[目]の小分類(Beetles)
甲虫[目]とも、旧名:鞘翅(しょうし)[目]、学名:Celeoptera、完全変態型です(しかし甲虫[目]が蛹を経て居ることは意外と知られて居ません)。前翅と胸部表面が硬く革質化し体全体を鎧甲の様に覆うのが和名の由来で、後翅は膜質で前翅の下に畳まれますが、飛翔には適さず殆どは着地して歩行します。口器は咬み型で、形態・生態は様々で食性も草食・雑食・肉食の各種が居ます(△3)。
コウチュウ[目]─┬─コガネムシ[科]・・・・コガネムシ、カナブン、カブトムシ、
│ ダイコクコガネ、ヤンバルテナガコガネ、
│ ヒラタハナムグリ、タマオシコガネ
├─クワガタムシ[科]・・・ノコギリクワガタ、ミヤマクワガタ、
│ オオクワガタ
├─ハンミョウ[科]・・・・ハンミョウ、カワラハンミョウ
├─オサムシ[科]・・・・・アオオサムシ、マイマイカブリ
├─ゴミムシ[科]・・・・・オオゴミムシ、ヨツボシゴミムシ
├─ゲンゴロウ[科]・・・・ゲンゴロウ、マメゲンゴロウ
├─ミズスマシ[科]・・・・ミズスマシ、オオミズスマシ
├─ガムシ[科]・・・・・・ガムシ、マメガムシ
├─エンマムシ[科]・・・・エンマムシ、ヤマトエンマムシ
├─シデムシ[科]・・・・・クロシデムシ、ヒメモンシデムシ
├─コケムシ[科]・・・・・ムナビロコケムシ
├─ドロムシ[科]・・・・・ムナビロツヤドロムシ
├─ハネカクシ[科]・・・・クロツヤハネカクシ
├─ホタル[科]・・・・・・ゲンジボタル、ヘイケボタル
├─タマムシ[科]・・・・・ヤマトタマムシ、ウバタマムシ
├─コメツキムシ[科]・・・ウバタマコメツキ、チャイロコメツキ
├─ハナノミ[科]・・・・・シラホシハナノミ
├─カミキリムシ[科]・・・ゴマダラカミキリ、シロスジカミキリ、
│ トラカミキリ
├─カミキリモドキ[科]・・ルリカミキリモドキ
├─アリモドキ[科]・・・・ホソクビアリモドキ
├─ゾウムシ[科]・・・・・ミスジゾウムシ、クロイネゾウムシ
├─キクイムシ[科]・・・・マツノキクイムシ、クスノオオキクイムシ
├─オトシブミ[科]・・・・アシナガオトシブミ、モモチョッキリ
├─.....
├─.....
・ダイコクコガネ(大黒黄金)の♂は犀(さい)の様な角を持ち、牧場などに多く獣糞を糞塊にして土中に運び糞塊に卵を産み付け、幼虫は獣糞を食べて育つと言う、所謂フンコロガシ(糞転がし)の性質を有します。
・タマオシコガネ(玉押黄金)は、古代エジプトで神聖視されたスカラベ(scarab)で、所謂フンコロガシ(糞転がし)の一種です。地中海周辺に分布しますが日本には居ません。
因みに、コガネムシ[科]の学名は Scarabaeidae です。
・マイマイカブリ(舞舞被/蝸牛被)の名はカタツムリの殻に首を突っ込み肉を食べることに由来します。
(3)ハチ[目]の小分類(Bees)
旧名:膜翅[目]、学名:Hymenoptera、完全変態型。2対の膜状の翅を有し、後翅の前縁に並ぶ小さな鉤で前翅の後縁に引っ掛け羽搏く際は前後翅を1枚の翅として機能させますが、種や性別に依り無翅化したものも在ります。口器は咀嚼型ですがミツバチ類の様に中舌(ちゅうぜつ)が長く伸び吸密に適した種も居ます。所謂「ハチの針」は♀の産卵管が発達したもので、針から毒液を注射します。
寄生生活をする種(=コマユバチ[科]、ヒメバチ[科]、セイボウ[科]など)は肉食・雑食、狩猟生活をする種(=ジガバチ[科]、ベッコウバチ[科]など)は肉食、社会生活を営む種(=ミツバチ[科]、コハナバチ[科]、スズメバチ[科]、アリ[科])は草食・雑食・肉食など、生態は様々です。特にハチ[目]の社会生活は♀中心(=女王)で労働階級は全て生殖不能の♀であるのが大きな特徴です(△4)。
ハチ[目]─┬─ミツバチ[科]・・・・・ニホンミツバチ、ヨウシュミツバチ、
│ ニッポンヒゲナガハナバチ、コシブトハナバチ、
│ クマバチ、クロマルハナバチ
├─ハキリバチ[科]・・・・オオハキリバチ、チビハキリバチ
├─コハナバチ[科]・・・・シロスジコハナバチ、アオスジコハナバチ
├─ヒメハナバチ[科]・・・ミカドヒメハナバチ、ナワヒメハナバチ
├─ミツバチモドキ[科]・・アシブトミツバチモドキ
├─ジガバチ[科]・・・・・ジガバチ、ミカドジガバチ、クロアナバチ
├─スズメバチ[科]・・・・オオスズメバチ、クロスズメバチ、トックリバチ、
│ キアシナガバチ、セグロアシナガバチ
├─ベッコウバチ[科]・・・ベッコウバチ、キオビベッコウ、モンベッコウ
├─ハバチ[科]・・・・・・モンキハバチ、ニホンカブラハバチ
├─キバチ[科]
├─ヒメバチ[科]・・・・・クロハラヒメバチ、アメバチ、モンオナガバチ
├─コマユバチ[科]・・・・ハグロアカコマユバチ、ウマノオバチ
├─シリアゲコバチ[科]・・シリアゲコバチ
├─タマバチ[科]・・・・・クリタマバチ、クヌギイガタマバチ
├─ヒメコバチ[科]・・・・オジマコバチ
├─アリバチ[科]・・・・・ミカドアリバチ、ヒトホシアリバチ
├─ツチバチ[科]・・・・・ハラナガツチバチ、オオモンツチバチ
├─セイボウ[科]・・・・・オオセイボウ、ミドリセイボウ、イワタセイボウ
├─.....
├─.....
│
└─アリ[科]・・・・・・・クロオオアリ、クロヤマアリ、トゲアリ、ノコギリアリ
・クマバチ(熊蜂)は蜜蜂の仲間なので攻撃性は弱いです。
・オオスズメバチ(大雀蜂)はハチ類中最も攻撃的で針には猛毒が有ります。
・トックリバチ(徳利蜂)は泥で徳利形の巣を作ります。
・ツチバチ(土蜂)[科]の幼虫はコガネムシの幼虫に外部寄生(※11)します。
・セイボウ(青蜂)[科]の蜂は小形で外皮が硬く青・緑・紫・紅などの光沢が有る美しいハチ類。
(4)トンボ[目]の小分類(Dragonflies)
蜻蛉(せいれい)[目]とも、学名:Odonata、不完全変態型。
腹部は細長く円筒状、良く発達した大きな複眼を持つ頭部は細い首で胸部に繋がり、2対の紗の様な翅は非常に強く飛翔力抜群です。口器は大顎と鋭い歯を備えた咀嚼型で、成虫・幼虫(=水生のヤゴ)共に肉食です(△4)。
トンボ[目]は3つの[亜目]に分かれます。均翅[亜目]は前後の翅が翅脈を含めて同型で、複眼が小さく両側に分離し、身体が細長く華奢です。不均翅[亜目]は後翅基部が前翅に比べ広く、複眼が大きく中央で接するかやや離れ、身体が頑丈で飛翔力が強く発達した構造をして居ます。ムカシトンボ[亜目]は翅の形及び身体の構造何れもが前二者の中間で原始的形態を残して居ます(△5)。
トンボ[目]─┬─均翅[亜目]─┬─イトトンボ[科]・・・・・クロイトトンボ、
│ │ ベニイトトンボ
│ ├─モノサシトンボ[科]・・・モノサシトンボ、
│ │ グンバイトンボ
│ ├─アオイトトンボ[科]・・・アオイトトンボ、
│ │ オツネントンボ
│ ├─トゲオトンボ[科]
│ ├─ハナダカトンボ[科]・・・ヤエヤマハナダカトンボ
│ ├─カワトンボ[科]・・・・・カワトンボ、ハグロトンボ
│ └─ミナミカワトンボ[科]・・チビカワトンボ
│
├─ムカシトンボ[亜目]──ムカシトンボ[科]・・ムカシトンボ
│
└─不均翅[亜目]┬─ムカシヤンマ[科]・・・・ムカシヤンマ
├─サナエトンボ[科]・・・・ヤマサナエ、コオニヤンマ、
│ ウチワヤンマ
├─オニヤンマ[科]・・・・・オニヤンマ、ミナミヤンマ
├─ヤンマ[科]・・・・・・・ギンヤンマ、ルリボシヤンマ
├─エゾトンボ[科]・・・・・コエゾトンボ、トラフトンボ
├─ヤマトンボ[科]・・・・・オオヤマトンボ、コヤマトンボ
└─トンボ[科]・・・・・・・シオカラトンボ、アキアカネ、
コシアキトンボ、
ベッコウトンボ、チョウトンボ、
ハッチョウトンボ
・グンバイトンボ(軍配蜻蛉)の♂は後脚の脛節が軍配の様に平ら。
・オツネントンボ(越年蜻蛉)は成虫で越冬します。
・ムカシトンボ(昔蜻蛉)は原始的な形態を残した日本特産種で「生きた化石」と呼ばれて居ます。近縁種はヒマラヤムカシトンボのみ。
・オニヤンマ(鬼蜻蜒)は日本最大のトンボで、卵から成虫に成る迄数年掛かります。
・ベッコウトンボ(鼈甲蜻蛉)は1991年に絶滅危惧種(※12)に指定。
・ハッチョウトンボ(八丁蜻蛉)は日本最小のトンボ。
(5)カメムシ[目]の小分類(Stinkbugs, Cicadas)
旧名:半翅[目]、学名:Hemiptera、不完全変態型。前翅の基半が硬く革質化し先半が膜質の半翅鞘を形成する異翅[亜目]と、前翅が殆ど膜質化し翅を屋根状に畳む同翅[亜目]に別れます。非常に多様な種を包含しまが、口器が硬い注射針構造の吸収管型であることが全種に共通した特徴で、草食性の種は草木の樹液を吸い肉食性の種は小動物の体液を吸います(△4)。
セミを始めアメンボ/南京虫/マツモムシ/タガメ/タイコウチ/ミズカマキリ/アブラムシなど、種々の虫がカメムシ[目]に属して居ます。
カメムシ[目]─┬─異翅[亜目]─┬─カメムシ[科]・・・・ニシキキンカメムシ、
│(カメムシ亜目)│ アオクサカメムシ、ナガメ
│ ├─マルカメムシ[科]
│ ├─ツノカメムシ[科]
│ ├─ヘリカメムシ[科]・・ヘリカメムシ、オオヘリカメムシ
│ ├─グンバイムシ[科]・・ウチワグンバイ
│ ├─サシガメ[科]・・・・ヨコヅナサシガメ
│ ├─トコジラミ[科]・・・トコジラミ(=南京虫)
│ ├─ハナカメムシ[科]
│ ├─アメンボ[科]・・・・アメンボ、オオアメンボ
│ ├─ミズカメムシ[科]
│ ├─マツモムシ[科]・・・マツモムシ
│ ├─コバンムシ[科]
│ ├─コオイムシ[科]・・・コオイムシ、タガメ
│ ├─タイコウチ[科]・・・タイコウチ
│ ├─ミズカマキリ[科]・・ミズカマキリ
│ ├─.....
│ ├─.....
│
└─同翅[亜目]─┬─セミ[科]・・・・・・ニイニイゼミ、クマゼミ、
(ヨコバイ亜目)│ ツクツクボウシ、ヒグラシ
├─ツノゼミ[科]・・・・ツノゼミ、マルツノゼミ
├─アワフキムシ[科]・・ホシアワフキ、テングアワフキ
├─ミミズク[科]・・・・ミミズク、コミミズク
├─ヨコバイ[科]・・・・ツマグロヨコバイ
├─ハゴロモ[科]・・・・ベッコウハゴロモ
├─アオバハゴロモ[科]・・アオバハゴロモ
├─ウンカ[科]・・・・・トビイロウンカ、セジロウンカ
├─アブラムシ[科]・・・ダイズアブラムシ、
│ ナシアブラムシ
├─ワタムシ[科]・・・・サンバシハマキワタムシ
├─キジラミ[科]・・・・ベニキジラミ、クワキジラミ
├─カタカイガラムシ[科]・・ルビーロウカイガラムシ
├─.....
├─.....
・コオイムシ(子負虫)の♀は卵を♂の背中に産み付け、♂は卵が孵化する迄2~3習慣卵を背負った儘生活する水生昆虫。
・タガメ(田亀)は日本最大の水生昆虫で、産卵を終える迄約2時間に亘り何度も交尾を繰り返えすことが知られて居ます。コオイムシ[科]ですが子負いはしません。
・ヨコバイ(横這い)類は横に這って葉裏に隠れる性質が有り、植物の汁液を吸収しウイルスを媒介するなどの農作害虫が多い。セミ(蝉)もヨコバイの仲間です。
・アブラムシ(油虫)類は草の汁を吸い腹端から甘い汁を分泌し、これを吸うアリ類と共生して居ます。天敵はテントウムシ類やヒラタアブ類です。
(6)バッタ[目]の小分類(Grasshoppers)
旧名:直翅[目]、学名:Orthoptera、不完全変態型。旧の直翅[目]が近年以下の様な複数の[目]に分離しましたが、これらの各[目]は互いに近縁で、口器が咀嚼型なのが各[目]に共通した特徴です。
直翅[目](Orthoptera)─┬→バッタ[目](Orthoptera)
├→カマキリ[目](Mantodea)
├→ナナフシ[目](Phasmide)
├→ゴキブリ[目](Blattaria, Blattaeformia)
└→ガロアムシ[目](Grylloblattode)
バッタ[目]は身体はほぼ円筒形で、前翅は硬く後翅は広く薄膜状で、後脚の腿部が発達し跳躍肢に成り飛翔を助けます。食性は一部が肉食・雑食(=コオロギ[科]、キリギリス[科]など)で他は草食。コオロギ[科]・キリギリス[科]・ケラ[科]の一部の♂は翅に発音器官を有し、翅と翅/翅と脚を擦り合わせて発音し、これが”鳴き声”の様に聞こえ古来から「虫の声」「虫の音(ね)」と言い慣わされ和歌や俳句に多数詠まれて来ました。夏の終わりから初秋に”鳴く”種が殆どで季語は秋です。
カマキリ[目]は三角形の頭に大きな複眼、頸(=前胸部)が長く前脚が鎌状に発達し、これで小動物を捕らえ発達した咀嚼型の大顎で食べる肉食バッタです。
ナナフシ[目]は竹の枝条の体で翅は退化し動きは緩慢、草食性で単為生殖(※13)をするものが多く、色を含めた擬態の例として有名です。
ゴキブリ[目]は体は扁平で油状光沢(←別名アブラムシの語源)が有り夜行性で雑食性。伝染病を媒介します。因みに、和名のゴキブリは御器噛(ごきかぶり)の転。古名は「あくたむし」「つのむし」です。
ガロアムシ[目]は、コオロギ類とケラ類の中間の形をした肉食の原始的昆虫で、光を避け複眼は退化し無翅。その名は、発見者の元フランス横浜総領事ガロア(E.H.Gallois)に由来し、別名はコオロギモドキ(蟋蟀擬)です(△4)。
バッタ[目]近縁の各[目]の小分類分岐図は以下の様に成ります。
バッタ[目]─┬─バッタ[科]・・・・トノサマバッタ、ショウリョウバッタ、オンブバッタ、
│ フキバッタ、マダラバッタ、クルマバッタ、ヒナバッタ、
│ コバネイナゴ、ハネナガイナゴ、ツチイナゴ
├─ヒシバッタ[科]・・ヒシバッタ、トゲヒシバッタ
├─コオロギ[科]・・・エンマコオロギ、クチキコオロギ、カネタタキ、
│ スズムシ、マツムシ、アオマツムシ、カンタン
├─キリギリス[科]・・キリギリス、ヒメギス、ヤブキリ、クサキリ、
│ カヤキリ、ウマオイ、クツワムシ、ツユムシ
├─コロギス[科]・・・コロギス、ハネナシコロギス
├─カマドウマ[科]・・カマドウマ、マダラカマドウマ、クラズミウマ
├─ノミバッタ[科]・・ノミバッタ
└─ケラ[科]・・・・・ケラ
カマキリ[目]───カマキリ[科]・・・オオカマキリ、チョウセンカマキリ、
ハラビロカマキリ、ウスバカマキリ
ナナフシ[目]─┬─ナナフシ[科]・・・・・・ナナフシ、トゲナナフシ
└─トビナナフシムシ[科]・・トビナナフシ
ゴキブリ[目]─┬─ゴキブリ[科]・・・・・・クロゴキブリ、イエゴキブリ、ワモンゴキブリ
├─マダラゴキブリ[科]・・・サツマゴキブリ
├─オオゴキブリ[科]・・・・オオゴキブリ
└─チャバネゴキブリ[科]・・チャバネゴキブリ
ゴロアムシ[目]───ガロアムシ[科]・・・ガロアムシ
・スズムシ(鈴虫)は「リーンリーン」と小鈴を鳴らす様に鳴きます。
・マツムシ(松虫)の鳴き声は「チンチロリン」。平安時代の歌に在るスズムシは現在のマツムシです。
・ウマオイ(馬追い)の別名は、その鳴き声からスイッチョ。鳴き声が馬を追う掛け声に似ることからの命名。
・クツワムシ(轡虫)の別名は、その鳴き声からガチャガチャ。
・コロギス[科]はコオロギとキリギリスの中間型ですが発音器は有りません。
・ケラ(螻蛄・螻)は土中に棲み夜行性で、夜「ジー」と鳴きます。
【脚注】
※1:種(しゅ、species)とは、生物分類の基本的単位。互いに同類と認識し合う個体の集合であり、形態・生態などの諸特徴の共通性や分布域、相互に生殖が可能であることや遺伝子組成などに依って、他種と区別し得るもの。生物種。又、分類学上、基盤と成る階級で、類縁の種を纏めて属とし、属名と種小名を組にして種の学名(即ち種名)とする。種は幾つかの特徴に依り、更に亜種・変種・品種に分けることも有る。
※2:アリストテレス(Aristoteles[ギ], Aristotle[英])は、古代ギリシャの哲学者(BC384~322)。プラトンの弟子であり、又その超克者。プラトンは事物の本質をイデアと名付け超越的なものとしたが、アリストテレスはそれを形相(エイドス)と名付け、質料に内在するものとした。形相と質料は存在者を構成する不可分の2原理として、前者が現実態、後者が可能態とも呼ばれる。アテネにリュケイオンという学校を開き(その学徒はペリパトス(逍遥)学派と呼ばれる)、その研究は論理・自然・社会・芸術の有らゆる方面に及び「万学の祖」と呼ばれる。又、形式論理学を大成させ三段論法を確立した。「形而上学」「自然学」を始め、論理学・倫理学・政治学・詩学・博物学などに関する多数の著作が在る。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
補足すると、「自然学」の中で動物界・植物界の「2つの界」の概念を提唱した。
※3:リンネ(Carl von Linne)は、スウェーデンの博物学者(1707~1778)。生物分類学の大成者。開業医で後ウプサラ大学の植物学教授。動植物の標本を多数採集し、二名法を導入して種(しゅ)の概念を明確にし生物の分類体系を確立した。著書「植物の種」と「自然の体系」第10版は現在、それぞれ植物及び動物の命名規約に拠ってその出発点と定められて居る。死後、その採集標本の保管を兼ねてロンドンにリンネ学会が設立された。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>
※3-1:二名法/二命名法(にめいほう/にめいめいほう、binominal nomenclature)は、リンネの著書「自然の体系」の中での生物の命名法から始まったラテン語での学名命名法の基準。
※4:複眼(ふくがん、compound eye)は、多数の個眼がハチの巣状に集まって出来た目。クモ類・多足類を除く節足動物に普通1対在る他、軟体動物二枚貝類や環形動物多毛類にもみられる。物の形、運動などを見ると言われて居る。トンボの複眼1個は10,000~28,000個の個眼の集まり。←→単眼。
※4-1:単眼(たんがん、ocellus, simple eye)は、昆虫類・クモ類・多足類などの節足動物にみられる小形で簡単な構造の目。主に光の強弱を感じる。←→複眼。
※5:蛹(さなぎ、pupa)は、完全変態を行う昆虫類の幼虫が、成虫に移る途中で食物の摂取を止め、脱皮して静止して居るもの。この時期に、幼虫の組織は成虫に必要な組織に変わって行く。繭の中に入っているもの(ガ(蛾)・ハチなど)と裸のもの(チョウ・コウチュウ(甲虫)など)とが在る。
※6:工業暗化(こうぎょうあんか、industrial melanism)とは、19世紀後半の産業革命の進展に因る工業都市の発展に伴い、付近に生息するガ類に暗色の変異が増加した現象。イギリスのオオシモフリエダシャクで典型的に観察された。ガが止まる木の肌などが煤煙で汚れ黒化した結果、明色型が目立ち鳥などに捕食される率が高く成り、次第に暗色型が生き残る様に成った為とされる。
※7:形態模倣(けいたいもほう)とは、一例として北アメリカ大陸に生息するタテハチョウ科のカバイチモンジは毒を持つオオカバマダラに姿を似せて、鳥などの捕食者から身を守る。これは特にベーツ型擬態と呼ばれてる。擬態はそもそも、1862年にイギリスの博物学者ヘンリー・ベーツに依って発見されたが、それがこの型の擬態でした。
ベーツ型擬態の概念は、ダーウィンの自然淘汰説の証明に使われた。<出典:「Microsoft エンカルタ総合大百科」>
※8:イタリック体(italic)は、欧文活字書体の一種。やや右方に傾いた字体で引用語句・学名・他国語・強調する語句などに使用する。変体斜体。傾斜書体。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>
※9:マントファスマ(Mantophasmatodea)とは、(カマキリとナナフシの中間という意味)2002年4月に、新たに登録されたグループ。最初は4500万年前の琥珀の中から発見された。更に1950年代にアフリカのタンザニアで採取された標本からも確認され、現在迄に生きたものとして少なくとも3種、化石種としても2種が知られて居る。不完全変態をする極めて奇妙な昆虫で、翅が無く、ナナフシに似た長い胴を持つが、胸部が特殊化して居る。又、カマキリの様な棘の有る前肢を持ち、跳躍力の有る後肢を持つが、バッタ程は発達して居ない。<出典:「Microsoft エンカルタ総合大百科」>
※10:天蚕糸(てぐす)は、フウサン(楓蚕)・クスサン(樟蚕)の幼虫の体内から絹糸腺を取り、酸に浸し、引き伸ばし乾かして精製した白色透明の糸。多くは釣糸に用いる。てんさんし。
※10-1:絹糸腺(きんしせん)とは、チョウ目・トビケラ目の昆虫の幼虫に発達して居る1対の外分泌腺。ここから分泌される粘稠液(ねんちゅうえき)は、空気に触れると1本に合体されて絹糸と成り、繭などを作る。
※11:外部寄生(がいぶきせい、external parasitism)は、宿主の体表に寄生すること。口腔や鰓(えら)などに付着することも有る。カ・ノミ・ダニ・シラミ・ヒルなどの他、皮膚病を起こす菌類などが在る。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>
※12:絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ、endangered species)とは、急激な環境変化や乱獲などに因り、絶滅に瀕している生物の種又は亜種。現在では、レッドデータ・ブックに登録刊行されて居る。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
※12-1:レッドデータ・ブック(Red Data Book)とは、絶滅の恐れの有る野生生物(=絶滅危惧種など)に関するデータ集。国際自然保護連合(IUCN)が1966年以来刊行。表紙が赤いのでこの名が有る。日本にも各種の国内版が在る。
※13:単為生殖(たんいせいしょく、parthenogenesis)とは、有性生殖をする生物で、卵が受精しないで単独に発生し新しい個体を生じる生殖法。動物ではアブラムシ・ミツバチ・ミジンコなど、植物ではドクダミ・タンポポなどにみられる。単性生殖・処女生殖。クローンは人工的な単為生殖である。←→両性生殖。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>
(以上、出典は主に広辞苑です)
【参考文献】
△1:『学研生物図鑑-昆虫I チョウ』(白水隆監修、学習研究社)。
△2:『原色日本蛾類図鑑(上・下)』(江崎悌三他共著、保育社)。
△3:『学研生物図鑑-昆虫II 甲虫』(中根猛彦監修、学習研究社)。
△4:『学研生物図鑑-昆虫III バッタ・ハチ・セミ・トンボほか』(石原保監修、学習研究社)。
△5:『原色日本昆虫生態図鑑-II.トンボ編』(石田昇三著、保育社)。