1960年代のスケッチブック 1960年代、それは高度成長の真っ只中。名神・東名高速道路や東海道新幹線が開通し、東京オリンピックが開催され、アメリカのアポロ11号は月面着陸に成功するなど、明るい未来が想像できる時代でした。
そして、バスという交通機関も、道あるところすべてに路線を伸ばし、鈴なりの乗客を運んで走るバラ色の時代でした。
そんな良き時代に、バスのカラーというものに魅せられ、バスのカラーをスケッチするために全国を訪ね歩く男がいました。ここでは、昭和のバスファン・太宰様がリアルタイムで描いた塗装再現図をご紹介します。

目次

描画の手順

まずは完成図をお見せします
最初に描いた九州産業交通
九州産交

作画:昭和のバスファン・太宰様

最初の描画のきっかけとなったのが、九州産業交通でした。
太宰様が中学校の修学旅行で阿蘇に行ったとき、九州産交の封筒サイズの観光チラシをもらい、そこに出ているバスを描いたことをきっかけに、他のバス会社も描いてみたくなったのだそうです。
この車両は、西日本車体製で、66MCより前の丸形ボディですが、視野拡大窓の採用によりヒサシ付となった個性派。このような珍しい車種も、実物を見てしっかり描き分けています。

原図から色見本まで
描画用原紙図面
描画用原紙図面

色を塗る前の原紙図面です。
ケント紙に烏口と写真修正用小筆などを利用し、当時のバスの窓サイズ870mmを12.5mmに縮小して作図したとのこと。1/70相当のバス図面になります。

描画中の塗装再現図
描画中

初期は水彩絵の具、その後、ポスターカラーやアクリル絵の具へと画材を進化させます。
高校〜大学時代の1959(昭和34)〜1966(昭和41)年の間に描いたそうです。初期の作品の中には、再描画してクオリティを上げたものもあるとのこと。
バンパーなど銀色の部分には、たばこの銀紙を糊付けするなど身近な材料も活用しています。

描画前の色出し確認カード
色出し確認カード

描画前に作成した色出し確認カード。描画前には必ず色見本を作成し、リアルな色の表現にはこだわったそうです。
塗る前に、調合した絵の具を用紙に塗って乾燥させ、水分を飛ばした変化を見て、最終確認した上で描画したとのこと。色合いを見た目に合すのには苦労したそうです。

メーカーから取り寄せた塗装図
金沢産業の塗装図
金沢産業の塗装図

昭和のバスファン・太宰様は、バスメーカーに塗装図面を依頼します。
これは金沢産業の塗装図で、日野BD10系の図面に色を塗ったもの。九州産業交通の旧カラーです。ラインの幅や、社紋の位置などが数値入りで書かれています。

川崎航空機の塗装要領図
川崎航空機の塗装要領図

川崎航空機は、立体図面に色を塗った塗装要領図。これは東海自動車のカラー図で、実際の板を塗装した塗装見本も付属しています。

富士重工業の塗装図
富士重工業の塗装図

富士重工業は、塗り分け線を記載した車両図面を青焼き印刷したもの。これに塗装見本が貼り付けられています。
天窓のついたはとバスの観光バスです。

関西ペイントの色見本
CELVAの色見本

塗料メーカーの色見本も取り寄せます。これは関西ペイントのセルバカラーズ。1965年の色見本帳。

金沢産業の色見本
金沢産業の色見本

金沢産業の色見本で、これは広島電鉄と防長交通のカラーだそうです。
塗料は同じ塗料番号でも時代とともに成分の変更などで色合いが変わってしまいます。このような色見本板を作成しておくことで、常に同じ色の車両を送り出す事が出来るのです。

解説

  • 本コーナーで掲載している昭和のバスファン・太宰様から頂いた塗装再現図は、実物を目で見て観察した上で、上記のとおり、バス事業者やメーカーから塗装見本を取り寄せて、その色合いを正確に再現しています。1960年代と言えば、まだカラーフィルムが貴重で高価だった時代、天然色の写真記録もあまり残されていません。そういう意味で、この塗装再現図は非常に貴重な記録であると言えます。
  • 1960年代は、バスにとっての黄金時代。路線数、利用者数も最高レベルで、全国各地で大小さまざまなバス事業者が路線バスを運行していました。また長距離バスには沿線事業者による合弁会社が設立され、そこに高速バスが加わり始めたのがこの時代です。今では合併や解散等で姿を消したバス事業者も、昭和のバスファン・太宰様は記録しています。
  • 昭和のバスファン・太宰様は、「専ら外装デザインのみが関心於的でした」とおっしゃっていますが、ベース図面も精密で、車両型式、車体メーカーもきちんと記載されており、この時代にどのような車両が使われていたのかという記録としても貴重です。
  • バス事業者名や車両型式などは、基本的に昭和のバスファン・太宰様の記載を変えておりません。
  • 上記の「描画の手順」の部分で、太宰様が事業者やメーカーに資料提供を依頼した経過を記載しましたが、これらは現在とは異なる時代背景の下で行ったことです。現在では、関係者の職務遂行のご迷惑となる場合が多々ありますので、このような行為はお控えください。
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80s岩手県のバス“その頃”