番外編1 アンデルセンの故郷で感動の巻

デンマークのオーデンセ

  この夏、北欧を旅行したのですが、このとき訪れたデンマークのオーデンセについてお伝えします。

 オーデンセはハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen)の生誕の地で、彼はここで少年時代を過ごしています。オーデンセへはコペンハーゲンからインターシティー(急行列車)で約1時間半。

 私にとってオーデンセを訪ねることは、今回の旅行でのメインイベントのひとつだったので、この日はちょっと興奮気味でした。早起きしてインターシティーに乗りこみ、いざオーデンセへ。普段なら乗り物に乗るとすぐ寝てしまうのに、この日ばかりは目はぱっちり冴え、少しも眠くなりませんでした(でも夫は横でぐーぐー。私に付き合わされて行くのだから、仕方ないけど)。ガイドブックでオーデンセのところを読むと、「町中がおとぎの国の雰囲気に満ちあふれている」と書かれていて、期待はふくらむばかり。ところがオーデンセに着いてみると、駅は驚くほど近代的でちょっとがっかり。童話っぽい駅を想像していたもので…。気を取り直して、まずはアンデルセンの像があるアンデルセン公園(H.C.Andersen-Haven)へ。途中で見た市庁舎は、おとぎの国の雰囲気を感じさせる建物でした。

 アンデルセンの銅像は、川のほとりの芝生に立っていました。とても優しい顔をしていて、ちょっと雰囲気が『不思議の国のアリス』のルイス・キャロルに似ている気がしました。公園の芝生では、数人の女性たちが水着姿(なんとビキニ!)で日光浴をしていました。この公園の真ん中をオーデンセ川が流れていて、ここで川下りもできるようです。

(アンデルセン公園内にあるアンデルセンの銅像 →)

アンデルセンの銅像

  この公園のすぐ近くに、アンデルセンの子供時代の家(H.C.Andersens Bamdomshjem)はあります。その家はびっくりするほど小さく、しかもここにアンデルセン一家(たしか)6人と、もう一家族8人が住んでいたというのですから、ますます驚いてしまいます(アンデルセンはこの家で2歳から14歳までを過ごしています)。一家は6畳ほどの部屋をお父さんの仕事場(靴修理)兼、食堂兼、寝室として使い、2畳ほどの土間を台所として使っていたそうで、当時の貧しかった生活がうかがわれます。これらのことを係の女性(70歳過ぎぐらいの品のいいおばあさん)が、流暢な英語で丁寧に説明してくれました。現在、家の内部にはアンデルセン直筆の手紙や、当時の家の写真、両親の写真などが展示されています。帰りがけに、係りの女性は快く記念撮影に応じてくれました。

子ども時代の家1

  子ども時代の家2

アンデルセンの子供時代の家の外観
(向かって右側にアンデルセン一家が住んでいた)

 

子供時代の家の内部(広さは6畳ほど)

     
アンデルセン博物館
(↑ アンデルセン博物館の外観。正面入口の上にある看板のデザインは、アンデルセンが作った切れ絵から
とったもの)
 この後は今回のハイライト、アンデルセン博物館(H.C.Andersens Hus)へ。博物館のある通りは、まさに童話の世界。この一角は歴史保存地区に指定されているそうで、カラフルな家々が建ち並び、窓辺には赤い花々が飾られ、なんとも美しい風景でした。博物館には、アンデルセンの書斎を再現した部屋や、童話・詩・小説・戯曲・随筆などの手書きの原稿、友人に送った手紙、切り絵細工(そのうちのひとつが、博物館の看板の図柄に使われています)、アンデルセンと親しかった人々の肖像画、アンデルセンの写真などなど、実にさまざまなものが展示されていて、作家アンデルセンの生涯を知ることができます。ここには、アンデルセンが長年思いを寄せていたという女性の肖像画もあり、この女性が他の男性と結婚し、彼が大失恋したことがきっかけで「人魚姫」のお話が生まれたそうです(アンデルセンも、ルイス・キャロルも、子どもたちには大変親しまれながらも、どうも女運には恵まれなかったようで気の毒だなあ)。特に興味深かったのは、アンデルセンが子ども時代に書いた絵で、そこには王子様やお姫様が描かれていて、彼がその後生み出すことになる数々の童話の原点はここにあったのだなと納得しました。また、併設のライブラリーには、世界各国語に翻訳された膨大な数の本がありました(もちろん日本語の本も^^v)。
 この後コペンハーゲンにもどり、この日のしめくくりに人魚の像を見に行きました。像は公園の横の海辺にあり、その憂いに沈んだ表情は「人魚姫」のイメージそのまま。ただ人魚の背景に対岸の工場や倉庫が入ってしまうのがちょっと残念でした。去年、人魚の首が何者かによって切り落とされるという事件がありましたが(それ以前にも2度、首や腕が切り落とされる事件があった)、もう二度とそのようなことが起こらないよう祈ります。

(コペンハーゲン市内にある人魚の像 →)

人魚の像

 この日は、まさにアンデルセンづくしの1日となりました。

(文・撮影:99年8月)

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