HALF AND HALF JOURNAL

　　　　　　

EN PASSANT

HHJ

　

Updated 2003.12.14

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密室のHP

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国の機関と自治体のHPで、一番感心したのは北海道の八雲町である。理由は議会の質疑応答を丁寧に載せているからだ。それを報告しているサイトは他に見たことがない。合併推進は役所が住民から逃亡して密室化するためだ、という疑惑は当たっている。秋田県の公式サイトは議会中継があるが、文書としての記録は手間のかかる検索方式で、データを見た人がいるかどうか怪しい。こういう形骸化した、あるいは形だけの不親切なHP作成は、珍しくない。どのHPにも共通するのは、首長を除いて、職員の氏名と顔は出ないことである。

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素顔のHP

マス・メディアのHPはどうか、と言えば、例外なく責任者や担当者の氏名と顔は出ない。一般のHPでは発行者の氏名は記されているが、顔が出るHPは非常に少ない。これは日本の場合で、例えばフランスの市民放送局ではスタッフなどの氏名と顔が出て親密感を漂わせ、公共放送局でもそういうページがあるHPに出会った。個人主義の見本である。雪沢のネギ作り名人がマーケットに名前と顔を並べるようなものだろう。目的は、現代社会の匿名性が引き起こす不安を減らすことである。

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幽霊装置がいっぱい

e-Mailはアウト・ルック・エクスプレスを使用しているが、素人ユーザーには説明が足りない。プロバイダーの説明書は分かりやすいので、その指示どおりに設定を終えた。1年前のことだ。受信は無事にできた。送信も問題がない。しかし、アドレス拒否が起きるようになる。電話で問い合わせても時間の無駄だから、放置した。最近プロバイダーのHPに質問フォームができて、すぐ応答を受信した。以前の説明にない設定項目があった!何がどうなってるのか、さっぱり。

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Updated 2003.10.13

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隣接の不安

アトリエの庭は南側の小路を挟んで、造作と屋根が穴だらけの納屋を背景に持っている。アトリエを改造したとき視界から隠すために木を植えたが、効果はあまりなかった。危険な建物の指定を受けても、所有者の小畑家は全然構わない。昔の百姓気質なので、汚れは平気である。こちらが板塀で隠そうにも予算がなかった。こうして地下室が自分だけの仕事場兼住居になって10年以上経つと、人気のあった庭が汚い内臓剥き出しの建物に似てきた。この建物は小畑元市長のような存在である。

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内臓加工品の勉強

隣りの小畑家のじいさんは、昭和50年代大通りにウサギなどの毛皮製品をぶら下げていた。裏の倉庫で毛皮を剥ぐのだ、と人から聞いたことがある。中学時代にその倉庫が窓の向こうに見える住居に移り住むと、もっと残酷な話を聞いた。市から委託されて犬の処分をしているというものだ。倉庫から染み出る暗い液体を見たり、犬の鳴き声が夜中に聞こえたような気がすると、慄然とした。小畑元市長は新ブロジェクトのために数年前意欲的にドイツに飛んでソーセージの加工を視察した。

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住民のためのHP

大野台を突っ切る県道105号線は、車が排出する窒素化合物と硫黄化合物のガスの中である。南の米内沢で内陸鉄道をまたぐ道路工事をしているので、大気汚染状況と工事の内容などについて、HPで情報を得ようとした。鷹巣町にある秋田県地域振興局建設部、〈工事中です〉と数か月前と同じ。森吉町、該当するページがない。やはり議会と役人はインターネット・ワールドに背を向けている。住民が家にいながら地域の動きが手に取るように分かるように、どんな情報を載せるか規定するHP条例を作るべ。なっ?ひねくれねで。

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Updated 2003.8.15　

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第2次世界大戦の教訓

ナチス・ドイツの野望を挫折させるチャンスは、二度あったと思う。最初は1936年スペイン内戦。社会主義諸派の人民戦線が樹立した第2共和政府を打倒するためにフランコ将軍が反乱を起こすと、ドイツとイタリアはそれを支援した。しかし、イギリス・フランス・アメリカは政府側への武器輸出禁止と不干渉政策を取った。ヒューマニズム・デモクラシーよりも資本主義・植民地主義の枠組みにこだわったので、状況を見間違い、ナチスにつけこまれてしまった。

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厭戦の罠

1938年、ナチスがチェコ政府にズデーテン地方の割譲を迫ったとき、イギリス・フランスは危機収拾のためミュンヘン会議を開いたが、ヒトラーの脅迫に屈した。ドイツとの戦争はもう嫌だ、というイギリス・フランス両国民の感情をイギリスのチェンバレン首相は無視しなかった。しかし、ナチスの優生思想と反ユダヤ主義と20世紀の機械の恐怖について正しい予見ができていれば、そこでファシズムのマシンを止めなければならないはずだった。この反省は、国際テロと悪の枢軸との戦争に十分生かされている。

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イギリスとロシアと…

プーチン大統領が連合王国(United Kingdom,Royaume-Uni)を国家元首として6月24日公式訪問した。1874年のアレクサンドル2世訪問以後一度もなかったことだが、頭が消えたイラクの復興と両国の経済関係の協議が目的であるという。とはいえ、エリザベス女王と大統領が握手を交わすシーンは、二枚舌で自由を忌み嫌う極東の某国が作ったものである。帝政ロシアの領土拡張主義が明治時代にイギリスと日本を親密にさせて同盟関係を結ばせたように。

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1　Francisco P.H.T.Franco-Bahamonde

2 Adolf.Hitler , Arthur.N.Camberlain

3　France info ,AFP

Alexandre �U,Vladimir Poutine ,Qween Elizabeth

▼　日本とロシアの関連記事一覧

EN PASSANT HHJ 2003.6 Vol .92

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アトムのメッセージ

環境サインは誰か特定の者に向かって放たれる。その他の人間がそれのメッセージを理解するのは状況の共有か推理による。今年に入って、愕然とする例が増えた。北朝鮮が核の包丁をちらつかせて、〈取り返しがつかないことになる〉と脅しつづける国際情勢が、秋田県の指定金融機関である秋田銀行のマスコット鉄腕アトムのメッセージを自然に翻訳したのだ。アトミック・ボンブ(原子爆弾)、原子力発電所、放射能。所有者を苦しめるマスコットである。

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言葉とイメージのウィルス絶滅

小泉首相、秋田県の寺田知事、野呂田元防衛庁長官、大館市選出の県議(鈴木洋一、菅原昇、石田寛)、大館市の小畑元市長、これらの人たちは大変な子ども思いで一致している。子どもたちの脳神経細胞が〈これら〉を同音のコレラと混同して悪質なノイローゼにならないために、彼らは環境サイン絶滅対策に取り組むべきだ。それが家庭と社会を救う。確実な対策は環境サイン製品を隔離消毒する法律を制定すること、国連に働きかけることである。

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ルール意識と生活

〈日本人は12才の少年である〉と連合国最高司令官マッカーサーは、朝鮮戦争で解任後アメリカ議会で行なった演説で語った。精神の未熟さを言ったものらしいが、これが日本のある種の人たちを怒らせたという。この逸話は戦後の日本社会を考えると、悲しいユーモアになる。自尊心が傷ついたとき優越感を取り戻すために、他人を子ども扱いすることに隠微な喜びを表わすからだ。年齢の低い者に自由と平等を認めないのは、相変わらずルール意識がない草野球の少年みたいなものだ。

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EN PASSANT HHJ 2003.4 Vol.91

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日本海西部の怪事件

イギリスの〈ケンブリッジ・シャイア〉のブルーベリー・ジャムが去年ジャスコの売り場から消えた。庭のブルーベリーはまだ少ししか実をつけないので、自然味がない他社の製品か冷凍の果実の手作りジャムで我慢している。雪のない冬の終りには北生協の店舗が潰れ、必然的にCOOPの繊細な味のキリマンジャロ・コーヒーも消えた。ゆで卵を作ると、相変わらず卵の殻がきれいにむけなかった。ル・モンドによれば、ヨーロッパでも卵の殻の脆弱さが日常生活を脅かしている。

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帝国の亡霊

ナチスの犯罪は映画の宣伝力で忘却されない。大日本帝国の犯罪は、国民でさえも抽象的な再生しかできない。この背景には抑圧があった。黒沢明は、アメリカのような大国の自由が日本にはない、と振り返っている。なるほど《悪い奴ほどよく眠る》のストーリーは外にずれてゆく。戦後アメリカは共産主義と対抗するために帝国の生体実験・生物化学兵器の資料、有能な残党を利用した。資料があれば、戦後の医師でも容易に恐怖の研究を発展させることができただろう。

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食生活のショック

北海道の八雲町は数年前大館で有名になった。某スーパー・マーケットが群馬県のメーカーのバターを止めて、その町で生産されたバターを販売したのだが、塩分が多すぎた。HHJは前のバターを賞賛したので、これは誰かが塩をもっと入れろ、と命令した結果だと特派員に批判させた。この確かな推理が住民に受けて去年とうとう八雲町の牧場のバターは姿を消した。食材という比較的新しい言葉にも権力の嫌味な毒が含まれている。それは脳と身体にやはり慢性的な影響を広げるだろう。

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2　黒澤明の映画:Donald Richie 著　キネマ旬報社

　　　　　　　　　　　　　　

EN PASSANT HHJ 2003.2 Vol.90

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名前を消す目的

広域合併で確実に起きる変化は、大館市の名が消えることだろう。歴史などの探求にとって、これ　　

は行政機関の部局名変更の嫌がらせに等しい標識隠しである。しかし、

大館市は積極的に比内町・田代町・鹿角市・小坂町との合併推進に励んで

いる。鹿角市と小坂町は、結婚強要に対して協議に応じる意思さえないが、この理由は地理的な隔たりだけでない。上品な文化を汚されたくないという危機感が強い。遠慮なく言うが、小畑元市長は大館市の新しい文化を執拗に潰した張本人の一人である。暴露されて開き直り合併について〈一つの町を消せと言えるか?〉と反語的に脅迫する。町の名前ではない。

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有栖川宮公園のミステリー

30年ぶりにインターネットで再会した森田和子は、リヴァー・ユートピア構想が有栖川宮公園の想い出から始まったことを知って、彼女の記憶を少し打ち明けてくれた。子どもの頃の遊び場で、早大のサークル旅の会の機関紙に有栖川公園のエセーを書いた、と。70年だと思うが、その年の暮れか、母の手紙で父秀之の出生の秘密を知り、舞台である恵比寿の丘と〈天現寺〉の広尾辺りを瞑想的に散歩した。有栖川公園に立ち寄った記憶はない。昭和初期のドラマは三田の女には黙っていた。広尾のおばさん(姉妹)の不在が胸の奥に影を落としていたせいだろう。

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仮象としての記号システム

実存論的に言えば、人間が表現するものはすべて仮象である。これは言語と同じく人が生きるために創造した記号システムでしかない。私生活や仕事の記号システムは、習慣的にあるいは自覚的に有意義な連関で組み立てられ、それを認識する知性もやはり個性的な記号システムで動く。この思考の有意義な連関から外れる出来事は動揺させることが多いので、偶然について不安なしに考えるのは難しい。しかし、偶然が真の世界の現象である場合、幸運なら、想像力は新しい記号システムを構想できるだろう。

　 [偶然のフランス語訳はéventualité]

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2 　有栖川宮と公園について

▼　長谷川一族の風景

▼　消えた川~明治の守護神とリヴァー・ユートピア

　　　　　　　

EN PASSANT HHJ 2002.12 Vol.89

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偶然と必然

事物が有意義の連関から外れることを偶然と名づけるとしよう。この連関は合理的な知性と感性が事物の有用性と目的にしたがって組み立てた秩序である。テーブルの上にコップがあるのは、有意義の連関に合った必然的な現象である。それは、その中で行為する人間から見れば、記号のシステム(体系)である。コップが横に倒れたりテーブルから落ちたりするのは、偶然である。個人生活は自分でコーディネイトした記号システムなので、その習慣的なシステムに入ってない行動や他人との出会いはやはり偶然である。2台の車の衝突は、社会と個人の記号システムから逸脱したアクシデントであるということになるだろう。

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偶然の一致

上の偶然の例のうち、後の2例は異なった記号システムの中心（人間）が同じ時刻同じ場所で接触することなので、偶然の一致である。偶然の一致には個人が組み立てた記号システムを構成するさまざまな要素(記号)が他の記号システムの何らかの要素と結合する場合もある。単純な例は、ぼくのライターと彼のライターが同じ型の同じ色であるとき。それを同時にポケットから取り出すとき。偶然の一致で問題になるのは、それが別の世界を見させるときだ。ライターや行為が有意義な記号システムから外れて、現在が仮象に思える。分かりきった記号の指示内容が分裂して他の〈意味〉に滑ってゆく。例えば、爆発物。過去の一場面。未来の想像的な出来事。

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謀略の記号論

偶然の一致の因果関係を探ると、別の世界つまり神々の領域・宇宙人の領域・謀略機関の領域に入り込むだろう。最近の例を言うと、飛行機のプロペラによる惨殺。HHJが北白川宮永久王の事故死について書いたあと起きた南アメリカでの類似の事故である。石井紘基衆院議員の暗殺。HHJが日本映画は政治に対する切り込みがないと批判してまもなく、右翼が包丁で政治家の胸を一突きした。特徴的な類似記号は、無関係な二つの記号システムを結合させる。この一致を原因と結果と信じるのは呪術的精神である。超自然的な意志が第一原因だと考える者は理性的ではない。しかし、日本の政治とマス・メディアは謀略機関が企んだ可能性をテーマにすることを避ける。

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注 : 事物とは行為・動きの在り方と物を指す。　

　　有意義な連関は、ハイデッガー( Mrtin Heidegger)の用語。

偶然の周辺を回る小話

▼　偶然という使者

EN PASSANT HHJ 2002.10.10 Vol.88

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事故計画

HHHの編集長に、旧友がインターネットで挨拶した。〈いつだったか、こんなジョークを聞かせてくれたな。今や科学の力で事故がなくなったので、テレビ局がみずから事故のニュースを作るり始めた、と。〉〈本当かもしれない。〉〈本当だよ〉と理工学部の秀才が恐しそうに言った。〈このヴィデオは日比谷線事故が起こせるか、シミュレーションを使って計算したものだ。条件B3のボタンが事故発生の映像だ。〉編集長はすぐに米代川水系のデータを送った。県の河川水位と雨量測定装置のデータを使えば、JR花輪線2箇所の崩壊事故は実現可能か？〈？〉用水路の水量調節をすれば？〈餌釣(えづり)は条件C5で可能。片山は条件F2で可能。〉!!!

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バラドックス

人間は快適な生活を求める。衣食住の土台に、明日はきのうよりも快適に過ごしたいという欲求がなければ、知性の発展もありえないだろう。快適さは安全な環境の中で維持されるから、人間はそれにも十分気を配らなければならない。必然的に管理社会が形成される。

しかし、管理社会とは完全であろうと志向するために社会のあらゆるシステムを統御して正確な未来予測と危険への対応を準備する。管理センタ−は医者のようにどこをどうすればどう変化するかを熟知する。これが安全にとって脅威であることは、考えなくても分かる。

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第2次世界大戦の保証付き

アメリカとイギリスがイラク攻撃に積極的だ。公表した情報によれば、イラクは大量破壊兵器を46分で準備できる能力があり、生物化学兵器も保有している。アルカイダとの繋がりが明らかになり、こういうテロ組織は国籍を隠した海外秘密軍と定義した方がいい。日本赤軍の役割は中近東と北朝鮮

と日本の間において考えるべきだ。

　どんな国でも意思決定機関と活動は法で定められている。幸いアメリカ・イギリス・ロシア・中国は協調的である。このカードは第2次世界大戦の保証書付きで絶対的に強い。日本がカタストロフを避けるには、二度と自殺行為を選択しないことだろう。

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EN PASSANT HHJ 2002.8 Vol.87

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偽装事故

地下鉄日比谷線の脱線衝突事故は、ミスの重なりという結論で終止符が打たれた。去年2月焼津市上空での旅客機ニアミスは、管制官見習いの誤解が原因であるという報告書が出された．日本海でのロシア船重油流出事故も偶発的な出来事にすぎなかった。現代社会の特徴の一つである事故が知性にとって問題になるのは、偶然でないという〈直感〉を引き起こすときだ。これは意味と同じく状況との関係の仕方が開示する。ぼくは謀略政治と偽装事故の疑惑に囚われているので、北白川宮能久の次男成久の事故死や昭和l5年一人息子永久王が満州で飛行機に引っかけられて死んだ事故にも、何か計画性があると思った。

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米代川デイト

状況とどう関係しようと、言葉や事物で事故を暗示されていたら、計画性の認識は主観的でない。成り行きで言うが、永久(ながひさ)王が9月4日死んだ後の16日近衛内閣は日本ドイツイタリアの三国同盟締結を決定、27日対アメリカ・イギリス戦に向けて調印した。アメリカ大使グルーの日記によれば、近衛文麿首相と昭和天皇は絶村反対だったが、皇室が危うくなると告げる者があった。天皇は近衛に、〈死なばもろともだね〉と話したという。成久親子が事故死だったこと、明治のライヴァル有栖川宮と北白川宮がともに消滅したことを想い出していたに違いない。戦後政治の動きもこのアングルから再現できる…

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不存在の事件

法律用語に作為と不作為という概念がある。行為で現実に悪い変化を起こす普通の犯罪と行為しないでそれを引き起こす犯罪。怠慢は後者だが、一般的に結果を予想していなければ、過失。予期していれば、未必の故意である。環境汚染の事故と事件には、これが多い．住民が苦しむ事態になるとしても、後は知ったことじゃない、と彼らは思う。彼らとは記者クラブに出入りするジャーナリストで、同時に謀略機関にも所属している。彼らを現場に送り込んだ上司らの上の中枢部は、〈この事実は黙殺しろ〉〈この事実はこう書け〉と命令できる。こうして、事件は無害化されて封じ込められる。

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1　

▼　地下鉄日比谷線の事故の真相

2 天皇独白録 : 半藤一利　解説

駐日アメリカ大使 J.C Grew

▼　東京駅暗殺事件~17

歴史の真相を考えるために

★　謀略のパール・ハーバー

偽装事故についてもっと考える

▼　無意味な破片　2002.10.10

EN PASSANT HHJ 2002.4 Vol.85

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時効直前

4月1日、秋田新報を6年前退職した番順記者は大館橋の袂HHHに入ると、やおら編集長に挨拶した。〈私（わだす）は、あの、角館町さ96年当時えだ者です。あの時はどうも。これは最近私の家さ送られできたテープでして。一人は北朝鮮訛りなんですよ。私の生まれ故郷なんですよ。〉3人の言い争いの盗聴記録を総合すると、西宮家の蔵再利用計画は自民党議員の秘書が提案した。西宮家の所有者を嫌がらせで追い出して全国的に〈西宮家の蔵〉を宣伝する目的は、87年5月3日西宮市の朝日新聞支局で起きた記者襲撃事件の記憶をメッセージとして人々に強迫観念を植え付けることにある。

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ブラック・ユーモア

〈角館町の議会がライフ・ハウス計画を大館市に譲った背景が想像できますね。〉と編集長。番順記者は〈花岡さ行がねえしか？〉と誘った。〈汚染土嬢の処理施設を見てえんで。〉青い巨大なタンクが町の入ロに門のように並んでいる。タクシーを降りてから、編集長は説明した。〈あの建物の中で洗浄してるんです。廃水はタンクを通って処理される。〉〈土壌さ含まれでる鉛は取ってがら、その、再利用するわけだな。〉〈小坂製錬に送るようです。〉〈鉛で何が作るんだべな？私の訛りはどうしようもねばって、自民党や小畑市長さんは鉛を何とが利用してえ、と頑張ってるわげだな、はあ。〉

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鉛の恐怖

番順さんはタバコを吸いながら、そう言った。編集長は新聞で読んだ発言を想い出した。〈小畑市長は、鉛がなぜ出るか問題だと以前コンテクストからずれた疑問を言ったが、答は小学生でも知ってますよ。〉〈鉛の玉ぶちこむがらだな。〉二人は鉛などの粉塵が漂う黄色っぽい空を眺めた。番順記者が〈何だが目がいでえしな。〉と言った。〈あの韓国訛りの青年は西宮の事件さ係わってえだな。戦時中花岡鉱山で強制労働させられでえだ朝鮮人の孫だと私は思うしな。侵略戦争を謝罪してればな。右翼と合作するなんてな。ハセさん、駄洒落の方法論は状況証拠にならねえですか？〉不意にサイレンが鳴り響いた。　　　　　　　　　　　　　　

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コントの背景を知るために

▼　角館《西宮家の蔵》疑惑

EN PASSANT HHJ 2002.2.14 Vol.84

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銅像が語ること

有栖川宮が大正時代に高松宮と名を変えたと知って、徳川派の影が近代史の曲がり角に浮かんだ。広岡裕児の《皇族》によれば、明治元年奥羽越列藩同盟は、6月江戸から会津に逃れた北白川宮能久（よしひさ）親王の盟主就任を決定した。独立政府の構想があったが、9月には降伏する。能久親王は一時皇族の身分を剥奪される。明治28年日露戦争のとき有栖川宮熾仁(たるひと)が大本営のある広鳥で病死。北白川宮は台湾征伐で病死。明治35年皇居北の丸の近衛師団兵舎前広場に帝都の守護神のように銅像が建てられる。2年後徳川慶喜が大政奉還の功績で公爵に。有栖川宮の騎馬像は麻布にいつ建てられたか？

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あなたの家でもドラマを

72年の創作ノートに《隣人》という短編小説がある。貧しい婦人と娘が大学生の家を訪れて〈世界聖戦協会〉の募金と署名に協力してくれたことを感謝する。女は言う、昔は民衆の不孝度＝少数上層階級の幸福度だったが、人類は最大多数の最大幸福をこそめざさねばならないという真理を発見した、と。少女が病気で倒れたので、主人公は哀れんで家に泊める。朝には孤児や老人の救済施設になっていて、マスコミが取材したりワイド・ショーが取り上げたりした後、地下にぶちこまれる。どこかで見たような婦人と少女はTVの連続お涙頂戴ドラマに出ていた。

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麻布広尾グループ

その小説を読んで、麻布の友人は非常におもしろがった。兄がイスラム教に帰依したので、麻布の旧家は大騒ぎしていた。思想書を読むだけの土佐の文学生は、TVドラマがなぜ出てくるのか、と不満だった。

2年後、神楽坂の飲み屋で彼がめずらしく世俗の話をした。〈後浜がTBSに入社しましたよ。〉だが、長崎の実存主義者は期待に反して集まりには来なかった。ぼくにはシュールレアリスムの視点から実存主義と唯物論の調整は簡単だった。象徴的なのは、ぼくは長崎の状況感覚の適確さを買っていたが、同じころサークルで見慣れない活動家上がりの演説を聞いて麻布と仲よくなったということだ。

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1 長谷川一族の歴史

《菊と葵のものがたり》の感想

3　V字型の階段の記憶　8

EN PASSANT HHJ 2001.8 Vol.81

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防毒マスクの準備を

《パール・ハーバー　その真実》はラブ・ロ

マンスの映画と違い、説明はないが、記録と再現映像と証言の構成である。日本軍の上陸に備えて防毒マスクを住民に携帯させるのは、詳細な中国・満州帝国情報を集めていたことを意味するだろう。防衛意議の真剣さは日本に欠けていたことだ。花岡地区を回りながら、リヴァー・ユートピアはその一片でも見習う必要があると考えた。　　　

　大館市の小畑市長は帝国軍人のように闘争心が強い人だから、同和などの関係企業に金を出させ、地域の全住民に防毒マスクを配布して、早急に非常事態の想定状況を周知させ、官民合同の防災訓練を毎月1回実施するべきである。

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病院国家の縮図

大館市の北にゴミのリサイクルで儲けて住民をゴミ扱いにする国家的事業がある−方、南の水田地帯

二井田には注射針製造工場がある。〈日本医工〉から〈ニッショー〉〈ニプロ〉とよく看板を変えるが、消毒用のコバルト60の危険さは変わらない。以前そこで働いていた男性から、〈自殺が多い〉と聞いた。うろ覚えの知識だが、放射能の影響かもしれない。今、その会社施設と提携した誘致企業の菱山製薬の工場が県営第二工業団地に入る。条例改正で2億5千万の市補助金のお中元と他に県補助金が風呂敷に包まれる。事業の詳細は報道されない。濾過型人工腎臓補充液やキット製品の製造だとか、うわ言を言っている。北の公害患者の面倒も見るか？

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マスク・フェスティヴァル

小坂町では5月小坂製錬の硫酸工場から排出される2酸化硫黄のガスの塊が住民を襲った。吐き気と眩暈。気象条件の不運な折り重なりにも原因があるという。原因不明の先天的な皮膚疾患に悩む若い女性を想い出す。いずれ東北最大規模の産廃埋立て場が完成する。何が漏出するか、誰にも分からない。ハイウェイ峠には養豚施設の悪臭が充満している。長木川源流ではゴミ埋立て地の有害物質の滲出があるらしい。大館市役所と検察庁からは腐敗菌が漂う。夏祭りには騒音公害ドームの森で能楽が催される。舞いは最近人気の大倉正之助。黴菌お掃除の幻想的な一夜に全市民全指導者は防毒マスクを着けて参加する、か…

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1 PEARL HARBOR THE TRUTH : 監督　Michael Bay

話題の映画《パール・ハーバー》の監督がドキュメンタリーも作った。

★　パール・ハーバーとは何か ?

EN PASSANT HHJ 2001.6.15 Vol.80

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金と木の葉と白金と

有栖川宮記念公園の横に南部坂という坂があるので、きっと南部藩の屋敷跡だな、と思ったことがあった。リヴァー・ドキュメンタリーの川を調べるために図書館で地図を探すと、江戸と東京を重ねた地図が目に留まる。公園は〈陸奥盛岡藩南部美濃守利剛拝領屋敷〉の庭園だった。池の流れは米代川か…青銅の騎馬像の原料は尾去沢鉱山から行ったのか…

　渋谷川が流れる天現寺交差点辺りに〈狸蕎麦〉と記されていた。わざわざ説明がある。子連れの女がソバを買いに来たが、金が木の葉に変わった！狸も大好きなソバだと評判になった。笑ってから想い出した。近くの白金自然教育園には白金長者の士塁が残っていたっけ…

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イマジネーションの種

ぼくが白金台の自然教育園に入ったのは、目黒駅から古い街並みを求めて散歩した途中だった。まだ迎賓館があった頃で、植物が豊かに茂る公園にはレクリェーションを楽しむ人たちが多かった。東京にこんな自然があることに驚き、のんびり森の中を歩いた。土塁にも上がった。青空も大都会を忘れさせた。しかし、首都高速道路が空中にいきなり現われて、絵描きを怒らせたのだった。それを素材にした悲喜劇的なコントを書き、現代文明批判を吐き、反小説論を企み、果ては長木川水源のある山をつらぬく高速道路のトンネルのシーンから絶対にドキュメンタリーを始めるんだと妄想した。つまり、これはイマジネーションの傷なのだ。

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21世紀の司法制度のあり方

司法制度改革審議会が最終意見書を小泉首相に提出した。基本理念と方向は、具体的には司法は〈公平な第三者が適性かつ透明な手続きにより公正な法的ルール・原理に基づいて判断を示す〉こと、その制度の運営に係わる裁判官や検察官などが〈国民のニーズに即した法的サービスを提供する〉こと、〈統治主体・権利主体である国民〉はそれら法曹の職業人とのコミュニケーションの場を形成して〈国民のための司法を国民自らが実現し支えなけれぱならない。〉司法制度は政治権力の所有物と思われがちだが、この改革はプロセスを透明化して刑事裁判に国民が参加する〈裁判員〉制で法と政治の犠牲を少なくする狙いだ。

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EN PASSANT HHJ 2001.2.14 Vol.78

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ムーンストーン

1973年の創作ノート《街灯》に〈石との対話）というコントがあった。日本的に分かりにくい書き方をしようと思って書いた。有栖川宮公園の青銅の騎馬像がイメージの核である。

　地下鉄日比谷線の最終電車がブラットフォームに止まると、冬の風とともに駅の階段を降りる凄まじい音が響き、〈見れば、僕の前の座席に一人の男が腰を下ろし、ほっと息をついて乱れた髪を指で硫いた。〉中年男が車内広告に関心を示さないのを見て、主人公は話しかける。〈あなたは石なんだ。最初から自分自身なんて持ってないんだよ。〉そして、《月の石展示会》を見に行ったのだろうと問いかけるが、削除線が引かれている。

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秘法

削除された箇所に鍵が隠れているとすれば、この月の石は怪しい。月は昔から鏡と同じイメージを持ち、青銅鏡を媒介にして青銅の騎馬像に通じる。男は都市生活の哀感を漂わせ、生きてゆかねばならないので内緒にしてくれ、と頼む。主人公は石になる方法を知りたがる。〈えっ？秘法ですって！〉と男は驚き、〈冗談はよしたまえ〉主人公は責める。〈我慢すること？それとも、どうでもいいことに関心を払って

自分自身については全く何も知らないでいること？あるいは、自由なんかに唾を吐きかけてやること？〉男は芝居がかった仕種で定期券を取り出し、改札口を出た。若い自由人は〈君、もう20円！〉と改札係に止められるが、10円足りない。すると、男が10円玉を出した。

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苦しい感想

有栖川宮を連想させるところは何もない。青銅の騎馬像が出現するかと予期したが、それもない。しかし、車内広告と銅貨が1枚出るのは今のぼくにはショツキンクで、この先はどうなるのか、と懐かしい青いインクを追った。

　…階段を昇って、夜の街に出た。雨が降っていた。男は折りたたみ傘を開いて頭にかざし、〈ところで、あなたはどこへ帰るんです？〉…別に僕の返事を待つ気はないとでもいうように、そう言い残して立ち去った。

　地上に月が出ていれば、幻想的だっただろう。しかし、忘れていたが、その頃(ぼくにとって)傘は自分の小さな宇宙で生きることの象徴だった。青銅の騎馬像はなぜイメージと正反対の物語を書かせたのだろうか？

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EN PASSANT HHJ 2000.12.12 Vol.77
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政治責任について 〈国民代表制は機能しているか〉によれぱ、権力担当者は法的責任の他に政治責任を持つ〈憲法15条）。〈国民主権のもとでは違法行為をする権力担当者はもちろん、権力担当者にあるまじき不当な行為をする者や国民の利益に役立ちえない無能な者を権力の座につけておかなければならない理由はない。（略）権力を濫用する恐れのある権力担当者をその地位から迅速に排除することによって、国民の被害を最小限に食い止めることが求められる。〈略〉無罪推定の原則は働かず、「疑わしきは権力担当者の不利益に」が原則となり〉証明責任も本人が負わなければならない。大館市議会はこのことを厳しく反省するべきだ。
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美と経済の法則 デュフイが描いた地中海の絵を見ると、無造作に重ねた青の中にヨットらしい赤い色が浮かぴ、三木清の言葉を想い出させる。〈最少の費用で最大の効用を上げるという経済の法則が同時に心の秩序の法則でもあるということは、この経済の法則が実は美学の法則でもあるからである。〉秩序は技術の法則に従い、そのことが原理的に美と経済の法則を支える。〈美学の法則は政治上の秩序に関してさえ模範的でありうる。「時代の政治的問題を美学によって解決する」というシルレルの言葉は何よりも秩序の問題に関して妥当するであろう。〉シルレルとは他で聞いたことのない思想家だが、その気障な言葉は今リヴアー・ユートピアの一面のように響く。
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オー　ハーバー 12月8日の朝、半分半分放送局長は新聞を開いて呆然とした。あのNHKが実際に起きた地元高校生の冬山遭難映画を大館市民の出演参加で作る計画なのだ。国民が払わされる視聴料の無駄遣いだ。放送局長は慌ただしくマイクに向かう。〈パール・ハーバーを忘れるな！大幅な赤字だ！オー　ハーバー！〉	あの橋の上から 《あの橋の上で会いましょう》再会を誓った若い男女を待っていたのは、勾欄に塗られた稚拙な大文字マークだった。恋の気分を台無しにされ、二人は川に飛び込んだ。それから、街のあちこちでクライマックスに大文字の幻影が現われ、人々はなぜかずぶ濡れになるのだった。湿っぽいドラマの最低傑作！
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EN PASSANT HHJ 2000.10.12 Vol.76
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日本人の旗好き ある時中国では街の中に旗をいっぱい立てるか？）と中国人に質問した。中国人は何のことか分からなかったので、道路脇に並ぶ交通安全の旗を指差した。そんな旗（フラッグ）は見たことがないと言って、中国人は依然として不思議そうな顔をした。 　やはり日本社会独特の風習だった、宣伝広告用の旗が通りに翻るのは。日本人が好む理由は布切れの揺れにあるか。宣伝者はその方が視覚を捕らえ、見る人たち特に外界べったりの非精神的な人間に触覚的な快さと動物的な高揚を感じさせると思うのだ！それが神経を刺激したり視界を妨げたりして交通事故を誘発する危険性があると気づくべきである。そして、その種の旗が美観を損ねることを。
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荷車の移動　 ジャスコがオープンしたとき、ベーカリーの人気が凄かった。パンの味が都会並みで、店舗のデザインが新鮮だった。店の名のとおり荷車風の陳列台を通路際に置き、客に出入□の抵抗を感じさせなかった。数年後ガラスの壁で出入□を狭く改修して、驚いたことに荷車が消えた！欧州の街の情感を惜しんだ。味も悪くなった。それから、まもなく地元のスーパー・マーケットにおかしな変化が起きた。まずいパンを作るベーカリーが店舗を改修して、ガラスの壁を取り払い通路に面して広い陳列台を置いた。客の姿が目立つようになった。あの荷車をこっそり運んだのは、政治経済界の偉い人たちである。新製品を見たら、パンの間に醜悪な□を挟んで涎を垂らしていた！
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映画制作の実際 ボー放送局は映画《パンにロを挟むな》の制作を開始、出演者選びに取り掛かった。脚本は自衛隊幹部、監督は共産党幹部、対立するマーケットの社長には市長と保健所長、荷車運びは短大教授と連合幹部。みんな快く承諾。ディテールは民主的に話し合いで決めることにした……	内出血 某国では、きれいごとを言うだけで汚い金集めをする政治集団に耐えかね、公務員がサボタージュやエラ一をして抵抗を続けていた。政治集団はついに一線を越えた。（あちこちに放火して、生意気な奴らを容赦なく豚箱こ送り込め！疑心暗鬼のノイローゼ地獄にするのだあ！）
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EN PASSANT HHJ 2000.8.12 Vol.75

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生活の中の記号

《車が向かって来たので、逃げようと思った》と人は恐れの対象について明確に話すことができる。不安の中にあるときは、それが何なのか言葉で言い表わせない。手持ちの単語はどれもぴったりしない感じで、ゴミのように次々と棄てられる。ハイデッガーによれば、不安とは事物が無意義性に沈むことである。日本の哲学者と知識人はそこで記号問題の重要さに気づかなければならないはずだが、気象や大工道具や自動車の話では哲学的恰好が保てないと思ったか、難解なペ一ジの奴隷になることを嬉しがった。結果は、フランスと反対にファシズムの奴隷だ。〈不安とはムニャムニャムニャであります！ムニャではないんです！〉〈先生、さすがです！〉

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チョコレートの包み紙

スタジオが人気だった頃、若い女性がふらりと入って来て旅行の話をした。ロンドンに行くつもりだったが、途中で寄ったパリのセーヌ河を見てそこで暮らそうと決心したという。気になったのは、彼女がチョコレ一卜をロに入れたあと包み紙を遠慮なくテーブルの上に散らかすことである。古い卓球台に黒ペンキを塗ったテーブルだから、色とりどりの包み紙がだんだん芸術作品のように広がった。ぼくはそれを見ながら、彼女がどうにもならない状況に嵌まって無秩序に憧れているのだと思った。

　散らばった包み紙は、無意義性に沈んだオフジェではない。過ぎ去った行為の必然的な終わりで、単なるゴミである。

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消失点とオブジェ

散らばった包み紙を見て、必然的でないと非難する人がいるだろう。ゴミ箱に入れるのが普通

だ、と。だから、考えられる可能な方向付けのひとつと言い換えよう。そういう無秩序は街ではよく見かける。

　しかし、例えばキリコの絵には不安の香りのようなところがある。オブジェは日常生活の連関から切り離され、相互に孤立している。おそらく建物の極端な遠近法に秘密があるだろう。絵を支配するのは虚無の消失点であり、絵描きの視線はそれを意識するためにオフジェに現実的な方向付けあるいは意味を見出だせない。存在が不思議なのである。

　ところで、彼女がチョコレ−トを食べながら消失点を見ていたとすれば？？？

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1 Martin Heidegger : 哲学の復権をもたらしたドイツの実存哲学者。理解した日本人は和辻哲郎と三木清だけ。

3 G．D．Chirico：イタリアの画家　20世紀初期シュール・レアリスム

に影響を与えた。

プレヴェールの詩から日常生活の記号の連関について学ぶ

▼　朝の食事

EN PASSANT HHJ 2000.4.13 Vol.73

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2点間の虚構

東京のとある私鉄の踏切で点滅する赤信号を何となく眺めていた。赤いライトは二つ並んでいて、交互に光ったり消えたりする。見慣れているが、そのときはどういうわけか、赤いライトの中間の闇を左右に走る赤い光線が注意を引いた。消えた赤い光が瞬間的に反対側にすばやく移行して再び輝くかのように見える。あまりにも実在的なので、電車が通過した後で確かめると、赤信号の中間には夜の闇しかない。つまり、残像効果なのか？ヴィデオ・カメラは二つの赤い点を電気信号に変換するだけだが、右右の網膜はどうか？そこに点の明滅しかないなら、脳のメカニスムが赤い光線の運動映像を2点間に映し出していることになるだろう。80年頃の出来事だ。

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現在進行形の映像

網膜剥離の手術をした老人の話によると、手術後しばらくして、目を閉じているのに現実と変わりない記憶の再現映像が見えた。サハラ砂漠に不時着したサン-テグジュペリは、同僚が壊れた飛行機の側でアラビア人と話しているのを見て、救出隊が来たと思った。だが、同僚にはアラビア人の姿が見えないので、サン-テグジュペリが喜ぶ理由が分からない！

　目で見るということは、視覚野を中心にした脳のメカニスムが作り出す外界の現在進行形のイメージを知覚することである。だが、想像力の働きがなくても、再現映像（表象）や、記憶と想像の混合映像（幻覚）などの虚構的なイメージが見えるときもある。

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化学反応の映像

脳に関する最新研究は視覚が最も解明が進んでいるようだ。赤い信号の中間にできる運動映像については、脳のメカニスムが外界の映像を再構成するときの虚構としか言えない。意識は映写機だ、とべルグソンは考えた。フィルムを見るときのように瞬間的な変化を同一物の運動と知覚してしまうのだ。そこに時間が生ずる、あるいは時間の知覚が起きるのは、ダブル・イメージの場合に似ている。イメージは脳の全体的な〈ネットワーク〉による状況の知覚と認識だと思うが、正確な言葉や形で捕らえがたいのは脳神経細胞(ニューロン)のシナブス間の化学反応レヴェルから起こるためらしい。それが創造の場だ、と仮説を立てるコンピューター研究者もいる。

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2　Terre des hommes 人間の大地：Saint−Exupery

3 NHKサイエンス・スペシャル　脅威の小宇宙　人体�U　脳と心　

脳が世界をつくる~知覚　1993年発行

　創造的進化：Henri Bergson 岩波文庫　

脳の最新研究がやっと追いつきつつある20世紀初期の哲学。

　運動する身体の知覚と記憶：HHJ26号　1994年3月発行

ゲ一デル（数学者）、エッシャー（画家）、バッハ(音楽家)　あるいは不思議の環： ダグラス・R・ホフスタッター（D.R.Hofstadter）人工知能研究者　　白楊社　1989年発行

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

EN PASSANT HHJ 2000.2.9 Vol.72

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スクリーン追想

あるときアンケートに答えて、父が好きな映画と俳優を書いたのを見て、参った。ぎっしり並んだ男優と女優は、ソフィア・ローレンを除けば知らない名前ばかりだった。それほど映画通とは遠いが、映画には深い関心を持った。年代順に言うと、3中時代にクラブの練習で見た《太陽がいっぱい》が初恋みたいな映画だ。何か感じさせるシーンがいくつかあって、ときおり問題のように蘇った。高校時代に見た《第3帝国の興亡》は20世紀前半の歴史の渦に引き込む力があった。《シェルブールの雨傘》は苦いミュージカルだった。東京に住んでから見た《フェリーニのローマ》は、映画制作のプロセスを織り込んだ新鮮な手法で、しかも、感動的な映像が多かった。

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青空と夜空

ムーヴイ第1作は《青と黒のブルース》という題名にした。最初にレイ・チャールズの《星空のブルース》のドーナッツ盤、終りに青い内側の黒いコーヒー・カップを出したから。ムーヴィを想定して撮った映像なので、組み立ては簡単だった。ソウルフルな歌声は著作権法を守って入れなかった。文化庁著作権課出身の美人副知事さんの顔がちらついて。テーマは田舎道に延々と連なるボスニア難民の列の写真と、それに続く雨のルート7で予感される。ワイパーの動きがおもしろい。きみまち阪のトンネルは眩ゆい幻想的なイメージになった。青と黒のカップは受け皿の縁に斜めに載り、黒い影を落としている。各シーンはその前の要素の変様である。

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遺伝子の感応

今月はプーシキンを出して、いつになく満足感を味わった。破片が全体性を取り戻したかのように。何であれ、幸せな記憶は疲れを癒してくれる。

　ぼくを外人と思う人はいないが、魂はスペインにあるな、と若い頃は感じていた。フランスの脳を持ったとすれば、ロシアの大地は血液だったかもしれない。

　70年代のある日、ロシアの切手を何気なく見ると、人類初の女性宇宙飛行士テレシコワの顔が母にそっくりだった。偶然だが、出会いのとき内面の奥底から湧き上がるフィーリングを知覚すると、昔は前世の因縁などと呼んだだろう。この知覚は、アダムとイブ以来の忘れられた世界史の中で生きた人間たちの遺伝子の感応から来るのじゃないか、と考える。

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EN PASSANT HHJ 1999.10.12 Vol.70

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愛の化学式

ぼくが早大キャンパスで東北から来たと信じられなかった理由は、何か？真実はこういうエピソードにある。

　高校2年のとき文系の優秀クラスにうっかり入ってまもなく、一人の女生徒が机から離れず他人と話しもしないことに気づいた。だが、化学教室では同じテープルなのが幸いした。少しずつ言葉を交わすと、授業破壊者たちの冗談に笑いを浮かベるようになった。ぼくは化学の教科書を見ないが、彼女から聞くようにした。楽しみなクラス・マッチが来ると、彼女はテニスに出ると言った。ほとんどテニスをしたことがない万能選手は彼女から特訓を受け、混合ダブルスを組んだ！ぼくは〈まさか、ね〉と思ったが、息が合って見事初戦に勝った。クラスのみんなが喜んだ。

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愛の解析

このエピソードはアンチ・ロマン《日付のない街》を連想させるが、直接的には関係がない。ぼくは彼女が1年間クラスでの交流がなかった理由に興味を持たなかった。北秋田人たちの性格がどうのこうのという考察はしなかった。悪い秩序を壊せた理由は、

1　哲学を身につけた…哲学は世間の心理学が個人をピンで止めるように規定することに《ノン》と言う。

2　不真面目さ…彼女のヒップと長い脚に引かれ、道徳が関係の安定化を強めることに嫌悪を感じた。

3　スポーツマンであること…〈正しい動きは邪霊を払う〉分子の絶え間ない運動を解析して、その中で機敏に構図を描く正確な動き方を知っていた！！！

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哲学のレッスン

哲学は人間と環境世界について考える。しかし、それだけではない。考えるということについても考える。考え方に間違いがあれば、何かを正確に分節するのは困難だから。哲学の特徴は考える人自身をも反省的に視野に入れるということだろう。考え方はその人の在り方（mode）と無関係ではないのだ。その人が愚かな生活をしていれば、考え方も狂い、逆もまた真実だ。哲学は、そういう意味で思考の樹が育つための環境を作る。　

　ぼくが何を目的にこの欄を書き出したか、最後に言おう。日本は高校教育で英語と数学の時間を減らして、哲学の初歩をじっくり学ばせるべきである！これは21世紀の世界を明るくするだろう。

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2　フェリーニ（F．Felini）の映画《魂のジュリエッタ》

EN PASSANT HHJ 1999.8.9 Vol.69

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アカシアの美林

長木川ドキュメンタリーは、狐河原の浄水場一帯に広がるアカシアの林や小川を丹念に映し出す。なぜか哀愁の影に縁取られてると感じる人は、小川の流れが広い水面に消えた後でその理由を知る。高台から対岸の樹海ラインに伸びる予定の東バイパスの橋が合流地点の真上を横切るのだ。

大館市議会は6月補正でそれの設計委託費を承認した。あそこに行ったこともなくドキュメンタリーをも見ない市議が架橋に賛成したのは、無責任だ。リヴァー・ユートピアの反対理由は、浄水場一帯のきれいな水環境、アカシアの美林と長木川の風景、アカシアの葉と昆虫と水生生物のエコシステム、水辺の林の無堤治水機能、それらを重要視することだ。

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アマチュアの不条理

スタジオを開いた頃、高校の後輩が〈創立80年以上の高校で、甲子園に出たことがないのは鳳鳴だけだそうです〉と言った。〈それほ結構なことだな〉とぼくは無感情に言った。野球部に1日だけ入って止めた理由の一つは、監督が〈甲子園をめざす〉と情熱的に演説したことだ。ぼくは甲子園との距離をぐっと縮める優秀な新人の一人と期待されたが、気楽にプレイしたいと考えていた。もう一つはそういう有望な新人たちにバント繚習しか許さなかったことだ。3中でサイクル・ヒットを打った〈シュアなバッター〉は、帽子の庇を深々と下げた。このニヒルな表現はアマチュア精神の裏にある馬鹿馬鹿しさを見たことに始まる、かな。

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データヘの懐疑

大館橋のアンケートで特徴的なのは、美観の判断にさまざまな価値観が混じっているということだ。これはしようがないが、対象に引き起こされた記憶が判断を変える場合もあったようだ。ぼくは別に客観的な意見を集めようと考えたのではないから、回答以外の反応を想像的に楽しんだ。

しかし、大館橋匂欄の白鳥を見て白鳥事件を想い出すのは、ぼくくらいのものだろう。白鳥事件とは白鳥が欄干に衝突した哀れな事件ではない。戦後北海道で起きた赤狩りの一つで、白鳥（しらとり）巡査が自転車に乗っているところを拳銃で射たれたが、銃弾鑑定書が警察の捏造だった。早大6号館で上映された記録映画のぼやけた断片が橋の上にある。

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EN PASSANT HHJ 1999.6.12 Vol.68

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クイズ・卜レーン

地下鉄半分半分駅からJR花輪線東大館駅に行った。窓口にクイズ用紙があり、1問正解につき1割引き、5問正解で運賃が半額だ。1番〈東大館駅は市の西方に位置するが、東大館と名付けた理由は？〉…a〈鉄道会社が阿呆だったから〉b〈当時は誰も正しい方角を知らなかった）c〈大館人が独自の東西南北を設定しようと夢見た〉どれもひねくれた問題だが、ぼくは3割引きの切符を手に入れて扇田駅に行った。5番〈片貝の人達が昔鶏を食べなかった理由は？〉…a〈鶏は神の使いと信じていた〉b（鶏が汚染された歴史を持つ〉c〈怠け者の部落なので、鶏の鳴き声を嫌った〉半額の切符で∧幡平駅に行くことができた。

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パズル・トレ一ン

八幡平駅の問題は 複雑だった。2番オート･キャンプ場とは何か？〉…a〈自動車で入れるキャンプ場）b〈自動化されたキャンプ場）c〈嘔吐を催すキャンプ場〉たったの1割引きで大館駅に。厳しい質問が多い。4番〈花岡で処理される旧陸軍毒ガス工場の化学物質は？〉…a〈硫酸〉b〈砒素〉c〈カレー〉3割引きで二ツ井駅に行った。面食らうような質問があった。3番〈小掛の鐘馗(ショーキ)様男女2体が煙管をくわえている理由は?〉…a〈煙草好き〉b〈鉱山の煙を吸いたくなかった〉c〈悪者を叩くため〉きみまち阪の歴史資料館へ行って見ると、杉葉の蓑を着て銀色の大きな目で睨んでいた。実にユニークな造形だ。

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ナイト・トレーン

2割引きで鷹巣駅に降り、風土館で開催中の縄文遺跡展を見て戻った。駅のクイズ1番〈伊勢堂岱の環状列石は何だったか？〉…a〈広場〉b〈墓地〉c〈UFOの基地〉半分の160円で大館に帰った。座席が左右にある電車で、旅行気分はない。大館駅から半分半分駅までは、地下鉄があるわけじゃないので、歩く。地下鉄建設運動を始めてから、無数のお日様と三日月が過ぎていった。空色の電車は永遠に止まったままで、プラットフォームには人影もない。編集長は、憂い頗だ。HHJの最後のページで2日無駄にしている。こういう夜がいっぱいあったが、しかし、風の便りでは笑いとおしゃべりが未だに残っている列車もあるとか…

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EN PASSANT HHJ 1999.4 Vol.67

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森の木から銅像へ

質料（フュレ−）というギリシア語は森の木・材木の意味から材料・素材の意味に転じた。フュレーについて、アリストレスはこう語る。〈たとえば銅像について言えば、青銅がそれであり、型式（モルフェー）というのはその形像（イデア）の型（スケーマ）であり、両者から成るものというのは、これらの結合体である銅像のことだ〉モルフェ−はエイドス（形相）とほとんど同義で、エイドスとは存在するものの抽象的な型である。素材を可能なデッサンで現実化すると、女神像や神殿が個々の感覚的な形となる。

　アリストレスの製作的な哲学は青銅を頻繁に説明の例に取るが、興味深いことに石材（大理石）は滅多に出ない。

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知性の映画仕掛け

哲学は意外に時代の特徹的な事物で思想を展開することが多い。ベルグソンは20世紀の新装置シネマを見て、知性は対象を外側から擬瞬間的に写して生成・運動の流れを再構成するだけで事物の本質が分かったように思い込む、と批判した。それから、エイドスをこう時間的に説明する。〈ものの不安定を写しとった安定した眺め〉であり、〈生成の瞬間として性質〉〈発展の瞬間として形態〉〈平均形態としての本質〉〈行為に活気を吹き込む計画（デッサン））である、と。

　ともあれ、青銅や映画装置が社会と同じく哲学さえも形作ったと考えるべきではない。具象的な説明のモデルは思考を明確に反射する鏡と言っていいだろう。

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空間の着こなし

分節とは生物が環境に適応するために形態と構造を変えることを言う。実存的には人間が〈事物に対して了解された諸可能性にしたがって働きかけ、目的のために独自の意味と秩序を深って、言い換えれば解釈しながら不断に自己形成＝創造を行なう〉ことで、その際、言語は知的な分節の道具だが、考え方を決める型でもある。身体的な動きも分節であり、〈空間の構造と形（フォルム）と物の配置が可能な線を大まかに規定しているので、感覚的に自分の行為のエスキース（素描）と調和させなければならない。〉人がそうして環境を構成する各部分の関係を覚えることは、単語を正確に結び付けて言葉を話す能力の素地となるように思える。

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1　形而上学 : Alistote 出隆　訳　　岩波文庫

2 創造的進化~思考の映画仕掛け : Henri Bergson

　　真方敬道　訳 岩波文庫

3 実存と表現 : HHJ Vol.4 1992年2月

▼　関係の網の中で

▼　無意味な破片; ある哲学者の回想

EN PASSANT HHJ 1998.8.8 Vol.63

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発見者

炭鉱の町花岡で起きた中国人俘虜虐殺の発見者は大館に進駐したGHQのドゥバーグ大尉である。アメリカが来なければ、暴動者たちは有罪のままだっただろう。大尉が発見者だというのはそういう意味だ。花岡や大館には今でも沈黙する住民が少なくない。ぼくが事件に関して話を聞くチャンスに恵まれたのは、市民連絡会のメンバーと父の3人だけだ〔1〕。16才だった父の想い出話は短いが、初公開だ。花岡鉱山の収容所建設に祖父も係わったこと、支那人暴動の報せで恐怖を感じたこと、ロバート中尉がジープの修理のため木工所に来たこと、米内沢に誤って落とされた落下傘の捕虜用物資を取りに行ったこと、警察署近くの田町の坂に死体が並べられたこと…最初の事柄は不運だったと思う。

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水色のカーテンの翳り

地下の改造に取りかかってから、ぼくはやっと1階の階段が消えていることに気づいた。食堂だった頃は、∨字型の階段を心地よく昇り降りしたものだ。中央に縦長の窓があり、踊り場の前には水色のカーテンが下がっていた。想い出すと、水色の襞が微かに揺れ、グレン・ミラーのサウンドが聞こえる。スイング・ジャズはたぶん忘却に共鳴するのだろう。実際に覚えているのは2階で酒飲みどもが〈月が出た〉と叫ぶ三池炭鉱節だが。ぼくは祖父を右翼の慈善家と見ていたが、ドキュメンタリー制作を始めてから、父母の結婚式をメーデーに行なったことや石田博英の後援会員だったことを聞いて何か秘密の一端に触れた思いがした。

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原宿伝説

こんなアナロジーの迷路がある。神宮球場に行くために初めて原宿駅に降りた。なぜか赤坂まで行きテレビ局の裏口で引き返す決心をした。横浜の女友達はそれを聞いて、原宿が似合うとお世辞を言った。二人はマランド楽団のタンゴを聴いた夜、デモに遭った。冗談がキャンパスで飽きられて悩んだぼくは、表参道の〈キディランド〉に出かけた。アメリカ製の笑う機械〈陽気なサルヴァドーレ〉を買うためだ！ボタンを押すといつまでも笑い続けるこのテロリストは、一躍キャンパスの主役になった！数年後タンゴを聴いたホールの近くで事故に遭った。病院の通路で知り合った知的な婦人が、原宿の家から佃煮を持って来てくれた。看護婦も原宿育ちで、骨の亀裂が疼いた…

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1 長木川ダム建設に反対する市民の集まり。

▼　GHQ資料展

2　Glenn Miler

新たな視野を開くために

▼　長谷川一族の風景

EN PASSANT HHJ 1997.10 Vol.58

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議会裁判

8月末、県の土木部と農政部の出先機関などが裏金約900

0万円を金庫に保管していた事実が、県の調査で明るみに出た。論より証拠のこの現物は使わなかった残りだという。銀行に預けていたら、相当な利子が付いていたに違いない。なぜ残りがあるのか、疑っていい。県義会は、自民党が2役人事を拒否して、やかましい騒音を立てるので、肝心の公費悪用問題がさっぱり聞こえてこない。議会は立法機関としての主体性を取り戻すべきだ。

　大館市議会は農地転用問題で、自治法に基づいた強制力のある調査特別委員会を開かなかった。反対意見がないのに、議員達自身の将来を相談するために、9月末何となく全員協議会にした。

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小畑氏の金の取り方

農地転用問題は平成7年（95年）12月から

翌年5月末にかけて起きた。大館市はその間米代川の南にある小畑惣一朗市議の農地を事業工事用の土砂捨て場として借りた。監査委員による行政監査の結果は…請負業者の自社処理場からわざわざ運び直された土砂量はわずか60m3で広い農地を借り受ける必然性がない。農地を農業以外の目的に使用する場合は県知事の許可が必要だが、拒否されて、勝手な土地収容法の適用でごまかした。土地使用貸借契約で〈使用後、農地の復元を求めない〉とした。これらは農地を雑種地に変更する目的のための手続きであり、問題の土地は民間企業に売却されて開発行為が不当に行なわれている。

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市議会の汚濁解析

利益を得た者を疑え、これが鉄則である。本当の目的は機械リース業の（株）カナモトに土地

を売ることだったのではないか？小畑氏は願いいが叶って約8000万円を懐に入れ、苦しい財政が税収入の増加で潤ったことに満足した。小畑氏は小畑氏の〈意思表示〉を知り、その目的に配慮したことを全員協議会で間接的に認めた。だが農地の売却と開発は追認して無法地帯の現状回復を求めようとはしない！

　全員協議会では、丸儲けの小畑氏に対する質問は一度だけで、それも中身のない挨拶程度のものだった。会社のために働く一番若い市議は逆に金の取り方のうまい小畑氏を励ます始末だ。汚濁の原因は議員生活の保護にある。

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▼　市長の強権

▼　農地転用事件のこれから

EN PASSANT HHJ 1997.6 Vol.56

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説明と沈黙

アンチ・ロマン《日付のない街》は受験間近の高校生の日記と書き手の知れない小説で構成されている。高校生はガール・フレンドの失踪で自分自身に対する懐疑を覚えるが、失踪の責任が自分にあるという噂に当惑する。彼女の兄と二人の育ての親の神父を初めて訪れ、戦争中に郊外の部落に逃げて来たリベラリストの父が密告で憲兵に掴まり、拷問された事件を知る。密告者は公には一人の男だが、兄は幼友達から部落のみんなが相談したことだと聞かされていた。その友達Nは高校生の姉のフィアンセで、何でも説明できる知性を誇る真面目な市役所職員だ。失踪を心理学的に説明して聞かせたが、部落の話は主人公に一度もしたことがなく、姉との不可解な破局に…

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沈黙と虚構

言葉はある意味で説明のためにある。高校生はガール・フレンドが残した沈黙を理解して自分に説明しなければならなかった。街の人々の無自覚的な噂は主人公にガール・フレンドの父と同じ役を演じさせたために、歴史の沈黙と矛盾に正しい説明を与えることに失敗した。危機的状況の中で、ある新聞が、噂を弁護して警察と新聞の沈黙を批判する匿名の投書を掲載する。これが状況に与えた影響は自分の物語から疎外されている主人公の日記でははっきり分からない。だが、後に街で拾われたノートには新聞の沈黙と噂を巧みに利用したジャーナリズムの悲喜劇が走り書きされていた。それは真実とは無縁な噂の可能な解決としての大衆小説《消えた消しゴム》だった。

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沈黙の過程

作者は噂という現象を描こうとして悩んだ。物語を求める街の人々にその投影がある。現象を捕らえることに成功したのは、逆説的だが、主人公の言葉を噛み締めるようなシニカルな日記だ。彼は歴史の裏側から現実を見ながら、心の中で想像力の網に絡まる。非現実的な姉がガール・フレンドの失踪と関係があるという疑惑。静かな日々。しかし、街のどこかには苛立った不穏な空気が漂い、主人公は停学処分に、やがてガール・フレンドと兄が暮らしていたアパートは放火で焼ける。

　新聞は、状況を認識して歴史の沈黙と矛盾の再解釈を試みるべきだった。否定的な対応は、終わりに呟くNの自嘲的説明〈悪いのは関係なんだ〉の報道版だ。

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日付のない日記 　�T　他人の墓の中で　　�U　バス・ターミナル

　　　　　　　　　　　[東京　1974~1975]

消えた消しゴム　　　　[東京　1976]　　　

発行者の後書き　　　　[大舘　1985]

1992年8月23日　発行　

アトリエ　ハーフ　アンド　ハーフ

創造の背景

▼　マスク・キングダム~4

　

EN PASSANT HHJ 1996.6 Vol.50

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夢の論理

社会について夢という言葉がよく使われるようになった。夢のない社会生活の裏返しなのだが、人の心を釣り上げる意図が見え透いていると、夢とはどんな意味かと疑ってみたくなる。結論を言えば、フロイトが説明した夢と変わりがないようだ。夢の目的は〈願望充足〉にある。願いが叶う社会であれば、みんな幸せには違いない。だが、目的を実現するために夢は現実の社会生活と違った論理を用いる。その論理は眠っているときに驚嘆するようなイメージとストーリーを描いて、気持ちのいい夢も恐ろしい悪夢も見る人の意思に無関係に展開する。フロイトは、夢という作品が論理的なメカニズムにしたがって出来上がることを明らかにした。

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夢の原料

フロイトは夢の原料が観念であると考えた。無意識が何かある観念を加工して夢を製造する、と。これには19世紀の工業社会の体系と類似したところがある。彼は感覚刺激が作る夢を考察から外したが、理論と合わなかったせいだろう。ニーチェはすでに《人間的な、あまりにも人間的な》の第1章で感覚刺激の夢について精神分析を否定するような考察をしている。〈夢は、ああいう刺激された感覚の原因、すなわち仮想上の原因の追求と表象なのだ。〉今聞こえる音が何か、匂いが何か、いろんな映像を瞬間的に脳が映し出してみせる原因の素朴なすばやい解釈の試みである。覚めていても眠っていても、生命はそんなふうに自分を含めた環境を解釈している。

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夢の目的

生命が環境を解釈するのは快適に生きなければならないからだ。感覚への刺激（記号）が自分にとって何なのかは、どうでもいいことではない。だから、ぼくは繰り返し響く聞き慣れない耳障りな音にさまざまなイメージの断片を投影する。折れた木枝、発泡スチロールの箱、庭の隅、小径、風、雨、アロマ…たぶんアロマが風で小径に流れてきたスチロールの箱で遊んでいるのだろう。イメージは明確な形を切り抜き、ストーリーはそれらに秩序を与える。事実の必然的な連鎖を組み立てると、たとえ虚構でも、知性は安心するものだ。

　これは歴史解釈にも当てはまる。だから、ぼくもそうだが、自由精神はストーリーを拒否する。

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1 　フロイト　S.Freud

2 　ニーチェ　F.W.Nietzsche

EN PASSANT HHJ 1996.5 Vol.49

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シロの語源

米代（白）川の名の由来は何か？今も昔も伝説の多い鹿角の最も有名なだんぶり長者の物語は、米の研ぎ汁で川が白く染まったから、と説明して金持ちの栄華を称えた。それは鉱山から流れた有毒物質による環境汚染だった、と米代川ドキュメンタリーは歴史の暗流を暴いた…語源から考えると、ヨネは土佐日記にも出る米の古い呼び名だ。問題はシロだが、日本語の起源をインド南部のドラヴィダ系言語タミル語に求める大野普によれば、古代日本語では泥をsir−o（シロ）と言い、タミル語のcer−u（セール）から来た。地名の末尾にシロの付く所は、泥のある湿地帯だったようだ。セールはまた甘い飲物の意味で汁（Sir−u）の語源である。

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悲劇のテーベ

黒い傘がコウモリに見えても、自分の意志が脅かされるほどでなければ、ノイローゼや精神分裂症の症状で

はない。類似が連想の網を広げるのは日常よく経験することだ。とはいえ、CATV＝CAT・V＝ネコの勝利、と神経に刻まれると、参る人達がいるだろう。大館橋の〈大〉のマーク＝die（ダイ）＝死ね、という場合のように。目に映る都市のシーンがノイローゼの病原菌であってはならない。

　70年代半ば滅多に行かない池袋駅の通路で、ぼくは東武デパートの新しいロゴ・マークに目を引かれた。〈Tob〉の〈o〉のデザインがフランス語の〈œ〉に似ていて、〈テーベ〉と読める。古代エジプトの首都、ギリシア悲劇の町！

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テーベ・ホテル

アンドレ・ブルトンの《ナジャ　Nadja》を愛読した人なら、そう聞いて、続きがあると思うに違いない。実際その頃ぼくはNHKホールでギリシア国立劇場の《オイディプス王》を見た。前後関係が曖昧だが、たぶんコロス(男性舞踊合唱団)の圧倒的な迫力に感銘を受けたときの方が先かもしれない。戯曲だけではギリシア悲劇は分からない。

　NHKは、言うまでもないが、公園通りの坂の向こうにある。若い頃はアパートからその周辺までよく散歩した．坂の上で茶色の新しい建物に気づいたのは70年代未だった。目立たない入り口で、正面の壁を見上げると、こんな文字があった…T œ b HOTEL。ただそれだけのことだが、気になった。

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1 日本語の起源　新版　岩波新書

3 André Breton ; シュールレアリスムの創始者。

フランス語では、Œdipe(エディプ)王。ソフォクレス(Sophocle) 作

大都市のおかしな記号例

▼　マスク・キングダム　3

EN PASSANT HHJ 1996.4.14 Vol.48

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人生はどこに？ 　

《一種の小説》という無名の若いジャズ・トリオの物語でスキー場のホテルの支配人がこう語る場面がある。〈人生はテーブルの上にあるんだが…〉敗戦後の廃墟の中で学生生活を送った男の溜め息混じりの科白だ。1本のタバコ、1杯のコーヒー、1枚のパンか白い御飯、一皿のスープ…そして、愛する者たちとテーブルを囲むこと。

　沖縄の人たちは支配人の手を握りしめるはすだ。平和的生存権とはそんな風に目の前にある確かなものなのである。しかし、代理署名訴訟での国の考え方は〈抽象的概念であり、具体的な権利の根拠にはならない〉抽象的概念！肥満した受験生の作文である！しかし、これは長い平和的生存の好例と言うベきか…？

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ちょっとした堆理小説を

言葉の意味の横流し

言葉の意味の横流し

何の目的か分からない東京出張の記事を読んで、暗智探偵はこう考えた。

―秋田県の佐々木知事が公共事業費の横流しがばれたとき、貧乏県だから、と言い訳をしたね。ところが、不必要なフランス観光はファースト・クラスで行った。国内でも役人は一番高い切符を買って出張する因習があるとすれば、JRと航空会社の儲けは大したものだろうね。新幹線と空港は地方自治体が頭を下げて引っ張って来たのだから、利益の保証がなければいけないのじゃないか？

―大館能代空港のときは、地元がフライト預金の運動をしましたよ。

―そうか、結構なことだ。行って帰ってくるだけの空巷だろう、ねえ。

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霧の空港

言葉の意味の横流し

言葉の意味の横流し

沖縄、空港、そして、ビクターのヴィデオ・カメラに触れるか。言葉とイメージの断片を虚無に浮かべて、やっと古い映画のシーンに焦点が合う。これで題名を当てる人は、もう映画狂だ。

―ビクターと聞けば、他にないよ。男の名前だろ？ヴィクター・ラズロ。

一ナチスに追われてるレジスタンスのヒーローだろ？美貌の妻と一緒にアメリカヘ亡命しようとする。

―鹿角の、いや、カジノの経営者はスペイン内戦のときフランコ軍と戦った男だ。しかし、ヴィクター役の俳優は《星空のブルース》という映画の監督をしたと言えば、少しは迷わないか？

―レイ・チャ−ルズの歌が泣かせたね。〈ぼくには夢がある、家がある…〉

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3　第2次世界大戦中に制作された映画《カサブランカ》

EN PASSANT HHJ 1996.3.8 Vol.47

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電話の向こう側　

電話はフィクションの重要な道具だ。たぶん向こう側を想像させるからだろう。マーク計画の薄葉前課長補佐の動揺には、周囲の怪訝そうな視線が弾けたに違いない。ぼくは少し同情したが、切りますよ、と憤る本人が受話器を置かないので、情報が欲しいんだな、と直感した。

　震災の後、春になってから西宮市役所に電話をかけた。暇じゃなかった。学生時代に北海道で知り合ったギャルの名前を告げて、負傷者名簿にないか、と尋ねた。男の職員が泣き笑いのような声を上げた。負傷者の名前までは把握していなかった。だが、死亡者の一人ですね、という声がした。ぼくは年齢を聞いた。はるかに若い死者だった。

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悪夢の大館

言葉の意味の横流し

言葉の意味の横流し

実体とは、岩波辞典によれば、〈さまざまに変化してゆく物の根底にある持続的なもの〉を言う。〈もの〉は本質や自己同一性と考えていいが、これさえも不変ではありえない。自治体の実体について先の判例は、〈事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識を持っているという社会基盤が存在し…（略）…相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的機能を付与された地域団体〉と定義付ける。これを読んで、自分が住む市や町や村と周辺地域が実体だと感じても、秋田県はとなれば、ちょっと違う、と思う人が少なくないはずだ。ぼくにとって秋田県は昔から秋田市にあり、大館市は秋田県にはない。また題名と違ったかな？

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リヴァー･ポートから

言葉の意味の横流し

言葉の意味の横流し

1　大館橋のリヴァー・ユートピア妨害工作はいろんなことを考えさせた。これからも、そうだろう。暗い出来事だが、病気は放っておかれない。

2　経済的なダメージについて言うと、リヴァー・ユートピアと制作者であるアトリエの損失は計り知れない。米代川流域からドキュメンタリーの協賛金が稼げなくなって。完成しなければ、今まで得た分をスポンサーや協賛者に返却せざるをえないが、寛大さに甘えて、よりいっそう優れた作品にしようと思っている。

3　経済面に光を当てると、青ざめる人も、嘲笑う人もいるだろう。県と大舘市は生存や生活の保障さえもしない。

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1　リヴァー･ユートピア妨害工作　第1部　解決編　現場に戻るとき

2　リヴァー･ユートピア妨害工作　第1部　解決編　現場に戻るとき

　先の判例とは、地方自治法にもとづいて県と市町村の上下関係を否定する最高裁判決(昭和38年3月27日)である。

EN PASSANT HHJ 1996.2.14 Vol.46

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猫嫌いの楽しみ

地元の新聞に去年猫の侵入防止装置の記事が載った。考案者の側に有名な秋田犬ハチ公を中心とした

街づくりを進めるホワイトガーデン協会の会長の姿が見えた。建築設計士である会長のにんまりした笑顔がかなり気になった。動物愛護の範囲が犬だけに止まっているのは心が狭い。

　ぼくは犬嫌いだが、数年前秋田犬保存会館から仕方なくフランス語の手紙の翻訳を頼まれた。手書きの横文字が誰も読めないので、嫌々ながらずっと引き受けた。優秀な焼き物を作るリモージュ地方に、そうして子犬を2匹売ると、立派なフランス語の文章に感心して、飼い主は記念に日本風の名前を子犬に付けた。今度は、可愛い大舘猫を送ろう。

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言葉の意味の横流し

言葉の意味の横流し

言葉の意味の横流し

大館市役所の〈HOT函〉や某団体の〈ワンワ

ン・ワンダフル〉、秋田テレビの番組〈なんでもアリーナ〉、秋田市の施設〈ザ・ブーン〉など、公共的な機関のそんな多義的な駄洒落には、表の意味と裏の意味がからみ合っている。〈HOT函〉は分かりにくいが、説明を聞こう。職員―これは市民の質問を受け付ける箱で、必ずお答えしますよ。つまり〈放っとかん〉です。

　前に批判したように、文学や文化とは無縁なこの表現傾向は平和憲法のおかしな解釈と共通する歪んだ精神構造の反映で、言葉への暴力である。平和憲法の裏に隠れていたのは自衛隊だったが、今は公共事業費の組織的横流しだ。

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作者のいないアート

言葉の意味の横流し

言葉の意味の横流し

去年の7月から始めた《世界の中の、世界によ

る形》は今月で終了することにした。フランスの核実験再開がきっかけだが、南太平洋の島の人達は爆発のたびに島が痙

攣する思いがしたのじゃないか？

　偶発的に作られた形は日常生活に入るさまざまな情報が内面で変様したものだと言える。地球の表面仁浮いた大陸でもあれば、心の模様でもあった。ぼく自身の自由にならないところが、スリリングだった。あえて解説を付ければ、人間が予想しえない形を機械によるデータの変換がもたらすことは現代のアレゴリーである、となるか。作者は普通の意味での作者ではない。作品よりも芸術的創造の方法論を作ることに重点が置かれる。

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EN PASSANT HHJ 1995.12.15 Vol.44

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明日の書式設定

ワード・プロセッサーの書式変更を間違って、文章を支離滅裂にしてしまった。読むのが困難だ。これはヨーロッパ人がアジアとの接触で経験した当惑に似ている。どんな書式設定なのか理解できれば、文の意味は自然に分かる。お互い様、とアジア人も思う。その書式は単なる形式ではない。風土を含めた環境世界と他者との関係によって構造化された人間存在が、普段着のように身に着けた思考と表現行為の型である。それが壊れると、精神分裂症だ。

　冷戦終結後、一時流行した〈新しい世界像〉の探求は地球のあちこちで無残に愚弄された。知性のヨーロッパ・アメリカも明日の書式設定に苦労して、〈現実は厳しい〉と呟く声が聞こえて来そうだ。

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アジアの亡霊

ヌーヴェル・オプセルヴトゥール誌に〈アジアが復讐を夢見るとき〉という特派員記事がある。穏やかでない題名だが、最近の東南アジアの経済的繁栄を恐れるのではなく、その裏にある思想を懸念している。〈知能的な島〉をめざすシンガポールの首相は言う。〈集団の利益を保護するために個人の権利（人権）は制限される〉。非民主的な思想を支えるのは、アジアの文化的な同一性と伝統への回帰である。それ以上に厄介なのは、と記者は指摘する、その思想が戦前の日本の国粋的な哲学の〈おそるべき命題に繋がっている〉ことだ。つまり〈現代ヨーロッパの個人主義を棄て、現代ヨーロッパの諸原理の否定を称える〉

というファシズムである。

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ポテト・チップがなければ

人生が貧しくなっていたよなあ、などと昔の友人や学生街の住民を想い浮かべながらー袋空にした。あの頃は塩かノリしかなかったが、今じゃあ多種多様な味のポテト・チップが、そして夢想もしなかった味が、感覚を繊細微妙に富ませる！袋の裏に北海道の産地の皆さんの写真があるのは、消費者との交流のためか?

　広い大地には大昔から大陸の諸民族が来ていた。それらとサハリン・函館・青森の縄文文化やアイヌ文化がとんな交流をしたか？今の国際社会よりもずっと開かれた世界のイメージだ。現代人は、だから、失ったものを追い求める。夢、個性、人権、健康、自然、自由、平和…

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2 Le nouvel observateur Jean-Claude Guillebaud

京都学派の高山岩男の名が挙げられている。

▼　CIAを演じる不存在の謀略機関

EN PASSANT HHJ 1995.11.14 Vol.43

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ガソリンの輝き

ぼくは分離主義者なので、民主的で平和な独立運動はみな支持している。大館の板子石地区であれ（？）タヒチであれ（！)　自分にできることで心から支援したい。別れる方が幸せなら、遠慮しないで離れよう。数の力と美しい話と将来の恐れに屈したら、新しい生き方は決してできない。

1973年の夏ぼくは沖縄に1か月余り存在して、この島がヤマトに復帰して独立しなかったのを嘆いたものだ。ウチナンチュ(沖縄人）の心には、ヤマトに対してもアメリカーに対しても反感と共感のブレンドがあった。ときおり想い浮かぶイメージは那覇のバス・ターミナルの地面に幾つも開いた水溜まりに輝くガソリンの貝殻模様だ。

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ハーバー･ライト

人間には、生きるために忘れなければならないことがある。〈地球上のあらゆる地獄を集めたような〉とアメリカ軍が回想する沖縄戦は、島の人達にとってはいつも自分の回りにある血塗れの現在だろう。ぼくは島の過去についてほとんど知識を持たなかった、しかし、ヴェトナム行きか、物凄い大きさのB52が夜中に無気味な地鳴りを曳いて飛ぶと、戦争が実感できた。基地の街には眩暈を起こすほど強烈な光と底無しの闇があった。緊迫した空気の中で島人は懐中電灯を照らして歩き、渚では若い兵士が籠から零れ落ちた食べ物にも引きつった馬鹿笑いをして騒ぐ…すると、あいつも死ぬんだな、と自然に思ってしまうのだった。

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赤い葉っぱ

もう2年になるが、中国の鉱山技師を十和田湖に案内した。彼は癖のない英語で色群やかに染まった自然に感嘆して、赤い葉っぱの付いた枝を持ち帰ろうと執念を燃やした。〈中国には黄葉しかない。君はいつでも来れるからいいね。〉技師は並んで歩きながら肩に手を掛けて親密さを表現した。しかし、中国からはなぜか手紙が一度も来ない。代わりに石炭を燃料にする工場の煤煙が、酸性雨となって北秋田地方に、白神山地や十和田・八幡平に、落ちる……？

心配なのは地元の行政と商工業関係者の認識の乏しさだ。開発途上国的な最近の傾向を見ると、大館市でも自然保護と生活環境保護と美感向上のための条例と住民機関の創設を考える時期だと思う。

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EN PASSANT HHJ 1995.8.12 Vol.41

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10円玉を見て

大学生の頃から、ときどき10円玉の製造年号を見る癖があった。そして、戦後まもないな、とか、案外新しいな、とか、去年のやつだな、などと他愛なく思う。今夜ふと想い出して手持ちの10円玉を見ると、一番古いので昭和41年、最近ので平成3年だった。平成の10円玉に初めて気づいた。10円玉の裏には、左右対称の木造建築がある。これは宇治平等院鳳凰堂である、と答えられる人には、ぼくはもう喜んで、その10円玉を差し上げたい。製造年にどんな出来事があったか、嘘でも話せる人にはさらに1枚を‥…

　小学生―あたしは平等って何だううと思いました。地震で壊れた神戸の街を見て。平成7年のことです！

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救われない人たち

難民救済のための援助物資が途中で横取りされるのは、どうやら日常茶飯事らしい。ルワンダ難民キャンプでも、風雲急を告げるボスニアでも‥…その他アジア・アフリカのどこかで、いや、どこででも。いちばん貧しい人達には残りが届く、と言えば、大袈裟だろうが、横取りされた物資が換金されて暴力的な無秩序を増大させる要因になることは疑いえない。武器に変わるとしたら、最悪である。

　政府問の普通の援助は貧しい人達の生活向上よりは生活破壊の恐れが大きい。白本の援助は、人権と環境問題に甘く、支配階層を裕福にする。援助金は現地の仕事を得た日本企業の懐に入って、日本経済を援助するために戻って来る…

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ラブ・レター

軽い心で地図でフランス大使舘の住所を調べて、シラク大統領へ核実験再開に抗議する手紙を書いた。米代

川の町二ツ井が全国から恋文を募集する催しをしたので、大館からのラブ・レターを世界へ、と？そう、愛情の表現だと言ってもいい。サン・テグジュペリの言葉を借りれば、〈人間の運命に同情する〉‥…残念なのは、国際化を言いながら、ジャ−ナリズムが外国の人名と地名を片仮名でしか記していないこと。外国の新聞・雑誌かインター・ネットがないと、手間がかかる。発信を諦めた人がいるかもしれない。（手紙には役職名だけでO

Kだが）。しかし、大舘にはさいわいリヴァー・ポートがある！世界の人達にラブ・レターを送る試みはどうだろう？？

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EN PASSANT HHJ 1995.7.13 Vol.40

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青く透きとおった海へ

アトリエの前の大通りは交通量が多い。車の排気ガスは川風が消し去るので、それほど気にならなかったが、最近はよどんで空気を暗く染めるのを目にする。その

靄の中に歩いて入って行くのは、東京と同じように心理的な苦痛を感じる。ましてガスを浴びせられたくはない。サリンのような殺人ガスではないにしても、２酸化窒素は肺と気管支を蝕む。タバコの害に厳しい人達は個人の遠慮しがちな楽しみを許さないが、目の前にいない国家と公団と自動車は存在しないも同然だ。

　長木川下流にバイパス的な側道ができて、いずれ高規格道路が並んで走る。行政などの関係者には、1日原住民として現地に寝起きする権利を与えたいね！

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サイド・ミラーの夕陽

市議選の後まもなく関係者の一人が、丁∨に長谷川さんも映ってましたよ、と言った。祝勝会の会場の隅に立ちながら、ぼくは、丁∨のレンズが弧を描いて人の群れを横切って自分にすっと接近するのに気がついて、背を向けた。本人が嫌がるのを知っても、平気でその映像を流すとは…ぼくはうっかりして言葉で拒絶しなかったことを悔やんだ。人を対象としてフィルムやヴィデオで捕らえるときは、個人の意思を尊重しなければならない。人間は内面的な世界のない物ではない。単なる映像はその人間を物扱いにすることである。人間が映像でしかなければ、傷つけようが、破壊しようが、どんな感情も湧かないという堕落が起きる。

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ムーン・ビーチの水玉模様

反抗しなければ、集団の全員が生き延びられたかもしれない。反抗したので、犠牲者がたくさん出て、状況は前よりも悪くなった。リーダーは、もちろん個人の生命を尊重していたが、〈人間の尊厳〉を救うという目的は果たした。それが花岡事件の中国人俘虜の隊長耿諄（コウジユン）さんの論理だった。レジスタンスのフランス人画家ベルコールも小説の中で〈魂だけは…〉と悲痛な叫びを上げた。だが、人間の尊厳とか魂とは何を言っているのだろうか？宗教的な意味を別にすれば、個人の内面的な世界である。そこに生きるさまざまな愛情の対象との関係や未来の可能性を持った、他人のとは違う世界である。

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3　海の沈黙; ベルコール　Vercors

EN PASSANT HHJ 1995.6.18 Vol.39

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文化の強制栽培

東京都の青島知事が公約通り世界都市博覧会の中止を決定した。議会の反対があったが、都民の支持つまり意思を尊重したわけだ。阪神大震災の教訓を活かし、非民主的な議会をも含めて東京という大都市の在り方を考え直すべさ時だろう。

　世界都市博は例によって〈経済の起爆剤〉だった。匡際社会のイニシアチフを握るベきときに相変わらす後進国的な発想なのだ。東京オリンピック以来の人間性と自然環境を無視した突貫工事による短絡的開発…ビッグ・イベントは大企業と日雇い労務者の面倒を見るだけだ。縁日の夜店のような効果はさておいて、指導者は文化全般の堅実な形成・発展のメカニスムを造るベきである。

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アスファルト

フィリピン戦繚に向かう船が沈没して捕虜になった人が、こう語った。〈アメリカ軍の飛行場のアスファルトが溶けないので、感心したな。〉沖縄の太陽光線から逃げ回ったことがあるぼくは驚いて、アメリカは凄いな、と思った。日本のアスファルト道路は夏になると、飴みたいに溶ける。強度の基準があるはずだが、それと工事する業者のどちらかがいい加減なのに違いない。きっと基準が甘いのだろう。昔の泥道で育った人が作ったのだろう。

　だから、雨の日は、傘を上に向けて歩かれない。なぜ、と思う人は知らすに加害者になっている。狭い歩道は意味がない。人間無視には困ったものである。

―人間虫、だ。

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〈辛いのは無関心です〉

ファンシー・コーナーなどにさりげない日常の情景を撮った絵葉書が置いてある。ヘップバーンやモンローの写真は素通りして、ぼくの視線が捕らえるのは無名の若い男と女、あるいはー人の男か一人の女だ。二人の場合は男が兵隊である写真もあるが、そう日常生活の場から離れていない。ドラマを感じさせるのはキス・シーンくらい。色彩は抑え、白黒やセピア色が多い。人気があるのはその《なんでもなさ》かもしれない。

　内戦が続くサラエボの若い女性が新聞で話していた。〈辛いのは無関心です。〉外国の人達が心配してくれていると思えばこそ、生きる喜びと希望がある。そして、日常の情景への愛情が…

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EN PASSANT HHJ 1995.5.14 Vol.38

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情報と自由

さまざまな情報を知ることが人間にとって、どうして必要なのか？好奇心という動機を別にして、外国に行った場合を想像してみよう。まずホテルを探したいが、地図もガイド・ブックもない。土地の人に尋ねると、黙って肩をすくめるだけだ。仕方なく適当に街を歩く。困ったことに街の案内板も看板もない。情報がないと、考える通りに自由に動けない。未知の慣習と制度に弄ばれてしまう。なぜこんなに不親切な街なのか、と旅行者は情なく思う。歴史を知らなければ、理解できないだろう。彼は路傍の年寄りに疑問を投げかける。長い説明がすべてを明らかにして、最後にホテルの場所を付け加えた。彼は都市への受動的な所属（従属）から解放されたのである。

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単純な状況に

1＋1＝2が理解できるのに、1冊の本と1冊の本を足すと何冊になるか、という問題はさっぱり解けない人がいる。本というイメージに不愉快な記憶があって、内面を掻き乱すせいだろう。ある現象について考えるとき、そんなふうに経験がからむと、意識があちこちに散らばってしまう。気がつくと、情報の問題が丁∨の裸の女に変わっていたり…だから、現実を一度消して、問題を単純な状況に置き換えてみるべきだ。つまり本質的な構造だけを取り出して虚構化する。もし外国の街で情報がなかったら…と。これには想像力と反省的な経験が必要である。でなければ、単純な状況への虚構が現象の貧弱な模写になってしまう。

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愛される〈おおだて〉?

〈アイ・ラブ・おおだて〉という運動が商工会議所の音頭で何年も続けられている。大文字焼きの漫画マークがその精神を雄弁に表わしている！一体全体その〈おおだて〉とは、何なのか？お答えしましよう：第一に運動推進の御偉方の会社です。策二に惰性的に日を送る公共組織です。策三に都市の虚妄な変化・発展に黙々と追従する市民生活です。第四に半強制的勧誘による芸術の安っぽい各種取り揃えセールです。策五に教育と学習は特定の隔離された場所だけで行われるものと信じている街と生活の環境悪化黙認主義のアンチ・ヒューマンな《夢》です。策六に文化の犠牲者をも金儲けに再利用する反理性主義です。第七に…

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EN PASSANT HHJ 1995.2.12 Vol.35

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中止になった原爆展

アメリカのスミソニアン博物舘で開かれる予定だった原爆展は、第2次世界大戦終結50年を記念して構想されたものだ。アメリカの主に旧軍人はヒロシマ・ナガサキヘの原爆投下を正当化していることを認めながら、展示資料を批判した。被害の一方的な強調は戦争責任を曖昧にするからだ。〈百聞は一見に如かず〉と言うが、残酷な展示物に何を語らせるのか？歴史の文脈に正確に位置付けられなければ、そういう事実は神経網と感情をいたずらに刺激して冷静な反省を妨げる。

　アメリカは民主主義というイデーを守るために戦い、ドイツと日本の国民を狂気と罪悪と恐怖から解放した。そのために最後に自ら汚染されてしまったのだ。

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クール!

三陸沖の地震で大舘は震度4ぐらいの揺れ、ぼくは肘掛け椅子の背に掴まって立っていたが、《永遠の波の建築》は見事耐えた。悦に入って、久しぶりに森吉スキー場ヘ…ダムに沈む地域から民家や樹木がすべて消え、どこなのかと戸惑う。それから、兵庫・大阪の地震で壊滅的に崩れた都市を見る。怒りと哀れみを感じていると、一遇問後の深夜アトリエの建物に外車が萄突して、壁とシャッターを壊された。それで出入ロの半分がクリ一ム色のシャッターになり、チョコレ一卜色の古いシャッターとの甘い組み合わせができた。これは大舘橋の左右の欄干と同じような配色で、ぼくは以前からそのコンセプトの出鱈目さを批判していた！ぼくの美意識と感違いされたくないな…

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死亡者欄

古い想い出がぼくの中でも少し揺れて、浮かび上がった。十代の終わりの夏北海道で知り合った三人組の女の子達、女子高校生か女子大生か忘れたが、西宮からはるばる旅行して知床半島の遊覧船に乗っているのだった。あとで屈斜呂湖畔の川湯温泉でぼくの友達が言った。〈その二人、帯広駅（？）でリーダーが買い物に降りて乗り遅れたんで、列車の中で迷子になってた。どこへ行く予定なのか全然知らないんだよ。〉…そのうちのー人の名前がある湖と同じなので、美しい響きと漢字が心に残っていた。

　ぼくは新聞の死亡者欄を読む気にはなれなかつた。が、安心するためには確認しなければならない。幸いその名前はなかったが、負傷していないか被災していないかと思うと、やはり落ち着かない。

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EN PASSANT HHJ 1994.10.11 Vol.32

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暗殺劇場

シェイクスピアは〈世界は劇場だ〉と言った。脚本家

が1人か複数いて、出来事が演劇的に行なわれる。主人公のギャリソン検事原作の映画《JFK》はケネディ大統顎暗殺事件を歴史の進展と絡ませて細かく分析する。軍とCIAと軍需産業界の〈クーデター〉の疑惑が浮かぶ。ケネディはベトナム戦争を止めようとしたので、邪魔者は消せ、とばかり殺られた。彼の死後ベトナム戦争が本格化した事実を考えると、暗殺劇場の全貌がくっきり照明に浮かび上がる。

　印象的なのはダラス市民の目撃証言の明快さと体制側の警察・検屍の医師達・調査委員会のでたらめ加減だ。シナリオに反する事実は記録から抹消される。民主主義社会の仮面を守るために、だ。

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香港製の腕時計

腕時計が壊れたので新しいのを探していると、クリスタル・ガラスの腕時計がゴミの中の宝石のように目を惹いた。イタリアのモダンなデザインで日本のメーカーが香港で組み立てさせたものだ。定価8800円が1980円という安さ。ぼくは昔から腕時計はアメ横の香港製か国籍不明のをデザインだけで選んで毎日ゼンマイを巻いて、時刻の狂いも気にしないで、使い捨てていた。電池で動く最近の腕時計は正確で、国際化しただけのことはある。

　韓国製や中国製の商品が日常生活に浸透して、偏見が消えるとすれば、効果的な交流だ。しかし人件費の安さが価格に反映しているのだから、搾取を思うと、暗い気持ちになる。

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エッセーの楽しさ

読書は好きだったが、書くことは滅多にしなかった。習慣になったのは高校生の頃クラス・ノ

ートに書いてから。会話と同じで、読者がいなければ、書く気がしなかったね。

　エッセーは、随筆とか試論と訳されるが、自由に表現できるジャンルだ。小説だと、ストーリーに嵌まり込んでしまう時がある。エッセーはテーマだけを熟慮すればいい。テーマが自然に虚構化を要求するなら、その通り現実の滑走路を離れて飛行する。VOLはvolume（巻）の省略だが、飛行のvol、盗み（非行）のvolである。娯楽のための虚構ではない。ついでに言うと、この欄は枠のおかげで単語の取捨選択と表現に知恵を絞らされる、という苦楽がある。

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EN PASSANT HHJ 1994.7.22 Vol.29

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言葉と映像

ある青年が幻影の体験を語ってくれた。長木川と高台の間の道路を走っていると、向こうから来た車がカーブを曲がり切れず雪の積もった農道をスリツプして行った。しばらくして、吹雪の夜、同じ所を通り過ぎて花輪線の踏切に近づくと、女の人が髪を櫛で硫かしている。それも、スリツプ姿で…

自動車のスリツプは現実だったが、スリッフ姿の女は幻影に違いない、と彼は言う。しかし、Slipという単語が両方に現れることには気づかなかったか、忘れていたようだ。言葉は記憶と想像でさまざまな映像と潜在的に繋がっている。映像が外にあるように知覚されると、夢ではなく、幻影

になる。駄洒落の力も馬鹿にならない。

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罪な言葉遊びに

日本人のユーモアには、単語の連想が多い。ぼくはフランス人の駄洒落を知らないが、言葉遣いに厳しい国なので、知的な洗練のない言葉遊びを嫌がるのだろう。ぼくもできるだけ避けている。言葉に多義性を与えて使うことは、それを解釈する人の精神に一種の分裂を惹き起こすからだ。ユーモアは意味の分裂である、と言えるが、例えば憲法第9条のように法の解釈でそんなことがあったら、社会と個人の精神に浸透して分裂を生じる。なお悪いことに曖昧さを弄ぶ責任逃れが罷り通る。―いや、私はそういう意味で言ったのじゃない。

　宣伝やネーミングなどで言葉遊びが公に行われることに、深刻な懸念を抱く。

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作られるノイローゼ

人間にとって、他者との関係は非常に大事である。〈私〉という存在の生活と精神は、それによって作られるが、大雑把に言って、関係が崩れると、ノイローゼの原因になる。孤島で一人暮らすロビンソンはどうだろうか？昔のさまざまな関係との内的な関係が安定しているので、ノスタルジーはあるが、ノイロ−ゼに陥る恐れはあるまい。それは精神の基盤で、彼の行動をしっかり支える。が、疑惑などが生じて内的な関係が揺らぐと…？分かり切ったことが分からなくなる。

　親しい関係の危機は環境との関係に影響する。事物が違ったように見えたり、別の意味に感じられたり…

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EN PASSANT HHJ 1994.5.20 Vol.28

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なぜ神秘的な傾向が?

20世紀は科学技術が飛躍的に発達した時代である。その反面、合理主義的な知性と対立する神秘主義も衰退するどころか、現代人の心を捕らえた。機械が専門的知識のない人間のちょっとした勉強で、その仕組みが理解されて故障が簡単に修理できる場合だったら、文明人の生活には大して不可解な現象はない。機械との関係は、滑らかな調和を保ち、個人の自由が広がる。

　ところが、ハイテクノロジーの時代では特に、機械の仕組みが想像を絶した自立性の強まった装置になる。故障すると、日常生活の中に不可思議な存在があるような薄気味悪さを感じる。これは未開人の生活と似たようなものである。

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２輪車のゴミ箱

パリの街で、プラスチックの立方体のゴミ箱に小さな車輪が付いているのを見て、Bonne　idée（ボ・ニデ）だと思った。グッド・アイディア。老人も体の弱い人達も簡単にアパルトマンの外に出せる。回集はどうするのか、と別に考えなかったが、

NHKでドイツのゴミ問題を取材した番組を見ると、同じようなゴミ箱を回収車の機械に運ぶところまで人手で、それから自動的にゴミ籍が空っぽにされて戻る仕掛けなのである。あれなら街路が汚れないし、外見も悪くない。係員も楽だ。パリでも、同じ方法だろう。しかし良いことも悪いことも真似っこする日本が、なぜかその模倣は嫌がってる。答：金の無駄使い？

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花の育て方

去年花が枯れたパンジーを室内に置いて、ときおり水をやると、春先に再び花が咲いた。白い色と紫色が格別映える。毎年決まって花屋で買っていたが、試しに育ててみて花を眺めると、いつもと違う気分に浸った。幸せな、と言うか…ほんの少しの手間と配慮で、身の回りの色さまざまなものが、そんなふうに花を咲かせるかもしれない。ぼくは文化や芸術のことを考えているのだが、具体例を上げようとして、思い止まる。

　結局、本当に心から文化や芸術が必要だと言える人間がどれだけいるのか？何のために求めるのか？思想もそうだが、文化や芸術は賭けなければ、価値があるものは手に入らない。

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EN PASSANT HHJ 1994.4.18 Vol.27

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暴力と脅迫への反抗

言葉は、現実そのものと言っていいくらい、認識に深く係わっている。知性は言葉を通

してでなければ、対象を捕らえることができない。不完全な把握の仕方だが、文字にすれば、現実の記録と伝達に大いに役立つ。だからこそ、権力者は書かれたものに対して神経質な反応を示す。暴力と脅迫で言論を抑圧することは、どんな国家どんな時代でも、起こりうる。個人は、世界の人間の一人としての自覚と責任を持ち、毅然として生きるべきである。

粗暴な権力はどこにでも存在する。それを許す利己主義と臆病があるかぎり。右翼の暴力に悩まされる朝日新聞の記者達に、よりー層の誠実さを期待する。

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バン作りの検閲官

ホームベーカリーにセンサーが付いている。感覚器官のことかと思っていたら、検閲宮（censor）という意味だった。まずいネーミングだ。検閲官と聞けば、ぼくなどは反射的にフロイトの精神分析を想い出す。無意識の欲求が意議に現われることができるかどうか決定するのが、検閲官の役割である。比喩で分かるとおり、社会の制度と慣習に照らして善悪が裁かれる。フロイトはオーストリア＝ハンガリー帝国と個人の内面に類似を感じ取っていたようだ。けれども、検閲は意識のひそかな仕事であり、意識は無意識の領域をよく知っている。彼の欠点は、心理を越えた人間の存在そのものについて考えなかったことだ。

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リヴァー･ポートから

1ドキュメンタリー撮影は延期になった。第1部の一般公開も、見通しが立たない。理由は、撮影機材を持っている人との関係悪化だ。彼の仕事が建設省とつながりがあるので、次第に現実に帰って自然環境保護のドキュメンタリーに否定的になったとしても不思議はない。役人や同業者が何もしなくても、恐れは十分起こりうる。これは誰にも覚えがあることだ、ね。

2それでも、年内にはドキュメンタリーを完成できるという希望があるので、楽観してる。別に急ぐ必要もないしね。一番良いのは、自前の機材を持つことである。非映像人間のぼくが？困ったことです…

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1 ▼　東京駅暗殺事件

2 ▼　夢の論理/夢の原料/夢の目的

EN PASSANT HHJ 1993.9.14 Vol.21

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小坂鉄道の小さな旅

小雨の降る夏のある日、初めて小坂鉄道に乗っ

た。クリーム色のペンキを塗った洋風の小坂駅から、街の中を通り抜けて急勾配の峠を越える。小坂の街が眼下に見えたと思うと、トンネルに入った。ディーゼル電車1両の車内に、客はぼくの他に1人しかいない。いつも似たような状態だろう。再び、意外に長いトンネルを通過する。小さな無人駅が、どれも情緒を感じさせる。沿線のバス停留所も、やはり古びたモダンの味わいがある。それらを眺めると、この地方の他の場所との違いが際立つ。これは意図されたものか、あるいは、小坂の街が自然に育んだ感性によるのか？車窓の右左に首を振っていると、約40分で大舘に着いた。

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線路のイメージ

鉄道のレ−ルは、どこまで行っても平行線である。でなければ、列車が脱線する。しかし、平行な線路が次第に幅を狭めてずっと前方でーつに繋がるという遠近法は、なぜか人の心を惹く。写真や映画で、どれだけそんなシーンが用いられたことか？…そのイメージの意味を考えてみると、長い失望の果てに希望がある、対立するものがいつか和解する、ということになるだろうか？主人公たちは、それが幻影でしかないと知りながら遠くへ去って行く。理想主義のイメージだ。しかし、現実主義者は脱線を恐れて出発さえしない。

　同じ平行繚でも、道路はエロチックな感じを受けると言う人がいるが、平行線の中で動くと、確かに印象が変わる。

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ジレンマの解決

伊豆諸島の神津島には、17世紀の初め徳川幕府のキリシタン禁止令で島流しにされたオタ・ジュリアの墓地がある。彼女は朝鮮貴族の娘で豊臣秀吉の朝鮮征伐の際日本に連れて来られた。身分を重んじられて、墓は立派なものが残っている。街の真ん中に、というより街がその墓を核にして形成されたように思える。墓の傍に石の灯籠が立ち、窓の田という形には十字架が隠されている、とガイドブックにあった。知られないように隠すが、同時に表面に出ているような方法でなければならない。キリシタンたちは実際日本の各地でアイデンティティの表現に苦心した。

　最近鉱山を見ながら想起するのは、北国の鉱山に逃げたキリシタンのことだ。

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1小坂鉄道の再生

EN PASSANT HHJ 1993.7.12 Vol.19

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馬鹿げたことへの情熱

くだらない、無意味な、馬鹿げたことが大好きな人間がいる。それが社会的に《意味のある》ことなら、彼はすぐに止めるだろう。彼には、公認された慣習的

な古臭い《意味》が納得いかないのだ。だから、馬鹿げたことへの情熱は反抗的である。

　彼が無意味さを自覚していれば、行為は演劇に似たものになる。一生懸命のように見えるが、その真剣さが何も創造しないこと、つまり虚無的でしかないことを、彼は知っている。しかし、それこそが快感であって、楽しい遊戯なのだとしたら、そういう人間は日本の社会では簡単に受け入れられまい。

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情報収容所

間接的に得る事実で、人はそれぞれの《現実》を作らざるをえない。テレビ・ラジオ・雑誌・新聞などが与える情報は収容所並みに真実と無縁である。君は同情して、いや愛情に動かされて、解放しようと努力するだろう。　　　

ところが、決して収容所を出ない《囚人》がいる。

―いい迷惑なのだ。現実とどんなに違おうとも、妄想の中の方が居心地がいいんだ。構わないでくれ。

　困ったことに、君が信じている事実も本当かどうか疑わしい。自分も他の収容所にいるのじゃないか、と懐凝的になってもいい。

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優れた文章を書くために

ある女性がぼくに言った、としよう。

―あなたは個性的で優れた文章を書きますね。秘訣をこっそり教えてくれません？

―簡単ですね。明快であること、言えることはすベて言って行間の意味などないようにすること。実際、ぼくは余白や余韻を残したくないな。

―Obsession（強迫観念）？

―まあ、そうかもしれないな。小説でも工セーでも若い頃から隙間なく埋める癖がある。明快であるためにはテーマの認識が深くなければならない。書くときに思考の歩みをごまかしてはいけない。そして、構成に気を配ることだね。

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情報収容所に関連して

▼　第2次世界大戦中の歴史の共同研究---無意味な破片　　2006.3.1

HHJ

文書の先頭

あん　ぱさん

Atelier Half and Half