「故郷はどこか」と訊かれたら「横浜」と答えるだろう。東京生まれで西宮に暮らしていた時期もあるけれど、大人になるまでに一番長く住んでいたのは横浜。住んでいたのは5歳から22歳までの17年間。最初の2年半は横浜駅まで歩けるほどの中心部。社宅の古いアパート。そのあとは南端、ほぼ逗子、鎌倉との境にある新興住宅地。いまも母が一人で住んでいる。
横浜、と一口に言ってもとても広いので、人それぞれ思い浮かべる風景は違う。私の場合、京急沿線と根岸線沿線が横浜のイメージ。住んでいた場所と通っていた学校がこの二本の路線沿いにあった。新横浜で働いていたこともある。そのときは東京から20分間、新幹線に乗り通勤していた。どんなに眠くても座らなかったのは言うまでもない。
東横線も、桜木町駅と渋谷駅がまだ終着駅だった高校時代、代々木の予備校と渋谷の英語学校に通うために乗っていたので思い入れがある。
馴染みのある場所を区でいえば、金沢区、港南区、中区、西区。少ないし、範囲は狭い。
南から思い浮かぶ場所を書くと、野島、称名寺と金沢文庫、海の公園、上大岡、横浜駅、桜木町、みなとみらい、大桟橋、山下公園、中華街、元街、港の見える丘公園、第三京浜、新横浜。
横浜にあって「私の横浜」にないものも書いておく。鶴見区、保土ヶ谷区、戸塚区、泉区、青葉区、都筑区、瀬谷区、旭区。路線でいうと相鉄線と横浜市営地下鉄。これらの横浜は「私のふるさと」には入らない。
以下、「私の横浜」から連想する歌。
- 横浜市歌
- Ocean Beauty - My Hometown、浜田省吾
- I Came from 横須賀、山口百恵
- シャ・ラ・ラ、原由子&桑田佳祐
- 窓、谷山浩子
- タイガー&ドラゴン、Crazy Ken Band
- 海を見ていた午後、荒井由実
- 夏色、ゆず
- Yokohama City of Lights、菊池桃子
- One More time, One More Chance、山崎まさよし
- 秋の気配、オフコース
- My Hometown、小田和正
横浜市歌
私が十代の頃、横浜は革新市政が続いていた。先鋒は社会党の飛鳥田市長。学校の式典で「君が代」を歌うことはなく、必ず「横浜市歌」を歌った。
今回、思い出してみようとしてもソラでは歌えなかった。自分が脱・横浜化していることを思い知らされた。
Ocean Beauty - My Hometown、浜田省吾
この歌は横浜を歌ったものではない。ただ、私が小学校一年生で移り住んだ新興住宅地のイメージがこの歌の歌詞にそっくりなのであえて最初に置いてみた。
浜田省吾は「路地裏の少年」で「アルバイト/電車で横浜まで/帰る頃は午前0時」と歌っているので、横浜にゆかりがある人。
I Came from 横須賀、山口百恵
この歌を選んだ理由は、ズバリ、京急線の駅名が羅列されているから。
山口百恵は横須賀の人、ということはよく知られている。東京へ出るとき、彼女は(そして阿木燿子も)横須賀線ではなく京急線を使っていたことがわかる。
シャ・ラ・ラ、原由子&桑田佳祐
この歌に「横浜」という言葉は一度しか出てこない。それでも「恋人も濡れえる街角」や「Love Affair」よりも横浜を感じさせるのは、住んでいたときに聴いていたからだろう。
窓、谷山浩子
谷山浩子は横浜出身。この歌に「横浜」は出てこないけれど、この歌を聴くと通っていた中学校の「窓」を思い出す。
「空に吸われし十五の心」という短歌を覚えた頃。あの頃のやり場のない怒りや悲しみを思い出させる歌。
海を見ていた午後、荒井由実
この歌に出てくるレストランには行ったことがない。でも、そのすぐ近くにある元競馬場の根岸森林公園には高校時代によく行った。
土曜日の午後、公園で遊んだあと、港の見える丘公園まで走った。
タイガー&ドラゴン、Crazy Ken Band
横浜ではなく、横須賀の歌。通学も買い物も横浜方面に行くことが多かったので、横須賀方面には疎い。この歌には三笠公園が出てくる。あそこだけは、何度も行ったことがあるのでとても馴染みがある。一曲だけ、横浜の南側の歌を入れてみた。
夏色、ゆず
ゆずがデビューした頃、クルマで仕事に出かけることが多かった。運転中、AMラジオから聴こえてきたのが「夏色」だった。この歌は京急線、上大岡駅の列車接近メロディに使われている。だから、ほぼ2週に一回、聴いている。
Yokohama City of Lights、菊池桃子
横浜、港、冬景色。この歌は恋人を想う歌なのにメロディも詞もせつない。華やかなだけではない。横浜にそういう顔があることは私も知っている。
One More time, One More Chance、山崎まさよし
桜木町が出てくる。それも「こんなとこにいるはずもないのに」という言葉と一緒に。
確かに「桜木町」にいた。私も行くたびに探している。涙を堪えて聴く故郷の歌。
秋の気配、オフコース
「横浜」という言葉は歌詞にないけれど、舞台は「港の見える丘公園」。
この歌を聴くと、1980年頃、日曜の夜11時、AMラジオで聴いていた、そらまめさんこと滝良子が案内役の「ミュージックスカイホリデー」を思い出す。
My Hometown、小田和正
大トリはこの曲。京急線沿いに住んでいて根岸線に乗って通学していたところは私も同じ。
今は京急線、金沢文庫駅で列車接近のメロディに使われている。
まだオフコースも知らない小学三年生の時、お店やさん調べの課題で金沢文庫まで行き、すずらん通りの小田薬局でインタビューしたのもいい思い出。
「どんなに離れていても」、私が育った街。
さくいん:浜田省吾、山口百恵、桑田佳祐、谷山浩子、荒井由実、菊池桃子、滝良子、オフコース(小田和正)