2/3/2016/WED
遠ざかる風景(1976)、小椋佳、キティ、2006
いたずらに、小椋佳、キティ、1981
先週まで、小椋佳が日経新聞で「私の履歴書」を書いていた。
芸名である小椋佳の由来や、学生時代に法学部で弁護士を目指すかどうかを悩んでいたことなどは『いたずらに』(新潮文庫、1981)で読んで知っていた。この本は、同名のアルバムと同じ時期に発売された。
歌詞や随筆のほか、学生時代の日記の一部がそのまま転載されていた。幼なじみと交際していたこともそのまま書かれている。
今回、「私の履歴書」を読んで驚いたのは、神田紘爾は銀行員としても非常に優秀だったこと。考えてみれば、本業で実績をあげていたから副業も黙認されていたのだろう。
思い出してみれば、早逝したラグビー選手、宿澤広朗も、銀行員と選手、全日本監督、いずれでも実績を残した。
もう一つ、驚いたこと。70歳を過ぎた今もなお一日に40本喫うヘビースモーカーであること。いろいろな病気を負いながら、なお、煙草を嗜んでコンサートを続けられるのは、よほど恵まれた肺細胞なのだろう。
余談。懐メロ番組を見て思うこと。若いときに売れたアイドル歌手よりも俳優のほうが歳を経てからも歌は上手い。とりわけ舞台を続けている俳優は、ずっと声を使い、鍛えているからだろう。西田敏行や水谷豊を見ているとそう思う。偶然なのか、二人とも映画『太陽を盗んだ男』に出演している。
小椋佳で聴くのは、『いたずらに』と、初めて人前で歌ったNHKホールでのコンサートのライブ盤『遠ざかる風景』。スタジオ録音されたバージョンを持ってはいても、つい、耳になじんたほうを聴いてしまう。
このCDには、レコードには収録されていた「行き止まりの海」が、なぜか入っていない。
小椋佳の作品で一番好きなのは、「時」。初恋の相手に偶然、再会する。初恋を失くしてから再会するまでの「時」について歌っている。
初恋にいつまでも抱いている男性のはかない未練を歌っているという点では、大滝詠一「木の葉のスケッチ」(松本隆作詞)と似ている。
ほかの歌手に提供した作品で好きなのは、薬師丸ひろ子が歌う「あたりまえの虹」。
デビュー曲「セーラー服と機関銃」(1981、来生えつこ作詞、来生たかお作曲)のB面だった。この曲は薬師丸ひろ子のベスト盤には収録されていない。小椋佳がほかの歌手に提供した曲を集めた『小椋佳の世界』(キティ、1994)に収録されている。
1981年で止まっていた小椋佳が、思いもかけず、経済新聞の職歴記事で再生をはじめた。
写真は『遠ざかる風景』を録音したカセットテープのレーベル。日付は1980年10月とある。
さくいん:小椋佳