最後の手紙

烏兎の庭 - jardin dans le coeur

第五部

国立博物館 陳列棚

2/26/2016/SUN

上海博物館との競演-中国陶磁-、東京国立博物館、東京都台東区


汝窯青磁を特集したEテレ『日曜美術館』を見た。日本では数少ない汝窯青磁盤と上海博物館所蔵の同様品が並んでいると聞き、家で昼飯を済ませたあと、上野まで出かけることにした。

金曜日の夜に酒も呑まず、夜更かしもせずに早く寝たので、元気よく家を出た。天気も快晴。「天青色」を拝むにはうってつけの好日。陶磁器を積極的に見るようになってから、まだそれほど時間は経ってない近代美術館で見た青磁が興味を持つきっかけになった。薀蓄は何も持っていないけれど、綺麗な色や美しい細工を見る楽しみはわかってきた。

トーハクは広い。すべて見ると疲れるし、感動で満腹になってしまう。腹八分目にするために、的を絞って回った。来るたびに展示が変わっているところも、トーハクのいいところ。いつ来ても発見があり、楽しい。

色絵花卉文壺(柿右衛門)

今回、目当ての特集のほかに時間をかけて見たのは本館の漆工と陶磁、東洋館の清時代の工芸、法隆寺宝物館。

最初に本館を一回りした。写真は色絵花卉文壺(柿右衛門)。伊万里は、正月だけ使う徳利が実家にあるので多少は馴染みがある。


汝窯青磁盤

汝窯青磁盤。番組で取り上げられていた青磁無紋水仙盆に比べると細い貫入が多く透明感は劣るものの、天青の色は素晴らしい。心のざわつきを洗い流してくれる。

隣には上海博物館所蔵の同種の品がある。こちらは撮影禁止なので、上海博物館のサイトにつなげておく。


青磁盤

透明感という点ではこちらの青磁盤がより美しい。『日曜美術館』がこの色を生み出す難しさを詳しく説明していたので、これを見ることができるありがたみがよくわかる。


青磁輪花鉢

重要文化財の青磁輪花鉢。こちらは網目のような貫入がアクセントになり、見る角度によって色が変化すると解説されている。


粉彩梅樹文皿

焼上げ後に彩色した粉彩梅樹文皿。今回、明時代の文人、董其昌の特集も開催されていた。書画の名品とともに、椅子や机を並べて典型的な文人の書斎が再現されていた。こういう絵皿が飾られていたのだろう、と想像してみる。


鮮やかな多色塗りの双子の瓶と、飛び舞う青龍をあしらう器と、何の装飾もない澄んだ天青の皿と。すべてを見渡せるベンチで過ごすひととき。

思えば、マインドフルネスなんて言葉が流行る前から、ささくれた心を穏やかにしてくれたのはこういうひとときだった。


菩薩半跏思惟像

法隆寺宝物館で見つけた菩薩半跏思惟像。中宮寺や広隆寺の弥勒菩薩像と比べると、少しふっくらしていて貫禄があり、ふてぶてしい雰囲気さえ漂う。

ドン・コルレオーネが葬儀屋の懇願に耳を傾けているときの凄みを感じさせるような佇まい。

トーハクの所蔵品にはすべて番号が付いている。今回はお気に入りの品の番号を書き留めることを忘れていた。


翡翠香炉

今回、東洋館 9室、「清時代の工芸」でお気に入りに加わった一品。ミャンマーから輸入された翡翠に竜の彫刻を施した翡翠香炉。どこで見ても、翡翠には足を止める。原石でも、加工されたものでも、翡翠はつい見とれてしまう。

緑、碧、⋯⋯。好きな色を漢字で並べるとこんな感じになる。


真白な陶磁器を眺めて」いたら、「飽きもせず/かといって触れもせず」とつづく、小椋佳「白い一日」を思い出した。

帰り道、ライブ・アルバム『遠ざかる風景』を聴きながら春日駅から水道橋駅まで歩いた。このアルバムも、2月に必ず聴く作品。

博物館で眼福を得ても、最後には「おなじ話」に戻ってしまった。