土を掘る 烏兎の庭 第三部
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2008年10月


10/4/2008/SAT

愛すべき名歌たち―私的昭和歌謡曲史、阿久悠、岩波新書、1999

キタキツネネ物語 オリジナル・サウンドトラック(1978)、コロムビア、1989

作詞家阿久悠が亡くなったあと、いくつも特集番組が組まれた。数々のヒット曲にまぎれて、確かな記憶はないけれども、どこか懐かしい歌声を聴いた。それは、ズー・ニー・ヴー「白いサンゴ礁」だった。

歌っているのは町田義人。彼の歌は一曲もっている。映画『野性の証明』の主題曲「戦士の休息」を聴きたくなって、図書館で『角川映画スペシャル』(EMIミュージック、1985)を借りたことがある。でも、覚えていたのはその曲だけではない。映画『キタキツネ物語』の主題歌「赤い狩人」も、テレビで映画を見たあと、よく口ずさんでいたことを思い出した。

この映画はよく覚えている。北海道の風景の美しさのほか、流氷に流されていく狐や自動車にはねられた狐の無残な姿が目に焼きついている。どこまでがドキュメンタリーでどこからが作り話なのか、風景の美しさに感動する一方で、困惑しながら見ていた。


通っている図書館では、町田義人で検索しても何も出なかった。『キタキツネ物語』で探してみると、サウンド・トラックが見つかった。この映画の音楽担当は、当時人気絶頂だったゴダイゴ、主題歌の作詞は、助監督の三村順一。

ほかにも、よく口ずさんでいたのに、もう思い出すこともなくなっている歌はないか。

「ホッホッホッと、声がする」ではじまる『がんばれ元気』。「男なら、戦うときがある」ではじまる『あしたのジョー2』。それから、歌詞はほとんど覚えていない、「カモン、カモン、マッハバロン」で終わる『マッハバロン』。


調べてみれば、『マッハバロン』の作詞も阿久悠。終わりの部分は「カモン」ではなく、「頼む」と言っているらしい。この曲は、通っている図書館にはない。再会までには、まだ時間がかかりそう。

阿久悠には、子ども番組の仕事も意外に多い。歌謡曲中心の回想番組を見ていると「勝手にしやがれ」(沢田研二)、「街の灯り」(堺正章)、「あの鐘を鳴らすのはあなた」(和田アキ子)、など、昔からよく知っていたような気がしてくる。そうしたヒット曲以上に、私の身体に染み込んでいる阿久悠の言葉は、おそらく子ども番組で聴いたものだろう。『ウルトラマンレオ』『宇宙戦艦ヤマト』、その後主題歌だった「真っ赤なスカーフ」

ところで、阿久悠は『愛すべき名歌たち』のなかで、美空ひばりの死をもって昭和という時代が終わったと述懐している。同世代で、自分が淡路島でラジオを聴いていた子ども時代から売れっ子で、自分が作詞家として大成してから後も大歌手でありつづけていた美空ひばりに、阿久悠は特別な思い入れがあったらしい。


昭和40年代に生れた私には、美空ひばりに特別な思い入れはない。ただ、晩年までずっと歌が上手かったという印象だけはある。往年のアイドルがかつてのヒット曲を歌う最近の番組を見ても、自分の持ち歌でさえ、年齢を重ねていつまでも上手に歌える人は少ない。懐かしさからテレビをつけてみると、裏切られることのほうが多い。

昭和、という時代は長い。私にとって昭和とは、だいたい昭和50年からのことを指す。ということは、昭和時代は、私の場合、およそ14年、大正時代とほぼ同じ長さということになる。「昭和の歌姫」と問われれば、おそらく私には松田聖子だろうか、全盛期の時間は美空ひばりよりもずっと短いとしても。

写真は、秋の公園、曇り空。


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