2/28/2005/MON
岸辺のふたり(Father and Daughter)、Michael Dudok de Wit、うちだややこ訳、くもん出版、2004
悲しい本(Michael Rosen's SAD BOOK)、Michael Rosen文、Quentin Blake絵、谷川俊太郎訳、あかね書房、2004
今月は一本しか文章が書けなかった。例年、辛い季節だけれど、今年はいつになくきつかった。業務では予期せぬ出張や宿泊が続き、予定していた休日もとれなかった。そのせいで後半には風邪をひき、週末まるごと寝込むことになった。
この書評は合間をみて少しずつ書いた。最初の金曜日に最後の頁以外の全体の構成、連休に第一稿、月末に結語部分を添えた。
最後に付け加えた二つの段落を書くことができたのは、ある新聞記事と一冊の本のおかげ。記事は2月2日付読売新聞「人生案内」。
自宅で購読しているのは日経新聞。出張先では読売を読むことが多い。理由は「人生案内」を読みたいから。出久根達郎はじめ、文章上手の回答者が質問者に応じながら、読み手にも考えることを残す、気の利いたエッセイを書いている。
幼い頃の苦しい出来事が大人になってからよみがえるようになったという女性からの相談に対して、心療内科医の海原純子は次のように書いている。
(前略)今になって昔のことが思い出されて憂うつになってしまうのは、これまであなたがおさえこんできた様々な感情が、そろそろおもてに出たいと言っているサインのように思えます。つらい気持ちに目をむけるだけの力がない時は、感情をおさえ「感じない」ようにして生きるものです。今のあなたは感情をうけとめるパワーがついたので、当時のことを思い出すのだと思います。思い出すまま、ノートに書き出し、十分泣いてください。
心の底から苦しいときには悲しむことさえできない。「心から悲しめることが幸せ」という言葉は、この記事への感想でもある。
一冊の本は、高橋和巳『新しく生きる』(三五館、2001)。
これらの記事と本を読んだおかげでようやく書評が書き上げられたことを書き残しておく。
こうして書き上げてみると、「書きたいことはあるのだが、書けることではないのだ」と書いた日のことがずいぶん昔に感じられる。