腸内細胞

腸の長さは約7~9 mですが、内側がこまかいひだになっていて、広げるとテニスコート一面分にもなります。この腸内の内側のひだの中に約100種類、合計100兆個の腸内細菌が存在するといわれています。
腸内細菌の代表的なものは以下の3つです。

このうち日和見菌は状況に応じて、善玉菌に加勢したり、悪玉菌のほうに傾いたりします。
これらの腸内細菌が、腸内の環境を保っているわけです。表に、善玉菌、悪玉菌10% 、日和見菌の割合が、腸内のバランスが取れた好ましい状態とされています。
また、これらの菌のバランスは、遺伝的・免疫的に決められているといわれています。腸内細菌が存在するのは、小腸では回腸、回盲部、大腸では結腸および直腸内までです。
なお、善玉菌のラクトバチルス菌は、ブドウ糖を分解して乳酸を産生します。
ラクトバチルス菌が産生した乳酸により、腸内の環境を酸性にして、多くの病原菌の侵入を防ぐのです。このようを菌が、大腸の中で腸内フローラ(お花畑) を形成しています。この腸内環境は、遺伝要因(生まれつきのもの)と環境要因(生まれた後の食事、年齢、ストレスなどによるもの) しだいで、崩れて悪化する場合があります。では、日本人の腸内環境と現在の腸内環境には変化があるのでしょうか。
多数の人間、しかも過去と現在を調査しなければ判明しないので、なかなかこうしたデータは見つかりません。
1970年代ごろまでは、培養技術レベルの関係で腸内細菌の実態はあまり知られていませんでした。培養しやすい大腸菌や乳酸菌などの存在は、かなり以前からよく知られていたのですが、これは培養しやすいためであり、例外といえるでしょう。
このような状況を考えると、1960年代の日本人のほうが腸内環境が良かったとはいえなくても、現代の日本人の腸内環境とは細撃的には単純に比較できないのです。
たしかに穀物や野菜の摂取量が多く、肉類や乳製品の摂取が少なかった等代初頭は、おそらく腸内環境が良かったのでしょう。ただ、それはあくまでも大腸ガンにかかる人がはいまより少なかったから成り立つ推測にすぎません。腸内細菌のバランスのよし あしを当時と比較しようにも不可能なのです。
しかし、次のような興味深い調査もあります。細菌学者が、カナダ・トロント在住で、肉類中心の典型的洋食生活を送っている現地在住日本人9人の腸内細菌の状態を調べています。
それによると、動物性食品を多く摂取している彼らは、通常の日本人に比べて、有益菌のビフィズス菌が少なくなっていたのです。たかだか9人のデータだけで、過去の日本人と現在の日本人の腸内細菌の比較ができるとは言えません。
しかし、穀物類の食事主体で動物性食品を摂取する機会が少なかった昭和30年代は、現在に比較して大腸ガンの死亡数が非常に少なかったという事実もあります。少なくとも、肉類・乳製品を多く摂取するようになればビフィズス菌の数は減少するはずです。

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