三菱自動車(路線バス)
三菱自動車は戦前にバスのディーゼル化の先鞭を切ったバスメーカーで、戦後も大型のディーゼルバス生産に主軸を置いていたことから、路線バスでは都市型の大型車の印象が強く、また観光バスにも強いメーカーと言われます。「ふそう」という愛称が知られますが、これは戦前に鉄道省に納入した大型バスにつけられた車名で、いつしか三菱の大型車全般を指す愛称となりました。
長らく三菱重工業(株)の自動車部門でしたが、1970年に独立して三菱自動車工業となり、2003年に大型車は三菱ふそうトラック・バスとして独立しています。
表4-4 三菱大型バスの系譜
三菱R1, R2, R200
表4-4-1 三菱R1, R2, R200
年式 | 1950-1951 | 1951-1952 | 1952-1954 | 1955 | 1955-1958 | |
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原動機型式 (出力) | DB0 (100PS) | DB5 (130PS) | DB7 (130PS) | DB7 (130PS) | DB7 (130PS) | |
軸距 | 4500mm | R23 R24 | R23 R24 WR23 | |||
4570mm | R280 R285 | |||||
5220mm | R1 | R11 R12 | ||||
5370mm | R21 R22 | R21 R22 WR21 | ||||
5440mm | R270 R275 | |||||
備考 | 緑文字=中ドア専用シャーシ、下線=フレーム付 |
その後、1952年にはエンジンを横置きしたR2系列に進化します。この系列から、空気取り入れ口は、側面最後部の窓からとなりました。1955年にWRという型式が登場しますが、これは西日本車体がボディを架装するフレームレスのシャーシです。
1955年にR200系列に進化します。
R2系
京阪バス 三菱R21
画像:三菱日本重工業公式カタログ(1952)
1950年、三菱では縦置きエンジンの大型リアエンジンバスR1系を開発、全長11,250mm、ホイールベース5,220mmと、当時としては超ロングサイズのバスとなりました。縦置きエンジンのため、後部の室内には大きなデッドスペースが生じていました。
1952年には横置きエンジンに改良し、室内の有効長を広げたR2系が登場しました。これは、室内最後部窓をエンジン通気孔にしているのが特徴です。
写真は三菱ボディの一例。
R200系
大阪観光バス 三菱R270
画像:所蔵写真
花巻電鉄 三菱R270
撮影:宮古市(2020.10.3)
1955年、R2系列はボディのモデルチェンジに合わせてR200系列となりました。
これらのグループは、室内のデッドスペースは大幅に解消し、室内最後部にまで座席があります。外観上は、側面最後位の窓が固定窓になっています。
三菱R300系
表4-4-2 三菱R300系
年式 | 1958-59 | 1960 | |
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原動機型式 (出力) | DB31A (155PS) | DB31A (165PS) | |
軸距 | 4570mm | R380 WR380 | R380 MR380 |
5080mm | WR390 | MR390 | |
5440mm | R370 WR370 | R370 MR370 | |
備考 | 下線=フレーム付 |
三菱R300系列は、1958年にR200系列の後継として新型エンジンを搭載して登場したグループです。出力は155PSにアップされています。エンジンの配置は前シリーズを踏襲しているため、後面のエンジン通気孔の形状などは変わりません。
並行して西日本車体のフレームレスモノコックボディを架装するWR300系列も生産されますが、これは1960年には三菱ボディや呉羽ボディのフレームレス化に対応してMR300系列に生まれ変わります。
1959年からは、エンジンを縦置きした後継のR400/MR400系列が登場しますが、1960年までは本系列も並行生産されました。
諏訪自動車 三菱R370
撮影:ヒツジさん様(茅野市 2004.5.22)
R300系
呉羽自工のボディを持つR370。側面最後部の窓は、固定式の扇形の窓になります。
三菱WR390
画像:三菱日本重工業公式カタログ(1958)
WR300系
西日本車体では、早くからフレームレスモノコックボディの技術を会得しており、R200系列の時期から三菱のシャーシに架装を開始していたようです。まだ標準型式のMRが登場する前で、WRという専用型式が与えられました。Wは西日本(West Japan)の頭文字だと思われます。
三菱MR400系 1960−1978
表4-4-3 三菱MR400系
年式 | 1959 | 1960-1963 | 1964-1967 | 1967-1973 | 1973-1978 | |
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原動機型式 (出力) | DB31A (155PS) | DB31A (165PS) | 6DB1 (165PS) | 6DB1 (165PS) | 6DB1 (165PS) | |
軸距 | 4530mm | AR480 | MR480/MAR480 R480/AR480 | MR480/MAR480 R480/AR480 | ||
4900mm | MR410/MAR410 | MR410/MAR410 | ||||
5000mm | MR490/MAR490 | MR490/MAR490 | ||||
5400mm | AR470 | MR470/MAR470 R470/AR470 | MR470/MAR470 R470/AR470 | MR470/MAR470 | MR470/MAR470 | |
5650mm | MR420/MAR420 | MR420/MAR420(〜1971年) | ||||
5700mm | MR450/MAR450(1971年〜) | MR450/MAR450 | ||||
6270mm | MR440/MAR440 | |||||
備考 | MR=リーフサス、MAR=エアサス 下線=フレーム付 |
立川バス 三菱MR410(1971年式)
撮影:立川駅(1980.5)
松本電気鉄道 三菱MR490(1967年)
撮影:松本駅(1978.1.4)
三菱MR400系は、1960年に登場した縦置きエンジンのリアエンジンバスです。出力は1種類ですが、長さのバリエーションは豊富で、1977年まで製造された息の長い系列です。
当初は、フレーム付のR300・R400系列と並行して生産されていました。横置きエンジンのMR300系列も1960年まで生産されています。また、1967年からは高出力のB8系列も並行生産されています。
型式の数字部分は長さによって異なりますが、数字の大小と車長は関係ありません。また、生産時期によっても異なるので、理解が難しい系列でもあります。エアサス車は、Rの前にAがつき、MAR470のようになります。
なお、高速バス用のMAR820/870、9mサイズのMR500系列、中型車のMR620はここでは除外します。
ボディの組み合わせ・・・三菱、呉羽、富士、川崎、西工、北村
三菱B8 1967−1978
表4-4-4 三菱B8系
年式 | 1967-1971 | 1971-1978 | |||
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原動機型式 (出力) | 6DC2 (200PS) | 8DC2 (230PS) | 6DC2 (200PS) | 8DC2 (230PS) | |
軸距 | 4900mm | B800J/B805J | B800J/B805J | ||
5200mm | B800K/B805K | B806K(1968年〜) | B800K/B805K | B806K | |
5400mm | B800L/B805L | B806L(1968年〜) | B800L/B805L | B806L | |
5650mm | B800M/B805M | ||||
5700mm | B806N(1968年〜) | B800N/B805N | B806N | ||
備考 | B800=リーフサス、B805,B806=エアサス B820Jは本表からは省略 |
京王帝都電鉄 三菱B800N(1972年式)
撮影:府中営業所(1981.10.10)
弘南バス 三菱B805L(1975年式)
撮影:高崎営業所(1986.12.26)
三菱B8系は、MR400系の高出力バージョンと位置づけられるV6タイプ予燃焼室式エンジンを搭載したグループで、1967年に登場、MR400系とともに1978年まで生産されました。車体はMR400系と共通ですが、エンジンが小型化されたため、車内のデッドスペースが少なくなり、外観ではエンジン通気孔が小さくなっています。
いすゞBU_KPや日野RCと同様に、路線バスだけでなく、初期には観光バスや長距離バスとして使用された例も多く見られます。
特に1968年に追加された230PSのB806は貸切バスを念頭に開発された型式ですが、車型がB8系を基本にしているため、ここでまとめて記載します。
ボディの組み合わせ・・・三菱、呉羽、富士、川崎、西工、北村
三菱MP 1976−
表4-4-5 三菱MP
年式 | 1976-1980 | 1980-1984 | 1984-1990 | |||
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原動機型式 (出力) | 6D21 (205PS) | 6D20 (215PS) | 6D21 (205PS) | 6D22 (225PS) | 6D22 (225PS) | |
軸距 | 4800mm | MP107K | MP117K/MP517K | K-MP107K | K-MP118K/MP518K | P-MP218K/MP618K |
5300mm | MP107M | MP117M/MP517M | K-MP107M | K-MP118M/MP518M | P-MP218M/MP618M | |
5800mm | P-MP218N/MP518N | |||||
5850mm | MP107N | MP117N/MP517N | K-MP107N | K-MP118N/MP518N | ||
6000mm | P-MP218P/MP618P | |||||
備考 | MP1・2=リーフサス、MP5・6=エアサス MP107=1978年から MP118/518は1984年にP-となった。 |
京王帝都電鉄 三菱K-MP118K(1980年式)
撮影:多摩センター駅(1982.10.10)
元東京急行電鉄 三菱P-MP618K(1985年式)
撮影:ヒツジさん様(利根村 2004.5.15)
三菱MPは、1976年にそれまでのMRやB8系の後継として登場した直接噴射式エンジンを縦置きに搭載する系列です。
当初はMRやB8系と並行生産されていましたが、次第に切り替えられていき、1978年にはMPに一本化されました。従って、1976〜78年の間は、旧系列と同じ車体を持っています。1978年のMPへの一本化に際し、三菱ボディでモデルチェンジを行ったため、そのボディスタイルが初期MPをイメージ付けています。
ボディの組み合わせ・・・三菱、呉羽、富士、西工
三菱自動車の系譜
- 1932(昭和7)年 旧三菱造船でB46型ガソリンエンジンバス完成。「ふそう」と命名
- 1934(昭和9)年 三菱造船は三菱重工業に改称
- 1950(昭和25)年 三菱重工業は3社に分割。東日本重工業、中日本重工業、西日本重工業となる。バスシャーシは東日本重工業
- 1952(昭和27)年 東日本重工業→三菱日本重工業、中日本重工業→新三菱重工業、西日本重工業→三菱造船と、それぞれ改称
- 1964(昭和39)年 三菱日本重工業、新三菱重工業、三菱造船が合併し、三菱重工業となる
- 1970(昭和45)年 米クライスラー社と合弁事業に関する基本契約締結。三菱自動車工業設立。
- 1993(平成5)年 クライスラーとの資本提携解消
- 1999(平成11)年 スウェーデンのABボルボ社とトラック・バス事業における資本・業務提携を締結
- 2001(平成13)年 トラック・バス事業における提携パートナーを、ダイムラー・クライスラー社に変更
- 2003(平成15)年 三菱ふそうトラック・バス設立