名詞が2度目の時はどうするか?
以下の文章を作ってみてください。
3a |
この犬はTomの犬です。 |
|
3b |
彼の犬はかわいい犬です。 |
|
3c |
私は犬を買います。とてもかわいいです。 |
|
主語を書いて動詞を書いて、残っているものを書いて、文の終わりにはピリオド。そのまま書いていけば、以下の文章になります。
3a |
この犬はTomの犬です。 |
This dog is Tom's dog. |
3b |
彼の犬はかわいい犬です。 |
Tom's dog is a cute dog. |
3c |
私は犬を買います。とてもかわいいです。 |
I buy a dog. A dog is very cute. |
それぞれの文章で、「犬」という名詞が2回出てきています。同じ名詞をそのまま使用することは日本語では問題ありません。
しかし、英文では同じ名詞をそのまま使用することはできないというルールがあります。
このページでは、独立所有格の用法、不定代名詞oneの用法、itやtheの用法など名詞が2度目の時に使用される文法をご説明します。
まずは、ルールをまとめて見てみましょう。
名詞が2度目の場合
ルール@
1つの文章の中に同じ名詞が2度出ている場合、その2度目の名詞の前に所有格があった場合には、所有格+名詞の2語は独立所有格1語を使用する。A'sBも所有格であり、この独立所有格は、A'sの形になる。
ルールA
1つの文章の中に同じ名詞が2度出ている場合、その2度目の名詞の前にthis、that、these、those、形容詞がある場合、2度目の名詞は、oneまたはonesを使用する。
ルールB
@A以外の場合には、人称代名詞を使用する。
男が1人 he/his/him
女が1人 she/her/her
物が1つ it/its/it
複数 they/their/them
ルール@(独立所有格)から見ていきましょう。このルールは、実は「英文の作り方」のルールにもあります。
(
こちらです)復習してみましょう。
この犬は彼女の犬です。
This dog is her dog.
主語を書いて、動詞を書いて、残っているものを書いて、文の終わりにはピリオドをつけます。すると、her dogのdogが2度目になっていました。名詞が2度目で、その前に所有格があったら、独立所有格1語にする、というルールでした
この犬は彼女の犬です。
This dog is hers.
では、「彼女の犬」が「Tomの犬」になったらどうすればよいのでしょうか。
(3a)この犬はTomの犬です。
That dog is Tom's dog.
同じです。このA'sBのルール(
こちらで復習)も、所有格です。「私の本:my book」も、「Tomの本:Tom's book」も「私が持っている本」「Tomが持っている本」というように所有しているという意味ですよね。したがって、名詞が2度目で、その前にあるのが所有格だった場合には、独立所有格にすることも同じです。 A'sBの独立所有格の形は、A'sで終わる形です。
正解は
(3a)この犬はTomの犬です。
That dog is Tom's.
ルールA(不定代名詞one)について
次の例文はどうなりますか。
(3b)Tomの犬はかわいい犬です。
Tom's dog is a cute dog.
dogが2度目ですね。しかし、2度目の名詞の前には所有格がありません。ここで使用される文法が、不定代名詞oneの用法です。
2度目の名詞の前に「cute:かわいい」という形容詞があります。(形容詞とはい・な・の で終わる語が多く、名詞を修飾し補語になるものです)
この例文では、2度目の名詞の前に形容詞がある場合なので、oneを使用します。このoneは、数字の1を意味するoneとは、何も関係ありません。aもsもつきます。
解答は
(3b)Tomの犬はかわいい犬です。
× Tom's dog is a cute dog.
○ Tom's dog is a cute one.
もう1つ見てみましょう。
(5)あれらのリンゴは、とてもよいリンゴです。
Those apples are very good apples.
applesが2度目ですね。その前にあるのは、「good:よい」という形容詞です。名詞が2度目で、その前にあるのが、形容詞なので、oneを使用します。ただし、applesという複数形の名詞なので、oneではなく、その複数形のonesを使用します。
(5)あれらのリンゴは、とてもよいリンゴです。
Those apples are very good ones.
ルールBについて
(3c)私は犬を買います。
犬はとてもかわいいです。
I buy a dog.
A dog is very cute.
2つめの文章にあるA dogが2度目です。ここでは、人称代名詞を使用します。
この2度目の名詞である a dog の前には、所有格もなければ、this、that、these、those、形容詞もないので、ここまで見てきたルール@Aが適用できません。この時に使用されるのが、人称代名詞です。2度目の名詞が男か女か物が一つか、複数かで判断します。ただし、その2度目の名詞がどのような形で使われていたかに合わせて、主格、所有格、目的格に変化させて使う必要があります。2度目の名詞が主語として使用されていれば主格、(〜の)の形で使用されていれば所有格、2度目の名詞が目的語であれば、目的格を使用します。「男が1人はhe、女が1人はshe・・・」どこかで見覚えがありませんか。そうです、疑問文の答え方のところでやりましたね。
例文で確認してみましょう。
(3c)私は犬を買います。犬はとてもかわいいです。
I buy a dog. A dog is very cute.
A dogが2度目ですが、その前には、所有格もなければ、this、that、these、those、形容詞もありません。したがって、ルールBにより、人称代名詞を使用することになります。2度目の名詞であるA dogは物が1つです。そして、A dogは主語として使用していますので、ここでは、主格のitを使用することになります。
正解は
(3c)私は犬を買います。犬はとてもかわいいです。
I buy a dog. It is very cute.
別の例文でも見てみましょう。
(6)私はあなたの妹を知っています。私はあなたの妹の歌が好きです。
I know your sister. I like your sister's song.
2度目の名詞は、「あなたの妹」です。「あなたの妹」は、「女が1人」です。そして、「あなたの妹」「の」という形で使用されているので、人称代名詞
her の所有格であるhersを使用します。
正解は
(6)私はあなたの妹を知っています。私はあなたの妹の歌が好きです。
I know your sister. I like her song.
注意 theについて
先ほどの例文(3c)
(3c)私は犬を買います。犬はとてもかわいいです。
I buy a dog. It is very cute.
ですが、
I buy a dog.
The dog is very cute.
とすることも可能です。
英文では、1つの分用の中で、同じ名詞を2度使用することは原則としてできません。独立所有格や、不定代名詞oneや人称代名詞などを使い分けていく必要があります。
しかし、同じ文章ではない
新しい文章の中であれば、同じ名詞をそのまま使用することも可能です。その場合には
名詞の前にtheをつけなければなりません。 日本語でいうと「その」になります。
ここで、theについてご説明させていただきます。
theを使う場合
@1度出た名詞を表す場合。
A形容詞や序数詞などで修飾されることによって、その名詞が限定できる場合
Bその場の状況や環境などからその名詞を限定できる場合
@1度出た名詞を表す場合とは、名詞が2度目の場合のことです。
(3c2)私は犬を買います。(その)犬はとてもかわいいです。
I buy a dog.The dog is very cute.
1度、「犬」という名詞が出ています。どの「犬」か特定できます。日本語でも「その」という言葉がつけて使うのが普通です。
A形容詞や序数詞などで修飾されることによって、その名詞が限定できる場合
(7)彼女は背が高い女の子です。
「背が高い」というだけでは、「背が高い女の子」は何人でもいるでしょうから、1つには限定できません。しかし、
(8)彼女は世界で最も背が高い女の子です。
となった場合、「最も背が高い」と修飾されていれば、その女の子がどの女の子かは特定できます。この場合には、theを使用します。なお、「最も背が高い」という文法は最上級という文法になります。また、別の本でご説明できればと思います。
なお、この場合のtheは「その」という日本語には訳せません。
Bその場の状況や環境などからその名詞を限定できる場合
その場の状況などから、その名詞が明らかな場合です。例えば、
(9)私は公園でテニスをします。
I play tennis in the park.
と言った場合、「どこか家か学校かの近くの公園なんだろうな」ということがわかります。
別の例文で、aとtheの違いを見ます。
私は、医者に勧められたので運動しています。
私は1度も医者にかかったことはない。
上の文章では、運動を勧められたのは、たぶんかかりつけの医者でしょう。theをつけます。下の文章では、どの医者か限定はできません。一般に「医者」というものにかかったことがない、という意味でしょう。aを使います。
不特定の1つの名詞にはa、特定できる名詞にはtheと覚えておきましょう。
もう1つ見てみましょう。
(9a) I bought this book in a town.
(9b) I bought this book in the town.
「 bought 」は「買った」という一般動詞です。過去形の話は今はしません。(9a)も(9b)もどちらも「私はこの本を買いました。」になっています。異なる部分は、「 in a town 」か「 in the town 」です。
a は不特定のもの、theは特定されているものという違いから、以下のように、この2つの文章には違いがあることがわかります。
「 in a town 」は、「不特定のどこかの町」を意味するため、(9a)の文章の意味は、「私は、(名も知れないどこかの)ある町でこの本を買った」となり、この(9a)の文章の話し手も聞き手も、「どの町で買ったのか」は興味もなく、問題にもなっていません。
一方、「 in the town 」は、「特定できる町」を意味するため、(9b)の文章の意味は、「私は町でこの本を買ってきた」となり、話し手も聞き手も、どの町のことを言っているのかがわかる文章となります。