HALF AND HALF JOURNAL

HHJ

仮面について　　　ギャルリー

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

SUR LES MASQUES 仮面について

☆リヴァー・ユートピア・チームは、1993年真夏の米代川ドキュメンタリーの撮影で水源の中岳に登ったとき、廃鉱の下流で白い泡を見た。その分析から、鹿角地方に伝わる有名な二つの伝説〈だんぶり長者〉と少し下流の〈錦木塚の悲恋〉が表面的には無関係を装うが、実は銅の発見と銅製錬による鉱害を背景にした出来事の前編・後編ではないかという疑問が浮かんだ。それと同じ構造の神話がカナダ北太平洋岸のツィムシアン族にある。

■　レポート

仮面について　

ギャルリー　35　　　

狭(せま)の里　　　　　　　　

冷水川　

高市の合流地点前から見る上流

Filming;2015.10.27

間瀬川

合流地点前の小橋

Filming;2013.11.9

☆蘇我稲目の父は高麗(こま)というが、別名は馬背である[1]。馬背打(ませうち)という川が八森にあるから、蘇我馬背(ませ)と読んでいいかもしれない[2]。古事記と日本書紀には不存在だ。

馬背は、馬の背という漢字からメッセージが明白である。これについてはすでに〈クルマンタ周辺散歩　Q&A　[8]〉で分析した[3]。小豆沢の大日堂舞楽では馬の背はご神体の枯れ枝がある場なので、金銀財宝の恵みがある反面、善と悪を分ける危険な場であると信じられている。

今の間瀬川は狭いと書く狭の里が語源だろう、と〈Missing in Actionが付く女 〉で考えた。狭い川と書く狭(せまの)川がいつか瀬間川、そして、無意味に近い間瀬川に変化した可能性がある。それから、間瀬は深いメッセージを持つ大日堂舞楽の駒舞の馬背(ませ)とダブル・イメージになる。とはいえ、馬背川と書かれた例はない。[4]

しかし、別の見方もある。大日堂舞楽の駒舞でご神体が乗る馬の背に起源があるという見方だ。なぜ他の川でなかったか、という問題はあるが、馬背川が間瀬川に変化したのは、よくあるようにただ畏れ多いからだろう。大日堂舞楽は狭の里より2世紀後718年に最初に演じられた。

それが蘇我高麗の別名と関係がないと考えることはできないだろう。

馬背は鹿角花輪に起源があって、蘇我一族の歴史を浮かび上がらせる。

蘇我馬背は6世紀前半、その地方に縁が深い継体天皇に仕えた。父親の蘇我韓子(からこ)は465年新羅との紛争のとき落馬して亡くなったという。田道将軍と同じように？この落馬には銅製錬にかかわる哀れなメッセージがある。冗談に響くが、跡を継いだ蘇我馬背はどんな活動をしたか、記録が残らない。しかし、祖父の満智(まち)が武内宿禰の孫で雄略天皇の朝廷の財政を管理していたので、地位が高かっただろう[5]。蘇我馬背は小豆沢大日堂の歴史に登場しても、不思議はない。

☆

Updated 2019.9.13

[この欄はときどき書いています。]

1紀氏家牒

2 おがらの滝; 菅江真澄

3クルマンタ周辺散歩　Q&A　[8]　

4〈Missing in Action〉が付く女 - A

5 wikipedia

▼蘇我稲目の目

▼米粒とアユ釣り伝説

List 一覧; 仮面の古いストーリー

■　ダブル・イメージの実例　A B C

＊　引用その他の利用については著作権法と国際法を

遵守してください。

＊メイルによる質問には丁寧に答えたいと思っています。

仮面について　

ギャルリー　34　　　

　水晶の女王　　　　　　　　

軍(いくさ)森の小橋から見た諸助山

Filming;2018.10.23

☆諸助(もろすけ)山はクルマンタ山の南裾を流れる豊真木沢川の水源で、石英閃緑ひん岩の山である。無色透明な石英つまり水晶が採れた。大湯ストーン・サークルで見る石英閃緑ひん岩は、諸助山を水源とする安久谷(あくや)川からクルマンタ山の北の大湯川に流れてきた。水晶もあるはずではないか？縄文人は神秘的な水晶に関心を持たなかったのか？撮影レポートにそんな疑問を書いた。真実は、〈女王的な存在の水晶が石英閃緑ひん岩の草色の石を取り巻き連として選ばせたにちがいない。〉[1]

リヴァー・ドキュメンタリー撮影のあと、参考資料を探した。ウェッブサイトにクルマンタ山とその天辺にある本宮神社に関する探索記事があった[2]。ぼくは神社の内部を見れなかったが、その記事には内部の写真がのっていた。拝殿に玉が2個置かれているのが見えた。透明な水晶玉と赤紫の雲模様の玉。奥に小さい円い鏡あるいは銀色の玉が2個。その奥の両側にオベリスク型の透明な柱が2本。エキゾチックなインテリアだ。二つのストーン・サークルとクルマンタ遺跡は別々の存在ではなくて、一つの構図(構造)に入れて見なければならない。

透明な水晶玉は太陽のメタフォールだろう。言い伝えから考えれば、目の神様である。雲模様の玉は月か？撮影レポートを見よう。

〈本宮神社は西向きである。前庭にはゆがんだストーン・サークルのような跡が二つある。探査データによれば、神社の礎石を中心にした半円形の溝が波紋のように7本埋もれている。これは天動説の太陽系惑星を想い出させる。 [3　探査データ図]

溝は玉をころがす軌道のように造形されている。本来、紀元前3世紀後の続縄文時代には7本の軌道は円を描いていただろう。頂上の南北が削られたにちがいない。

これはユーラシア大陸とのリンクを暗示する。シベリアのオホーツク海沿岸に住んでいたラムート族のホッケー伝説は姉妹と一本足の女が季節を超えて争う地球的なスケールのゲームだが、金のボールは月に飛ばされ、鉛のボールは空に打ち上げられて太陽になる。最後に銀のボールが幸せにする。この伝説では金銀銅のメダルが金銀鉛のメダルに変わっている。[4]

☆

Updated 2019.6.12

[この欄はときどき書いています。]

1リヴァー・ドキュメンタリー撮影レポート ;

草木根市川　豊真木沢川の遠巻橋から下流

2 みちのくあれこれ７

3 リヴァー・ドキュメンタリー撮影レポート ;

草木根市川　クルマンタ山

4メングンとヒアタクと海に住む女

▼仮面について~ギャルリー ;　29　目の神様

▼鹿角市の〈世界級の歴史文化資源〉コースに欠けていること

仮面について　

ギャルリー　33　　　

　　　　　五社神　五城　五十目　　　

小枝指館跡

岬の先端　第1の館

Filming;2013.11.9

南側からの眺め

☆神功皇后の狭城盾列陵(さきのたたなみのみささぎ) は五社神(ごさし)古墳であると公式に言われている。五社神は小枝指(こえさし)館の五つの館から連想して表記のとおり五つの神社がある神という意味だろうと〈14　神秘的な小枝指〉で考えた。盾を社という漢字に変えないで五盾神か五館神、あるいは五城神と書けば、古事記と日本書紀の狭城楯(盾)列陵とのつながりが消えない。なぜそう名づけたか？この五社神は、映画界の五社協定や映画監督の五社英雄を想い出させて、ときどき思考の邪魔になった。

偶然、日本書紀の欽明天皇5(544)年に五城(ごさし)があるのを見た。新羅領久礼(くれむれ)山の五城はその名のとおり五つの城で、元は任那百済領だったという。五城と似たような意味の五社に変えたらしい。社は、神社の社だが、土地の神を祭ることやその祭り、土地の神を同じくする地縁集団という意味がある[1]。軍事的な性格はない。海賊女のように戦った神功皇后を家庭的な女神に仕立て上げようとしたのか？

五社神はいつ古墳に名づけられたか、明らかでないが、後円部の頂上にあった祠に〈五社神〉と記されていたということだ[2]。この祠は現存しない。しかし、石造りの祠はギリシアのアポロン神殿などのミニチュアに文化設計論と機能が似ている。言い換えれば、小さい神殿をつくり中に金銭を納めることだ[3]。祠の消滅には権力の影を見る。

それは別にして、五社神は予想もしないネットワークを持っていた。秋田県の五城目町、男鹿半島の五社堂、伊勢神宮のある五十鈴(いすず)川。五城目は秋田と北秋田地方を結ぶ山間の近道の途中にある町で、大館では〈ごじょうのめ〉と発音していた。あるのは山城一つで、中世的な館(たて)だった。室町時代末期の天正年間、安東一族の内紛のあと藤原内記秀盛が支配して、名前を五十目と変えた[4]。発音はどうだったか、分からない。しかし、目は目の神様というメッセージである[5]。目の神様が本質なので、そのアングルから見れば、十は数字でなく銅製錬の白熱光線を表現する指示記号になる。これは俗世間では知る人がいないから、十は、キリシタンが増えた16世紀末キリスト教の十字架と思われただろう。

☆

Updated 2018.10.12

[この欄はときどき書いています。]

1 　ウィキショナリー

2　wikipedia

3 　石造りの祠からギリシアのパルナッソスへ

4 　日本の城がわかる事典HP

5　仮面について~ギャルリー ;　29　目の神様

▼仮面について~ギャルリー ;　14  神秘的な小枝指

                                   15  小枝指館とアマテラス

                                   16  文字を書く手

仮面について　

ギャルリー　32　　　

　羊の蹄と黄金の羊毛　　

羊の蹄型の岩

きみまち阪

Filming; 2018.5.1

日詰集落　神明社

Filming; 2018.6.16

☆日詰神明社はいつごろ創建されたか？伝承がないが、近くにある独鈷(とっこ)の大日堂は5世紀の創建と言い伝えられている。継体天皇の時代である。この地域の人間の歴史は非常に古い。金銀銅の鉱物資源があったからだ。

日詰神明社の入口の上に金色の注連縄(しめなわ)が張られている。これには三つの房飾りがある。羊毛のイメージが想い浮かぶのは、安倍比羅夫将軍の遠征のとき後方羊蹄(しりへし)という地名が出たので、羊の蹄について考察したあとだから、自然である。その際、蹄は米代川上流の比内町日詰(ひづめ)という集落の地名と関連付けられた。発音は同じだが、その他には比内地方で戦前羊毛業が盛んだったという事実しかなかった。しかし、日詰神明社の金色の注連縄にリンクした。

それはギリシア神話の有名なイアソンの遠征に似ている。50人乗りのアルゴーの造船と危険な航海、黒海の東の地方コルキスで黄金の羊毛を奪い取る冒険。これはヘラクレスが途中で離脱してトロイア戦争に参加したというエピソードから紀元前1250年ごろと考えられる[1]。しかし、トロイア戦争のストーリーにはイアソンとアルゴー船は出ない。船のドラマと言えば、オデュッセウスの漂流である。

二つの造船遠征物語の類似は偶然なのか？米代川の場合は鉱山に関連する比喩的なメッセージもあるが、実際に遠征のための船を建造した可能性がある。日本書紀は省略しただけだろう。

類似は、列島にギリシア神話の愛好者がいたとしたら、不思議ではない。日本人とはかぎらないが、イアソンとアルゴー船のストーリーで米代川水系に着色したと考えていい。日本書紀に記された後方の羊の蹄とは米代川の支流犀川の流域にある日詰地域を指示していて、安倍比羅夫がそこに行ったら、日詰にはすでに神社と黄金の羊毛があったかもしれない。これは火詰めと解釈することもできるので、そこを流れる炭谷川と連関する。炭は2本横並びにすれば、羊の黒い蹄のメタフォールになる。　　　　

☆

Updated 2018.7.14

[この欄はときどき書いています。]

1　ヘロドトス説

▼羊と蹄(ひづめ)

▼神話どおりに/中大兄皇子の計画/モニュメントの価値

仮面について　

ギャルリー　31　　　

　　天の岩船の創造　　　　

きみまち阪

小繋集落から

Filming; 2017.10.27

七座神社前から

Filming; 2017.9.4

☆きみまち阪が岩船であるとは夢にも思わなかった。〈仮面について〉のエセー以来の考察をまとめてみよう。

645(大化元)年、中大兄皇子は大化改新のクーデターで蘇我入鹿と蝦夷など蘇我一族を権力の中枢から追い出して、次に米代川流域の蘇我一族の支配権を奪い取ろうとした。蘇我一族が銅鉱山を開発経営していた。しかし、蘇我一族と協力関係にあったエミシの抵抗勢力が残っていた。

648(大化4) 年、中大兄皇子は越国に磐舟(いわふね)柵を置いて、北方の前線基地とした[1]。10年後の658(斉明4) 年、安倍比羅夫将軍を秋田と津軽の遠征に派遣した。米代川のエミシの首領恩荷(おんが)は抵抗しないで朝廷に帰順することを誓った。米代川の他の地域では反抗が起きたようだ。翌年、比羅夫は大船団を率いて再遠征した。そして、地元の神に船などを奉納して、後方羊蹄(しりへし)に政庁を置く。羊の蹄に似た巨岩がある今のきみまち阪の地域と考えていいだろう。

磐舟という地名は、現在の岩船町地域に付けたのではなかった。それは、将来支配する計画の目的地を表わすために名づけられた。呪術的な効果を期待したネーミングだったかもしれないが、それ以上に鉱山の位置を秘密にするために絶対に必要なことだった。記号論的に見れば、指示記号(出発地　磐舟という表示がある港)と指示対象(目的地　表示された現地)の密着である。

目的地は、米代川と藤琴川の合流地点にある。岩船という地名は天然銅があるその岩山、今の二ツ井町きみまち阪にふさわしい。遠望すれば、両側に絶壁の縁がある巨大な船のフォルムで天の岩船を連想させたかもしれない。いつごろできたか、分からないが、蘇我一族が天然銅の露天掘りをしていたようだ。あるいは銅精錬も。比羅夫がながめたときには巨大な舳先の船に似ていただろう。

安倍比羅夫は地元の神に船を奉納した。船は銅鉱山開発と経営の象徴であることは〈仮面について〉で明証的に書いた。これは幸運を祈るか感謝する行為だろう。米代川の場合、その船は目の前にそびえる岩の船で、斉明天皇と中大兄皇子は、神話的な天の岩船を完成させるために造形の仕上げをした。

新潟県の岩船町地域には船型の岩の遺跡がない。そう名づけられた巨岩もない。とはいえ、石船神社の例大祭である岩船祭りでは〈神様が乗ってきた舟〉をイメージしたと思われる明神丸が岸見寺町の山車の上に飾られて、行列の先頭を行く。伝説では岩船港から安倍比羅夫将軍の船団が出発した。

☆

Updated 2018.4.13

[この欄はときどき書いています。]

1　日本書紀

記号論

▼List 11 仮面について;　

黒・白・赤、1；5　［６］　小豆沢大日堂五大尊舞　小掛のキセル人形

▼List 11 仮面について;　

よい踊りを盗む［3］エミシが最初に出る場面

よい踊りを盗む［4］蘇我蝦夷と帰順集団蝦夷のダブル・イメージ

▼List 2　有栖川宮の歴史　有栖川宮とアリス　;　

t用明天皇のアポリア

pユーラシア映画のような開化と大化

▼神話どおりに/中大兄皇子の計画/モニュメントの価値

▼羊と蹄(ひづめ)

銅製の舟

▼List 11 仮面について;　理想的な表現［C］

▼　狭城と弘前

仮面について　

ギャルリー　30　　　

　　狭城と弘前　　　　

平川

平川橋から秋田県境の山々を見る

右　弘前市　左　藤崎町

Filming; 2013.10.29

☆アロマ―草の城の神社は、クルマンタ遺跡とリンクするけど、草城は小枝指(こえさし)集落にある狭い城という意味の狭城(さき)とのだじゃれ関係もあるんですか？

編集長―そうだな。〈長谷川歌野という名前から思うこと〉という対話編で夢前(さき)川にかかる歌野橋について話をしたな。それが何となく弘前の地名につながり、由来を考えたら、あの辺の地形が広い岬なんだ。岩木川と平川のあいだに広がる河岸段丘だ。しかし、となりの藤崎町とちがって弘前になぜ前という漢字を当てたか、疑問だった。前があれば、後があると思うね。平川の源流をたどれば、峠の南は小坂と鹿角花輪だ。これは古い街道で、今でも津軽と鹿角花輪と岩手をつないでいる。鹿角花輪は昔から地下資源をめぐり対立関係が複雑で不安定な地域だった。江戸時代の初期、津軽藩の2代目キリシタン領主信枚(のぶひら)が城を建てたとき、それが背景に浮かばなかったかな？南部藩から自立した津軽と南部藩の鹿角花輪の古い歴史的関係だ。弘前の名は、徳川家康に仕えた天海という坊さんが命名したそうだ〔1〕。神道についてもよく知ってる。

小枝指館跡の先端から

物見坂の風張(かざっぱり)台地を見る

ストーン・サークルとクルマンタ山がある

Filming; 2013.11.9

特派員―その歴史的関係というのは？

編集長―小枝指(こえさし)集落の七つの館(たて)にかかわることだ。狭い城と書く狭城(さき)かもしれないと考えた遺跡だ。津軽から見れば、狭城はその地域の古代の地名狭(きょう)の里にある城だから、広く象徴的にクルマンタ遺跡のことをも暗示する可能性がある。狭城と弘前は相関的だというメッセージがある。あとは〈仮面について~ギャルリー〉を参照にしてもらいたいね。

アロマ―弘前は広い狭の城というメッセージね？

編集長―事実はそう残っていない。鹿角由来集によれば、16世紀後半、小枝指の領主は秋田の安東愛季(ちかすえ)に追い出されて津軽に逃げた。大湯と根市川流域も一種の支配圏だったらしい。

☆

Updated 2017.12.5

[この欄は暇を見て書いています。]

1 wikipedia

草の城の神社

▼　クルマンタ遺跡と草城神社のリンク

▼　クルマンタ周辺散歩　Q&A

歌野

▼　List 10 長谷川一族の風景; 長谷川歌野という名前から思うこと　G

■　シリーズ　1　2　3 4 5　6　7　8

仮面について　

小掛集落の魔除けキセル人形

ギャルリー　29　　　

目の神様　　　　　　

☆本宮神社の起源の2番目は、平安時代にさかのぼる。奥州の豪族安倍貞任が朝廷と戦っていた11世紀、家来の本宮徳次郎という医者がクルマンタ山の頂上に薬師堂を建てた〔1〕。どこで見たか忘れたが、目の神様として崇められた。目の病気をなおす魔力があったらしい。

米代川流域には似たような言い伝えが他にある。きみまち阪のふもと小繋で生まれ育った母から聞いた話だが、二ツ井の対岸の集落仁鮒(にぶな)には立派な眼医者がいたという。きみまち阪には加護山製錬所が江戸時代から明治初期まで存在していた。煙の害がひどくて仁鮒の奥の小掛(こがけ)では魔除けのキセル人形が集落の出入り口を守った。それが眼医者の役割を果たしたと考えるべきだろう。

立派な眼医者の存在は製錬の煙という原因を暗示するメッセージになる。小掛集落では眼医者がタバコの煙を吐いているが、悪役ではない。指示記号と指示対象が密着した芸術作品である。

クルマンタ山

　クルマンタ山の目の神様も煙害の隠れたメッセージかもしれない。住民は巧妙に大気汚染を後世に言い伝えた。しかし、有毒な煙はどこから出たのか？これは歴史の記録がないので、目の神様を別のアングルから見なければならない。〈目のフォルムで表わされた神様〉とイメージに変えれば、古代エジプトの太陽神ラーの象徴にリンクする。そういう絵は普遍的である。片目から強烈な光を放って悪い人間を焼き滅ぼす魔力を持つ〔2〕。これは危険な白熱光線を放つ銅製錬のイメージに結びつく。クルマンタ山の頂上に薬師堂を建てたとは、そこで目の神様を製造したということだろう。

☆

1 本宮神社の案内板。今はない。

秋田県神社庁HP

2 wikipedia

指示記号と指示対象

▼　List 11 仮面について; 黒・白・赤、1；5 [4]

▼　List 6 環境サイン/記号問題; 朝の食事

Updated 2017.11.13

[この欄は暇を見て書いています。]

■　シリーズ　1　2　3 4 5　6　7

本宮神社

▼　仮面について~ギャルリー;　23 クルマンタ遺跡と小豆沢大日堂

仮面について　

ギャルリー　28　　　

4集落の能衆の入場

庭場で3回サークルを描く

新しく鳥居を再建するときの

地蔵舞

庭場で

大日堂舞楽

Filming; 2000.1.2

　　　　　　書かれた歴史の争い

☆明暦という元号は後西(後西院)天皇が即位したとき名づけられた。陰暦に対する西洋暦のメッセージが感じ取れる。天皇は明らかに西洋文化の排斥と鎖国に反対していた。西洋文化には日本でのキリスト教とキリシタン文化の歴史も含まれるだろう。これは御府(倉庫)の記録類の副本を作成させた動機ではないか？御所の火災で幸運にも焼失を免れた副本は京都御所東山御文庫蔵書の創設につながり、その土台になった〔1〕。しかし、天皇は反幕府、反仏教の知性的傾向を嫌われて、連続する大災害の責任を取らされた。万治という元号に代えたのは、卍が天下を治めるという宣言である〔2〕。

　とはいえ、徳川幕府と取り巻きは明暦の振袖大火の原因を科学的に推理しなかった。鎖国で知性の退化が起きていたか、僧侶の仏教的な直観あるいは認識で遠い歴史的な出来事に因果関係のリンクをつけたようだ。カタストロフの再発を防ぐにはクルマンタ山の天辺に小豆沢大日堂と同じピラミッド型の屋根の神社を再建しなければならない…それが大日堂舞楽と同じ4集落による共同事業の形式になった。必然的にこれは鎮魂の事業である。遠い過去に何があったか？

想像だけなら、むずかしくない。718(養老2)年、朝廷がアマテラスを祭る小豆沢大日堂を再建して舞楽を上演したとき、その原型であるクルマンタを改変して歴史の闇に閉じこめたのではないか？つまり、階段状の石のピラミッド型祭祀場あるいは遺跡だった巨大建造物を土と植物で蔽いかくしたのではないか？それに並行する政治的事業がある。712(和銅5)年、古事記が完成した。720(養老4)年、日本書紀が完成した。二つの歴史書をほぼ同時に書き綴った理由は、それと無関係でないだろう〔3〕。

☆

1 wikipedia

List 10 長谷川一族の風景;

長谷川歌野という名前について思うこと　E

2　List 11 仮面について~ ギャルリー; 　25 卍と天皇

3　List 11 仮面について ; 黒・白・赤、1 ;5

　

Updated 2017.6.12

[この欄は暇を見て書いています。]

■　シリーズ　1　2　3 4 5　6

大日堂舞楽

▼　List 11 仮面について; 黒・白・赤、1；5

本宮神社

▼　仮面について~ギャルリー;　23 クルマンタ遺跡と小豆沢大日堂

仮面について　

ギャルリー　27　　　

　　　　　　　両国橋~青銅鏡の国の悲劇

ナラの坑木

大館市郷土博物館

大日堂舞楽

本殿前から見た舞台と鳥居

Filming; 2000.1.2

☆明暦の振袖大火の2年後、江戸では隅田川に長さ200m、幅8mの木造の橋が架けられた〔1〕。木材は杉か、と思ったが、明らかでない。この建設事業は大火の反省から計画された。隅田川には千住大橋しかなかったので、大勢の避難民が対岸に逃げられなくて死んだ原因と考えられた。どこまで真実か、疑惑が残るが、徳川幕府は江戸の町の出入り口を増やして橋をもう1本架ける気になったのだった。これは人道主義な配慮というより幕府放火説を消す目的ではないか？

橋はゆるやかな弧を描いて両岸をつないだ。大橋と名づけられたが、やがて両国橋と呼ばれるようになった。隅田川の西の武蔵国と東の下総国を結びつける橋だから、という説明がある〔2〕。しかし、両国というのはきわめて稀な名称だ。大館橋と真中橋が幸運を招くミラー・イメージとして建設されたことを想い出させば、両国橋の本当の由来について考えたくなる。

両という漢字は古くから通貨の単位として使われた。金一両は一両の質量の砂金を表わしたという。字源は天秤にものを下げて釣り合わせている状態の象形文字化で、意味は対をなした二つのものである〔2〕。言い換えれば、ミラー・イメージだ。橋は鉱山の象徴的な表現だから、両国橋には幸運を願う青銅鏡のメッセージがある。

といっても、現実的に青銅鏡と明暦の大火には連関があるのか？禁止された車長持と垂髪が米代川流域のクルマンタ遺跡と髪垂橋伝説にリンクするのを見たあとなので、その疑問は鹿角の小豆沢大日堂で自然に解ける。大日堂舞楽は1500年前の青銅鏡製造のドラマなのである。両国橋の暗示的なメッセージは青銅鏡の国の悲劇だろう。歴史を尊重すれば、古代の二つの国の関係を言い表わしているかもしれない。

　そこでクルマンタ山頂上にある本宮神社を想い出そう。小豆沢大日堂の拝殿と同じピラミッド型の屋根で、天辺に煙り出しのような小さい塔がある。これは両国橋建設と同じ年、1659 (万治2)年に建てられた。

☆

1 国会図書館HP 両国橋　錦絵

2 　wikipedia

　　　　　　　　　　　　　　

Updated 2017.3.8

[この欄は暇を見て書いています。]

■　シリーズ　1　2　3 4 5

大日堂舞楽

▼　List 11 仮面について; 黒・白・赤、1；5

本宮神社

▼　仮面について~ギャルリー;　23 クルマンタ遺跡と小豆沢大日堂

仮面について　

ギャルリー　26　　　

髪垂橋

髪垂橋

Filming ; 2002.10.17

video

乱川　髪垂橋　2002

☆明暦の大火は車長持の他に江戸城大奥の垂髪を禁止した。この理由は振袖を着ていた片思いの娘のヘア・スタイルだったから、だろうか ？しかし、町人は髪を結う習慣だった〔1〕。垂髪と大火のあいだにリンクを付けるのは、妄想に近い。芸術的に炎や煙のイメージに似せたヘア・スタイルはありうるだろうが、自然に垂れた直線的な髪はそんなイメージではない。

垂髪は、大館をよく知っている人には髪垂橋を想い出させる。大館駅の北、釈迦内の坂の下を流れている乱川に架かる橋である。〈かみたれはし〉あるいは〈かみだれはし〉と呼んでいるが、乱川に由来するのか ？

乱川は平穏な流れの小川で、菅江真澄は〈乱橋〉のある風景を描いたが、　　歴史的には髪垂川と髪垂橋が起源に近い。地元に伝わる説明は津軽の唐糸伝説の後編である〔2〕。13世紀後半、鎌倉幕府の執権北条時頼は出家してから昔の愛人唐糸に再会するために藤崎に行くが、唐糸は年老いた自分を悲しんで死ぬ。時頼は墓をつくり、遺髪を笈(背負い箱)に入れて北秋田の釈迦内を通る。橋の上で唐糸の髪が川に落ちた。それは水に沈むことも流れ去ることもなく、怪奇的な髪垂川として残った。乱川に変わったのは黒髪のイメージが銅製錬による煙害などの鉱害を生々しく伝えないようにするためか ？少し南の板子石(いたこいし)の地名は時頼が言った〈いと恋し〉に由来するという。これは唐糸の糸というメッセージでもある。

〈仮面について〉の方法で唐糸伝説を解読すれば、唐糸という女の名前と髪垂のあいだにダブル・イメージが見える。高貴な女性の感性には絹糸と垂れた髪はよく似たメタフォールだっただろう。伝説のストーリーには白髪か亜麻色の髪が合う。白熱光線のメタフォールと考えていい。

　髪の毛のそういう表現は世界的に共通している〔3〕。フランスのロワール河の民話では妖精がサンドリオン(灰娘)に髪を金色に変える櫛と金色の靴と幌付き馬車を贈る。シチリア島の民話では太陽の娘がかまどの中にもぐって出てくると、金色の髪の中から真珠や宝石が落ちた。

☆

　　　　　　　　　　　　　　

Updated 2017.3.8

[この欄は暇を見て書いています。]

唐糸という女

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　唐糸(絹糸)　

　　　　　　　　　　　　　　　　　→白髪

髪垂[橋]　　　　　　　　　　　　　　　白熱光線

＊タブル・イメージ：異質な二つの事物(＝仮象)の同一性・類似・近接・可変・転化・移行を表わす。これが暗示する実体としての現象が、表現するイメージを限定する。

▼　List 11 仮面について; 理想的な表現［C］

■　シリーズ　1　2　3 4

1 wikipedia

2　釈迦内小学校通学路回想HP

藤崎町のミステリースポット　[引用 : 藤崎町公式ホームページ]

北秋田☆まちぶろぐ☆

　　北鹿の伝説と迷信 ; 河田竹治

3　List 11 仮面について〜38 ; 煙と灰と葉　[9]　

List 11 仮面について〜28 ; よい踊りを盗む　[9]

白髪の老人

▼ List 11 仮面について〜ギャルリー ; 2 12、リンゴの樹、ナシの樹

仮面について　

ギャルリー　25　　　

卍と天皇

クルマンタ山の参道の松

Filming;2016.10.16

根市集落の小橋たもとから見る

クルマンタ山

Filming;2016.10.16

☆明暦の振袖大火で万治に改元されたが、この卍というメッセージは仏教の法が支配することを宣言している。大火の背景に仏教とキリスト教の対立があるのではないか？隠れキリシタンが放火したのか？その疑惑を伝える事実はないが、当時の朝廷の内部から真実を語る低い声がする。

第111代の後西(ごさい)天皇は承応3年11月28日（1655年1月5日）から寛文3年1月26日（1663年3月5日）まで在位した。即位とともに明暦に改元された。女御は高松宮好仁(よしひと)親王の娘明子女王。有栖川宮の初代好仁親王がそこに現われるのはドラマチックだ。天皇は和歌と古典などの著作を多く残して、花町宮と呼ばれるようにイメージがいい。しかし、自然の災害が何度も襲いかかり、日付が明らかでないが、伊勢神宮と大坂城、御所などが炎上した〔注記〕。明暦の大火は最大の被害だろう。天皇はその道徳的な責任を負わされて譲位したという。原因がどんな行為にあると言われたか？

後西天皇の前の後光明(ごこうみょう)天皇を見ると、状況が明確になる。在位は寛永20年10月3日（1643年11月14日）から承応3年9月20日（1654年10月30日）まで。後水尾天皇の第4皇子で、島原天草の乱の6年後に即位した。キリシタンの最後の反逆と徳川幕府によるジェノサイドを背景に置けば、後光明天皇の行動が理解される。若い天皇は仏教嫌いで仏教を〈無用の学〉と言った。後光明天皇外記によれば、〈三種の神器が収められた唐櫃を開けて、鏡の他に仏舎利があるのを見ると、「怪しい仏舎利め」〉と言って庭に棄てさせたという〔1〕。釈迦の一片の骨か、明らかでないが、それは神聖さを奪い去る呪術的な魔力を秘めているかもしれないので、天皇と公家にはキリスト教迫害の悲劇との深い因縁が見えただろう。ともあれ、宗教的な精神を傷つけるような横暴な嫌がらせである。反抗したせいかどうか、後光明天皇は21才で亡くなった。後西天皇の時代に荒れ狂った災害と火災は宗教的戦いの現われだったと考えていい。本宮神社の創建についてはどうか ?

☆

　　　　　　　　　　　　　　

Updated 2017.3.8

[この欄は暇を見て書いています。]

注記 ; 2017.4.5

御所の記録類の副本を作成して、焼失を免れる。

京都御所東山御文庫蔵書の起源である。

■　シリーズ　1　2　3

1　wikipedia

▼　List 2有栖川宮の歴史;　キリシタンと朝廷

有栖川宮とアリス

仮面について　

ギャルリー　24　　　

大火で禁止された車

舞楽の舞台と

能衆の帰り

Filming;2000.1.2

宮野平の畑

Filming;2016.10.16

☆本宮神社の起源について調べてみた。

万治2年(1659)に風張(かざっぱり)台地の地元中通(なかどおり)の4村が建てた。宮野平、倉沢、風張、一本木の4集落らしいが、鈴木陽悦が書いたドキュメント《クロマンタ》によれば、戦後その地域には集落がない。写真は畑と自然の風景画である。江戸時代には現在のように集落があったと考えていいのか？ともあれ、4村という記述は意味ありげで小豆沢大日堂の舞楽につながる。大日堂に集合して舞楽を演じるのは周辺の4集落の能衆である。大里、小豆沢、長嶺、谷内(たにない)。

万治2年になぜクルマンタ山の頂上に本宮神社を建てたのか ？一般的に考えて、仏教と結びついた徳川軍事政権の意志が見える。動機はどこに隠れているか 、むずかしい問題だと思ったが、明暦の大火をざっと調べて、ヒントが見つかった。大火のあと、幕府は車長持(くるまながもち)の製造を禁止したというのだ〔1〕。

この大火は明暦3 (1657) 年1月18日から20日まで強風に煽られて江戸の町の大半を焼きつくした。江戸城も燃えて本丸と天守閣、二の丸などが焼け落ちた。約600の神社と寺、約9000の倉庫、約60の橋、約500の大名屋敷が焼けた。焼死者は10万人以上で、無数の貧困者が出た。原因は恋愛説と放火説がある。片思いの若い娘が死んだあと本郷本妙寺で供養のために娘の振袖を燃やしたら、空に舞い上がった。放火というのは幕府が都市改造のために計画した破壊工作。これは政治に対する不信と憎悪の現われだろう。隅田川に架かる橋が千住大橋1本だけだったので、逃げられなかった犠牲者が大勢いた。幕府の都市計画は軍事計画だった事実が知れる。大火の反省から幕府は万治2(1659)年両国橋を架けることにした〔2〕。

車長持は、町民が家財道具を入れておく木造りの大箱に木造りの小さい車を付けたものだが、大火のとき大混雑を起こして避難を妨げたという。車長持の製造禁止で町民は災害のとき家財道具を運ぶのがむずかしくなった。人道主義的な禁止ではない。本当の理由は何か？武家には伝統的に車に対して畏怖のような奇妙な観念がある。天皇と公家が牛車を愛用することと対照的に武家は馬と駕篭を使う。車に対する奇妙な観念は迷信だが、これは車の歴史的なメッセージを言葉で表わせば、分かることだ。

☆

　　　　　　　　　　　　　　

Updated 2017.1.7

[この欄は暇を見て書いています。]

■　シリーズ　1　2

1　 wikipedia

2 日本百科大事典　小学館

wikipedia

両国橋　錦絵 　国会図書館HP　　

車のメッセージについて

▼　面、Men、車、クルマンベ、リンゴと女森

▼　クルマンタ山ふもとのアズキ

撮影レポート

▼　草木根市川のページ　2016

▼　米代川ドキュメンタリー撮影レポート　1993　Report　3

悲劇的な歴史

▼ List 11 仮面について

▼　冷水間瀬川のページ

▼　怪現象シアター

仮面について　

ギャルリー　23　　　

クルマンタ遺跡と小豆沢大日堂

本宮神社

Filming; 2016.10.16

小豆沢大日堂

718年行基が再建したという

Filming; 2000.1.2

グーグル地図

☆クルマンタ遺跡の撮影に行こうと思ったのは、地図の航空写真でクルマンタの森が正方形に見えたからだった。4面の三角形はエジプトのピラミッドを連想させる。しかし、それはすぐフェイド・アウトして継体天皇が523年創建した小豆沢大日堂の映像になった。クルマンタ山のほぼ南16kmの位置にある。その拝殿の屋根がクルマンタ山と似ている…確かにそうだった。2000年の正月撮影した映像で見ると、底辺の角度が約20度の二等辺三角形で、天辺に煙りぬきの換気塔がある。これは続縄文時代のクルマンタ遺跡を木造で否定的に表現した建築ではないか？ 古事記と公式の歴史書日本書紀の構図に並行していないか〔1〕？

しかし、1993年米代川ドキュメンタリー撮影と同じ年に行なわれたクルマンタ遺跡の科学的調査報告を想い出した〔2〕。CGによる復元イメージは平面図が正方形でない。角が流線型の長方形で南西向きの正面はスキー場のゲレンデのようだが、原型は10m間隔の階段状斜面である。

ところが、10月現地に行ってゲレンデの端の参道を上がると、頂上にある本宮(もとみや)神社の赤い屋根が目に映った。それはトタン葺きだが、大日堂の屋根のように見えた。天辺に小さい塔があることも似ている。やはりクルマンタ遺跡と大日堂には何か連関があるにちがいない。

　本宮神社は約5mの幅で屋根の裏側の庇は少しだけ凸型である。大日堂ではアマテラスの青銅鏡を置く本殿に連なるが、裏側の庇のある崖には傾斜のゆるい細長いテラスが突き出ている。本宮神社の屋根のデザインは遺跡の最初の原型を写したのか？あるいは、大日堂の拝殿の屋根を模倣したのか？ともあれ、そこにはクルマンタ遺跡と大日堂の構図が暗示されている。

　本宮神社の起源は三つある〔3〕。社伝によれば、万治2年(1659)に地元中通の4村が建てた。阿倍貞任一門の本宮徳次郎が薬師堂を建立したという別伝もある。言い伝えでは安土桃山時代の慶長3年(1598)に創建された。明暦の振袖大火で改元した万治には卍のメッセージが隠れている。これは大火と仏教の関係を考えさせる。

☆

Updated 2016.12.13

[この欄は暇を見て書いています。]

1　List 11 仮面について; 黒・白・赤、1；5［4］

黒・白・赤、1；5［7］

2　鈴木旭　編　1994年発行　新人物往来社

　　日本環太平洋学会黒又山合同調査団による調査

▼　草木根市川のページ　撮影レポート

▼　撮影レポート ; クルマンタ山　2016

video 地中レーダーのデータ　復元イメージ　撮影ポイント

3 秋田県神社庁HP

シリーズ　no.1

▼　クルマンタ遺跡のクルマ

遺跡と周辺の地名

▼　クルマンタ山ふもとのアズキ

撮影レポート

▼　草木根市川のページ　2016

▼　米代川ドキュメンタリー撮影レポート　1993　Report　3

悲劇的な歴史

▼ List 11 仮面について

▼　面、Men、車、クルマンベ、リンゴと女森

▼　冷水間瀬川のページ

▼　怪現象シアター

仮面について　

ギャルリー　22　　　

クルマンタ遺跡のクルマ

クルマンタ山

南側を流れる豊真木沢川の橋から見た

☆ 10月16日クルマンタ山の撮影に行った。最初に案内板を見ようと思ったが、なかった。《クロマンタ・ピラミッドの謎》には案内板に語源がアイヌ語の〈クルマクタキタダ〉であると記されていたとある〔1〕。科学的調査に参加した当時AKT秋田テレビのアナウンサー鈴木陽悦がシンポジウムで話した。しかし、〈クル〉が単語の最初に付くことはないので、〈クルマクタキタダ〉の意味は明らかでないようだ。HHJが解読したとおり〈クルマ〉と分節して日本語の車の意味に取れば、クロマンはクルマンのなまりの可能性が強いことが分かる。となりの岩手県七時雨山には車之走 (くるまのはしり) 峠がある。車あるいは車輪は視覚的に銅製錬の白熱光線のメタフォールで聴覚的に雷のメタフォールである。そのイメージは鉱山とそれに関連する出来事の象徴として使われる。クルマンタはその種の遺跡だろう。

CG復元予想図

北側から見た

《クロマンタ・ピラミッドの謎》

1993年に民間グループが行なった科学的調査は地中レーダー探査で復元シミュレーションを製作した〔1〕。クルマンタ山が続縄文時代に土を固めてつくられた階段状の祭祀遺跡であることが確実になった。標高280.6m、ふもとから頂上までの高さ約80m、南北の長さ約250m、東西の長さ約500m。それが鉱山とどんな関係があるか、まだ明証的でない。しかし、大湯ストーンサークルの石は縄文時代に安久谷 (あくや) 川にあった。大湯温泉の少し北の来満橋のたもとで大湯川に合流する安久谷川は、古代から20世紀までさまざまな鉱物資源の宝庫だった。クルマンタの祭りで燃える石の硫黄が危険な青い炎を上げる魔術的なイメージが浮かぶ。

車の語源は大陸のどこかにあると思う。クルマンタは、漢字で書けば、車田か？田には製錬炉から溶銅が流れ出る幸運な瞬間を表わす十字が見える。クルマンと起源が共通するような言語をサーチしてみた。

Kluman & Balter　Bakery Ingredients Suppliers UK　/　Danny kluman　/　kleman　/　Kourmanbek Bakiev　/　Kaci Kullmann Five　 /　VW Volkswagen Karman Ghia ---etc.

☆

Updated 2016.11.12

[この欄は暇を見て書いています。]

1　鈴木旭　編　1994年発行　新人物往来社

　　日本環太平洋学会黒又山合同調査団による調査

撮影レポート

▼　米代川ドキュメンタリー撮影レポート　1993　Report　3

▼　草木根市川のページ

▼　怪現象シアター

遺跡と周辺の地名

▼　クルマンタ山ふもとのアズキ

悲劇的な鉱害

▼ List 11 仮面について

▼　面、Men、車、クルマンベ、リンゴと女森

▼　冷水間瀬川のページ

仮面について　

ギャルリー　21　　　

物見坂の橋

物見坂橋

十和田南駅周辺

写真集

☆去年の秋、10月27日冷水間瀬川の撮影でJR花輪線十和田南駅に降りて、来満(くるまん)踏切から物見坂を通った。これはリンゴ園と大湯ストーンサークル、クルマンタ山への表通りである。撮影レポートに書いたように今まで物見坂を通らなかったのは不思議だ。2005年開通した錦木バイパスに架かる物見坂橋から毛馬内と花輪の街が見える。物見という古い名が表わすとおりの地形である。　　　

物見の主な意味を調べると、〈物事を見ること。見物すること。外を見るために設けた窓や穴。牛車の左右の立て板に設けた窓。壁や編み笠などに設けた穴。見る価値のあるもの。〉〔1〕

物見窓という能の用語が関心を引いた。橋懸かりの奥の揚げ幕の裏にある鏡の間の連子(れんじ)窓のことで、舞台の様子を見る。鏡の間には姿見の鏡がある。役者は登場する直前そこで面(おもて)をつけ、気を統一するという。橋を渡ることは象徴的に現世への蘇りである。

世阿弥の《錦木》が想い浮かぶ。十和田南駅のすぐ西の錦木塚がドラマの現地である。古代と中世には米代川と大湯川、その合流地点にある錦木塚を見渡すことができたにちがいない。物見坂にも橋が架かったが、地名の起源は都でも有名な悲恋伝説と何か関連があるのか？この疑問には《錦木塚伝説の変容》が答えている〔2〕。〈塚のほとりに現れる美しい女の機織り姿は、かえって遠く離れた物見坂からだけ見える。〉6世紀、継体天皇の時代に生きたヒロインの亡霊が目に映るという映画的現象のスポットだった。

物見の本質的な意味は生と死の境で見ることである。物は、大物のように異常なほど物凄い存在。銅製錬の悲劇的なイメージが起源だろう。物見坂周辺には橋の向こうに縄文時代から平安時代までの遺跡が残り、その南側には奈良時代の正倉院御物と同じ鉄剣が発掘された枯草坂古墳がある〔3〕。遺跡と終末期古墳には位置を示す標示板さえもなく、インターネットでの行政機関その他の説明はいい加減である。市町村の歴史を広く伝えることに責任がないのか？

☆

Updated 2016.4.11

[この欄は暇を見て書いています。]

1　大辞泉

2　鹿角市広報　連載　安村二郎

3　鹿角の歴史案内; 柳沢弘志

悲劇的な鉱害

▼ List 11 仮面について

▼　面、Men、車、クルマンベ、リンゴと女森

▼　冷水間瀬川のページ

仮面について　

ギャルリー　20　　　

大鰐と阿仁

平川から見た

あじゃら山大鰐スキー場

Filming; 2015

☆平川は比羅夫川の変化か？四国の金刀比羅宮(ことひらぐう)には同じ漢字の比羅があるが、これは安倍比羅夫の時代よりも半世紀ほど遅い8世紀初期の大宝のネーミングである。神仏習合で金毘羅(こんぴら)権現とも呼ばれる。毘は比の上に田の字を乗せた漢字にすぎない。〈仮面について〉の分析から考えると、比はダブル・イメージあるいはミラー・イメージで青銅鏡のメッセージがあり、田は銅製錬の炉のメタフォールである。したがって、毘という漢字は製錬炉から取り出した銅で青銅鏡を製造したことを表わす。毘と比はほとんど同じ意味である。藤崎町の〈ぴらじょう〉の歴史に光が当たる。真っ平(まっぴら)の語源もその辺にあるだろう。

金毘羅権現の実体はインド起源の宮比羅(クンビーラ) つまり鰐の水神で、そのイメージは津軽の平川流域にある大鰐という古い温泉町に反射する。実際、スキー場のロゴ・マークには漫画風のワニが付いている。やはり平川は安倍比羅夫と深い縁がありそうだ。ただ、伝説は坂上田村麻呂に関することだけ。

阿仁川と阿仁合

Filming;2003

大鰐という地名は他に見当たらないが、南の秋田県北部の阿仁を連想させる。どんな意味か、人の想像力を刺激するらしく、さまざまな由来説がある。2004年リヴァー・ドキュメンタリー撮影で阿仁川源流に行ったとき、やっと津軽の大鰐と結びついた。比立内駅の近くに大阿仁という小学校があるのだ。大阿仁は地名にない。小阿仁というのは阿仁川の支流で、秋田と北秋田の近道がある。阿仁合というのは地域の古い呼び名だったが、今は内陸鉄道の駅である。大阿仁は小阿仁川とのダブル・イメージで大阿仁川でなかったか？悲劇的な鉱害の連続で鰐のイメージに重なるのを避けて単に阿仁川と変えたのではないか？想像力が空回りするような話だ。しかし、カヌー競技が何年も行なわれたあの荒い波はワニの背中に似ている。大鰐川だったかもしれない。これは大鰐の町とのダブル・イメージになる。朝廷から見れば、同じ地域にある二つの鉱山である。

☆

Updated 2015.10.12

[この欄は暇を見て書いています。]

ミラー・イメージ 〈比〉

▼　List 5 東京駅暗殺事件; 10 前編　死んだ4月4日という日付

▼　List 11 仮面について~ ギャルリー; 12 橋の名の表示を見て

▼　List　2　アリスと有栖川宮; d f w

ダブル・イメージ 悲劇的な鉱害

▼ List 11 仮面について

仮面について　

ギャルリー　19　　　

比羅夫の川

藤崎の平川橋上流と源流の山々

☆平川は秋田県と青森県の山々に水源がある。岩木川との合流地点まで約43kmで、支流ながら流量が多い。流域には温泉郷や国際的な大鰐スキー場、リンゴ畑がある。子どものころから見なれた川だったが、リヴァー・ドキュメンタリーの撮影ではじめて平川という名前を知った。〈ひら〉というのは素っ気ないが、2006年町村の合併で平川は市の名前になった。忘れられがちな平川を中心にする意図があったようだ。普通なら固有名詞の平を付けるだろう。しかし、平とは何のことか、説明が見つからない。

　発音から安倍比羅夫将軍の船団が遠征に来た歴史が浮かんだ。658年、659年、660年、秋田と津軽、北海道に足跡を残したが、日本書紀には岩木川と平川らしい地名は出ない。しかし、鉱山開発が目的だから、公表できないことが多い。平川はその伝説的な記念として名づけられたか、比羅夫川の変化かもしれない。日本書紀では安倍比羅夫の名前を完全に書かない呪術的な記述をする。

藤崎の平塗りの倉庫

安倍比羅夫とリンクがありそうな事物はリンゴの樹が広がる藤崎町の〈ぴらじょう〉という館跡。中世の土器、土師器、須恵器の破片の他にそれらしい形はないが、平川に近い位置なので、自然に平城と漢字を当てる。最初は比羅夫城だったかもしれない。安東一族の藤崎城の例でも分かるようにその辺に城砦などを築くのは地理的に当然だろう。

比羅夫城は気ままな想像でしかない。しかし、そこでも疑問が見えた。なぜ〈ぴら〉と言うのか？なぜ藤崎町のHPは平仮名で記しているのか？

それはすぐ〈こんぴら〉を想い出させた。俗にそう呼ばれるが、正式には金刀比羅宮(ことひらぐう)で、金毘羅大権現は海上交通の守り神として広く信仰されて、大日本帝国海軍の慰霊祭が戦前行なわれていた〔1〕。

☆

Updated 2015.2.13

[この欄は暇を見て書いています。]

1　wikipedia

安東一族

▼　List 2 有栖川宮の歴史; アリスと有栖川宮 x

安倍比羅夫　秋田津軽

▼　List 2 有栖川宮の歴史; アリスと有栖川宮 u　z

鉱山開発と秘密

▼　List 11 仮面について;　理想的な表現［C］ p24

呪術的な記述

▼　List 11 仮面について; よい踊りを盗む　[7]

ぴらじょう

▼　List 2 有栖川宮の歴史; アリスと有栖川宮 y

仮面について　

ギャルリー　18　　　

狭の城

狭布と思われる麻布

手ぬぐいより少し幅がある

小豆沢大日堂

撮影　2000年1月2日

☆狭城(さき)を狭(きょう)の城と解釈すれば、狭の里にある小枝指(こえさし)館にリンクする。そこから西北に約2km行くと、米代川と大湯川と小坂川の合流地点に都でも有名だった悲恋の錦木塚がある。狭の狭布(せばのの)は美しい娘が織っていたが、民話では麻布に白鳥の毛を混ぜる。白鳥の毛は呪術的に製錬の黒い煙から子どもたちの健康を守る。実際どんな織物か、見てみたいが、菅江真澄は現地で狭布の取材をしながらなぜかスケッチを残していない〔1〕。小豆沢大日堂の舞台前に天井から張り渡された麻布が狭の狭布と言われていた織物だったのではないか？これは透けて見える荒い布で、夏のファッションに向いている。分からないのは、狭布と名づけるほど幅が狭くないことである。

狭の狭布はあるメッセージをつたえる表現だったと考えよう。狭と狭布をダブル・イメージとして見れば、実体あるいは現象は滝である。これは鹿角花輪地方の人が想いうかべるとおり湯瀬渓谷の細長くうねる滝である。小豆沢で谷から出て平野に流れこむ。したがって、狭布にこめられたメッセージは溶けた銅が無事に炉から流れ出たこと、製錬(精錬)の成功ということになる。麻は銅鉱石を焼く製錬のときに出る亜硫酸ガスを浄化する陸上植物を代表する。銅と色が似ているので、製錬の成功と魔除けの両義的な意味を持つ。

この解読は多くの事柄の起源を明らかにすると思う。

1 布は銅のメタフォールなので、朝廷は布を特別な贈りものとみなした。

2 布告や発布のような用語がつくられた。国家の意思を広く知らせる行為と麻布のイメージが共通する。

3 布は縁起がいいという理由で滝や渓流の写真撮影でシャッターを開けたままにして白い流れを描き出す手法がある。

☆

Updated 2014.11.5

[この欄は暇を見て書いています。]

注記

仮面について; 向かい合う仮面

仮面の魔力を引き出すとは、銅鉱石から亜硫酸ガスを発生させないで粗銅を製錬すること、および粗銅か天然銅を純度の高い銅に精錬することだろう。

1　東北文庫　菅江真澄〈けふのせば布〉

▼　List 11 仮面について; 理想的な表現［B］

仮面について　

ギャルリー　17　　　

狭城

南側から見た小枝指の岬　2014

☆古事記によれば、神功皇后は狭城楯列陵（さきのたたなみのみささぎ）に埋葬された。日本書紀でも狭城盾列陵（さきのたたなみのみささぎ）である。楯と盾の漢字が少しちがうが、〈さきのたたなみ〉という読みは共通する。その〈狭い城〉を見れば、小枝指館を横から眺めて丘を歩いた記憶が岬に並んだ盾 (館)の列というイメージを浮かび上がらせる。といっても、岬のようなフォルムの丘は日本のありふれた風景である。神功皇后の御陵もそういう自然にあったらしい。

　小枝指(こえさし)の語源はアイヌ語の〈えさし〉で岬という意味だが、岬と狭城のちがいはどうだろうか？三崎と書く地名もあるので、習慣的に同じ意味と思っていた。しかし、アイヌ語の辞典によれば〔1〕、

さ‐ぎり(狭霧)の語源---sa:前、姉

kir:すね、山(美幌方言)

前山川から見た駅前の山　2013

文学的な言葉の狭霧の〈sa〉が〈前〉あるいは〈姉〉の意味で、〈kir〉には〈すね〉の意味と美幌方言で〈山〉の意味があるという。それで鷹巣駅と二ツ井駅のあいだにある前山駅と二ツ井町の姉帯という苗字が想い浮かんだ。姉が付く店の名前は米代川源流の岩手県側の町でも見た。前山の語源については、前の山なら無意味に近いので、舞の山か、と想像していた。しかし、アイヌ語〈サキル〉の日本語訳だったかもしれない。狭城もそうでなかったか？これは小枝指館の丘を歩いて撮影したあとでは説得力がない。狭城は岬のイメージを表現している。

それは他にはない言葉だが、神功皇后のストーリーと何か必然的な連関があるか？そこでは反対に巨大な古墳建設のドラマが出る。

　狭城は米代川と意外なリンクがある。鹿角花輪地方は継体天皇のころ狭(きょう)の里と呼ばれ、都にも知られた名産が麻で織った幅の狭い布、狭の狭布(けふのせばのの)だった〔2〕。これは狭霧にくらべると、目に見える事実の明確な表現だ。

☆

Updated 2014.8.15

[この欄は暇を見て書いています。]

　　　

1 狭霧考　

地名アイヌ語小辞典　知里真志保

2　東北文庫　菅江真澄〈けふのせば布〉

毛布郡と記されている。

古墳建設

▼　List 2 アリスと有栖川宮 s

▼　仮面についてギャルリー　16

仮面について　

ギャルリー　16　　　

文字を書く手

谷の終端

☆小枝指館の五本の指のイメージは、他のイメージで置き換えられない重要なことを暗示していないか〔1〕？その集落を最初に通ったとき赤ん坊の手を連想したと書いたが、銅製錬や鉱山経営との連関を認めると、米代川下流の綴子にリンクする。〈綴子という文字は青銅鏡の存在を反映する。文章を綴る行為は、身の回りの環境を映し出す青銅鏡が教えた〔2〕。〉五本の指は象形文字を書くときの動きに変わり、銅製錬や鉱山経営とのアナロジーを映し出す。

五本の指のイメージはさらに鹿角花輪地方のトンボ伝説にもつながる〔3〕。霊泉を発見しただんぶり長者の娘が嫁いだと言い伝えられる継体天皇の后手白香(たしらか)皇后。

谷の終端の東側

そういうことを考えて館跡を歩いたのだが、谷間は工事中なので、リンゴ園に向かう坂を上がった。リンゴ園も館跡のように見えたが、文献資料ではそうでない。しかし、リンゴは太陽のメタフォールで銅製錬と深い関係がある〔4〕。富と幸運と輝かしい未来の約束。

リンゴ園の端から谷間に下りると、林の中に水の流れが見えた。泉があるにちがいないと思って、流れをたどった。コンクリート製の壊れかけた用水路があった。崖から倒れた苔むした数本の老木が行く手をはばんだ。仕方なくリンゴ園から谷の終端に行った。水は流れていなかった。谷の向こう側には農家と民家が並んでいた。谷の終端は、埋め立てられた通路で途切れて、東側にまだ小さい谷があった。水の流れは雨水か排水だったのだろう。その地域は館という集落で、谷の端を回ると、八幡館というバス停留所があった。これも製錬とかかわりがある地名だ。その先に行くと、幼稚園がある。かわいい子どもたちが遊んでいた。妙な因縁だと思った。幼稚園の角から小枝指の集落に通じる坂を下りると、途中にアマテラスをまつる忘れられたような小さい古びた神明社がある。

幼稚園

左側に谷の終端

☆

Updated 2014.2.10

[この欄は暇を見て書いています。]

1　仮面について　ギャルリー　15; 小枝指館とアマテラス

2　仮面について　ギャルリー　5;　綴子と手紙　

4;　手紙と料理

3　List 11 米代川ドキュメンタリー　レポート　1

仮面について; スワイフウェ仮面と言語的表象

4 List 11 仮面について; 銅と太陽のアナロジー

アマテラス　神功皇后　

▼ List 2; アリスと有栖川宮　n

仮面について　

ギャルリー　15　　　

小枝指館とアマテラス

第1館と第2館のあいだの空掘

☆造船物語から考えると、分かりやすい〔1〕。船あるいは造船は鉱山経営の象徴なので、米代川のきみまち阪の少し上流七座(ななくら)神社と綴子(つづれこ)神社のある地域で銅の発見、採掘、製錬など鉱山経営が行なわれた歴史を明らかにしている。綴子神社の主祭神が応神天皇であるのは、太陽の子の誕生が銅製錬の成功の象徴だからだ。神功皇后の御陵が五社神と名づけられた理由は、小枝指の五つの館から解読できるだろう。

五本の指のイメージは銅製錬や鉱山経営と連関がないように見えるが、アナロジーは爪にある。爪と歯は、その固さとフォルムから青銅や鉄などの武器のメタフォールになる。古代に使用された楯は、館の語源と言われるが、楯と館には防御あるいは防衛という共通の目的がある。

第2館の跡地

参考に爪が使われる実例をあげると、小豆沢大日堂舞楽の地蔵舞がある〔2〕。太鼓をたたく能衆は鋭い爪の生えた熊の手の皮を手の甲に付けている。太鼓の音は雷のメタフォールだから、熊の爪は稲妻と見るべきだ。

小枝指の館は銅製錬など鉱山経営にリンクするにちがいない。実際、岬に行ってみると、道路の南、岬の先端に小高い館、道路の北の先端部に三つの館が並んでいる。3番目は集落の墓地で、そこから奥には道がない。ウェッブサイトによれば、第4の館があるが、第5の館は抜けていて、谷の南側、リンゴ園の西に第6と第7の館があるという〔3〕。苦しい説明だ。別名の七ツ館の七は北斗七星に由来する銅製錬の象徴にすぎない〔4〕。

小枝指で発見された平安時代の銭貨とは、たぶん銅貨だろう〔5〕。そして、賽銭だったとすれば、神聖な場所として崇拝されていたことになる。糸をつむぎだすための紡錘車(つむぎぐるま)の土製品は、明白にアマテラスと連関する。神話では太陽の女神は機織の仕事をする女性としても描かれている。アマテラスの現実のモデルは神功皇后である。小枝指の地域に、それとつながるような言い伝えがあればいいが、明らかでない。

南の館跡の東にあるリンゴ園

☆

Updated 2014.1.7

[この欄は暇を見て書いています。]

1　仮面について; よい踊りを盗む　[7] etc.

2　List 11 仮面について; 黒・白・赤、1；5　［3］

3 秋田県遺跡地図情報　

4　List 2アリスと有栖川宮 i f

List 10　長谷川一族の風景; 天皇と皇族の天神荘ものがたり~エピローグ

5　秋田の中世を歩く

神功皇后

▼ List 2; アリスと有栖川宮　n

仮面について　

ギャルリー　14　　　

神秘的な小枝指

南から見た岬の先端

他のフォト

video

☆花輪の赤いリンゴの森を車で走っていると、〈小枝指〉という表示が見えた。丘の斜面にある集落の名前で、読み方を知らなかったが、心に残った。小枝の指だから、赤ん坊の手のイメージが浮かんだ。花輪地域の古い鉱害が引き起こした流産の記憶だろう。1980年代半ばからその地域を何度も通ったが、知識は進まなかった。〈こえさし〉という正しい読み方と中世の館(たて)跡があると分かっただけだ。

調べてみると、エサシはアイヌ語の岬という意味で、南北から見た丘のフォルムが岬のようだから、小枝指は〈こ-えさし〉と分節されて、小さい岬という意味になる。ただ、その地域でも岬のように延びた丘はめずらしくない。

小枝指と漢字で表わした理由はないのか？鹿角由来集によれば、16世紀小枝指という名の一族の館だったが、遺跡には縄文時代の石皿、平安時代の銭貨や 紡錘車)の土製品などもあった〔1〕。　

古代史から思いがけないアナロジーが見えてきた〔2〕。神功皇后の御陵とされる奈良市の五社神(ごさし)古墳。発音が似ているが、国土地理院の地図では小枝指の岬に六つの小さい丘が並んでいる。実際、それらは人工的に築かれた館の跡である。小枝指は五本の指のイメージが強く残っていたので、館の跡も本来五つだったように思えた。そして、それが五社神のメッセージを明らかにした。表記のとおり五つの神社がある神。

五社神古墳と小枝指が点線でつながった。これは神功皇后の皇子(応神天皇)出産にリンクした〔3〕。五社と〈五つの館〉は皇子の誕生を記念する記号だったのだろうか？

日本書紀によれば、神功皇后の子孫である女の斉明天皇は4世紀後の658年安倍比羅夫将軍を秋田と津軽に遠征させた。将軍は米代川のきみまち阪の少し上流で土地の神に船などを捧げた。綴子神社の縁起によれば、宇佐神宮から分霊して応神天皇を主祭神にして、天照皇大神(アマテラスオオミカミ)や神功皇后その他の神を祭らせた。

☆

Updated 2013.11.15

[この欄は暇を見て書いています。]

1　秋田県遺跡地図情報

2 List 2; アリスと有栖川宮　p

3 List 2; アリスと有栖川宮　m

　　

神功皇后

▼ List 2; アリスと有栖川宮　n

仮面について　

ギャルリー　13　　　

姫リンゴとヒメノオオカミ

☆2012年暮れに大館駅前近くの津軽の店で深紅の小さいリンゴを見た。〈姫リンゴ〉

インターネットで調べたら、中国原産のイヌリンゴとエゾノコリンゴの交配種らしいが、確かなことは分かっていない。しかし、エゾノコリンゴは極東ロシアのウスリー地方やサハリン原産で、蝦夷の子のリンゴでなくて〈蝦夷の小林檎〉と漢字で書くという。サクランボのように果実がいくつも枝に下がり北海道では見なれた風景だという説明にびっくりした。

リンゴは明治の文明開化の時代に日本に渡来した。それが常識だが、もしかしたら、姫リンゴはかなり古い時代に日本列島に存在した可能性がある。

記録に現れる最初の〈姫〉と考えられるのは、ヒミコとアマテラスである。ヤマトの統一者ヒミコは神話で天を支配する太陽の女神アマテラスのモデルになった。これはアマテラスの分身としての別名ヒメノオオカミに表わされている。日本列島でヒメコと呼んでいた名前が中国で卑弥呼と書き記されたのかもしれない。

ヒメノオオカミと姫リンゴ(あるいはエゾノコリンゴ)の共通点はないか？ヒメノオオカミはアマテラスになって伊勢神宮と神明社に祭られたが、鏡の中に存在するだけで絵姿も像もない。姫リンゴは、それと似て栽培されなくなったのではないか？

そういう仮説で見れば、普通のリンゴが古代に海を越えて列島に来なかったのは不思議だ。シルク・ロードで運ばれなかったのか？リンゴが栄養に富んだおいしい果物で栽培に手間がかからないことを考えれば、その理由は迷信にあるだろう。リンゴが出る有名なドラマと言えば、旧約聖書の天地創造である。アダムとイブが善悪を知るために禁じられたリンゴを食べる。これが人間の原罪と言われた。しかし、ユダヤ教とキリスト教がリンゴ禁止令を出していたかどうか、明らかではない。仏教はどうだったか、これも闇の中だ。

ピンポン玉のサイズ。

2013.1.9

おいしいミニ・リンゴ。ジャムにして食べる人も多い、という。

2012.12.29

Updated 2013.6.16

[この欄は暇を見て書いています。]

ヒメノオオカミ (比売大神)

▼　List 2; アリスと有栖川宮 s

*リンゴ・ストーリー

終戦後のリンゴのエピソード

▼　List 1;〈リンゴの唄の秘密〉をめぐる対話

▼　List 3; 高松宮日記メモ:〈リンゴの唄〉の秘密

長谷川テルの詩に表わされたリンゴ

▼　List 1; V字型の階段の記憶　15

▼　List 1; V字型の階段の記憶　7

鹿角地方のリンゴの歴史その他

▼ 面、Men,車、クルマンベ、リンゴと女森

▼ 大湯ストーンサークルとリンゴ園

長谷川テルと家族に関連すること

▼　List 1 ; V字型の階段の記憶　28 大館の二つの橋と5.15事件の連関

仮面について　

ギャルリー　12　　　

橋の名の表示を見て

☆20055年8月岩手県の兄川を撮影したとき、ある橋の上で自転車を止めて一休みした。普通の橋だが、標示板の最初の崩れた漢字が読み取れない。〈代〉のようにも〈比〉のようにも見える。代（シロ）は古代日本語の泥（sir−oシロ〔1〕）が語源で、米代川と米白橋のように色彩の白と共通して二重のメッセージがある〔2〕。比は発音の一致から火にリンクするが、カタカナの〈ヒ〉を二つ並べた形は銅精練と青銅鏡の製造を象徴的に指示するミラー・イメージである。どっちが橋にふさわしいか、迷いながら地図を開いてみると、東の方に比山という山がある。つまり、火の山。しかし、火に対する畏怖の感情からその漢字を使わない。さらに青銅鏡の神聖さに対する畏敬の観念から比山を代山に似せて書く。比叡山を叡山と省略して呼ぶ例を想い出した。

そういう呪術的な表現は歴史をゆがめる。9月米代川の下流で似たような収穫があった。能代市を流れる支流桧山川の源流に行き、羽立集落の橋を通ったとき、大館の北にも羽立という集落があるので、〈はだち〉と言うだろうと思った。しかし、この橋には〈はたち〉と平仮名の読みが記されていた。普通は橋の名も縁起をかついで濁音を嫌い、羽立(はだち)という発音でも平仮名の文字は清音でつづる。それで〈はたち〉は二十歳(はたち)にリンクした。羽が立つとは鳥が羽を伸ばして飛び立つことに由来する。成人になる20才の年をそんなふうに言う理由ではないか ?

清音で言って歴史の背景が明らかになる実例は他にもある。奈良県桜井市の山田寺。7世紀に蘇我倉山田石川麻呂が創建した寺だが、〈やまた〉と発音すれば、伝説のヤマタノオロチ(八岐大蛇)とのうやむやな関連が浮かび出る。

橋の名が濁音のまま記されている唯一の例は、大館市の真ん中を流れる長木川にかかる大館橋である。

比山橋

2005.8.4　

Updated 2013.4.20

[この欄は暇を見て書いています。]

1　日本語の起源 :　大野普

2　仮面について; 黒・白・赤、1；5

ミラー･イメージ

▼　東京駅暗殺事件　10;　死んだ4月4日という日付

▼　東京駅暗殺事件　11;　イニシャルを見れば、完全なミラー･イメージ

仮面について　

ギャルリー　11　　　

青りんご

☆フランス人のジャーナリストのウェッブログにシベリア旅行で訪れたバイカル湖畔のイルクーツク市の駅の写真があった〔1〕。駅舎の壁の裾がコバルト・グリーンで、函館と大館のギリシア正教会の屋根の色が想い浮かんだ。大館の曲田聖堂はその後なぜか黒に変えられた。しかし、本来の色が起源を正しく表現したにちがいない。起源とは鉱山が人と自然環境に引き起こした一連の悲劇である。亜鉛とコバルトの酸化物コバルト・グリーンは魅惑されるような鮮烈な色だが、そういう出来事の象徴的なメッセージ(記号内容)にもなる。文明の豊かさにつきまとう不幸の教訓とも言える。

今度あらためてイルクーツク駅の写真を見ると、入口の左右にミラー・イメージの塔が立っていた。青銅鏡に由来する世界的なモード(様式)だ。アンガラ川の流域で青銅鏡などが製造された歴史を表わしている。

フランス人は、その色を〈vert pomme　緑のりんご〉と書いた。女性名詞なので、普通は〈pomme verte〉だが、フランスのサイトには〈vert pomme〉という色彩の慣用表現が少なくなかった。つまり、これは日本で言う青りんご、熟していない緑色のりんごのことだった。

青りんごはアメリカ原産で津軽地方でさかんに栽培された。すっぱいので、塩をつけて食べたものだが、お盆の供えものである。由来は〈緑のりんご〉と共通するだろう。赤いりんごは太陽のメタフォールで富と幸運の象徴的な指示記号だが、青りんごには反対のメッセージがある。これは月のイメージに似ていると思う。

しかし、その風習はいつからか？日本にりんごが伝わり栽培されたのは明治時代だから、青りんごの宗教的な供えものは外国の〈緑のりんご〉のメッセージを取り入れたのか？

祝(いわい)

津軽の青りんご　

JR大館駅近くの店で

Updated 2012.12.16

[この欄は暇を見て書いています。]

1　保存したファイルが見つからない。

▼　仮面について; 銅と太陽のアナロジー

▼ 仮面について　ギャルリー　3; 女森の桜とリンゴ

▼　面、men、車、クルマンベ、リンゴと女森

大湯ストーンサークルとリンゴの関係について

▼ 大湯ストーン・サークルとリンゴ園

明治時代よりも前に存在したか？

▼　考え方の進歩しない領域; 姫リンゴの例

仮面について　

ギャルリー　10　　　

エヅ

☆地方での実際の発音から津軽をチガルと読んで、瀬戸内海の伊都(いつ)についても考えると、方言の発音に想像力が向かった。兵庫でどう発音するか分からないが、秋田や津軽では普通〈エヅ〉と聞こえる。これは〈越　エツ〉を想い出させた。この歴史的にリンクには、えっ、と誰でもおどろくにちがいない。福井、富山、新潟に広がる越国と秋田、津軽の交流には縄文時代からの前歴史的な深さがある。新潟県姫川産のヒスイが広い範囲で発見されている。

ぼくが越国を〈えつくに〉と読むのは田町の坂にあった越国(えちくに)商舗の影響だが、日本書紀の注記では古事記の〈高志　こし〉にならって越国を〈こしのくに〉と読ませる。しかし、原文では越国と書いて読み方を限定していないので、〈越　エツ〉と読んでもいいということだ。実際、越国を構成した越前、越中、越後にはそれが残り、越前と越後は苗字として広まった。越国の何か本質的な面が保存されている。

越の語源は明らかでない。大陸から海を越えた地方なので、そう名づけたのか？紀元前に中国の越の子孫が移住したのか？

〈エヅ〉という仮説を追ってみると、こういうことが浮かび上がる。

1　その地方に勢力がある豪族安倍比羅夫将軍は7世紀斉明天皇の時代に船で秋田の米代川や津軽あるいは北海道に遠征した。日本書紀の〈蝦夷〉の読み方は〈エミシ〉で集団の名である。しかし、後世〈エヅ〉が変化して隣接的に〈エゾ　蝦夷〉という北海道の地名になった可能性がある。

2　秋田と津軽では、〈あべ〉という言葉が日常生活でよく使われる。意味は、他の地方の人は想像できないが、〈一緒に行こう〉。伊都の地名が〈いつか行ってみたい〉という願望から由来したように〈えづがあべ〉から安倍の名前ができたのか？といっても、安倍は仮面のエセーで分析したように〈あえ〉〈あへ〉が起源である。同じように〈一緒に行こう〉の意味は息の苦しさを表現するその単語から発生したのかもしれない。

越後さんが経営する越国商舗の店舗跡。

クギなどの金属製品を販売していた

Updated 2012.6.11

[この欄は暇を見て書いています。]

▼　仮面について; よい踊りを盗む　[7]

▼　仮面について〜ギャルリー 9; 〈いつ？〉という地名

▼　仮面について〜ギャルリー 8; 津軽はチガル

　

仮面について　

ギャルリー　9　　　

〈いつ？〉という地名

☆別所と津軽には、他にも類似点がある。別所集落は十二所の北、津軽は陸奥(むつ　六)地方の北西にあり、その一部である。十二と六の意味論については前に述べたが、六について新たに考えれば、それは否定的にしか使われない。

別所と津軽を並べてみると、地図のイメージが浮かぶ。どちらも場所を示す言葉である。これはフランス語で場所を表わす疑問副詞、関係副詞〈où どこに　ところに〉を想い出させる。発音は日本語の〈ウ〉とほとんど変わらない。だから、ただ一言〈où〉と言えば、〈ou　あるいは〉という否定的な言葉と同じように聞こえる。

フランス人はなぜそういう誤解されやすい表現を好んだのか？これは空間の知覚から来ると思う。歩く人は、空間を歩く運動によって否定される点の連続であると感じたことが起源だろう。否定文の〈ne(ヌ)…pas(パ) … でない〉に〈un pas歩、足跡、歩きぶり、通路〉と同じ単語を使う理由は、その辺にあるかもしれない。

ところで、別所と対照的に疑問形の時間を表わす地名がある。播磨国風土記は伊都(いつ)村の名についてこう説明する。神功皇后の御船(みふね)の水夫たちが揖保(いぼ)川の西方の村を海の上から見て、〈いつか、この見えるところに行きつきたいものだなあ〉と言ったのが由来。理由は何だろうか？ともあれ、伊都(いつ)と時間の疑問形で呼ぶのは津軽(チガル)の同時否定の表現と同じである。

―どこに行くのか？

―いつ(？)

行く先は分かっているが、日付や時刻は分からないという不安なニュアンスが残る。はじめて聞く人には答になっていない。

　ついでに言うと、伊都は、読み方がちがうが、3世紀末の魏志倭人伝に出る伊都(いと)国と同じ漢字である。地理的には後者は福岡県糸島市と推定されている。伊都村と伊都国は何の関係もないのか？

秋田行き特急〈津軽〉

大館駅で撮影

Updated 2012.4.9

[この欄は暇を見て書いています。]

▼ ネーミングの疑問; 大館駅で特急〈チガル〉を撮影

▼　仮面について〜ギャルリー 8; 津軽はチガル

▼　仮面について〜ギャルリー 7; 六でもない話

別の、ちがう

▼ アリスと有栖川宮 u

　

仮面について　

ギャルリー　8　　　

津軽はチガル

☆数年前、田町の坂の十字路にある高橋薬局について、夕食のとき母に聞いた。実家の小繋の高橋家とつながりがあるのか？何気なく思ったが、母は〈あれは別の高橋。ちがう高橋だ〉と答えた。しかし、経営者が苦学して店を開いたことなどは昔の人らしく知っていた。

その短い会話はいろんなことを想像させた。大町のはせがわ化粧品店は別の長谷川だな、と思った。ぼくが知るかぎり長谷川家との交際は全然ないが、父の話では遠縁である。1997年死んだ無名画家善四郎の存在は、才能のタイプが同じ水源を示していた。それでも、ぼくは習慣的にはせがわ化粧品店を通りすぎるだけでヘア・リキッドを買うこともなかった。すると、2001年9.11同時多発テロのとき化粧品店の娘素子が日本テレビ記者としてニューヨークに勤務していた事実を北鹿新聞が伝えた。ジャーナリストの存在も長谷川家と共通していた。

別の長谷川、ちがう長谷川…そういうのはダブル・イメージあるいは単純に広い意味でミラー・イメージと考えてもいいかもしれない。

それから高校時代に流行したジョークが想い浮かんだ。北秋田地方では日常的に津軽を〈チガル〉と発音する。しかし、〈チガル〉は〈ちがう〉の古風な訛りとよく似ているので、〈どごさ (どこへ)？〉〈チガル〉などというジョークになる。津軽という答は同時に否定されるので、真実かどうか、分からない。津軽にはかならず〈?〉が付く。矛盾や二律背反のような言葉の遊びである。

これは現実の中では方向が逆にか他にそれることだから、アミダクジ・モードの屈折に似た現象である。イメージに置き換えれば、大館市の別所という地名、ご神体が阿弥陀仏である別所大日堂の斜め構図の鳥居が好例である。別所の意味は文字どおり別の所で、チガルと同じになる。このユーモアは津軽の語源に関する可能性のひとつだろう。

立ちねぷた

煙のメタフォール

五所川原市のうちわ

Updated 2012.2.15

[この欄は暇を見て書いています。]

別の、ちがう

▼ アリスと有栖川宮 u

別所と大日堂

▼　黒・白・赤、1；5　［8］

▼　仮面について〜 59　アズキのアズ　[2]

▼ ネーミングの疑問; 大館駅で特急〈チガル〉を撮影

▼　仮面について〜ギャルリー 7; 六でもない話

仮面について　

ギャルリー　7　　　

六でもない話

☆文化人類学から六について考えると、六は十二の半分である。十二は時計の12時の意味で、太陽が真上にある時。北アメリカ・インディアンの伝承の考察によれば、霊魂が望遠鏡を通して地上を眺める時である。十二時の半分は六時だが、これは何か重要な時刻と思われたのか？朝のはじまりと夜のはじまりに六時が来ることに関係があるのか？昔は午前六時ごろを明け六つ、午後六時ごろを暮れ六つと言った。日の出と日没も一日の特別な時間だから、六という数字に特別な意味を与えたということはありえたかもしれない。

　ところで、六は縁起のいい大という漢字に似ている。それが迷信的に十二よりも価値があるとされて、ふだん好んで使われた理由だろう。六でなし、六大学野球、六法など。仏教で宇宙を構成するとみなされた6元素を六大と言うので、六はありがたい漢字だったにちがいない。

二個のさいころで遊ぶ双六(すごろく)には、十二の半分という起源が表わされている。二つ並んだ六はミラー・イメージである。青銅鏡の製造が危険な作業だったように、それには十二と同じく危険なイメージが隠れている。

六のある地名を拾うと、奥六郡(おくろく 10世紀半ば陸奥国の現在の岩手県中部にあたる行政区域)、六戸町、六ヶ所村。陸奥は六と同じ発音なので、陸の奥というよりも六の意味がこめられている。

明治天皇睦仁(むつひと)の名前はどんな由来があるのか？睦は陸に似ているが、意味は異なる。しかし、発音は陸奥と一致する。明治天皇には陸奥国と連関する何かがあるのだろう。これは陸奥国の鹿角地方に近い旧二ツ井町きみまち阪の訪問しかないと思う。明治14年東北巡幸で津軽から米代川に来て、きみまち阪で皇后の歌の手紙を待ち、きみまち阪と名づけた。睦仁がそれを歴史のページに残したのは、白神山地周辺の津軽と北秋田に遺伝子のつながりがあることを言いたいからだろう。

暗門川源流で買ったキー・ホルダー

注記;〈六でもない〉という用法は明治時代の文献にある。

Updated 2011.12.8

[この欄は暇を見て書いています。]

▼　銅と太陽のアナロジー　1

仮面について　

ギャルリー　6　　　

篭と〈かごめの歌〉

☆加護山製錬所はきみまち阪の西斜面にあった。藤琴川と米代川と阿仁川のターミナルの位置が南蛮吹きによる銀製錬を支えた。しかし、自然が荒廃した。煙の大気汚染も恐れられた。二ツ井には眼病が多かったという話を聞いたことがある。加護山の加護は篭に由来するので、それから歴史の真実を探るべきだろう。というのも、長木川源流ナマズ沢に篭谷(かごや)という集落があるが、その奥の深い沢は廃鉱の影響か、惑星の空間のように生命の存在が感じられない。その無気味さの中を歩いてから篭のメッセージ(指示内容)について考えるようになった。

篭は竹や蔓を編んでものを入れて運ぶ道具だが、〈仮面とガラガラ〉つまり銅と雷を屈折的に示し、鉱山と製錬作業の象徴である。それを何気なく表現したのが〈かごめの歌〉である。要点だけを説明すると、〈かごめ〉とは篭の編み目のことだと言われている。篭の編み目には魔除けの効果があるという言い伝えは、編み目を星型や格子柄とすれば、理由が分かる。そういう星と十字のデザインは銅が溶けて生成したときに放つ白熱光線の形象化である。作業員は目を傷めないように瞬間的に銅を取り出さなければならない。この恐怖は〈後ろの正面誰？〉で表現されている。トレビの泉で旅行者が後ろ向きにコインを泉に投げて再びトレビに来れるまじないをするのと起源が共通する。〈篭の中の鳥は、いついつ出会う〉とは、どういう意味か？酸素欠乏や有毒な亜硫酸ガスを検知するための鳥が無事に生きて作業する人たちの生命と健康を保証してほしい、という不安に満ちた願いだろう。

〈かごめの歌〉は江戸時代から子どもの遊戯として歌われた。その歌を知らない日本人はいないはずだ。すると、トマト・ケチャップの大手メイカー〈カゴメ〉は、優しさがない危険なネーミングである。裏の目的を疑えば、真っ赤な血のイメージに無意識的な暗い背景を置くことである。国家やテロ組織が背景に見えれば、ノイローゼを強める脅迫のメッセージである。オムレツやスパゲッティ・ナポリタンは恐怖の料理になる。

星型の編み目

[ダイソー]

大館市雪沢の篭

[雪沢産直センター]

Updated 2011.8.16

[暇なときに書いています。]

▼　仮面について　ギャラリー　5; 綴子と手紙

仮面について　

ギャルリー　5　　　

綴子と手紙

☆山本嘉次郎監督は第2次世界大戦が火を噴いた1939年《綴方教室》を作った。大館と比内に戦後本場のきりたんぽを味わいに来た食い道楽だから、綴子にも関係があるかもしれない。

　綴子は、北秋田市のJR奥羽本線鷹巣駅の北、低い高原の入口に当たる岬にある。人が太鼓の上に乗る大太鼓で有名になったが、これは綴子神社の祭である。綴子は日本書紀に出る。斉明天皇5年(659)阿倍比羅夫将軍が米代川の今の七座(ななくら)神社と〈肉入籠(ししりこ) 〉に来る。七座では船などを土地の神に献上したが、綴子神社の記録では大分の宇佐神宮から分霊して東北最古の八幡宮綴子神社を創建した。主祭神は、実在が確かな最初の天皇と言われる応神天皇である。綴子という名は肉入籠に由来するという。

　地名のこういう変化は、発音の訛りだけでなく、意味論的な理由もある。北アメリカ大陸太平洋岸のインディアンなどの諸部族の神話では天然銅のメタフォールとして色の類似から肉という言葉がまれに使われる。籠はカナダのフレーザー河中下流域の部族の神話ではキー・ワードのひとつである。〈若者は妹と一諸に湖に行き、釣糸を垂らして水の精霊を捕らえ、仮面とガラガラを籠の中に入れた。〉仮面とガラガラは、それぞれ銅と雷の指示記号である。魚や物を入れて運ぶための籠は織物と同じように貴重な発明だったらしく、きみまち阪にあった加護山製錬所などの地名に残った。綴子という文字は青銅鏡の存在を反映する。文章を綴る行為は、身の回りの環境を映し出す青銅鏡が教えた。

綴子神社には平安時代からの古文書を収めた内館文庫が1262年創設された。これは文章との深い縁を語る。そして、日本書紀が暗示するように七座神社と微妙につながり、その〈遥拝所〉である。七座神社は天神様と呼ばれるが、学問の神様菅原道真が七座山の岩を麻生の岸辺の流れに投げ飛ばした伝説が残り、天然銅の生成を伝えるインディアン神話に似ている。

きみまち阪の歌碑

昭憲皇后の和歌

綴子南の向黒沢大橋

大太鼓のオブジェ

Updated 2010.10.18

▼　仮面について　ギャラリー　4; 手紙と料理

山本嘉次郎と大館

▼　ハチ公ストーリー

仮面とガラガラ

▼　仮面について　理想的な表現

文字と青銅鏡の深いつながり

▼　仮面について;　黒・白・赤、1; 5　[4]

▼　仮面について;　耳のゼンマイ巻き　[4]

仮面について　

ギャルリー　4　　　

手紙と料理

☆米代川のきみまち阪には手紙が関係する。明治天皇が明治14年そこで皇后の手紙を待ったというエピソードは二ツ井町の恋文コンクールで有名になった。しかし、米代川上流の小坂川に行くと、手紙坂というバス停を通る。これはきみまち坂と何か連関があるのか？

低い丘の向こうには荒川川に手紙沢大橋がある。手紙坂と手紙沢に関する民話や伝説はないらしい。歴史的な背景については小豆沢大日堂舞楽で見た手紙のシーンを参照にしよう。幕間に観客の女性が舞台の端に紙を置いて何か文章を書きつづった…

　文字は青銅鏡と深いつながりがある。象形文字は鏡がまわりの環境を自由に映すことから発明されたにちがいない。それを鏡のような魔力と信ずれば、女性が舞台の端で祈りの手紙らしい文を書くのは自然である。

きみまち阪の手紙のドラマでは昭憲皇后が和歌を送る。前年の北陸巡行で贈った同じ和歌をきみまち阪に…この歌の儀礼は銅=太陽の子の誕生を祝うものである。これは斉明天皇の時代にその土地で銅製錬が行なわれたことを記念するためだろう。

言葉で伝えられた手紙物語は、あきれたことに東ヨーロッパのジプシー民話で見つけた〔1〕。ある国の太子が大芸術家から金貨千枚で翼を買い空を飛ぶと、風に流されて真夜中に町の灯が見えるところに下りた。民家で老婆に食べものを乞うと、まずいパンを出した。太子は夜が明けてから一通の手紙を書いて金をそえて老婆を料理店に行かせた。老婆は手紙と金を料理店に渡して、もりだくさんの食べものを受け取って帰った。太子は、外に三つの石の階段と一つのガラスの階段を持つ宮殿を見た。老婆に聞くと、皇帝の姫様が4階のガラスの中に閉じ込められているという。見ると、侍女がロープをたらして料理を引きあげていた。[略]

真夜中の12時。料理店への手紙は、説明がないが、銅製錬の指示記号である。太子と姫様の料理のダブル・イメージは青銅鏡の製造を暗示する。

秋北バスの停留所

Filming; 2006.5.9

手紙沢

Filming; 2006.5.9

Updated 2010.6.20

1　世界の民話: ぎょうせい

歌と仮面の関係

▼　仮面について　スワイフウェ仮面と言語的表象

文字と青銅鏡の深いつながり

▼　仮面について　黒・白・赤、1; 5　[4]

▼　仮面について　耳のゼンマイ巻き　[4]

仮面について　

ギャルリー　3　　　

女森の桜とリンゴ

　　　 ☆ジプシー伝説の〈吸血鬼〉に出る森の中のリンゴの木は、女森(おなごもり)の伝説を想い出させる。ストーリーには出ないが、明治時代に鹿角地方で最初にリンゴの木が植えられたのは女森だった。この伝説にもう一度照明を当てよう。

　あるとき岩手から女と乳母が逃げてきて、花輪の日向屋敷の鍛冶屋で働いた。意地悪な継母の命令で追いかけてきた12人の男がいた。桜が咲く季節に女は乳母と一緒に女森に花見に行く。12人の男はそこで女と乳母を切り殺してしまう。

　民話や神話では女と仮面は銅を指示することがある。米代川の源流で鹿角の鍛冶屋が銅鉱石を発見したと解釈できる。12人の男は銅を手に入れようと野心を持つ。製錬の失敗は、桜の森の中で女が死ぬことで暗示される。森には特別な意味があるらしい。

桜は不運なイメージである。桜の木と花の全体もやはり銅製錬のプロセスを描く。類似点を探ってみると、暗い色の幹は炎で焼け焦げた銅鉱石のメタフォールで、白っぽいピンクの花は白熱光線を放つ溶銅のように瞬間的に咲いてあっという間に散る。桜の赤い実はアズキと似ていると思われたかもしれないが、それは食べられないサクランボウである。

12人の男はなぜ失敗したのか、と考えると、銅製錬の正しい技術を知らなかったというのが真実に近いのではないか？焼いて溶かせば銅を生産できると聞いたが、その際猛毒の亜硫酸ガスの煙が発生するとは知らなかったのだろう。それとも、一か八かの賭けでカミカゼ攻撃を試したのか？この疑問は日本の歴史の真相をちらりと見せる。

桜を日本精神の象徴と見るのは、人間の生命を尊重しない思想である。しかし、あえて目的のために命を犠牲にする行為を美しいと称賛したのは、慰霊の意識か失敗を正当化する意志か自滅の仏教的な肯定に始まっている。

女森と花輪スキー場

Updated 2009.12.16

▼　仮面について　ギャラリー　1; 12　十二

▼　仮面について　ギャラリー　2; 12,リンゴの樹、ナシの樹

▼　面、men、車、クルマンベ、リンゴと女森

仮面について　

ギャルリー　2　　　

12、リンゴの樹、ナシの樹

☆12という数字は粗銅が溶けて真昼の太陽のように白熱光線を放つ銅製錬の象徴である。鹿角地方の女森伝説では12人の男が岩手から女を追いかけて鹿角に来て花見のとき桜の木の下で殺す。直観的に選んだ東ヨーロッパのジプシー民話には女森伝説と同じ起源のメッセージが明快に伝わっている〔1〕。

*義理がたい死人

王子が王様からもらった金を旅の途中貧しい人たちにめぐみ、12ピアストル残った。ユダヤ人たちが死人を掘り出してなぐっていた。死人に12ピアストルの貸しがある、とユダヤ人が言った。王子はかわりに金を払った。死人は王子を村に連れてゆき、少女との結婚を手伝った。

*吸血鬼

ルーマニア人の美しい娘ニーツァが恋に落ちたが、どこから若者が来るのか、知らなかった。ある夜糸のついた針を背中にさして跡を追うと、若者はある御堂の墓にうずくまっていた。見られた仕返しに若者は娘の両親を殺した。娘は12人の召使いに財産を分けて言った。〈死んだら、森の中のリンゴの木の下にうずめておくれ。そうしないと、たたりがあるよ。〉その晩、墓から出てきた若者は、娘が何を見たか、話さないので、殺した。召使いは森に行ってリンゴの木の下に娘を埋めた。後半は王子が一輪の美しい花が咲く少女の墓を見つけるシーンから始まる。

*伯爵の息子と魔女の娘

伯爵の美しい庭に1本のナシの樹があった。魔女の3人娘が夜な夜なナシを1個盗むので、怪しく思った伯爵は3人の息子を交代で12時まで見張りさせた。上の2人は11時すぎに眠ってしまい、魔女の娘がナシを取るのを見なかった。しかし、3番目の息子は魔女の娘を見て、一目ぼれして半年追いかけた。白髪の老人が彼女を捕まえる方法を教えた。若者は聞いたとおり山で水浴びしている魔女の娘の下着を取って家に連れ帰った。7年後戦争が起きて…　

女森近くの

リンゴ園

中山のナシ

Updated 2009.1016

1　世界の民話: ぎょうせい

12というキー・ワード

▼　仮面について　ギャラリー　1; 12　十二

▼　福士川のページ

仮面について　

ギャルリー　1　　　

12　十二

☆大館市の南東にある十二所という古い町は、どういう理由で十二が付くのか ?その疑問に出会ったのは、3年前日本海に面した十二湖を撮影したあとだった。北の方に十三湖という広い湖があるのを見れば、十二の沼が点在するから十二湖と呼んだという俗説は信用がなくなる。それとも、中世に博多港と並んで繁栄した時代には十三の湖と沼が広がっていたのか ?しかし、誰もが当惑して想い浮べるのはヨーロッパの13という象徴的な意味だろう。およそ2000年前にイエス・キリストが13日の金曜日に十字架の上で処刑されてから、はるばるその不吉な数字は太平洋の島々に伝わってきたと考えることもできる。12の起源はイエスの12人の使徒だろう。12あるいは十二という数字は縁起とは関係がないようだ。いずれにしても、十二と十三は日本列島の各地に散在している。キリスト教が公式に伝来した中世後半からキリシタンが何らかの理由で広めたのか 、と想像してしまう。

鹿児島県指宿市十二町 / 岩手県藤沢町増沢十二木

大阪府淀川区十三(じゅうそう) / 大館市花岡十三森

　地名の起源については風土の共通点を探るという考え方もある。十二所と十二湖の類似は明々白々である。米代川対岸と尾去沢の露天掘り跡と凝灰岩の日本キャニオン。ただ後者には鉱山の歴史がない。

《仮面について》の考察から十二を象徴記号として解読すると、起源は単純だ。十は銅が溶けるときに放射する白熱光線を表わしている。二は北アメリカインディアンの仮面が打ち明けたように製錬炉の口で、縦書きの十二は幸運に銅が出来上がった瞬間を象徴的に表現している。そうすると、十三は製錬炉の中に物質が残ったデッド・エンドと見ていいのか ?白熱光線を放ちながら溶けた銅を捕えるのに失敗したということだろう。これは12時のベルで昼飯を食べはじめたが、13時まで終われなかった多忙な一日に似ている。

十二と�]�Uの象徴記号は自然に太陽と結びつく。12という数字はやはり自然の時間が背景にある。五大湖地方のメノミニ族によれば、太陽は正午に運行を止めて長い銅の円筒(=望遠鏡)から地上を眺める。

十二所の

別所川源流

▼　別所川のページ

十二湖の

濁川源流

▼　濁川のページ

Updated 2009.2.17

白熱光線、メノミニ族

▼　銅と太陽のアナロジー

製錬炉の口

▼　向かい合う仮面

12というキー・ワード

▼　福士川のページ

List 一覧; 仮面の古いストーリー

■　ダブル・イメージの実例　A B C

。。。

仮面について〜 63　　　　　

銅の古代史メモ　　B

4 6 523 553 593 604 606 612 620 645 649? 658 681 686 708 712 718 720 728 746 817

継体 欽明 敏達 推古 孝徳 斉明 天武 朱烏　1 元明 和銅　1 和銅　5 元正 養老　4 神亀　5 天平　18

製鉄遺跡[1] 天皇–鉄器生産 近江の鉄資源 小豆沢大日堂縁起だんぶり長者伝説 [後編] 仏教伝来-百済聖明王が金銅像献上 伎楽調度品伝来 五の宮が錦木伝説を都に流布 聖徳太子が摂政になる 十七条憲法の制定 斑鳩寺(法隆寺)建立 金銅仏像を初制作、翌年完成 伎楽舞伝習 太子と蘇我馬子が天皇記・国記・本記編集 中大兄皇子の大化改新　 錦木観音寺縁起　[前編] 富本銭-飛鳥池出土 安倍比羅夫の蝦夷征伐 最古の国産銅　舞楽伝来 天皇、日本書紀の編集を命ずる 古事記の編集も同じころ 長谷寺建立 秩父で天然銅発見の記事 尾去沢で天然銅発見説話 平城京造営開始 遷都3年 古事記完成 大日堂再建-行基の指導　舞楽始まる 愛媛金山出石寺で銅鉱石発見伝承 日本書紀完成 別所大日堂再建 法隆寺資材帳 空海、東北行化の旅

1　丹後半島遠所遺跡。砂鉄原料。木炭窯。最古の製錬炉　6世紀後半　

Updated 2008.12.18

仮面について〜 62　　　　　

銅の古代史メモ　　A

前47〜30世紀 25 16 9 4 3 1	古蜀 インダス エジプト クレタ 商、殷 周末期 縄文晩期 南シベリア 日本-- 弥生文化 前期 中期	三星堆遺跡—青銅製仮面 ブロンズの生活用具・彫像 ギザのピラミッド　青銅鏡　 青銅文明—クノッソスの迷宮　嘴壺 青銅時代　漢字の原形(殷) 彩色木彫　銅器に漢字 遮光器土偶(青森) 土面(北秋田) 青銅製刀(山形)[2] 青銅製短剣(エニセイ川)　狩猟文飾板 水稲農業が始まる　石器使用 小国家の発生 青銅器の伝来—北九州、近畿・近江(銅鐸) 吉野ヶ里遺跡(前3世紀〜後3世紀) 巴型銅器の石鋳型—鋳造[9]
紀元後 1〜2 2 3 4	後期 古墳時代	ふいごの羽口(滋賀石田遺跡) [10]　鉄器使用 女王卑弥呼の君臨 古墳文化の発達　銅鐸の出土なし 　水銀利用　埴輪 青銅鏡—中国製、国産 　　神社 大陸から金製装身具輸入 須恵器生産　窯の構築 鳥居の始まり 倭王武(雄略天皇?)が宋から〈安東大将軍倭王〉の称号を受ける

[エセーに役立てた年表なので、注記番号は書き込み順である。参考資料は省略した。]

2　三崎山遺跡　殷後期の製品。

9 鉱山の存在は否定的である。　　　　　　　　　　　　　　　　

10　羽口とは青銅器を生産する溶解炉に風を送る道具。土製。

Updated 2008.10.17

仮面について〜 61　　　　　

ゴールデン・マスク

☆小豆沢大日堂で演じられる舞楽の五大尊舞では、他にほとんど例がない金色の仮面二人が主役である。民話の言い伝えによれば、霊泉を発見しただんぶり長者と妻である。仮面の素材は桂に金箔。将棋で桂馬が金になるときがあるが、起源は同じだろう。桂の木は、中国の古い伝承で月に生えている樹だから、使用されるのか？

比内前田にある桂清水神社の桂の木は清らかな水を好むと言われるとおり泉のそばに高く伸びている。きれいな水には、浄化する性質とは反対に鉱物資源のある川という隠れた意味がある。生物がいない世界である。桂の樹が生えている月は青銅鏡のメタフォールだろう。そして、桂は葛(かずら)と言い換えてもいいように思える。葛(つる状植物)の浄化作用などに関しては、〈黒・白・赤、１;5 [3]〉を参照してもらいたい。

桂と金の組み合わせは、それを考えると、幸福なイメージかもしれない。しかし、視覚的に大日堂舞楽の金色の仮面がリンクするのは、古代ギリシアの高貴な死者が付けていた黄金の仮面である。ただ、それらが歴史の中でつながりがあったか、ということは明らかでない。

桂と金の組み合わせについては、他にこういう見方ができる。746年(天平18)の法隆寺資材帳に〈金 / 銀・水銀 / 白金葛・黒金葛 / 鉄〉という記述がある。特殊な漢字である金葛とは何か？続日本紀によれば、白金葛(びゃくろう)は〈しろなまり、スズ〉のことで、それと銅の合金が白銅(びゃくどう=青銅)である。黒金葛は何なのか不明だが、鉱物の記述の順序を継体天皇の章で抽出した〈金 / 白髪(水銀) / 黒・白・赤(化学的には水銀と硫黄、宗教的には銅を指示する)〉に当てはめると、銅のことだろう。金葛という漢字は、それだけ見ると、金と桂の組み合わせと重なり合う。金色の仮面の素材は文字のように記号論的に使用されて青銅を暗示している。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　[終]

□　おもしろい考察があれば、適当に書きたいと思う。

　　　　　　　　　　--- 長谷川

桂清水神社の泉と桂の樹

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大館市比内前田

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　[HHJ 1999]

Updated 2008.8.5

仮面の素材に関する話の始まり

▼　仮面について〜銅のテーマ　米代川劇場の顔見せ興行

継体天皇の章の記述について

▼　仮面について〜黒・白・赤、１;5 [1]

仮面について〜 60　　　

アズキのアズ　[3]　

☆小豆沢大日堂と舞楽は継体天皇と深いかかわりがある。地名の小豆(あずき)沢がどんな起源から来るのか、舞楽とトンボ伝説その他の古い記録には明示されていない。しかし、古事記の継体天皇の章にヒントがある。天皇が阿倍のハエヒメに生ませた3番目の子が阿豆(アヅ)王と記されている。この阿豆は小豆のことだろう。〈阿〉という漢字は、前に説明したように銅製錬を象徴する指示記号であると考えていい〔1〕。継体天皇と阿仁地方の鉱山の関係は伝えられていないが、全然関係がなかったと断定する根拠もない。夢を買う民話は、小豆沢と阿仁の関係を対比構造系の中にうっすらと浮かび上がらせる。夢で見た沢とそっくりな沢は、小豆沢という地名を与えられていたかもしれない。とはいえ、メッセージは鹿角地方に伝わる官製の幸福なドラマと対立する。

小豆は日本の食べ物だが、世界的に見ると、アズキのアズが言語として普及している。フランス語の〈as(アース)〉はトランプやスポーツのエース(A)という日常的な意味の他に、古代ローマの青銅貨という意味の古い名詞である。イギリス人はローマ帝国の影響を受けて〈as(アズ)〉という単語でおもしろい用法を編み出した。〈as〉という指示記号に潜在する複雑さが現われている。

□副詞 [比較]; It is as sure as I am alive. それは私が生きているのと同じくらい確かだ。

□接続詞 [仕方、程度、比較、理由、譲歩]; Do as you like. 好きなようにしなさい。The telephone rang as he spoke. 彼が話しているとき電話が鳴った。Rich as he is　裕福ではあるが

□前置詞 [措定]; He regards it as a foolish thing. それを愚かな事柄として見なす。

〈as…as〉は一見してミラー・イメージの形だが、これは本来ダブル・イメージの表現だろう。

旧阿仁町の中心街と

河川敷の黒い鉱滓

RIVER UTOPIA 2003

Updated 2008.4.16

参考: 大修館仏和辞典、旺文社英和辞典

1　仮面について〜26,27,28　よい踊りを盗む　[7] [8] [9]

仮面について〜 59　　　

アズキのアズ　[2]　

☆夢を買う民話をさらに解読しよう。

■　凧を揚げる…海の生物タコは水質汚染に非常に敏感である。それで鉱害の象徴にされるが、採掘と銅製錬作業などの鉱山労働で極度に疲労したり病気を患ったりした作業員もやはり鉱山経営の犠牲者である。このイメージはヨーロッパと共通している。フェリーニの映画《8　1/2》の冒頭に出るのはノイローゼの監督が凧になって脚を引っ張られる不安な夢である。これは、空中の魚釣り、一発勝負の危険な賭けである〔1〕。

■　夢の話を聞いた若い男が夢を買う…二人の旅行者の登場は、どんな必然性があるのか？この難問についてはカナダ太平洋岸に住むツィムシアン族の神話が説明している。夢買い民話は二人の旅行者の世代がかけ離れていることを通して、鉱山の歴史を暗示する。つまり、〈理想的な表現〉で考察したように天然銅の生成、鉱脈の発見、鉱山経営、悲劇的な挫折。それから時が流れて、新しい銅製錬技術を学んだ若者がその忘却に埋もれた鉱脈で鉱山経営に成功した、ということである〔2〕。しかし、二人の登場人物は仮面神話に必然的な〈屈折〉を想い起こさせる。フレーザー河中下流域の神話では仮面(=銅)を発見した所有者は自分では仮面を絶対に付けない。歌と踊りという役割(精錬技術)を知らなかったので、仮面の複製を作ってオリジナルを湖に返す〔3〕。この実例と思われるのが愛媛県の金山出石(きんざんしゅっせき)寺のご神体で、養老2(718)年観音像に似た銅鉱石が湧き出たとき空海が隠しておくように指示したという伝承がある〔4〕。仮面は他の人が付けるという屈折したストーリーは、アミダクジ・モードと言ってもいいが、それが現実のイメージに想像的に変換されると、別所大日神社の斜め左に立つ鳥居のような形式になるだろう。実際、大日神社のご神体は阿弥陀仏である。将棋の桂馬とチェスのナイト(騎士)もその例ではないか、と思う。

別所大日神社

　　　　　　　　　　　　　　　　　　

大館市十二所

Updated 2008.2.14

1　仮面を付けた人物の墓碑柱、理想的な表現

2　理想的な表現　

3　スワイフウェ仮面と言語的表象

4 NHK　歴史誕生　6　謎の水銀ルートを追え: 角川書店

仮面について〜 58　　　

アズキのアズ　[1]　

☆阿仁の民話〈夢買い長者〉については、〈米代川劇場の顔見せ興行〉で簡単に触れた。〈イヤリング〉でも夢と鉱山の類似性の例として挙げた。この民話の解読も難しいが、小又川の縄文遺跡で発見された可愛い遮光器式土偶と9月17日の阿仁川洪水被災地の撮影で民話の内部に光を当てるタイミングだと思った。

　昔、二人の旅行者が木の陰で昼寝をして、連れ立って歩いて行くと、年上の男が〈はあ、ここだここだ、このあたりだ〉と不思議そうに言った。昼寝をしたときに見た夢の景色とその辺の沢がそっくりだった。どんな夢か、と若い男が聞いた。小豆餅を食いながら凧を揚げている夢だ、と本人が答えた。若い男は考え込んで、その夢を売らないか、と言った。米1俵で話がまとまった。若い男は金掘り(鉱山師)で、そこでさりげなく別れると、年上の男が去ったあと人を集めて沢を掘った。すると、小豆餅のように鉱石が入っている鉱脈にぶつかった。村は鉱山で賑わうようになった。

　夢を売り買いするストーリーは今昔物語で読んだ記憶がある。昔とは、平安時代末期より古いにちがいない。阿仁鉱山にまつわる民話の中に特徴的な要素を探し出してみよう。

■　夢…夢に現われたシーンとそっくりな場所に行くというストーリーは、他にない。こういう夢の予告は一般的な物語で小豆沢大日堂舞楽と同じ起源を持つトンボ伝説でも語られる。しかし、この民話では夢の沢と目の前の沢が明らかに鏡の意識で見られているので、夢から現実への移行としてダブル・イメージの枠組みに入れるべきである。

■　小豆餅を食いながら…これは形と色が天然銅とよく似ているためにメタフォール(隠喩)になる。小豆餅を食うとは、亜硫酸ガスの毒を吸ったり白熱光線で目を傷めたりする辛い銅製錬作業のことだろう。

ダブル・イメージ

夢の沢

　　　　　　　　　　　　　　 天然銅

現実の沢

〔2〕

Updated 2007.12.13

１　日本の民話　　未来社

かたり: 北秋田郡阿仁町　吉田英一　

　採録: 松谷みよ子　　

2　小学館　世界大百科事典

仮面について〜 57　　　

イヤリング　[8]　

☆三輪山伝説とクレタ島の神話の間には、奇妙な偶然の一致がある。糸が通り抜けた鍵穴は鍵を差して扉を開ける仕掛けなのだが、フランス語では鍵をクレ(une clef)という。それに気づいてクレタ(Crete)の語源を調べたが、ギリシア語のKrete(クレーテー)以外には分からなかった。しかし、クレという発音は帝国海軍の造船所があった軍港呉(くれ)と紀元前6世紀すぐれた製鉄技術で中国の覇権を握った呉の国と共通の起源を持つにちがいない。

　クレタ島には、考古学的に恐るべき迷宮と考えられるような場所はない。多くの小さい空間で感覚的に構成されたクノッソスの宮殿が、迷宮を連想させるだけだ。エーゲ海の明るい明るい光の下でかわいらしくデリケートな芸術品を創造した女性的なクレタ島に、そんな神話があるのは不思議である。一方、三輪山のロマンスでは三巻きの麻糸の渦が象徴するように三輪山から離れた場所が銅製錬の舞台だが、現実には三輪山に製錬所があった。麻糸はそこへ導く。アリアドネの糸は、歴史に置き換えれば、クレタ島から出てどこか他に向かったと考えることができる。迷宮が実際にあったのは、ミノタウロスのように他の生き物の頭を付けた人間の絵を好んだエジプトだったかもしれない。

　クレタ(ミノア)文明は青銅器時代の紀元前2800年から紀元前1100年の間に繁栄した〔1〕。しかし、青銅製品よりも宝石類の加工品と陶器、金製品が主流だった。この背景には自然環境と個人生活の快適さを愛護する精神がある。ドリス系のギリシア人は平和な島を征服したが、そういう精神は取り入れた。

　資料から見ると、宮殿式と言われる祭祀用の壺は意味ありげなメッセージを送っている。クレタで神聖な形である双斧と牡牛の頭が描かれ、大地の下には3種類の渦巻きが連続的に並んでいる。牛の角は日本の鹿のように稲妻のメタフォールである。

三輪山　　　　　　　　　　　　　　♂♀

　　　　　　　　　　　　　　　　

糸

クレタの迷宮　　　　　　　　　　　♂♀

　

蛇女神

象牙と金

パリジェンヌ

壁画の断片

〔1〕

Updated 2007.8.19

1　朝日百科　世界の美術

仮面について〜 56　　　

イヤリング　[7]　

☆三輪山伝説はプシュケの愛の物語とアリアドネの糸の伝説を混ぜ合わせたかのようなストーリーである。それが真実かどうかは別にして、ギリシア神話の馴染みぶかい二つのドラマを背景に並べてみよう。

　プシュケという美しい女が、あるとき美と愛の女神アフロディテの息子エロースに愛される。プシュケは闇の中で抱かれる夜を送るうちに、どんな相手なのか知りたくなり、明かりをつけてエロースを見てしまう。彼は、それ以来プシュケの前に姿を現わさなくなった。

プシュケは、ギリシア語で霊魂という意味である。プラトン哲学が考えれば、霊魂は人間を超えて美と愛の子どもと一緒になるというのが物語のテーマだろう。しかし、なぜ夜の闇が古代ギリシアでも三輪山と同じく絶対的な条件なのか？

製錬炉の中で銅は溶けるときにまばゆい白熱光線を放つが、その瞬間に目を傷つけられないように銅を捕らえなければ失敗である。だから、闇の中での作業になる。古代ギリシアでも銅は太陽の息子に等しい高貴な存在として扱われ、その誕生は性的な連想を誘ったように思える。これは、プシュケの恋愛に夢の中での出来事のようなイメージを与えている。夢と鉱山は、それが引き起こす幸福と不幸の極端な光景で重なりやすく、阿仁川流域には夢を売り買いする民話がある。

アリアドネの糸は、ミノア文明期の青銅の島クレタの悲劇である〔1〕。ヨーロッパ文明の原型を作ったと言われるミノス王は、牛の頭を持った子どもミノタウロスを迷宮に閉じ込めて、アテナイの若い男女それぞれ7人を毎年生贄に捧げた。3年目にエーゲ海の名の由来であるアイゲウス王の息子テセウスが怪物退治のためにその中に混じる。ミノス王の娘アリアドネは英雄に味方して迷宮から迷わず脱出できるように麻糸を引いて行かせた。テセウスは、ミノタウロスを殺したあと麻糸をたどり無事に脱出した。牛頭の怪物とは、ギリシア悲劇風のマスク(仮面)をかぶった銅製錬作業者の漫画的な表現である。

　

内陸鉄道　合川駅

撮影; 2007.5.10

RIVER UTOPIA

　　　　　　　　１１

Updated 2007.6.16

1　小学館　世界大百科事典

仮面について〜 55　　　

イヤリング　[6]　

☆カタツムリはデンデンムシとマイマイという別名を持っている。日本の民俗学の創始者柳田国男は昭和5年に、近頃は蝸牛を見かけなくなったと嘆き、呼び名の複雑な変化について考察した。それは関西のデンデンムシ系と東国のマイマイ系に分けることができ、その二つより古いと思われるカタツムリと混在している。兵庫県で生まれ育った柳田自身もその三つの呼び名を知っていたという。この混在状態はあまりにも激しく、民俗学に興味のない人でも不思議な感じがするだろう。柳田はそれを文学的に解釈して、なぜか鉱山を社会資料の中に入れていない。しかし、彼が最初に提起した疑問に解決の糸口がある。現代的に言い換えれば、〈どのようにして最初同一の事物について二つ以上の単語が分立して、割拠するようになったか? 〉

これはダブル･イメージの定義にぴったり嵌まる。雨の日の可愛らしい生き物は、昔の人には恐怖と不安の渦巻きだった。何か悪いことが起きれば、呼び名を変えた。しかし、実体を言い表わすか歴史的な現象を伝えるように思えるところは保存したので、デンデンとマイマイのミラー･イメージはなかなか崩れない。

　デンデンムシの語源は、田田虫と書けば、明らかになる。この漢字は製錬炉の中で銅が白熱光線を発する光景を表現している。マイマイは渦を視覚的に言い表わす巻き巻きが変化したものだというが、イギリス人が〈Ｍｙ！〉〈Ｏ, ｍｙ！(おや、まあ)〉と軽い驚きを表現するときの〈マイ〉との関係を疑わないではいられない。カタツムリを見たときの心情に似ていると思う。

柳田によれば、室町時代には舞舞いと呼ばれた技芸集団が流行していた。神社に所属して祭りの日に舞を舞う職業人と諸国を渡り歩く越前丹生郡の幸若大夫のような芸人〈マイマイドン〉である。くるくる回る踊りは現代でも人の目を楽しませる。

　　　ダブル･イメージ

デンデンムシ

　　　

マイマイ

　

カタツムリ

伝統的なロール・ケーキに見る渦巻き

Updated 2007.4.16

仮面について〜 5４　　　

イヤリング　[5]　

☆三巻きの麻糸のストーリーは銅製錬(精錬)作業の象徴である、と考えるべきだろう。これは小豆沢大日堂舞楽の章を参照してほしい。三巻きについては、いくらか問題がある。

□それが同心円状の輪に似ていると見れば、木の年輪との連想から薪を指示する。薪は、鉱石を焼いて粗銅を取り出すときに使われる陸上植物であり、金属を溶かすために使われる木炭の材料である。真木という当て字は、それに由来して、崇神天皇の名前の冠になった。地名で言えば、鹿角地方には豊真木沢川、夜明島川支流の真金(まき)山沢の例がある。

□三巻きの麻糸のフォルムは、普通なら渦巻き状のイメージである。古事記の作者太安麻呂(おおのやすまろ)が言い伝えられた歴史を尊重していれば、流水紋銅鐸に描かれたトンボと魚と渦巻きがある情景のそれを想い描いていたはずである。

□しかし、このストーリーには開放的に広がる渦巻きのイメージが適合する。これは貝殻によく見られる渦巻きである。詩人ジャック・プレヴェールは、麻糸のロマンスに影響されたかのように二匹のカタツムリが葬儀に出かける詩を書いた〔1〕。銅製錬が起源だと思われる要素を取り出して詩のあらすじを書いてみよう。

　二匹の黒い殻のカタツムリが枯葉の埋葬に出かける。角に喪章をつけて。辿りついたときには、もう春。死んだ枯葉はよみがえっていた。太陽が、ビールを飲め、喪を取れ、とカタツムリに言った。目の白さを黒ずませるから。棺の物語は悲しいから。生き物と植物がみんな歌いだした。カタツムリは感動して家に帰った。月が彼らの上で見張り番をしていた。

このイメージは、エスカルゴ料理を好んで食べるフランス人には特にショッキングだろう。聴覚平衡器官を正常に維持するための呪術的な料理だとすれば、カタツムリには不幸と幸運の両義的な意味がある。　

流水紋銅鐸鋳型の渦巻き

大阪府東奈良遺跡

三巻きの麻糸

Updated 2007.2.19

1　埋葬に出かけるカタツムリの歌

--- Paroles ; Jacques Prévert

仮面について〜 53　　　

イヤリング　[4]　　

☆三巻きの麻糸のロマンスは、初めて国を治めた天皇と言われる崇神(すじん)天皇ミマキノイリヒイニエノミコトの物語に出てくる。このストーリーは自然保護に関心のある人なら自然環境破壊という枠組みで読まなければいけない、と直感する。簡単に古事記からまとめる〔1〕。

あるとき疫病が流行して、人民が死に絶えかけた。天皇は夢占いを試みた。すると、オオモノヌシ(大物主神)が現われて、〈これは私の意志である、オオタタネコに美和神社の前を清めさせれば、たたりが消え国が平安になる〉と告げる。オオタタネコという者を探し出すと、彼は御諸山(みもろやま,三輪山の別名)にオオミワの神の前を祭り、平たい皿を作って天の神と国の神の神社を定め、宇陀に赤色の盾矛、葛城に黒い盾矛を祭り、坂の神と河の神に御幣を捧げた。平和な国にもどった。

　ところで、端正な容姿のイクタマヨリヒメに毎晩、美男子が現われた。すぐに妊娠したので、男が誰か知るために彼女は赤土を床の上に撒き、夜中に麻糸を通した針を男の衣の裾に刺した。朝見ると、その麻糸は三巻きだけ残り、扉の鍵穴を通って外に出ていた。それを辿ると、美和山の美和神社に行き着いた。それで、オオタタネコがオオモノヌシの子孫であることが分かった。

　三輪という漢字は、麻糸の三つの輪を畏怖して表面には出ない。三輪山は神の実体であり、三輪の社は最も古い神社であるとされている。オオモノヌシが海の向こうから来たとき国作りが成功するようにオオクニヌシ(大国主命)に要求して、そこに祭られたのが起源で、非常に恐れられたという。しかし、この幻想的なロマンスは、なぜか人を魅惑する。特徴的なイメージを解読してみよう。

□麻は織物の原料で、製錬のとき亜硫酸ガスを浄化する植物を代表する。麻糸が鍵穴を抜けることで蔓状植物と有害な煙を指示する。小豆沢大日堂舞楽と三巻きの麻糸の間には、意味論的な違いがある〔2〕。

□麻糸を通した針は、たぶん魚の骨で作ったものだろう。

□鍵穴は、銅製錬と鋳造所、錠などの青銅製品を象徴的に暗示する。鍵穴のフォルムは天皇陵の前方後円墳に似ているにちがいない。

　

三巻きの麻糸の想像図

　　　　　　　11

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

Updated 2006.12.14

1　倉野憲司　校注　岩波文庫

2　仮面について〜52

仮面について〜 52　　　

イヤリング　[3]

　　　　　　　　　　　☆めまいの現象を解明するのはこのエセーのテーマから外れる。古代社会の呪術師か医者が驚くべき分析力で耳の奥にある三半規管とその現象の間に密接な係わりがあると見た、と言うだけで十分だ。しかし、カタツムリに似た聴覚器官と三半規管が連動していると考えたかもしれない、と疑問が湧く。聴覚器官の渦巻きは右に3周して三つのリングにつながるが、この構図は小豆沢大日堂に取り入れられているのだ。本堂に向かって右に鳥居に吊り下げられた茅の輪があり、健康と幸運を祈る人はそれを左巻きに1周、右巻きに1周、左巻きに1周する。これは舞楽とは無関係である。舞楽で行なわれる庭場めぐりは、道路から入ってきた能衆が時計の針と同じ方向に3周してから各部落の幡(はた)をそろえる。舞楽の始まりに行なわれるこの儀礼は重要なものらしく、谷内部落の能衆は大日堂に来る前の未明の儀式でアマテラスをまつる神明社の周囲を3周するという。

その儀礼が演じられた理由は、悲劇の記憶を保存することだろう。大日堂舞楽は、レポートで明らかにしたように銅製錬と鋳造を記念するために舞楽のイメージをメタフォール的に組み立てていた[1]。同じ手法で大日堂の境内への入場行進には、耳の内部からイメージを取った。流水紋の銅鐸を傍らに置けば、並行関係が分かる。能衆はトンボであり、渦巻きを演じて、魚=銅鉱石を料理する大日堂に入る。

庭場めぐりは、連想的に堂々巡りという慣用表現の由来について考えさせる。ある百科事典の説明では、国会議事堂での議論が同じところを際限もなく回って進展しないことである。しかし、堂は銅製錬炉のある建物を映像的に描いた漢字で、それが反復するのは鏡の製造を指示している。成功すれば、威風堂々の凱旋だが、失敗すれば、恐ろしい運命が待つ。

茅の輪

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

幡(はた)ぞろえの前に行

なわれる庭場めぐり

　[HHJ]

Updated 2006.10.24

1 黒・白・赤、１;5

仮面について〜 5１　　　

イヤリング　[2]

　　　　　　　　　　　☆なぜ三つの輪なのか、という疑問は2000年1月2日小豆沢大日堂舞楽を見に行ったときから渦巻いた。各集落の能衆の行列が神社に入ったとき本堂の前を3周する庭場めぐり。本堂に向かってその庭場と反対側にある小さな神社の茅の輪くぐり。五大尊舞で大博士が持っているトランプのクローバー型の三つ輪の鈴。それは当然、三輪山とその伝説で神秘的に語られる三巻きの麻糸につながる。そして、古ぼけた三つの輪のイメージが、記憶の隅で揺れる。二ツ井の梅林寺では3回転してから本堂に入る。

三半規管の三つのリングが起源だと考えても、反論は多くないだろう。スポーツマンだった時代から、ぼくはその器官を運動感覚の代名詞のように思っている。最新の知識によれば、それはめまいの現象と係わる。日本平衡めまい医学会HPのおもしろい説明を聞いてみよう。

〈脳は、内耳の三半規管や耳石器からの信号、目からの視覚情報、手足、首などの筋肉や関節からの知覚情報などを受けて自分の運動や姿勢を認識します。通常はこれらの感覚の間に矛盾はなく、自分の運動や外界の変化をそれなりに知覚することはあっても、これを「めまい」と感じることはありません。しかし、例えば病気で内耳の調子が悪くなると、実際の動きや姿勢とは異なる情報が内耳から発信されます。すると、その信号によって、実際には頭や体は動いていないのに、それらが動いたときと同じような筋肉の反射が起こります。また、内耳からの異常な情報が直接脳にも伝えられます。これらの誤った情報は、現実の運動で生じるものとは異なり、ほかの視覚や筋肉や関節などの体の感覚とうまく一致しません。私たちは、このような複数の感覚情報のアンバランスを「めまい」と自覚するのです。したがって、内耳の病気だけでなく、視覚、首や腰の異常、またそれらの情報入力を統合する脳の病気でも「めまい」を感じます。〉

　視覚と三半規管の連係プレーは誰でも経験的に分かることだ。

HHJ　カヴァー・コラージュ　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

Updated 2006.8.15

仮面について〜50

　　　　　　　　　　　　　 イヤリング　[1]

　　　　　　　　　　　　 ☆ジプシーの伝説〈ゴールデン･イヤリング〉は、それを付けると、恋に落ちるという。ペギー･リー(Peggy Lee)のせつない歌でスタンダードになった。イヤリング(earring)は、直訳すれば、耳輪だが、これは北アメリカインディアンのシャーマン(巫女)が使う《魂を捕らえる罠》と起源が同じである〔1〕。銅製の円筒形というフォルムは、溶解した銅=太陽を白熱光線に目をくらまされないで見る望遠鏡からイメージを取っている。北アメリカの遺跡から大量に出る円筒形の銅の小片、世界各地にある指輪、富本銭のように穴の開いた青銅貨も、その同類だろう。しかし、耳飾りが本来金属の輪だったかどうかは、明らかでない。それは呪術的な必要性から考えれば、金属や宝石やガラスなどで作られた何らかの形のオブジェだったかもしれない。例えば、ゼンマイの切り口から出るゴールデン･ドロップ。

なぜ耳飾りなのか、という疑問は耳の渦巻きに聞いてみれば、自然に分かる。そのアクセサリーは製錬による収穫物か鉱山に深く係わるものだから、である。トンボと渦巻きと魚のあるストーリーを耳飾りの傍らに並べてみよう。

ところで、耳は何と言っても音と声を聞く聴覚器官だから、それを軽視するわけにはいかない。小豆沢の大日堂舞楽では大博士(だんぶり長者)が鈴を耳に当てて携帯電話を聞くような仕草で宇宙のコレスポンダンス(万物照応)を探っていた〔2〕。古代人の聴覚は衛星放送のアンテナのように優秀だったようだ。鼓膜の奥にはカタツムリの殻に似た蝸牛管がある。この渦巻きは流水の渦や眩暈の渦のイメージに結びつくが、事実カタツムリの前には運動のバランスを制御したり回転を知覚する三半規管がある。三つの輪を見て驚かない人は想像力かない。

平衡聴覚器官

小学館世界大百科事典

脳へ

蝸牛管断面

Updated 2006.6.17

1　仮面について〜9　　銅と太陽のアナロジー

2　仮面について〜17　　赤･白･黒, 1;5 [7]

▼ 耳のゼンマイ巻き

仮面について〜49

　　　　　　　　　　　　　耳のゼンマイ巻き　[8]

　　　　　　　　　　　　☆ゼンマイとワラビはシダ植物の一種で、若い芽の渦巻きが似ている。リヴァー･ドキュメンタリー制作で川のほとりに生えたのを撮影する機会が増えてから、ぼくはその違いに注意するようになった。このエセーのために重要なのは、ゼンマイには煙を連想させる柔らかい綿毛がついていて、茎の切り口から黄金色の滴が垂れるということである。重要な共通点は、渦巻きが次第に展開してシダ類の葉を開くことである。古代の製錬技術者と作業関係者は、そこに銅製錬で見る特徴的なイメージとのメタフォールの一致を感じ取った。ゼンマイの方が象徴力が強い。

ヒッチコックの映画《海外特派員》に関する対話を参照してもらいたい〔1〕。スコット･フォリオット記者が名前についてアメリカ人の特派員にこう説明する。〈fが二つで、フォリオットだ。先祖が王様(ヘンリー8世)に首を切られて、以来Fがffになった。〉

編集長―問題は小文字のffのフォルムを見ると、何か、連想を誘うということですよ。古い型の拳銃、ワラビやゼンマイ。ワラビは、イギリス語ではロイヤル･ファーン(royal fern)と言って、何やら高貴なイメージがある。[注;王族が鉱山経営者だったからである。]

特派員―(略)ぼくは最初にそのシーンを見たとき、フランスのガリマール出版社のポケット版コレクション・フォリオ(COLLECTION FOLIO)を想い出したけれど(略)…フォリオの意味はフランス語でも同じ、二つに折った一枚の紙のことです。といっても、映画の中には出てきません。

編集長―つまり、逆V字型の構図で、ミラー･イメージというわけだよ。そして、この小文字のfは、手書きにすれば分かるが、渦巻きのイメージなんだ。もう少し想像すれば、五線譜の最初に付ける符号に似ている。渦巻きは、銅製錬の作業で必然的に起きる眩暈のメタフォールだ。S字型に変化して有毒な煙を表現する場合もあるが、鉱山全体の象徴としてラビリントス(迷宮)の指示記号にもなると考えていいかもしれない。ロイヤル･ファーンはそのすべてを表現するイメージだから、尊い植物だと古代の人は信じたにちがいないな。イメージは、この場合映像と言っていいが、それと類似するフォルムに働きかける力がある、と呪術的な知性は考えるんだ。

これはゼンマイについても言えることである。

ゼンマイの煙

八方山の麓、JR奥羽本線のわきで採取した。

ゼンマイの滴

早口の対岸木越川源流で見つけた。

Updated 2006.4.17

1 ▼　無意味な破片: 東京駅暗殺事件~15

▼　煙と灰と葉

▼　理想的な表現　[C]

仮面について〜48

　　　　　　　　　　　　　耳のゼンマイ巻き　[7]

　　　　　　　　　　☆耳のゼンマイ巻きというジェスチャーは夜店の玩具を連想させたが、実際にそういう愉快な仕掛けを見たのではない。神明社の祭りの日に並ぶ夜店で楽しんださまざまな遊びが、記憶の中で漠然としたネットワークを作っていたのである。参考のために書きとめる。

渦巻きのパイプ。吸い口から息を吹き込むと、渦が開いてまっすぐに伸びる。空気を入れないと、紙の内側の細いスプリングの力で渦巻きに戻る。パイプに描かれた模様は全然覚えていない。〈ビードロ吹き〉と呼んでいたと思ったが、世に言う〈ビードロ吹き〉には渦巻きがない。とはいえ、ガラス製造と製錬には歴史的に密接なつながりがある。　

夜店には、ベルトの渦巻き遊びもあった。ベルトを二つ折りにして巻いた渦には中心が二つあるように見える。二つ折りの本当の中心と思ったほうに人差し指を入れるが、渦巻きをほどくまで、見抜けない。

耳のゼンマイ巻きに関連して、もう少し実例を挙げよう。古代エジプトの神官の奇妙なヘア･スタイル〔1〕。これは両耳の上に一枚の鳥の羽に似た形の髪を残してあるだけで、煙のようにも見える。大日堂舞楽の五大尊舞に登場する黒い面には両耳の上に鳥の羽をデザインした飾りが付いている。起源は同じだろう。このイメージは、飛鳥(あすか)という地名や死んだ鹿の耳から百舌鳥(モズ)が飛び出したという仁徳天皇時代のエピソードにあるとおり富と幸運を告げる記号である〔2〕。

昔の時計はゼンマイで動いた。柱時計はそれを巻いて振り子を動かすが、このフォルムは伝統的な柱時計では太陽の円盤である。江戸時代に国内の細工材料の銅は円盤の形にしたという〔3〕。日の丸の旗には、銅の歴史が現われている。動力としての鋼の渦巻きをゼンマイと名づけたのは、形と運動が植物のゼンマイに似ている、と輸入された時計を見た日本の鉱業関係者が思ったからだろう。

流水紋

渦巻き

Updated 2006.2.17

1　？

2　仮面について~　21　よい踊りを盗む{2}

3 　銅の文化史: 藤野明　新潮選書

ヒッチコックの映画を参照にしてゼンマイの渦巻きについて考える

▼　無意味な破片: 東京駅暗殺事件~15

仮面について〜47

　　　　　　　　　　　　　耳のゼンマイ巻き　[6]

　　　　　　　　　　　　☆紀元前16世紀に作られたクレタ島の嘴壺と広島の銅鐸の目の表現には、外観以上に同一の芸術的な根拠がある。これを製作した精神は紀元前47世紀の中国か紀元前30世紀のインドか紀元前25世紀のエジプトの何らかの創造物あるいは伝承から独特な型を受け継いだに違いない。地中海では両目が串に刺した魚つまり銅を見ている場面を描き、ユーラシアの東の島では両目が銅製品を見ている場面を描いた。これは青銅鏡に映る顔からヒントを得たはずである。嘴壺は陶器なので、両目の中に銅を表わすフォルムを描いた。この形式にはスワイフウェ仮面とクウェクウェ仮面の関係のような対比構造系(パラディグム)があったと考えられる。

ところで、日本には嘴壺の目の中とほとんど同じフォルムの創造物がある。雄略天皇のエピソードで知ることができた宮殿の屋根の上に載せられた鰹魚木(かつおぎ)。これは統治者の特権的な象徴だったが、いつの頃からか、神社の屋根に置かれるようになった。この原型に近いと思われるのが、茨城県の虎塚古墳の壁に横に並んで描かれた15本の朱色の棒である〔1〕。この古墳には船と2枚の青銅鏡も描かれ、奇妙なことに円と三角形だけが非常に正確である。三角形の上に逆三角形が付いたフォルムは、おそらく鏡の映像を意味する記号で、二つの円盤が鏡であることを語っている。

S字型の渦巻きは、いわゆる唐草模様に変化して発展した。この起源はエジプトとメソポタミアの睡蓮文様で、ギリシアで洗練されてインドや東アジアに広まったと言われる〔2〕。クレタ島の石棺に描かれた優雅な音楽の聞こえそうな儀式の情景には、縦に連続したS字型の渦の中心に白いマーガレットの花が飾られている〔3〕。これはすでに考察したとおり銅製錬の白熱光線のメタフォールである。植物による表現には、環境と生命を破壊する製錬に反対して〈健康への憧れと自然回帰〉を置くという心理が感じられる〔4〕。

ギリシア陶器の蔓草風の文様

クレタ島の石棺に描かれたS字型渦巻き

虎塚古墳

茨城県勝田市

Updated 2005.12.14

1　週刊朝日百科　世界の美術

2　小学館　世界大百科事典

3　週刊朝日百科　世界の美術

4　仮面について〜理想的な表現

仮面について〜46

　　　　　　　　　　　　　耳のゼンマイ巻き　[5]

　　　　　　　　　　　　☆トンボの目玉に人差し指で渦巻きを作るという遊びは、北アメリカ･インディアンの仮面に関する考察を信用すれば、鉱山労働での眩暈の表現だろう〔１〕。銅製錬作業の従事者が白熱光線で視覚の機能が一時的に麻痺したり、あるいは採掘労働者が酸素欠乏症でそうなるかもしれない。このジェスチャーは、トンボと自分が同一であることを示してユーモラスである。

とはいえ、その状況の恐ろしさは青銅製品の銅鐸に刻みこまれている。両目の間に右巻きの一対の渦巻きがあるのは、眩暈の表現である。クレタ島の嘴壺では渦巻きがS字型に連結された構図で描かれ、銅鐸との類似的な構造から左右の楕円形が両目のデザインであることが推察できる。すると、目を半分に分ける白い線と楕円形のフォルムは古代ギリシアで高貴な死者の顔を蔽った黄金のマスクと遮光器式土偶を眼前に映す出すだろう。嘴壺には目が何を見たか、二ツ井町小掛の煙管人形のように記号(銀色の目)と指示対象(精錬炉の銅)の密着の手法で表現されている〔２〕。収穫した数匹の魚、つまり、銅である。これと形が似たものに鰹魚木と伝統的な食べ物目刺しというのがあるが、起源は同じだろう。

眩暈のジェスチャーとよく似た表現に、〈クルクルパー〉がある。耳の上で渦巻きを作る動作が〈頭がいかれてる〉という意味を表わすのは普遍的で、地球のどの地域でも通用する。映画《アフリカの女王》でハンフリー･ボガート(Humphrey Bogart)演じる船長が川を下るおんぼろの船でその手振りをして見せたのは興味深い〔３〕。

小掛(こがけ)の煙管人形

　　　　　　　[HHJ]

嘴壺

週刊朝日百科

Updated 2005.10.11

１　仮面について〜9　　銅と太陽のアナロジー

２　仮面について〜16 黒･白･赤、１; 5

３ THE AFRICAN QUEEN 1951年制作。イギリス。

監督： ジョン・ヒューストン　John Huston

仮面について〜45

　　　　　　　　　　　　　耳のゼンマイ巻き　[4]

☆トンボと銅製錬の間にある秘密の通路は、他にもっと探せば、ギャラリーのように見えてくるにちがいない。特別なのは、トゥルニエ(Michel Tournier)が小説《黄金のしずく》で描写した北アフリカの謎めいた古い歌である。黄金のしずくの形をした首飾りを付けた黒人女のダンスに合わせて、観衆がうたう。

〈（略）だが、トンボの羽は中傷、／コオロギの羽は文書、／中傷は死の奸計の裏を掻き、／文書は生の秘密を暴く。／トンボは死の奸計を文書にしたため、／コオロギは生の秘密を文字で書く。〉

フランス語だとすれば、トンボ(libellule リベリュール)と中傷( libelle リベル　誹謗文書)は言葉遊びで、ダブル・イメージのようである。黄金の首飾りはこの歌の秘密を開く。青銅鏡が周囲の映像を切り取る魔力があったことから象形文字が発明されたという考察を想い出せばいい。〈(文字という)記号システムの自立で、人間は初めて環境の呪縛から解放された。表音文字の地中海世界では、それによって記号と指示対象が明確に分かれた、とぼくは想像する。因果関係など事物の間にどんな関係付けの線を引くかは、合理的な知性の自由で、存在の可能性である。過去の記憶と環境に生物のように密着していた機械的な意識は、かなり柔軟に自然と社会の不安定な動きに対応するようになっただろう。この変化は、歴史的事実かどうかは別にして、中国では青銅鏡から象形文字への移行に比較できる。鏡の映像は、古代人の意識には初期のテレビ以上の魔力があったにちがいない。漢字はヴィデオ・カメラ付きコンピューターのインターネットのような装置である。環境と頭の中に存在するものを写し取り固定保存して、その記録を他の人々に時空を超えて伝えることができた。〔1〕〉

北アフリカでは、トンボは文書と密接な関係にあった。それは東アジアでのように青銅製品に描かれるのではなく、文字を記す。実際、紙の文書には金属製の鉛筆で書いた。歌の解説をする余裕はないが、死の奸計とはジレンマを引き起こす銅製錬の悲劇のことだろう。

　　　　　　　　　　　　　　　

アトリエのPC

Updated 2005.8.15

1　仮面について〜14　　黒・白・赤、1 ; 5　[4]

仮面について〜44　　

耳のゼンマイ巻き　[3]

　　　　　　　　　　☆トンボは〈銅鉱脈の発見とそれに続く製錬あるいは冶金による一連の痛ましい犠牲の象徴である。〉小豆(アズキ)沢にある大日堂舞楽の考察で、そう書いた〔1〕。犠牲をも表現するということは、だんぶり長者伝説と大和朝廷が大掛かりに制作した官製の舞楽では表面に出ない。しかし、黒・白・赤の色彩は〈銅という神聖な実体を宗教的に指示するための配色〉だから、それと同じ3種類の色のあるアズキも銅製錬の悲劇的な裏面を開き示す象徴的な事物だと考えられる〔2〕。一般的な赤いアズキ煮は天然銅に似ているが、豆はトンボの目玉に色と形が似ているので、アズキがアキヅ(蜻蛉　トンボ)に転化したらしい〔3〕。いずれにしても、トンボは銅製錬と多義的な関係を持つ。その起源あるいは背景を語る資料の存在は聞いたこともないが、イメージとしては案外多様に伝えられている。その例を並べる。

A 　蜻蛉島---古事記の雄略天皇(オオハセワカタケル)の章は、日本が蜻蛉島と呼ばれた由来を語る。猪鹿(しし)がいると誰かが言ったので、待っていると、腕のタコムラに虫がついて、それをアキズが食ったという晦渋な出来事である。

B　秋津鉱山---トンボの名は秋の哀愁を漂わせるが、青森秋田県境に近い下内川源流にあった鉱山で、詳細は分からない

C　髭剃り---鉄製錬で作られるが、ニッケンの使い捨てカミソリの袋にトンボのマークを見て、昔の髭剃りは柄の形がトンボの羽に似ていたと気づいた。柄から刃が出てくる様子も何となくトンボなどの昆虫のイメージである。

D　トンボ印の鉛筆---鉛筆にトンボのマークが付くのをおもしろいと思って、若い頃超現実主義的なコントを書いた。羽の生えた考える鉛筆が書くにつれて自分の死が近づくのを意識して悩む。このトレード・マークが打ち明けるのは1927年東京の鉛筆製造会社が黒鉛と粘土を焼き上げて鉛筆の芯を作る工程とトンボの起源の共通項を認識していたということである。青銅製品と文字の深い関係については、すでに考察した。

　　　　　　　　ダブル・イメージ

アズキ

↓↑

アキヅ

天然銅の発見に始まる一連の出来事

Updated 2005.6.15

1 仮面について〜13 黒・白・赤,1;5 [3]

2 仮面について〜12 黒・白・赤,1;5 [2]

3 仮面について〜 7 銅のテーマ〜米代川劇場の顔見せ興行

■　ダブル・イメージの実例　A B C

　　 Atelier Half and Half