この研究事業で分析対象にした農薬リスト(2003年10月25日作成)
分析法の概要(2003年11月29日作成)
Q&A 集(2003年11月29日作成)
規制されている項目数として104の農薬を対象にした。一項目で複数の化合物名を記したものについては、それぞれの検出下限値・添加回収率を求めた。
BHC(α) | (α)クロルフェンビンホス | デルタメトリン | フェンバレレート |
BHC(β) | (β)クロルフェンビンホス | テルブホス | フェンプロパトリン |
BHC(γ) | クロルプロファム | トラロメトリン | ブタクロール |
BHC(δ) | ジエトフェンカルブ | トリアジメノール | ブタミホス |
EPN | ジクロフルアニド | トリアゾホス | フルジオキソニル |
EPTC | ジクロルボス | トリフルラリン | フルシトリネート |
o,p'-DDT | ジコホール | トルクロホスメチル | フルトラニル |
p,p-DDD | シハロトリン | パクロブトラゾール | フルバリネート |
p,p'-DDE | シハロホップブチル | パラチオン | プレチラクロール |
p,p'-DDT | シフルトリン | パラチオンメチル | プロシミドン |
アクリナトリン | ジフルフェニカン | ハルフェンプロックス | プロチオホス |
アラクロール | シプロコナゾール | ビテルタノール | プロピコナゾール |
アルドリン | シペルメトリン | ビフェノックス | ヘキサコナゾール |
イソプロカルブ | ジメチルビンホス | ビフェントリン | ペルメトリン |
ウニコナゾールP | ジメテナミド | ピラクロホス | ペンコナゾール |
エスプロカルブ | ジメトエート | ピラゾキシフェン | ベンダイオカルブ |
エディフェンホス | シメトリン | ピリブチカルブ | ペンディメタリン |
エトキサゾール | ターバシル | ピリプロキシフェン | ホサロン |
エトプロホス | ダイアジノン | ピリミカルブ | ホスチアゼート |
エトリムホス | チオベンカルブ | ピリミノバックメチル | マラチオン |
エンドリン | チオメトン | ピリミホスメチル | ミクロブタニル |
カズサホス | チフルザミド | ピリメタニル | メタミドホス |
カフェンストロール | ディルドリン | フェナリモル | メチオカルブ |
キナルホス | テトラコナゾール | フェニトロチオン | メトラクロール |
クレソキシムメチル | テニルクロル | フェノブカルブ | メフェナセット |
クロルピリホス | テブコナゾール | フェンスルホチオン | メプロニル |
クロルピリホスメチル | テブフェンピラド | フェンチオン | レナシル |
クロルフェナピル | テフルトリン | フェントエート |
1 | Acrinathrin | 24 | Deltamethrin | 54 | Fosthiazate | 84 | Pyrimethanil |
2 | Alachlor | 25 | Diazinon | 55 | Halfenprox | 85 | Pyriminobac-methyl |
3 | Aldrin | 26 | Dichlofluanid | 56 | Heaconazole | 86 | Pyriproxyfen |
4 | Bendiocarb | 27 | Dichlorvos | 57 | Isoprocarb | 87 | Quinalphos |
5 | α-BHC | 28 | Dicofol | 58 | Kresoxim-methyl | 88 | Simetryn |
β-BHC | 29 | Dieldrin | 59 | Lenacil | 89 | Tebuconazole | |
γ-BHC | 30 | Diethofencarb | 60 | Malathion | 90 | Tebufenpyrad | |
δ-BHC | 31 | Diflufenican | 61 | Mefenacet | 91 | Tefluthrin | |
6 | Bifenox | 32 | Dimethenamid | 62 | Mepronil | 92 | Terbacil |
7 | Bifenthrin | 33 | Dimethoate | 63 | Methamidophos | 93 | Terbufos |
8 | Bitertanol | 34 | Dimethylvinphos | 64 | Methiocarb | 94 | Tetraconazole |
9 | Butachlor | 35 | Edifenphos | 65 | Metolachlor | 95 | Thenylchlor |
10 | Butamifos | 36 | Endrin | 66 | Myclobutanil | 96 | Thifluzamide |
11 | Cadusafos | 37 | EPN | 67 | Pacrobutrazol | 97 | Thiobencarb |
12 | Cafenstrole | 38 | EPTC | 68 | Parathion | 98 | Thiometon |
13 | Chlorfenapyr | 39 | Esprocarb | 69 | Parathion-methyl | 99 | Tolclofos-methyl |
14 | α -Chlorfenvinphos | 40 | Ethoprophos | 70 | Penconazole | 100 | Tralomethrin |
β-Chlorfenvinphos | 41 | Etoxazole | 71 | Pendimethalin | 101 | Triadimenol | |
15 | Chlorpropham | 42 | Etrimfos | 72 | Permethrin | 102 | Triazophos |
16 | Chlorpyrifos | 43 | Fenarimol | 73 | Phenthoate | 103 | Trifluralin |
17 | Chlorpyrifos-methyl | 44 | Fenitrothion | 74 | Phosalone | 104 | Uniconazole P |
18 | Cyfluthrin | 45 | Fenobucarb | 75 | Pirimicarb | ||
19 | Cyhalofop-butyl | 46 | Fenpropathrin | 76 | Pirimiphos-methyl | ||
20 | Cyhalothrin | 47 | Fensulfothion | 77 | Pretilachlor | ||
21 | Cypermethrin | 48 | Fenthion | 78 | Procymidone | ||
22 | Cyproconazole | 49 | Fenvalerate | 79 | Propiconazole | ||
23 | p,p'-DDE | 50 | Flucythrinate | 80 | Prothiofos | ||
p,p-DDD | 51 | Fludioxonil | 81 | Pyraclofos | |||
o,p'-DDT | 52 | Flutolanil | 82 | Pyrazoxyfen | |||
p,p'-DDT | 53 | Fluvalinate | 83 | Pyributicarb |
この技能試験プロジェクトで研究班が提示した分析法は下記のとおり。参加機関は各々の判断で分析法を選ぶことになっていたが、結局すべての機関がこの方法を用いた。うち2機関は、下記の方法を修正して用いた。(修正内容については厚生労働科学研究の報告書に詳しく書いてある。)
Q. 技能評価の対象になった検査機関の名称は非公開ですか?
A. 公開されています。厚生労働科学研究報告書には、指定検査機関6機関の名称が記載されています。
Q. 技能試験の全体はどんな方針で設計されていますか?
A. 日本工業規格(文献1、2)に準拠しています。この規格は、ISO/IECの規格を和訳したものです。
Q. 研究班が提示した試験法は、どのようにして作られたのですか?
A. 検疫所の輸入食品・検疫検査センターでモニタリング検査に用いられている試験法です。厚生労働省が平成9年に告示した「迅速分析法」(文献3)に基づいています。
Q. 「迅速分析法」とは異なる点がありますが・・・
A. 試料から溶媒で抽出した試験液について、3種類の検出器(FPD・NPDまたはFTD・ECD)の付いたGCで農薬を検出し、検出された場合はGC/MSで確認するという基本的な操作は「迅速分析法」と同じです。一方、野菜・果実類を最初に酢酸エチルで抽出する点、穀類を35%含水アセトニトリルで抽出する点、GPCを用いない点は異なっています。
Q. なぜ相違点があるのですか?
A. 検疫所では非常に多数の検体を試験するため、「迅速分析法」の中の手間のかかる部分を別の方法で置き換えています。酢酸エチルでの抽出は、アセトンやアセトニトリルでの抽出より回収率がやや劣るという報告もありますが、転溶する必要がないという大きなメリットがあります。(「農作物中の残留農薬は、まずどんな溶媒で抽出すべきか?」参照。)また、穀類を水で2時間膨潤する操作は時間のロスが多く、米国FDAで採用されている35%含水アセトニトリルによる抽出のほうが多数検体の処理には適すると考えられました。(「穀類・豆類などを「水で膨潤」するのは必要か?」参照。)さらに、GPCは脂質の除去を主な目的として行われますが、農産物の種類によって農薬の溶出する画分がずれる場合があり、多種類の農産物を分析する場合には溶出画分の検討が非常に煩雑になります。このことから、共栓試験管を使ったアセトニトリル/ヘキサン分配という簡便な脂質除去法を採用しています。
Q. 超臨界流体抽出(SFE)で自動化したらどうですか?
A. SFEには自動化・省溶媒という利点がありますが、メタミドホス等の極性農薬の抽出にやや難があり、検疫所の残留農薬モニタリングには導入されていません。指定検査機関の中にはSFEを用いるところもあるのではないかと当初は予測しましたが、結局用いた機関はありませんでした。
Q. なぜ個別のGC検出器を使うのですか?GC/MSのSIMモードの方が簡便では?
A. 研究班が提示した方法では3種類の検出器を用いるため、3回の注入を行う必要があります。これは確かに手間のかかることで、GC/MSのSIMモードを使用すれば注入は1回で済みます。しかし、104種もの農薬のマスナンバーをグルーピングしてSIMのメソッドを組み、またリテンションタイムの変動に応じて修正するには、かなり複雑な操作が必要ですし、SIMの定量精度は一般に個別検出器よりも低いため、定量も重視する場合は内部標準の検討が必要と考えられます。また、まずは個別検出器を使い、検出された場合はGC/MSを行うことで、各農薬を原理の異なる2種の検出器で測定することになり、誤検出の可能性は減ると考えられます。このような理由により研究班としては個別検出器を使う方法を提案しました。
Q. 定量値の評価は、z値で行わなかったのですか?
A. FAPASRでは定量値を農薬の添加濃度でなく全機関の検出値の平均値と比較し、Horwitzの式によるターゲット標準偏差に基づくz値として評価結果を出しています。添加後に農薬が分解・揮散したり添加量が不正確である可能性を考慮してのことと考えられます。本研究においても、参考として、z値による評価も行っています。しかし、わずか8機関による定量ですから、平均値が必ずしも真の値に近いとは言えません。従って、主に添加量に対する比率で評価しています。
Q. 定量値の評価が、食品衛生GLP基準とは違うゆるい範囲になっていますが?
A. GLPでは添加回収率70〜120%という内部精度管理の目安が示されていますが、これは農薬の残留基準値への適否を判断するための定量分析の場合です。スクリーニングにおいては定量は公定法でやり直しますから、これよりも低い定量精度であっても許容されると考えられます。本研究では、各機関について定量値が50〜200%の範囲内にあった農薬の数を示しました。
Q. 農薬の添加はどのようにして行ったのですか?
A. 各試料をホモジナイズしてサンプル瓶に小分けし、そこへ農薬の標準溶液を添加して凍結して各参加機関に送付しました。理想的には収穫前または収穫後に散布されて残留している農薬を対象にすべきです。また、添加するにしても、FAPASRで行われているように大量の試料に農薬を添加して均一化し、それを小分けする方が、より試料成分と親和した状態を作り出せると考えられます。しかし本研究においては時間的な制約のためにできませんでした。
Q. 一度に10〜14の農薬を添加したのは、多すぎるのではないですか?
A. 多すぎると考えられます。限られた期間内に多くのデータを得るために、やむをえずこのような数で行いました。FAPASRのシリーズ19では最大6農薬が添加されることになっています。
Q. 検出漏れや誤検出は、なぜ起こったのですか?
A. 原因は様々です。研究班が結果を集約して各参加機関に返した後に、それぞれの機関から自己点検結果が提出されました。その概要は論文にもまとめてありますが、報告書には各機関のレポートが原文のまま掲載されており、農薬分析で留意すべき諸点がリアルにわかる内容になっています。
参考文献
1 JIS Q0043-1 ”試験所間比較による技能試験 第一部:技能試験スキームの開発及び運営”(ISO/IEC Guide 43-1:1997と一致)
2 JIS Q0043-2 ”試験所間比較による技能試験 第二部:技能試験スキームの選定及び利用” (ISO/IEC Guide 43-2:1997と一致)
3 厚生省生活衛生局長通知”残留農薬迅速分析法の利用について”平成9年4月8日、衛化第43号
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