HOME旅行先一覧別所温泉と北信濃ロマン街道

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             別所温泉

 別所温泉のある塩田平は,鎌倉時代に塩田北条氏が治めたところから信州の鎌倉と呼ばれている。その西端にある別所温泉は信州最古の温泉といわれ落ち着いた雰囲気の漂う温泉である。古い温泉街らしさを濃厚に残していてシーズン外れということもあるだろうが比較的静かであり,かといって寂れているわけでもない,なんと言ってもけばけばしさと無縁であったのがいい。
 宿に着いたのが2時半,一休みして信州の鎌倉を偲ばせてくれる古刹・名跡を訪ねんと地図を片手に出かけることとする。
 まず,宿から一番近い北向観音,次に安楽寺八角三重塔から常楽寺の石造多宝塔を駆け足で巡る。最後に外湯の一つ”石湯”に浸って帰還。

【旅館花屋】
 われわれが泊まったのは花屋という旅館である。別所温泉のなかでも老舗のひとつである。敷地6500坪の庭園内に渡り廊下で結んだ2000坪の建物が配置されている。
 部屋を出ると,そこは外気が流れ込んでくる空間となっているので,吹雪や寒気厳しい季節はどうなるのかなと気にはなるが,なかなかの旅館である。階段が多くて従業員は足腰が強くないと大変だろう。
 部屋の調度品はレトロ調,掃除も行き届いているし従業員のしつけも完璧(旅行会社ひとすじ43年のK君の判定だから間違いない)。
 お風呂も清潔で気持ちがいい。大理石風呂・展望風呂・露天風呂と3種類の風呂があり,展望風呂のみ男女入浴時間を設定している,あとは男女別。

 食事は,まあまあ!地元特産の薬用人参黄金揚げと塩田産こしひかりが美味しかった。
お土産に桑の厄除箸をもらった。
 別所温泉のお奨め旅館である。HPはここです。
【北向観音】(北向き観音)
 西暦825年の創建。1182年木曽義仲の戦乱により焼失し,その後源頼朝の命により復興,1252年塩田陸奥守北条氏により再々興されたが1713年に焼けてしまい8年後の享保6年に再建され,その後いく度か改修されて現在に至っているという。
 本堂が北に向いてるのは全国でも珍しいそうだ。南向きに建てられている善光寺で「未来往生」を,北向観音で「現世利益」を願う,すなわち両方にお参りしなければ片参詣りになってしまうと言われている。われわれは明日,善光寺に詣でるのでOK!
【愛染かつら】
 観音堂の境内に樹齢1200年とされる大木のカツラがある。高さ22m,目通り5.5m枝張り14m,信越線いまは信濃鉄道の車窓からも望見できるという。川口松太郎の名作「愛染かつら」はこの木からヒントを得たという説あり。ただし映画「愛染かつら」では池上本門寺のイチョウの木が使われたそうだ。
 境内にはこのほか崖に張り付いたように建てられている薬師堂など数多くのお堂や鐘楼などが建ち,句碑(芭蕉,花柳章太郎)・歌碑(夕焼け小焼け・北原白秋)・燈籠などが立ち並んでいる。

 おみやげ屋,ギャラリー,食堂,喫茶店などが軒を連ねる北向観音参道を散策しながら七草の湯(ホテル)脇を通って安楽寺に向かう。安楽寺は、信州最古の禅寺、別所温泉街の北のはずれ閑静な丘の上にある。杉木立の石段を登り,りっぱな本堂でお詣りをすませ(折り悪くわたしも妻も小銭が払底,さすがに万札は出せないし釣銭という訳にもいかずお賽銭は勘弁してもらう。したがってご利益は期待しない!)左手の道を上って行くと現われたのが「国宝 八角三重塔」
 全容をカメラに収めるのに苦労する。左手の斜面に登るも木立が邪魔してしまう,次は右手の「ここより上入るべからず」の看板がある小道をたどりなんとかまあまあのカメラアングルを確保してシャッターを切る。 

【八角三重塔】 国宝
 

 三重塔建造 :鎌倉後期/1332年
  宗  教    :曹洞宗(曹洞宗寺院では殆どが塔を建てない,臨済宗では本堂から離れた横や後方に建てるところから何らかの理由で臨済宗寺院から曹洞宗寺院に変わったと思われる)
 なぜ八角なのか?
安楽寺の二代目住職は中国生まれの人といわれている,中国の塔というのは大体八角が普通だそうで,この住職が故国の塔を思い出して建てたのがこの八角塔ではないかと考えられている。
 一見,四重の塔に見えるが最下段は裳階(もこし)と呼ばれるさしかけの屋根だと言う。中国宗時代の建築様式を残す日本唯一の八角の塔で、流れるような曲線をえがく四層の屋根,その屋根を支える華やかな木組み,どっしりとして堂々とそびえる風格はさすがに日本の名塔といえる。
 失礼ながらこんな片田舎にこんな素晴らしい文化遺産があったなんて知らなかった。鎌倉期末,塩田平に館を構えて信濃に威を張っていた北条氏の力をまざまざと感じる。
【常楽寺多宝塔】 国指定重要文化財
 

 多宝塔というのは、上下二重の屋根がある塔のこと。
説明板に「石造で重要文化財のものは,常楽寺のこの塔の外には滋賀県にある塔だけです」と書いてある。 が,これは間違いだと思う,先だって訪れた国東半島にある財前家墓地の多宝塔は国指定重分であった。

 昼でも暗いような木立ちの中に堂々と立つ姿はいかにも信仰の中心にふさわしい。

【山本宣治記念碑】

 安楽寺から常楽寺に向かう遊歩道脇に親類筋にあたるタカクラ・テルの記念碑と並んで
建てられていた。別所温泉の観光地図にも載っていない。
 山本宣治(労働農民党代議士 治安維持法改正反対で右翼により暗殺される)の記念碑が別所温泉にあるとは知らなかった。
 別所で講演した数日後に東京で暗殺された。
【浅間山〜菅平のやまなみ】

 同じく常楽寺手前の遊歩道から上田市街地,後方の浅間山〜菅平にかけての上信国境の山並みがくっきり見られた。

 常楽寺の本堂前には樹齢300年,全長20メートルほどの船形の赤松があり,何と良く手入れがされているのかと感心する。また本堂に向かって左手に常楽寺美術館があり,常楽寺に古くから秘蔵されている日本古来の瓦やすぐれた仏像や有名な大家の画いた日本画や洋画,さらにかつて北向観音堂に奉納されていた日本でも有名な絵馬など数多くの名作品が展示されていて多くの人が訪れるという。
 早や午後5時近く,そろそろ宿に戻らなければならないので美術品の鑑賞はまたの機会にして静かな寺を後にする。
 道すがら思いついたのだが,せっかくだから外湯を体験しておこうと,男組3人,宿で貰った入浴券で”石湯”に入って行くことにした。女性陣二人は,途中で甘味処に寄ったとかで結局,宿へのご帰還は同じ頃となった。


【石湯】 
 
別所温泉には外湯といって共同浴場が4箇所(石湯・大湯・大師湯・相染閣[夜間])ある。何れも銭湯形式で大人子供とも150円。
 
石湯は真田幸村隠し湯と伝えられ,岩の裂け目から豊富な湯が流れ出ている。

泉質:単純硫黄泉 無色透明,飲泉すればゆで卵の味が口いっぱいに広がる。
効能:慢性皮膚病・慢性婦人病・糖尿病・神経痛・筋肉痛・五十肩・リウマチ・胃腸病など
 現在は地下350mからポンプアップして各湯宿に分湯されている。

 旅館のお風呂(展望風呂)にも入る。”石湯”より少し総硫黄分が多い感じがする,肌へのすべすべ感がより多い。お湯の出口にはコップが置いてあって一見,かけ流し風ではあるが浴槽底部及び壁部にお湯の噴出し口があり,循環させているものと見た。
 6時から夕食。4,50畳敷きの部屋を8人で占領してビール,お酒,焼酎,ワインそれぞれ好みのアルコールを飲みながらワイワイガヤガヤ!
 今晩は,ワールドカップサッカーアジア最終予選日本vsバーレーン戦のTV中継がある。夕飯と飲み会は早めに切り上げて部屋でサッカー観戦。