バスのカラーリング

C04よくあるパーツとモチーフ

バスのカラーデザインには、その部分的なデザインの特徴や、また装飾などのパーツについても共通性のあるものが散見されます。ここでは、そんなよくあるパーツとモチーフについて観察してみます。

0-31 正面の塗り分け

金太郎腹掛けスタイル

側面から正面中央に向かって曲線で下がってくる塗り分けは、各地で見られます。これは、ボンネットバスの塗り分けを箱型バスに展開する際に、工夫された一つのパターンです。
ちょうど1950年に鉄道車両で、国鉄の80系電車がこれと似た塗り分けを採用し、金太郎腹掛けスタイルと呼ばれて流行になりました。80系の場合、これと対称になる塗り分けが上部にもあり、中央部に金太郎の腹掛けのような四角形が見えることからこの呼び名が付きました。

岩手県南バス
RB10P

撮影:板橋不二男様(遠野営業所 1975頃)

松本電気鉄道
松本電鉄
松本営業所(1988.4)

新潟交通
新潟交通
新潟駅(2017.8.26)

横浜市交通局
横浜市交通局
板橋不二男様(横浜駅 1975頃)

新潟交通(新潟県)、松本電気鉄道、千曲自動車(長野県)、名古屋鉄道(愛知県)、祐徳自動車(佐賀県)など多数が見られます。

俵型

同様にボンネットバスの塗り分けを箱型バスに展開する際に採り入れられたパターン。フェンダの形状をトレースした印象があります。
「八の字型」という呼び名もあるようです。

近畿日本鉄道
近畿日本鉄道

撮影:板橋不二男様(志紀営業所 1975頃)

日東交通
日東交通
木更津駅(2016.4.10)

東洋バス
東洋バス
板橋不二男様(大和田営 1977)

新潟交通(佐渡)
新潟交通
板橋不二男様(両津営業所 1977)

山形交通(山形県)、日東交通(千葉県)、西東京バス(東京都)、近畿日本鉄道(大阪府)、山口市交通局(山口県)、徳島バス(徳島県)など多数みられます。

花弁形

ちょうど花弁を真横から見た断面図のようなデザイン。おそらく、メーカーのエンブレムのように、箱型バスの味気ない正面を優雅に見せるための装飾の一環としてデザインされたものと想像します。

加越能鉄道
加越能バス

撮影:高岡駅(2016.4.23)

神戸電鉄
神戸電鉄
板橋不二男様(1977.3.11)

信南交通
信南交通
板橋不二男様(飯田 1977頃)

尾道市交通局
尾道市交通局
板橋不二男様(1978.1.5)

類似のデザインは、信南交通(長野県)、加越能鉄道(富山県)、神戸電気鉄道(兵庫県)、下津井電鉄、井笠鉄道(岡山県)、尾道市交通局(広島県)、高知県交通(高知県)、亀の井バス(大分県)などで見られます。

台形

1970〜80年代に、これまでの曲線を主体にしたラインから直線ベースのものに移行する傾向が現れ、窓下ラインの正面の形状が、「金太郎腹掛け」からこのような台形に変わった例があります。
東京急行電鉄(東京都)、神奈川中央交通(神奈川県)が代表的な例で、曲線は古い、直線が新しいという価値観が生んだものと想像できます。

東京急行
東急バス

撮影:川崎駅(2016.4.9)

静岡鉄道
静岡鉄道
板橋不二男様(静岡県)

東武鉄道
東武鉄道
ヒツジさん様(長野県 2010)

神奈川中央交通
神奈川中央交通
多摩センター駅(2016.5.3)

この形状は、茨城急行自動車(埼玉県)、東武鉄道(東京都)、静岡鉄道(静岡県)などでも見られます。

おでこのヒゲ

正面の方向幕の両側から側面に向けて、翼を象ったストライプの模様を入れるデザインも、戦後の特徴的なものの一つです。もっとも、翼というより髭に見えるため、「ヒゲ」と通称されることも多いようです。
このデザインは、日野ブルーリボンや民生コンドルのカタログカラーにも見られます。
終戦後のバスは、アメリカのデザインを採り入れ豪華なデコレーションを施す傾向があり、おでこの部分に金属製の飾りをつける事例も観光バスに見られました。恐らくそういったデコレーションを塗装によって安価に再現したのが、このストライプではないかと思います。

岩手県交通(花巻バス)
花巻バス

撮影:花巻営業所(1985.8.27)

十勝バス
十勝バス
板橋不二男様(帯広営業所 1978)

山梨交通
山梨交通
板橋不二男様(湯村営業所)

千曲バス
千曲バス
ヒツジさん様(望月町 2004.7.19)

このストライプは、日野ブルーリボンのカタログカラーを流用したと思われるピンストライプカラーのバスによく見られます。十勝バス(北海道)がその一例です。(→ブルーリボンカラー)

0-32 窓周りの黒塗り

1970年代後半から始まった観光バスのヨーロピアンスタイル化の流れは、バスの窓を大きくすることから始まりました。同時に角張ったボディのスケルトンタイプ化も進み、合わせて、ドアや窓を連続的に見せるスタイリングも流行しています。
この傾向はその後も続き、バスの窓を連続的に、また大きく見せるため、窓の周囲を黒くすることが、一つの手法として定着します。

東京近鉄観光バス
東京近鉄観光バス

撮影:双葉SA(1986.8.18)

丸形ボディの窓周り黒塗り

国鉄バス
国鉄バス
盛岡支所(1985.5.21)

JR東日本
JRバス
盛岡支所(1987.5.30)

JR東日本
JRバス
盛岡支所(1987.5.30)

スケルトンタイプ化の過渡期にあった1980年代、丸みのあるものコックボディの車両も、外見を新しく見せるため、窓周りの塗装に工夫が見られるようになります。ここでは、国鉄バス(→JRバス)を例にとって、その傾向の一端をお見せします。
まず、モノコックボディ末期の新車は、在来カラーに塗られましたが、サッシが黒色になっており、窓を大きく1枚ガラスのように見せています。
次に1987年の分割民営化直後に新カラーに塗替えを行った車両の中では、サッシ、窓周り、ドアが黒色に塗られたものもあります。スケルトンタイプのバスに見られるピラーレス窓のイメージを出しています。
同様に1987年に塗り替えられたものでも、黒色化されていないものもあります。近代化イメージの度合いが、塗り方次第で大きく異なることが分かります。

路線バスのモノコックボディでも、窓周りを黒く塗る例があります。
写真の川中島バス(長野県)では、新カラーを導入するに当たり、貸切バスと同じように窓周りを黒くしました。ただし、サッシは銀色のままです。
似たような例では、旭川電気軌道(北海道)、東武鉄道(東京都)、京都交通、カヤ興産(京都府)、奈良交通(奈良県)、明光バス(和歌山県)、中国JRバス(広島県)などがあります。

川中島バス
川中島バス

撮影:長野バスターミナル(1989.3.26)

角形ボディの窓周り黒塗り
山陽バス
山陽バス

撮影:垂水駅(2016.3.5)

小田急バス
小田急バス

撮影:二子玉川駅(2016.4.9)

スケルトンタイプのボディに統一されてからも、窓周りの色使いには、事業者による違いが見られます。
山陽バス(兵庫県)の三菱エアロスターは窓周りをブラックアウト、小田急バス(東京都)は窓周りをボディ同色としています。
三菱車をはじめ富士重工ボディ、西日本車体ではこのような事業者による選択が可能でした。一方、1999年のいすゞエルガミオ以降のいすゞ/日野の統合モデルの場合は、構造的に窓周りは黒色となり、事業者による違いは目立ちません。

富山地方鉄道
富山地鉄
撮影:富山駅(2016.4.23)

西日本鉄道
西日本鉄道
撮影:久留米駅(2016.11.5)

岐阜乗合自動車
岐阜バス
撮影:岐阜駅(2016.10.30)

黒塗りの位置にも複数のパターンが見られます。
富山地方鉄道(富山県)は前ドア部分は黒色ですが中ドア部分はボディ同色になっている一例。同社には、別のパターンも存在します。
西日本鉄道(福岡県)は中ドア部分をブロンズ色にしています。
岐阜乗合自動車(岐阜県)はサッシの色はシルバーですが、窓周りを黒色にしています。

近江鉄道
近江鉄道

撮影:南草津駅(2015.8.29)

近江鉄道
近江鉄道

撮影:近江八幡駅(2015.8.29)

同じ会社でも複数のパターンがある場合も多く見られます。
西武グループでは、伊豆箱根バス(静岡県)、近江鉄道(滋賀県)ともに、サッシの色が銀色の場合は窓周りがボディ同色、サッシの色がブロンズ色の場合は窓周りが黒色になるというのが一般的です。もっとも例外も見られます。

0-33 側面の飾り文字

屋根肩文字

屋根の肩の部分にローマ字で社名を書くパターンは、モノコックボディの時代には各地で見られました。
ほとんどのケースがローマ字なので、デザインとして書かれたものと思われます。記載が義務づけられている日本語の社名は別途側面腰板などに書かれています。
1980年代以降、車体が角形になると、屋根肩部分のない車両も増えてきたこともあり、このようなケースは激減しています。
写真は松本電気鉄道(長野県)で、屋根肩に「Matsumoto Bus」と書かれています。

松本電気鉄道
松本電気鉄道

撮影:松本駅(1988.4)

丸形ボディ時代の屋根肩文字

京阪バス
京阪バス
板橋不二男様(比叡山 1977)

昭和自動車
昭和自動車
板橋不二男様(博多駅 1977頃)

伊那バス
伊那バス
伊那本社(1990)

屋根肩にローマ字社名を展開していたのは、京阪バス(京都府)、北海道中央バス(北海道)、弘南バス(青森県)、大川自動車(香川県)、昭和自動車(佐賀県)、長崎自動車(長崎県)など数多くありましたが、角型ボディになる頃に文字をなくしています。
伊那バス(長野県)は、「INA BUS CO. LTD」と書かれています。キュービックボディになってからも書かれていた一例です。

21世紀に残る屋根肩文字

関東バス
関東バス
三鷹駅(2017.2.12)

国際興業バス
国際興業
池袋駅(2017.2.12)

川崎市交通局
川崎市交通局
川崎駅(2017.2.12)

屋根肩の文字を21世紀に入っても継承している実例です。
関東バス(東京都)は、「KANTO BUS CO. LTD」と、国際興業バス(東京都)は「KOKUSAI KOGYO BUS」と書かれています。いずれもモノコックボディの時代から継続している数少ない事例です。
一方、川崎市交通局(神奈川県)は、日本語と英語で「川崎市バス KAWASAKI CITY BUS」と書かれていますが、これは以前は中ドア上の幕板部分に書かれていましたが、その部分が黒塗りになるに伴い、屋根肩部分に移動したようです。

側面文字

側面の腰板、特に前ドアの後ろ付近に文字を書くパターンは、1980年代以降の貸切バス、高速バスを中心に見られるようになります。これは、側面後部で斜め上に上がるカラーデザインとの組み合わせが多く、二階建てバスの輸入車などの影響が強いものと思われます。
文字はやはり英語またはローマ字で、会社名をそのまま表したものと、ブランド名とが見られます。いずれにせよ、情報としての文字というより、ボディデザインの一環としての文字であると言えるでしょう。

中鉄バス
中鉄バス

撮影:岡山駅(2016.11.23)

新潟交通
新潟交通
新潟駅(2017.8.26)

越後交通
越後交通
池袋駅(2017.2.12)

濃飛バス
濃飛バス
新宿(2017.2.12)

社名をローマ字でデザインした例です。多くの場合、日本語をローマ字にしており、「Kotsu」「Dentetsu」「Tetsudo」などの社名や略称がそのまま表記されています。ただし、「Bus」の場合は元が英語であるため、英語表記となります。
これらは、ボディデザインに合わせて色や書体が工夫されており、情報というよりデザイン要素の一つになっています。

東京空港交通
東京空港交通
新宿(2017.2.12)

アルピコ交通
アルピコ交通
新宿(2017.2.12)

富士急行
富士急行
新宿(2017.2.12)

社名ではなく、ブランド名を英語で表示したものもあります。
東京空港交通(東京都)は愛称である「Airport Limousine」に加えて「Friendly」と書かれています。
アルピコ交通(長野県)はブランド名の「Highland Express」と書かれています。
富士急行(山梨県)は、社名は日本語で書かれますが、その後ろに「Resort Express」と書かれます。

0-34 社紋、マーク

社紋などを別パーツで車体に取り付けたり、ペイントしたりする例も各地で見られます。多くの場合、正面、側面とも、腰板の中央部に取り付けることが多いようです。正面のみというところも見られます。
写真は国鉄バスの一例で、正面は動輪マーク、側面はつばめのマークをつけています。

日本国有鉄道
国鉄バス

撮影:盛岡支所(1986.8.31)

岩手県北自動車
岩手県北バス
盛岡バスセンター(2016.7.9)

京浜急行バス
京浜急行バス
大森駅(2017.2.12)

堀川バス
堀川バス
久留米駅(2016.11.5)

正面の塗り分け自体が、社紋を配置することを前提にしている例もあります。
岩手県北自動車(岩手県)は、社紋の部分の3本ラインを斜めにカットしています。以前にはメーカーのエンブレムを取り付けていたこともありますが、現在では社紋のみとなり、ラインカットの角度も統一されているようです。
京浜急行バス(東京都)の社紋は塗装ですが、塗り分けは社紋前提で、色使いも社紋とラインの赤色が共通です。
堀川バス(福岡県)は、全国的によく見られる丸い社紋です。社紋の部分の地色を青色にしており、社紋の存在がないと成り立たないデザインです。

0-35 マスコット

小田急バス(東京都)では、創業時から側面に犬のレリーフを付けています。これも恐らく足の速い犬のイメージから、スピードの速さを表したのではないかと想像できます。
現在の公式Webサイトでの記載によると、愛犬、盲導犬、猟犬、番犬などで人にかかわる犬の性格がバスの使命と一致するために、会社のマスコットとなったと説明されています。

小田急バス
小田急バス

撮影:世田谷営業所(2016.4.9))

帝産観光バス(東京都)では、グレイハウンドと呼ばれる犬のレリーフを付けています。グレイハウンドは、狩猟のために交配されて誕生した犬で、速く走ることに特化した犬種です。アメリカのグレイハウンド社がこの犬のレリーフを付けていたことでも知られます。
終戦後に帝産オートとして設立された直後から、グレイハウンドのレリーフを用いているとのことです。

帝産観光バス
帝産観光バス

撮影:新宿区(2017.2.12)

奈良交通(奈良県)は、伝統的に鹿のデザインを側面に描いています。貸切バスなどだと、これが金属製のレリーフになっています。
鹿は、前足を上げて飛び上がるような姿勢を取っています。

奈良交通
奈良交通

撮影:学園前駅(2016.9.26)

JRバスには、つばめのマークがあります。これは国鉄バス時代からのもので、1950年に国鉄自動車の開業20周年を記念して公募により決められたそうです。当初は動輪上につばめをあしらったマークでした。(注1)
1984年に東名高速バスに投入された新車から、カラーデザインが変更され、つばめのマークもこのようにつばめだけを大きく描くものに変更されました。1987年の分割民営化以降も、JRバス各社に引き継がれています。

JR東海バス
JR東海バス

撮影:新宿区(2016.4.9)

0-36 メッセージ

1990年に西日本鉄道が東京〜博多間で運行を開始した日本最長の高速バス「はかた号」には、岡本太郎氏によるオリジナルデザインが採用されました。
これには、太陽の塔や愛称名に加えて、英語で文字が書かれています。
日本の東西の文化交流を行うこと、新世紀に向けて次世代につなぐ架け橋になること、などが書かれているようです。

西日本鉄道
はかた号

撮影:新宿駅(1991頃)

>>5-1 系列会社へ


主な参考文献
  1. 日本バス友の会(1994)「日本のバスカラー名鑑」
  2. 和田由貴夫(1998)「シティバスのカラーリングを考える」(「年鑑バスラマ1998-1999」P.97〜103)
  3. 三好好三(2006)「バスの色いろいろ」(「昭和40年代バス浪漫時代」P.124〜125)
  4. 満田新一郎(2005)「昭和30年代バス黄金時代」
  5. 満田新一郎(2006)「続昭和30年代バス黄金時代」
  6. 満田新一郎(2006)「昭和40年代バス浪漫時代」
(注1)
加藤佳一(2014)「つばめマークのバスが行く」P.72
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80s岩手県のバス“その頃”