HALF AND HALF JOURNAL

 

 


破 片

無 意味 な

                                                         

無意味な破片

                                        

 

                

           

 

Fragments

HHJ

                         inutiles

 

      

            

☆ ☆ ☆   Updated 2004.9.28

半分半分放送局長―〈北オセチーの悲劇のタイミング〉であの第5列を想い出させたのはいいが、あとが続かない1次の記事も期待外れだよ2

特派員―夏の終わりに情報がいっぱい集まって、それらが勝手にリンクを付けるから、目が回るほどでしたね。このリンクはいったいどこを辿ってどこへ行くのか、という状態で、操縦が難しかった、と言いましょうか?

編集長―水晶山スキー場のなだらかな斜面を滑るような気分だったね。

放送局長―しかし、ル・モンドのムッシュはうまい引用したもんだ1。ロシアは民主主義諸国の第1列にいるというシラク(Jacque Chirac)大統領の言葉を聞けば、イベリア半島の古傷を見る人が結構いるだろうな。

編集長―そう思いたいね。後方攪乱が任務の第5列は実際は姿を現わさなかったはずだが、今、世界の動きに目を光らせている人たちにはロシアのはるか後方で起きた出来事がその第5列とリンクするだろう。

放送局長―つまり、92日小泉首相が北海道の東の果てにある島々を視察したっていうニュースだな。確認すると、日本の首相はこういう行動を取った。

 

20040826()  KYODO

 〈小泉純一郎首相が来月2日に北方領土を海上から視察することが26日決まった。首相官邸が同日、発表した。〉

20040902()   KYODO

 〈小泉純一郎首相は2日午前、北海道根室市の花咲港から海上保安庁の巡視船で出発し、北方領土の歯舞諸島を海上から視察した。〉〈ロシア側は今回の視察を「平和条約交渉を複雑化させるだけだ」と反発しており、領土交渉に向けてマイナス材料になる可能性もある。〉

〈首相を乗せた巡視船は2日午前11時半すぎ、根室半島沖約3・7キロの貝殻島など歯舞諸島に接近。首相はぼんやり見える貝殻島を双眼鏡で確認した。ロシアの警備艇も姿を見せた。国後島との中間線付近からも視察。北海道警や海上保安庁のヘリコプターが上空から、巡視船などが周囲で警備に当たった。〉

 

特派員―ちょうど北オセチーの拿捕(だほ)された人質が体育館に詰め込まれていたときです。

ナモネ氏―動揺したの何のって、オホーツクの荒波よりひどい。古い話になるが、日本の漁船がソ連の領海に侵入したときの悲劇が漁船の拿捕だ。

放送局長―首相官邸の発表はツポレフ旅客機のダブル・カミカゼ・アタック・トラジディの2日後ですよ、君。

特派員―まさか予算の不正流用ではないでしょうね?

放送局長―うむ。根室まで自衛隊の飛行機を使ったというのも、やばいな。

アロマ―関連記事の中でおもしろいと思うのは、これね。〈元島民関係者が7月下旬、官邸を訪れた際、首相は「北方領土問題は片時も忘れたことがない」〉と語る3。そして、視察後元島民との集会のあと記者団に対して、〈北方領土の返還なくして平和条約の締結はない4。〉女が香水の空瓶を大事に取っておくと、男は馬鹿にするけれど、それは生命に等しい本質的なものなのよ。

放送局長―ラブロフ外相は川口順子外相にこう言ったそうだ。〈視察の目的をロシア政府はよく理解しているが、ロシアの世論の中には懸念する反応もある〉と5。香水の空瓶説を広めて、ラブリー・アイランドに対する執念を理解してもらうか?

ナモネ氏―人情味の厚いロシアの民衆が島を返してくれますかなあ?

特派員―そうなれば、首相が言うように平和条約を締結する交渉に本気で入るわけですが。

編集長―平和条約の交渉は白紙に戻るにちがいないね。右翼が待ってましたとばかりに、19411126日真珠湾攻撃に向かった連合艦隊出撃地の記念碑をエトロフ島の単冠(ヒトカップ)湾に建てるからだ。返還運動の本当の動機は、それだよ。

アロマ―アメリカが怒って、エトロフ島を占領するんじゃないかなあ?

特派員―エトロフのヒトカップ・ハーバーからパール・ハーバーまで、これはアメリカの歴史にとって恥辱のネガ・フィルムですね。馬鹿な日本人は今でも恍惚とするけれど。

放送局長―深層心理の映画だとすれば、明日どうなるか、誰にも分からないなあ。あの種の行動のメッセージは、夢のメッセージと似てるんだ。

ナモネ氏―99円のレンタル・ヴィデオを見ても、理解できないが。

編集長―とにかく、マス・メディアは自由に疑問をぶつけて、ダブル・ハーバーや後方攪乱、呪術的なメッセージその他それぞれの問題をテーマにした番組や記事を作ることに生命を賭けるべきだ。

☆ ☆ ☆

 

1  北オセチーの悲劇のタイミング     Updated 2004.9.7

2  言葉と出来事のアクシデント・ミステリー  Updated 2004.9.22

3  20040826() KYODO

4        20040902()  KYODO

5        20040921()  asahi

 

 

 

 

 

 


                         

              ☆ ☆ ☆     Updated 2004.9.16

特派員―6月14日有事関連法案が参院で自民・公明・民主の賛成多数で可決され、成立しました。日本経済新聞のインターネット版から引用すると、〈武力攻撃事態法などと合わせ、現行の憲法9条を前提とした日本有事に備える基本的な法体系がほぼ整った。国民保護法は、大規模テロにも適用される。〉自衛隊はイラクで商品価値をアピールしてますが、日本本土が危機に晒されたとき、真価を発揮できるでしょうか?

ナモネ氏―………

特派員―防衛のためのこの法体系は現在の憲法が保証の裏書きしているからこそ、いくらか国民は安心できるのではないでしょうか?

ナモネ氏―………

特派員―しかし、自民党の憲法改正作業を見ると、戦後の平和と発展を可能にした土台に地下トンネルを掘っているように思えますが?

ナモネ氏―………

特派員―予定外の質問ですが、9日北朝鮮で大爆発が起き、北朝鮮は水力発電所建設のための発破だと14日発表しました1〕。日本は去年の3月偵察衛星を打ち上げたけれど、それの情報がないのは怠慢ではないですか?

ナモネ氏―………

半分半分放送局長―OK,OK.次のシーンに行こうか?

特派員―緊張しますね。ポカリスウェット、くれない?

アロマ―はい。あたしの意見を言うと、〈ナモネ氏〉っていう稚拙な名札よりもスーパーインポーズの方がいいと思う。

ナモネ氏―………

放送局長―もう喋っていいですよ。

ナモネ氏―あっ、そうだったな。〈ナモネ氏〉は、孫の作品で、ね。製作するには業者に何万円もの金を払うのだという裏を見せたいわけだよ。

アロマ―グッド・アイディア。あの枯れススキと花瓶も、そうね。

ナモネ氏―ああ、100円ショップで買った花瓶だが、業者に委託すると、1万円をどれくらい中に詰め込まされるかな?

放送局長―底なしですよ。枯れススキだって、テレビ朝日みたいにプロダクションに任せたら、もう凄い値段だ。

特派員―プロダクションの社長を絡ませると、スリリングなドラマができますよ。

ナモネ氏―私は、すると、番順記者だな。〈あのどぎは、どうも。はあ〉

特派員―社長は自衛隊出身という設定ですよ。

放送局長―自衛隊が何のためにあるのか、おれには分からないね。自由のためとか、幸福のためとか、宣言すればいいんだが、日本海での事件では一向に役に立たなかった。街の中にいるOBは第5列じゃないか、と思ってしまうほどだ。

特派員―ええ、自衛隊OBの会社にはマークを付けなきゃいけませんよ。

ナモネ氏―新しい法律では、どうなるのかな、ダレナニ君?

特派員―よく聞いてくれました。特派員冥利に尽きます。それこそ、国民の誰もが切に知りたがっている前倒しの安全対策です。国民保護法とともに警察法が改正されまして、組織犯罪対策部と外事情報部が新設されたんです。前者は〈組織犯罪にかかわる情報・分析を行う企画分析課をはじめ、暴力団対策課、生活安全局の銃器対策課に薬物対策課を統合させた薬物銃器対策課の三課からなる。国際捜査総括官を置き、来日外国人の犯罪対策を一体的に進める。〉後者は、〈国際テロ対策室を格上げした国際テロ対策課と現在ある外事課の二課で構成。部長は国を代表する治安情報機関の責任者としてテロ情報の収集、分析を行う。サイバー犯罪に対処するため、生活安全局にサイバー犯罪対策課を設ける。

放送局長―裏金作りで忙しい警察にもうける。なるほど。筋が通ってるな。それで、国民の安全を保障する責務を負った自衛隊は、敵の謀略をどうするのかな?

特派員―その答は大都会のどこかにあるでしょう。こんな紙屑を読んでも、駄目ですね。

放送局長―ふう、乃木坂の防衛庁が何を考えてるのか、心配になってきたな。

アロマ―えっ?乃木坂?

特派員―乃木坂?

放送局長―そう、乃木坂だよ。

ナモネ氏―乃木坂、か…

☆ ☆ ☆

 

1 TBSi  9.15

2  KYODO  2004年02月07日(土) 

 

 

 

 

 

 


                          

☆ ☆ ☆     Updated 2004.9.10

半分半分放送局長―9月7日に公表されたNHKの不正調査報告を読むと、NHKは全然追いつめられてないな。処分が甘いっていうことは、それでどうにかこうにか逃れられるだろうと国民を舐めてるからだよ。

特派員―視聴者に共通する反応でしょうね。半分半分放送局が裁けば、海老沢勝二会長は?

放送局長―首だよ、もちろん。

編集長―頭がいかれると、肉体も悪くなる。NHKの会長はかなりの権力を持っているらしいから、内部のさまざまな規則の欠陥を放ったらかしにした責任を取るべきだ。

放送局長―悪いことをしても構いませんよ、と言ってる。しかし、実際はちゃんと秘密を握って、ずるいジャーナリストや悪党を使ってゆすりをやらせる、という仕掛けなんじゃないか?

アロマ―サスペンス小説だわ。

特派員―やはり構造が歪んでいますね。芸能番組チーフプロデューサー磯野克巳の1997年から2001年までの不正支払いとキックバックについて、関根昭義放送総局長はこう言ってるけれど1。〈現場からの請求書などをチェックする立場の人間が不正を働いているとは想像もできなかった。NHKの構造的な問題ではなく、倫理観に欠けた個人の資質の問題〉

編集長―もちろんNHKにも法学部出身のエリートがいるはずだ。でなければ、運営も含めて放送局の歯車はスムーズに回らない。しかし、この人の言い草を聞くと、村役場に来たのかと錯覚するよ。

アロマ―自分で考えると、黒い影が待ってる。

特派員―やはり構造が歪んでる。歴史と政治の二重作用が原因なんだ。

               ☆

放送局長―問題は、チーフ・プロデューサーが仕事をしてないイベント企画会社の社長に金を払っていたのは、なぜか、だな。それも放送作家という名目で、だ。

アロマ―おかしなアイディアを出していたかもしれない。他の4人のゴースト・ライターも。

編集長―そうだな、告訴を受けた警察と検察が踏み込めるかな?NHKの腐敗が国際テロリスムの活動と関係がないのか、ということを視野に入れて。今どんな状況か、と言えば、秘密の部屋の扉を見ている。会長はそれを開ける勇気がないから、別の扉を開いて見せた。

放送局長―大正末期の開設以来ほとんど国家権力に隷属していた放送局が、それで信頼を取り戻せるかどうか?この権力というのは、遠慮なく言うと、軍部と朝日新聞のことだよ。

特派員―他の小さい悪事を謝罪すれば、すべてを許してもらえるという勘定がありますね。メトニミー(喚喩)的な表現で、家の中と社会の区別がない、日本人は。

編集長―その種の文学的な表現と行動は、潰さなければいけない。

特派員―これはメタフォール(隠喩)だと思うけれど、8月20日の〈ユーラシア新世紀〉にフリージャーナリストの藤村幹雄がこう書いている2。〈ソ連が対日参戦を通告したのは、45年8月8日だが、この時、モロトフ・ソ連外相が佐藤尚武駐ソ大使に開戦を通告した時のソ連側会談議事録がロシア公文書館で明らかになった。〉

放送局長―NHKが腐った部分をさらけ出せば、ロシアは古い宣戦布告文書の公開か…

編集長―生活必需品のストック以外にどうやって生き延びるか、考えなければいけないな。このジャーナリストもそうだが、第一線にある知識人は国家のフィクションに迎合するのはヒューマニズムとデモクラシーに対する犯罪だと自覚して、間違いを修正するべきだ。〈41年の日米開戦時に日本大使館の不手際で日本側が開戦覚書を遅れて手渡した〉などというのは、卑劣なごまかしでしかない。

放送局長―イラク戦争が始まったとき、テレビ朝日はアメリカに対して〈無限の正義〉と俳句的な批判を投げつけた。大きな文字で。その科白はむしろ日本の国家に当てはまるよ。

アロマ―名詞だけで後が続かないのが、おかしい。

特派員―真理のあるHPにアクセスするには、勇気というパスワードがあればいい。しかし、それを持ってる知識人は哀れなことに日本人じゃない。

放送局長―困ったことだよ、君。大学教授など指導的な知識人の仕事をも裁いて、責任を問う必要がある、と思うような状況にまで来てる。

編集長―あういう金と名誉に執着する多少の優れた素質がある人たちに想い出してもらいたいのは、プラトン(Platon)のイデアだな。人は、真実を愛する勇気を持たなければいけない。善を愛することをためらってはいけない。美を愛することを恐れてはいけない。これが霊魂を清めることであり、人生のささやかな意味だ。

       ☆ ☆

 

1        asahi.com 20040720() 

2        TBSi

 

▼ NHK 不正に関する調査報告

 

 

 

 

 

 

 


                            

☆ ☆ ☆           Updated 2004.8.28

アロマ―828日はジャニーの命日だから、何か話してくれませんか?

編集長―そうだなあ。ジャニーと一緒に後楽園遊園地に行ったときのことを話そうか…いつだったかは覚えてないが、たぶん〈ロバート・ブラウン〉のCMが出た頃だろう。ジャニーを遊びに連れてゆくというのは母親の荻原さんから頼まれたことで、ね、小学生のジャニーが家にいると困るような用事があるという理由だった。本当は、ジャニーが遊びに行きたいとせがんだのだろう、と思った。いずれにしても、ジャニーには冒険だった。生まれつき聴覚に障害があって、日本語しか分からない。父親のアンダーソンさんは日本語が分からないので、ジャニーが母親に甘えるのは自然だった。アメリカ人の父とジャニーのそんな関係は戦後日本の象徴だ、と思ったことがある。後楽園遊園地では楽しく遊んだ。しかし、ゴーカートで走ってるとき、ぼくはジェームス・ディーン(James Dean)と赤木圭一郎を想い出した。二人ともゴーカートの事故で死んだ映画スターだ。

特派員―反抗的な若者たちを代表していましたね。

アロマ―赤木圭一郎が〈日本のジェームス・ディーン〉と呼ばれていたのを思い合わせると、不思議な事故よ。

編集長―ぼくの想念も、同じだったね。謀殺じゃないかという疑いは微塵もなかったよ。ジャニーの死はどうかと言うと、普通なら苦しまないで死ぬ病気だから、疑惑は消えない。遊園地からの帰りに、時間があったので、表参道に行った。キディランドという舶来雑貨店は知ってると思うが、そこで見つけたのがジグソー・パズルだった。深い哲学を感じたね、ぼくは。

特派員―ジャニーという破片は、歴史的に重要な位置にありますね。

アロマ―そう、NHKは追いつめられて、いつかジャニーのジグソー・パズルを制作するようになると思う。

編集長―あそこも支配のための道具だから、それは問題だよ。

☆ ☆ ☆

 

       We remember Johnny

 

 

 

 

 

 


                          

    ☆ ☆ ☆            Updated 2004.8.4

編集長―ぼくの記憶では、犯行現場を示す記念プレートは階段の途中にあった。講談社の《昭和二万日の全記録》を見ると、犯行はプラットフォームで行なわれている。20人以上の私服警官が周りを固めていた中で。《海外特派員》という映画はオランダの外交官の誘拐と替え玉暗殺事件の真相を追ってドーバー海峡の両岸で展開するが、暗殺のドラマの設定は東京駅の事件と非常に似ていると思う。この映画には中国で暴れていた枢軸国の日本を暗示するシーンが目につくね?

放送局長―そう。冒頭からそうだ。モーニング・グローブ新聞社の社長がジョーンズ(Joel McCrea)をロンドンへの特派員に任命すると、そこにちょうど国際平和協会の指導者フィッシャー(Herbert Marshall)が来る。日本人と白人の混血という感じの美男子だ。社長はふと思いついて海外特派員の名前をハントレー・ハバーストック(Haberstock)に変えさせる。パール・ハーバーを連想した。それからまもなくロンドンで開催される国際平和協会の昼食会に出ると、ハバーストックに初対面の女性が言う、確かホノルルで会ったことがあるんじゃないか、と。その次に小男の何者か分からないラトヴィア人と言葉が通じないで当惑する場面が来る。ラトヴィアはソ連の西隣の国だが、この映画で国名が出るのはアメリカ、イギリス、オランダ、ドイツ、ポーランド、ラトヴィア。しかし、こういうのはドラマのメイン・ストーリーとは何の関係もない。

編集長―それで、映画が終わったあとあのラトヴィア人は指示記号的な登場人物だな、ということが分かる。つまり、ソ連を挟んだ反対側の島国をさすための人物なんだ。

放送局長―このシーンは、映画制作に係わった人たちや観客にとって忘れられないね。チャーミングな若い女性が通訳してくれたので、初対面の主人公が名前を聞くと、〈スミス〉と彼女は思いつきで答える。フィッシャーの娘キャロル(Laraine Day)が、ね。

ナモネ氏―それを想い出すには勇気がいるよ。この話は、後にしよう。

放送局長―まったくナチスと日本の残酷な復讐劇には、声が出ないな。

                

特派員―そうですね。ぼくはただ働きの内気な特派員だけど、この《海外特派員》という映画は相当ファシストを怒らせたにちがいありませんね。テーマに戻って続けると、反戦運動をやってるフィッシャーが、オランダの外交官(Albert Basserman)を誘拐して替え玉を暗殺させたのは祖国ドイツのためだと娘のキャロルに告白するのは、ラスト・シーンの飛行機の中でです、アメリカに向かう。ドイツ系アメリカ人なんですね、この国際平和協会の指導者は。

アロマ―そうね。でも、悪人には描かれてない。戦争の悲劇よ。

ナモネ氏―そうだ。ヒッチコックは〈ノー・ポイント〉という手法でこの映画を作った。最後まで要点をあやふやにしながら進行するということだ。それで、私のような年老いた日本人の観客は映画の終局に近い場面で息苦しくなる。誘拐した外交官をいかがわしいホテルに監禁して拷問する人物たちは、ドイツ人風の男どもだが、黒眼鏡のスタイルは中国で暗躍した日本のテロリストを想い出させるのだ。

放送局長―それも無理はない。謀略組織直営のホテルには日本人の女のような背が低い度の強い眼鏡をかけた不恰好な仲間がいるんだから。このシーンで特に注目してもらいたいのは、な、拷問に使用される強烈な光線を発するライトだよ。君、そこんところを出してくれ。

アロマ―はい、はい。

放送局長―国際平和協会の会長さんがルームに案内されて入ってくる。ベッドに横たわった老人ヴァン・メーアのそばに黒眼鏡の男。4台のプロジェクター。ストップ!

アロマ―〈EMPIRE ELECTRIC PHOTOFLOOD LAMPS〉、帝国電気、写真撮影用溢光電球。影を消すためのライトね。

放送局長ぼくらも、事件の陰影を消さなければ、な。その製品名の下に電球が6個ある。このショットは1秒間だ。

編集長―帝国電気のコマーシャル・フィルムだろうな。

放送局長―これが暗示するのは、カメラのフラッシュ、雨が降りしきる平和会議場の階段での暗殺、だ。それから、日本帝国海軍の旭日旗、朝日新聞社の旗、だ。

編集長―この映画のコンセプトから言っても、正解だと思うね。暗示的なシーンが多いのは、ドイツと日本に対する警戒からだろう。しかし、ハバーストックのプロットで想像できるようにナチスと日本帝国の軍部だけが読み取れるメッセージを入れていたと思う。帝国電気の電球には、もっと他にメッセージがあったかもしれない。

放送局長―その頃(1941)ニューヨーク特派員だった朝日新聞の森恭三は封切られた映画を見て、東京有楽町の本社にどんな電報を打ったか?おもしろい想像じゃないか?

特派員―ええ、緒方竹虎は、愕然としたでしょうね。有罪宣告だと思ったんじゃないかな?

編集長―44年戦争末期に情報局総裁に就任して直接権力を振るったことを考えれば、かなり怪しい。

              ☆ ☆ ☆

            東京駅暗殺事件 7

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■ 東京駅暗殺事件シリーズの第1回ミーティング

 

 

 

 

 

 


                        

             ☆ ☆ ☆   Updated 2004.7.24

特派員―714日の話ですが、大館市議会の総務財政委員会で、比内町と田代町と大館市の合併の電算統合費が約7億円になると市当局が報告1。委員の一人が鋭い質問をして、〈ソフト経費は中身が分かりにくい。統一した基準はあるのか?〉大館市の答えは、〈業者との交渉は十分にした。頑張ってもらった額だと思っている。〉業者とはどこか、と言うと、大館市は富士通のコンピューターを使用しているそうなので、単独なら、特約店であるところのあの黄色い会社ですね?

編集長―確かそうだったと思う。ぼくは忙しいのに、その辺の駄作の寄せ集めで立派な作品を作らせようというのか、なあ?

特派員―今度のこれは放火狂の美術とSF推理小説と行政喜劇の組み合わせですね。お喋りは止めて、東光コンピューターサービスのHPをちょっと覗いてみますよ。

                

特派員―東光コンピューターサービスは富士通の特約店ですね。予算書によれば、ええと、コンピューターのリースと保守管理の契約をしている。その会社が建物全体を黄色で塗りつぶして赤い色で〈TCS〉と入れてる、ということは、どういうことですかね?

放送局長―契約の条件の、そう、極秘条項なんじゃないか?

編集長―大館市は、建物の色彩に対して改善要求するべきだ。そういう関係がなくても、環境保全条例と憲法12条で断罪できる。12条【自由・権利の保持義務、濫用の禁止、利用の責任】には、〈この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民はこれを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う。〉と規定されてるんだから。

放送局長―大館市と自民党と公明党がぐるになって、あの会社を脅迫してると思うんだが。

編集長―じゃあ、あの会社は国の汚い色彩に対して改善要求すればいい。

アロマ―悪党の内乱で、みんな幸せよ。

特派員―とにかく、色彩は電磁波なんだから、生き物の機能に悪い影響を及ぼす危険性について真剣に考えないといけませんよ。

アロマ―人はなぜ黄色の上下を着ないのか?なぜ黄色の部屋に住まないのか?あたしはなぜ青い階段を何度も昇ったり降りたりしているのか?

放送局長―ううむ。虐殺的な疑問だ!

                

特派員―ところで、東光コンピューターサービスのHPにライブ・カメラというサイトがあるのを知ってる?

アロマ―何を映すライブ・カメラ?

特派員―大館橋、白鳥広場、長木川公園、対岸の街並みなど、180度の視界。キャノンの製品で、ユーザーがカメラの向きとズームの操作ができ、おまけにスナップ写真も取れる。2年前の設置。大館橋の他に、日本各地と世界の名所のライブ・カメラもある。

編集長―スナップ写真は、明らかに人権問題だな。まるで生命停止だ。野蛮だ。

放送局長―暗殺だ。しかし、橋の上を通る人の顔が認識できないから、この装置の存在は許せると思うが。

編集長―ほとんど毎日大館橋を通ってるが、気づかなかったよ。このアングルだと、黄色の建物じゃなくて、本社ビルの屋上にあるな、カメラは。目的は何だろう?

放送局長―別に説明はないが、決まってる。ユーザーの好奇心を満足させるためである。

アロマ―自由を制限するために決まってるでしょう!

特派員―どっちも当たってる。問題は、この会社がこんな覗きをさせているという標識を公共空間に出さないことですね。

編集長―実際、こんな装置は存在理由がないよ。あそこのアカシアを早く大きく成長させて、視界を遮ったほうがいい。

       ☆ ☆

 


1 北鹿新聞

 

▲ ライブ・カメラを見る

 

 

 

 

 

 

 


                           

             ☆ ☆ ☆   Updated 2004.6.28

アロマ―リヴァー・ユートピアが流してくれる映像はどうしてあんなにきれいなのか?不思議ね。他のHPで放送されるヴィデオは、安物のメカを使ってるとは思えないけど、画質が劣悪。どこの国のものでも。

半分半分放送局長―大企業のマス・メディアとローカルのインターネット事情について語るより、リヴァー・ユートピアが使ってるカメラが特別な製品じゃないってことを言えば、真実がくっきり鮮明に見えてくるんじゃないか?

アロマ―ビクターのGR-1というカメラで、20数万円よ。市民向けに最初に売り出されたデジタル・ヴィデオ・カメラよ。

特派員―最初のポケット・ムーヴィでしたね。

アロマ―編集長がポケットから出したときは、呆然としたよ。

放送局長―GR-1の映像はPCのアプリケーション〈ヴィデオ・スタジオ〉で編集してね、Webに送れるように自動処理する。ヴィデオの拡張子は、今は最高水準というわけじゃないが、MPEG(エムペッグ)1。もっと鮮明なMPEG2の映像を送信するには、他の機械が必要なんだ。しかし、映像信号の速やかな大量輸送ができなければ、放送には向かない。

                 

特派員―アロマが小坂町のHPで旧鉱山事務所のヴィデオを見ると、画質が非常に悪い。それで、今月7日質問のメイルを送ったけれど、まだ回答がありません。

アロマ―外部に委託しているのか、HP制作費はいくらか、という質問よ。精錬所の有毒物質流出事故の情報が載ってないんだもんね。それから、画質が悪いけれど地元の中学生に委託してるのか、と付け加えた。

放送局長―そりゃ、怒りますよ。でも、HP制作費に関心を持つのは、タイムリーだね。

特派員―大館市の予算書で調べたら、それに該当するような項目がない。ヴィデオや放送はやってないから、外部委託ではなさそうですね。

放送局長―ふうむ。鉱山事務所のヴィデオはおそらく岩手の博報堂が制作したんじゃないかな?あそこは、秋田県全域を牛耳ってるからな。秋北バス・ターミナル内の広告だって、君、あの会社の縄張りだ。画質が悪いのはきっと岩手の風土だよ。

特派員―日本の政治的風土の反映かもしれませんね。博報堂って、明治時代の創業だそうですよ。ここだけの話ですが、TVや新聞雑誌の広告や企画の仕事だけかと思っていたら、地域興しのイベントにもこう大きく暗い手を広げて、ですね、札束をがっぽり鞄に入れて八幡平の向こうに帰るそうですよ。

アロマ―うん、知ってる。大館市の樹海ドームにアナウンサーの木元教子を引っ張ってきて、日本語やら何やら、あちこちで文法破壊的な事故を起こすような話を1時間半喋らせ、130万円受け取った。大館市は録音テープ1本保有。しかし、契約で文書化は禁止されている。

                 

放送局長―悪徳プロダクション顔負けだ。しかし、テレビ朝日のニュースステーションを請け負っていたオフィスも、本当、ひどかったな。年間制作費50億円ですよ、君。どこにそんな価値があったか、オフィスの責任者か久米宏か朝日新聞の誰かに番組の中で解説してもらいたかったよ。

アロマ―自分のことになると、説明できないものよ。だから、消えてしまったのよ。渡辺真理ちゃんも一緒にさよなら。

特派員―テレビ朝日報道局とHHJとの関係は終戦50周年の199541号から始まったけれど、汚い放送局ですよ。

放送局長―ああいうのは絵の値段みたいなものだな。とぼけて言うと。

アロマ―確かに悪徳芸術のようなところがあったわ

特派員―しかし、国際テロ・ウィルスが繁殖しやすい場所だよ。

               ☆ ☆ ☆

 

歴史的な、と言える記事を読む
■ HHJ 1995.8 VOL.41

 

 

 

 

 

 

 

 


☆ ☆ ☆   Updated 2004.6.24

ナモネ氏―《海外特派員》の制作者ウェンジャー(Walter Wanger)は、国際的な事件が起こるたびにそれらを映画に取り込もうとしたのだ1939年ヒッチコックを監督にして、イギリス時代のシナリオ・ライター二人を参加させたが、そんな野心的な要求を出すものだから、シナリオは容易に完成しなかったということだ1

編集長―ウェンジャーの気持はよく分かります。ただ、どうかな、と疑問に思うのは、現実のニュース映像も実際の出来事に関する会話らしい会話もないことですね。

アロマ―ウェンジャーは第1次世界大戦で諜報活動をした人だけど、映画は政治的というよりサスペンスとアクションよ2。歴史上の出来事はと言えば、第2次世界大戦の始まりを告げる号外しか出ない。

特派員―それと、ラスト・シーンのロンドン空襲。19408月、映画が封切られた後の出来事。

ナモネ氏―それは、空襲下でアメリカ国民に呼びかけるラジオ放送のシーンは、映画が完成してから撮影して付け足したようだな。

アロマ―国際平和協会会長の娘キャロルと特派員がマイクの前に立って話す、感動的なラスト・シーンだわ。これにはチャーチル(Winston Churchill)首相の指令があったらしい、ということです。ホワイト・ハウスが喜んだので、議会でイギリスの戦争に味方する宣伝映画として非難された3

                      

放送局長―国際テロとの戦争の話かと思ってしまうよ。しかし、この映画で最高に好奇心をそそるのは戦争回避のためにオランダと某国が締結したばかりの条約の極秘条項だ。内容が敵側に知れたら、敵の有利になるという極秘条項。謀略組織はそれを聞き出すために、手の込んだ暗殺計画を立てた。この条約の話の由来は、映画制作当時実際にあった出来事なのか?

編集長―浜口雄幸(おさち)首相が19304月イギリスやアメリカなどと結んだ海軍軍縮条約だよ。軍艦の保有トン数を相対的に減らすことを承認して、軍部の好戦派を怒らせてしまった。

放送局長―暗殺事件の背景だな。

特派員―193991日ナチスはポーランドに進撃した。イギリスとフランスは宣戦布告したが、ポーランドに援助はしなかった。1か月でポーランドは降伏した。ドイツは予想に反して西側の国境に攻撃をかけないで、〈奇妙な戦争〉と呼ばれる平穏無事の状態が続く4。しかし、194049日ドイツ軍はノルウェーとデンマークに侵攻、510日ベルギーとオランダへの攻撃を開始した。

ナモネ氏―映画の撮影は3月から5月末まで、だ。

アロマ―〈奇妙な戦争〉の裏には極秘条項があったというんですか?

特派員―枢軸国は、その秘密を聞き出した。だから、奇妙な平和の間にフランスの難攻不落と謳われたマジノ要塞が謀略活動であっけなく陥落するように仕組まれたんだよ。これは確かメトロが走っていた要塞で…

編集長―いや、軍縮条約だね。そう考える根拠は、外交官の替え玉を暗殺するというプロットは映画の中でも必然性がないということだ。誘拐して極秘条項を聞き出せばいい。しかし、映像のおもしろさだけでなく、浜口首相が狙撃されてから翌年死ぬまで必死に国会議事堂で政治活動を続けたという事実を映画に取り込もうすれば、そういうトリッキーな暗殺計画に仕立てるのが一つの解決案だ。

放送局長―今まで東京駅の暗殺事件と呼んできたけれど、しばらく生かしておく計画で実行したという疑惑が出てきたな。朝日の報道記事で読み落としたが、モーゼル銃というのは発射音が低い。フラッシュの音に混じると、すぐには気づかれない。だが、殺し屋は余裕がありながら一発しか撃たなかった。それも、簡単には死なない腹に。

特派員―しばらく首相を生かしておいた間に何が起きたか、と言うと、陸軍の青年将校グループ桜会による近代史初のクーデター未遂、三月事件ですね51931(昭和6)年3月17日。橋本欣五郎中佐とA級戦犯の国家社会主義者大川周明が仕組んだ。

ナモネ氏―その国家改造計画に資金20万円を提供したのが、あの徳川義親だよ5

特派員―敗戦後に全額返済してもらってますね。失敗だった、と。

編集長―徳川義親が国家社会主義に共鳴するのは、非常に自然だね。天皇制に反感を抱いてはいたが、それを否定する民主主義思想は嫌悪していたんだから。

放送局長―天皇と皇族の上に立つためなら、何でもやるという現金な人だよ。だから、陸軍は彼らを裁かなかった。政治家は恐怖に怯えていた。それで日本の運命が決まった。

               ☆ ☆ ☆

              東京駅暗殺事件 6

1  The Darkside of Genius :  Donald Spoto

2,3  Steve Schoenherr Home Page  Professor of History, University of San Diego HP

4 小学館世界大百科事典: 江口朴郎

5 クリック20世紀

 

 

 

 

 

 

 


                       

☆ ☆ ☆   Updated 2004.6.1

アロマ―〈無意味な破片〉は組み合わせ自由のフリー・シナリオとして一般の人たちが無料で使えるようになる。

特派員―画期的なアイディアだね。

ナモネ氏―《海外特派員》という映画は、アメリカの海外特派員ヴィンセント・シーアン(Vincent Sheean)の回想録《パーソナル・ヒストリー》が下敷きなのだ。1936年制作者のウェンジャー(Walter Wanger)はその回想録の映画化権を何と1万ドルで買った1

特派員―それだけの価値はありますよ。きのうの夜ヴィデオで見たけれど。1936年は、スペインで内戦が始まった年です。ナチスが政権を握ったのは、33年。

ナモネ氏―裏話がなかなかおもしろい。無料で使わせたくないよ。ウェンジャーは、その頃世界情勢について非常に危機感を募らせていたのだ。ところが、映画化は決定したものの、アメリカ銀行は政治的な中立から逸脱するような映画には融資しなかったので、延期せざるをえなかった。

特派員―しかし、シーアンの回想は1936年以前の出来事だから、映画で描かれている第2次世界大戦直前のストーリーとは無関係ですね。彼が書いた1万ドルのストーリーとは、どんなものだったのかな?

編集長―あの映画を見て、シーアンという名前を聞けば、中国の西安を連想するよ。

ナモネ氏―まったく、そのとおりだ。インターネットで検索してみたら、意外なことにそのジャーナリストの名前が載ってる。しかも、19267年孫文(Sun Yat-sen)の未亡人宋慶齢と会ってるのだ。〈彼女こそ真の革命家である〉というのが、シーアンの言葉だ2。後は、何もなかった。

アロマ―あたしが見つけたフォーリン・サイトによれば、シーアンはイリノイ州生まれで、大学中退、1922年パリに行ってシカゴ・トリビューンの特派員の仕事にありつき、ヘミングウェイ(Ernest Hemingway)の飲み友達になったと書いてる3。回想録は宋慶齢(Song Qingling)の中国脱出を助けたアメリカ女レイナ(Rayna Prohm)が脳炎で死んだために、彼女に捧げられたということです。中国とモスクワでの経験が中心だけれど、旅行の日付や内容は分からない4シーアンの回想は1919年から29年までの10年間の出来事で、出版は35540年代後半に〈反ファシスト難民合同委員会を援護する市民〉のチェアマンを勤めた6

放送局長―あのヘミングウェイの飲み友達とは、ねえ。1万ドルはあっという間に消えてしまうな。

編集長―ヘミングウェイがスペイン戦争に参加するための旅費も出させると思うね。

特派員―彼の回想録には、19301114日東京駅で起きた浜口雄幸首相暗殺事件の記述がなかったかもしれないな?…すると、ウェンジャーは何が気に入って映画化しようとしたのかな?

アロマ―ジャーナリストがそういうジャンルの本を書いた草分けよ、シーアンという人は。

放送局長―オリジナルと映画が無関係だなんてことは、考えられないね。

              ☆ ☆ ☆

             東京駅暗殺事件 5

1        The Darkside of Genius :  Donald Spoto

シーアン; 1899~1975

2        アーサー・ランサムが作った12冊の物語HP

3        BUS-eum Tour Schedule HP

ヘミングウェイ; 1899~1961 1次世界大戦に従軍記者として参加。1926年《日はまた昇る(The sun also rises) 》で作家としてデヴュー。1929年《武器よ、さらば(A Farewell to Arms)

4  Mathematics Book org HP

5  Steve Schoenherr Home Page  Professor of History, University of San Diego HP

6        University College Cork  HP

 UCC is one of Ireland’s oldest institutions of higher education and was originally founded in 1845 as Queen’s College Cork.

 

 

 

 

 


 

 

                               

               ☆ ☆ ☆   Updated 2004.5.27

ナモネ氏―東京駅が皇居の前にあるというのは、記憶しておいていいことだな。昭和のテロ・シアターの第一幕はあの赤レンガの華麗な建築が舞台だったから。

特派員―今日のAFPレポートは、意外でしたよ1。スペイン皇太子の結婚式に列席した各国の王室関係者を書き並べているけれど、日本の皇太子がない。

ナモネ氏―雅子さんが読んだら、悄然とするだろうな。

アロマ―健康状態が良くなるとは思えないわ。

特派員―マドリッドの同時多発列車爆破テロのとき、犠牲者の国葬を行ない、各国から王室関係者が出席した。それに日本の皇族が出てないので、変だな、と思った。政治家はともかく、ね。

アロマ―変なのは、皇太子が一人でヨーロッパ訪問に出かけるってことよ。旅行前の記者会見で宮内庁の姿勢を批判してる2。雅子は〈外交官の仕事を断念して皇室に入り、国際親善を皇族として大変重要な役目と思いながらも、外国訪問をなかなか許されなかったことに大変苦悩しておりました。〉〈今回は貴重な機会を失ってしまうことを大変残念がっております。〉政府は雅子妃を外に出したくない、その理由が分からない、という意味です。

ナモネ氏―そうそう、皇太子の政治批判は異例のことだ

アロマ―あたしは、皇室が安全地帯だという甘い幻想は持ってませんよ。

編集長―そんな幻想はTVが広めたもので、ね、本当は皇族にも憲法が保障する自由に表現する権利があるんだが、それを認めない暗黙的な環境があって、次第に戦前に逆戻りして閉鎖的になったと思うね。

特派員―閉鎖的というよりはむしろ、政治との対立ですよ。

アロマ―皇族は無力な存在です。憲法の規定がどうだろうと、現実的には自分自身であるのが難しい生き物ですよ。

編集長―プリンセスの〈人格を否定するような動きがあった〉と皇太子はかなり率直に話しているが、これは昭和ファシズムの回帰を告発する発言だと受け取らなければいけない3

アロマ―HHJはファシズムが天皇と皇族の自由を奪い取る冷酷なドラマにスポットライトを当てたけど、今再び同じように生命の危険にさらされ監視されているにちがいありません。尾行だけじゃない4。日本政府がそれを傍観すれば、国際的な信用が崩壊しますよ。

編集長―貴族的な特徴を消し去ってしまえば、世界には何が残るか?戦後の日本を見れば、分かることだ。

半分半分放送局長―米だけ。邪魔したかな?

アロマ―自由な人間を消し去ってしまえば、と言い換えてもいいですね。

特派員―声が変ですね?

放送局長―あ、大館の東西南北をサイクリングしたら、さ。

編集長―ダレナニと同じ症状だな。そろそろラジオ風に語りやインタヴューを試してみようか、と考えていたんだが、こんな《テロ》に遭うとは。

アロマ―被害者の咳き込みぶりを放送すれば、いいんじゃない? いいんじゃない?

特派員―きわめて独創的な第一声ではありますね

☆ ☆ ☆

  東京駅暗殺事件 4

1 Radio France- France info-AFP  5.22

2.3  18:05 2004/05/13 asahi.com

4         執拗な尾行については敗戦処理内閣の首相東久邇稔彦(ひがしくに なるひこ)が証言している。参照  皇族 : 広岡裕児 著

 

昭和の皇居で何が起きていたか、探る

■ 偽装事故/米代川デイト/不存在の事件

 

 

 

 

 

 


                                  

☆ ☆ ☆   Updated 2004.5.24

特派員―HHJはどうも勝手に先走る癖があるとやはり思いますね。

ナモネ氏―そして、あるミュージシャンが批評したとおり話が〈アウト〉する、外に逸れて行って戻らない。

特派員―今日は決めたいと思います。市立中央図書館に行って《昭和ニュース事典》という新聞記事集を開くと、東京駅暗殺事件はこういう風に出ていました1

半分半分放送局長―ほう、毎日新聞OBが組んで編集した、か…適当に要約してみよう。

 

東京朝日 昭和51115日 夕刊

犯人は現場で直ちに捕縛

14日午前9時東京駅発超特急〈つばめ〉の発車約3分前自動車で駅に到着。多数の見送り人に取り囲まれて、858分プラットフォームの一等車に乗るため二等車のそばを歩いているときに壮士風の男にモーゼル銃で狙撃される。新聞写真班のマグネシュームの音と思う者が多かった。

 

大阪毎日 1118日 夕刊

狙撃犯人は愛国社の佐郷屋留雄

狙撃犯人は、17日警視庁から東京地方裁判所に送られた。警視庁の発表によると、佐郷屋留雄は中国吉林省生まれ、19歳まで横浜や神戸の汽船会社の船員、満州をうろついた後昭和3年神戸に上陸。昭和44月まで右翼団体黒龍会の渡辺義久方に寄宿。1月同会の組員に暴行して検挙される。7月中旬より愛国社社員。前科2犯。

 

大阪毎日 1210日 号外

佐郷屋と共犯を起訴、記事掲載差し止めを解除

警察はこの事件には《必ず黒幕がいる》と睨んだ。共犯関係、ピストルの出所等を捜査した結果、10日佐郷屋を殺人未遂罪で、さらに愛国社社員松木良勝を殺人未遂罪で、岩田愛之助を銃砲火薬取締法違反で、起訴した。

 凶行当日の狙撃犯人は、事務室のカレンダーに〈十四日十四日〉と意味ありげに同志松木が書き記した文字を読み、赤坂溜池で朝食をとり、バスで東京駅に来た。原首相暗殺に倣い、改札口で狙撃の機会を狙うが、容易に浜口首相が姿を見せないので、発車前12分入場券を買い求めてプラットフォームに入った。折柄広田駐露大使の見送りなどで相当雑踏を極めていた。護衛に守られて、浜口首相が歩いてくると、彼はソフト帽を取って目礼した。首相はこれに会釈した。その瞬間、佐郷屋は袴からピストルを抜いて国賊と叫んで腹部に第一弾を放った。すべての人々が呆然と佇んだ。

 

特派員―ソ連に行く広田弘毅と朝日新聞の緒方竹虎は浜口首相と同じプラットフォームにいた…この事実がなかなか掴めなかったのは、ぼくの怠慢じゃありませんよ。

編集長―まあ、ともあれ、毎日新聞と警察発表を信ずると、玄洋社と深いつながりのあるこの二人は一等車の中か外にいたことになるだろうな。見送りの人たちで混雑していたところへ浜口首相は向かって行った。広田弘毅と同じ車両だったのか?

特派員―どうですか、ね。このタイミングを考えると、何かおかしな気分ですよ、ぼくは。

放送局長―確認しておきたいが、広田はどこから船に乗るのか?

特派員―横浜港から、と安易に思い込んでいたけれど、神戸港から乗るのかもしれません。昭和5年当時の外国航路を調べなければ、ちょっと分からないですね。

ナモネ氏―ヨーロッパ経由か、シベリア経由か、どっちかだな。

放送局長―11月のシベリア鉄道は寒いから、南回りの優雅な船旅だと思うね、優雅な、豪勢な。

編集長―ショッキングなのは、その黒龍会なんだが、玄洋社のリーダー頭山満を顧問にして玄洋社幹部の子である内田良平が結成した組織なのだ2

放送局長―謀略の下請け 実行機関だな。

ナモネ氏―カレンダーの〈十四日十四日〉という合図も眩暈を起こさせるよ。

特派員―あっ、そうか。でも、東京駅がどんな位置にあったかを考えてみるのもおもしろいですよ。国会議事堂の近く、皇居前広場の正面ですから、ね。

放送局長―昭和のテロ・シアター。警察と護衛が右翼の前科者に楽々と狙撃を許したのは、怠慢じゃないね、立派な役者だっていうことだ。おかげでフラッシュを凶器のように感じる人が増えた…

編集長―この犯人は真実を言ってない、と思うのは、そこだよ。改札口で狙う計画を変更したというのは、決定的な場面は偶発的だと信じさせるためで、最初からプラットフォームで引き金を引くと決まっていた。あらかじめ入念に考えたシナリオでないとすれば、広田弘毅と緒方竹虎の二人を怪訝な登場人物から外せる。プラットフォームで暗殺するシナリオだったとすれば、この二人は玄洋社との関係で世論の疑惑と警察の捜査の対象になったはずだ。

放送局長―犯人は二人の無罪証明をしたわけだな。

特派員―そうすると、暗殺計画の隠れた目的は広田と緒方に対する畏怖の念を強めることですか、ね?’警察が手を出せない存在だとなれば、闇夜の黒幕。

編集長―陸軍が裏で糸を引いてるね。それ以後連続するクーデターや謀略の前兆だ。

ナモネ氏―NHKやテレビ朝日が取り上げなければいけないドラマだ。

放送局長―昭和初期と言えば、ラジオが魔力を発揮し始めた時代だな。NHKは戦前ニュース取材記者を置かなかったというから、この事件の第一報は朝日新聞の配信記事の横流しだろうな3

編集長―その辺も曖昧だ。写真班が群がっていたんだから、他のジャーナリストも当然いたと思えるが。毎日新聞OBはどんな理由でライヴァル朝日の夕刊記事を入れたのかな?

放送局長―朝日の緒方はただプライヴェートに友人を見送りに行っただけだ。首相と大使の出発レポートにはニュース・ヴァリューがない、どの報道機関もそう判断していたと考えたいね。写真の掲載と短い説明で十分だ、と。それで、事件は幸運に恵まれた右翼ジャーナリストしか書けなかった、ということじゃないか?

編集長―独占的号外の売上げは、相当なもんだろう。文学的才能が乏しい者には、こういう反応はいろんな意味でありがたいはずだよ。

ナモネ氏―この暗殺事件にヒントを得たと思わせる映画がヒッチコック(A.Hichcock)の《海外特派員(Foreign Correspondant)》だ。1940年撮影制作、第2次世界大戦が勃発する前年の91日までの7日間を描いている。これで暗躍するのはドイツ人と日本人の謀略組織なのだ。映画制作コードに引っかからないようにぼかしてるが4

放送局長―忘れてた!オランダの外交官の替え玉が階段で射殺される事件だ。カメラマンがフラッシュを焚いてピストルを撃つ!         

       ☆ ☆

  東京駅暗殺事件 3

1        編集製作 昭和ニュース事典編纂委員会、毎日コミュニケーションズ

2        1901(明治34)創立。内田良平: 1874~1937 玄洋社に学ぶ。孫文の中国革命同盟会の結成を斡旋。日韓併合の裏面に活躍。1925年加藤高明首相の暗殺未遂事件で入獄。満蒙独立運動を推進。     

      ---私立PDD研究所HP

3        社団法人日本放送協会; 1925 年東京・大阪・名古屋局放送開始。翌年統合。初代総裁 後藤新平 満州鉄道総裁、内相、 岩手県出身。初代理事長(翌年NHK会長) 岩原謙三 三菱財閥取締役、芝浦製作所社長。

1931(昭和6)末、満州事変後ラジオ受信機が一気に100万台を越える。

NHKの出発点では、新聞社からの理事出向があり、ニュースは新聞社と通信社が提供した。

      ---NHK腐蝕研究HP : 木村愛二

4 The Darkside of Genius : Donald Spoto   早川書房

 

中国での実例を見ると

▼ テロリスム偏愛症候群

 

 

 

 

 


                              

 

               ☆ ☆ ☆   Updated 2004.5.6

ナモネ氏―浜口首相と広田弘毅が同じプラットフォームにいたか、という疑問だが、ヒントが見つかったか?

特派員―ええ、インターネットで探したら、1秒で出てきましたよ。東京駅歴史探訪---〈昭和5年 第4ホームで浜口雄幸首相狙撃される。〉観光スポット案内---浜口首相暗殺現場〈1930年11月14日、岡山で行われる陸軍特別大演習参観のため、特急つばめ号の1等車に向かってホームを歩いていた浜口首相が狙撃されました。中央通路の10番線付近の柱にプレートがあります。激動の時代を生き抜いてきた東京駅ならではのエピソードといえるでしょう。〉やったのは、右翼団体の愛国社1

編集長―そのプレートは新しく製作したものだろう。狙撃された場所の説明も、違う。しかし、これで浜口首相は東海道本線の特急で岡山に行こうとして4番線のプラットフォームへの階段を上がったということがはっきりした。

特派員―時刻はわかりませんが、駐ソ大使の広田弘毅はそれと無関係に、たぶん横浜行きだと思うけれど、他のプラットフォームにいたか、あるいは駅のどこかにいたんでしょうね、朝日新聞の緒方竹虎と一緒に?

ナモネ氏―二人が浜口首相に挨拶しなかった、ということは考えにくいな。

編集長―その辺の関係を明確にした記述はないですね。

ナモネ氏―本当はすれ違いのドラマだったのか、ねえ?

編集長―さあ。浜口首相と右翼政治群の関係に並行的じゃないのかなあ。

ナモネ氏―少しでも接触すれば、爆発するような関係だな。

特派員―東京駅では平民出身の原敬首相の暗殺があった。1921114日。こういう日付のリンクは現在の国際テロと共通していますね。

編集長―歴史が大好きだっていうことだよ。

               ☆ ☆ ☆

              東京駅暗殺事件 2

1        田村(松山大学教授)のホームページ

 

 

その辺の関係について漠然とながら触れた記事

▲ 人ありて 頭山満

 

▲ 東京駅観光スポット案内---浜口首相暗殺現場

 

 

 

                                 

 

 

 

 

☆ ☆ ☆   Updated 2004.5.1

編集長―これも偶然の一致を装った計画ではないか、と疑問に思う事件だ。1970年の夏休みが始まったときだが、友人を見送るため東京駅に行った。この友人は呉の出身で、実存主義のミーティングを主宰していた。東京駅に見送りに出かけたのは、ぼくの他に旅の会のメンバー数人。呉の坊ちゃんが孤独な都会生活を表明したので、じゃあ、派手に見送りしてやろう、と遊び半分に実行したのだ。

半分半分放送局長―プラットフォームがよく閉鎖されなかったもんだよ。

編集長―呉の友人は、無事に列車に乗って帰れるかどうか、心配してたよ。ところで、プラットフォームへの階段を昇っているとき、ぼくは踏み段に小さいプレートがあるのに気づいた。それは、1930 (昭和5) 1114日浜口雄幸首相が右翼の青年に撃たれた場所を示す標識だった1

特派員―ライターは、そこですよ。

放送局長―分かってるよ、君。今の科白は削除してくれ。

特派員―あっ、グラスが割れてしまった。

ナモネ氏―局長らしくないことだな。

特派員―いや、局長のイメージですね。

放送局長―その砕け散ったグラスと赤いワインの液体に何を見るか、だ。

特派員―これは書かれていたこと、セ・テクリ(C’est écrit)運命です

放送局長―浜口首相は重傷を負って、そのために翌年死ぬわけだが、暗殺事件が起きたとき東京駅に来ていた登場人物が非常におもしろいね。あの緒方竹虎と広田弘毅だってんだから。

編集長―そうそう、朝日新聞の編集局長緒方竹虎は広田弘毅が駐ソ大使として赴任するのを見送りに来ていた。東京駅に。

特派員―横浜港から船で行くんでしょうね。

編集長―そうだろうな。ぼくがインターネットで極秘に仕入れた資料には別に書いてないが2

特派員―横浜だったら、政府の要人は自動車で行くのが普通じゃないのかな?

編集長―今は、そうだろう。いずれにしても、広田弘毅と緒方竹虎は日本帝国の黒幕玄洋社と深い関係があった3。表で、太陽の下で何を言おうと、信用するわけにはいかない。

特派員―プラットフォームは、同じだったんですか?

編集長―さあ、それも分からないが、先の資料によれば、緒方は〈車を飛ばして社に戻り、自ら原稿を書き、号外を発行〉したということだ。

放送局長―新聞社は当時有楽町にあったんだろうね?

編集長―だと思うが、ジャーナリストと事件が偶然同じ空間同じ時間に出合うというのは何か不自然で作為的な感じがする。ぼくが立てた第一の仮説は、軍部と玄洋社あるいはその配下の右翼組織がその計画を練った。未来の首相でA級戦犯として処刑される運命の広田と戦犯容疑者のジャーナリストはそれを予期していなかった。これは二人に対する脅迫のメッセージになるだろう。しかし、もう一つの仮説は後者がその計画に参加していたというものだ。

放送局長―参加はしていないが暗殺を知っていた、ということも考えられる。

編集長―断片的な記憶がいっぱいあるけれど、それらがジグソー・パズルのようにきれいに集まって一つの絵を構成しようとしている、ずっとそんな状態だよ。

特派員―ぼくがやっと理解できそうな気がしているのは、《昭和天皇独白録》の中であの知性的な紳士がなぜ広田の話になると、東条英機についてよりも精神のバランスを崩して非難したか、ということですね。広田は無実だったという意見があるけれど、それは認識が甘い。

ナモネ氏―広田が真相を喋っていれば、もっと戦犯容疑者が裁かれていたな。戦後の暗闇はなかったはずだ。

☆ ☆ ☆

      東京駅暗殺事件 1

1  浜口雄幸 : 1870~1931  1927年民政党結成、初代総裁に就任。29年首相に。39年明治憲法が定める天皇の統帥権を補助する権限が内閣と軍部のどちらに属するかをめぐって海軍と対立する。 --- Web クリック20世紀      

                                           

2 人ありて 頭山満 :  読売新聞 Web

〈福岡こそは日本の国家主義と帝国主義のうちでも最も気違いじみた一派の精神的発祥地として重要である。〉---カナダ人歴史学者ハーバート・ノーマン(Herbert Norman)の言葉

 有名なテロ事件に1889(明治22)年大隈重信外相を爆弾襲撃した暗殺未遂計画がある。早稲田大学の創始者は片足を切断されて、キャンパスの銅像に。

 

3 広田弘毅 : 1878~1948  玄洋社に所属。19362.26事件後内閣を組織して外相を兼任する。11月ドイツと防共協定を締結。

 

 緒方竹虎 : 1888~1956 : 玄洋社の中野正剛の影響を受け、早稲田大学に進み、朝日新聞に入社。黒幕の大親分頭山満の仲人で枢密院顧問三浦梧楼の親類の女性と結婚。1994年小磯国昭内閣の国務大臣兼情報局総裁に就任。戦後は一時公職追放。自由党総裁。--- 人ありて、 クリック20世紀

 

天皇が置かれていた状況から戦前の真実を探るために

■ 偽装事故/米代川デイト/不存在の事件

 

 

 

 

 

                           

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