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道徳教育



 人間社会のルールには次の3つがある。

 @しなければならないこと。
 Aしてもしなくてもいいこと。
 Bしてはならないこと。

 この3つを考えた時、@の『しなければならないこと』と、Bの『してはならないこと』の2つは、人間社会を円滑に営むために法律で規制されている。
 例えば、@の『しなければならないこと』では、税金を払わなければならないとかいうルールを始め、レストランで食事をしたらお金を払わなければならないとかいうものである。それを守らなければ警察に逮捕される。
 また、Bの『してはならないこと』は言うまでもないだろう。やったら警察に逮捕されること、つまり、社会で“犯罪行為”と呼ばれるものである。
 そして、ここでポイントにしたいのは、Aの『してもしなくてもいいこと』だ。
 これは法律で規制されているような行為ではないので、してもしなくても良く、その基準は個人によって、いや、国や文化によって大きく違ってくる。

 日本では、もっぱらこのA番の基準とされるのが“道徳”と呼ばれるものなのだ。
 例えば、電車の中でお年寄りに席を譲る、なんてことを考えれば簡単だろう。別に席を譲ろうが譲るまいが自由であって、譲らなかったからと言って警察に逮捕されることもない。この基準を示しているのが“道徳”だ。
 そう。
 この道徳は、個人によって差があり、また、国や文化によって大きく異なる。

 日本ではこのA番を道徳が支配するが、国によっては宗教がもとになっていたり、思想、哲学、伝統など様々な価値観がもとになっている。
 そう。
 牛を食べても良いか、豚を食べても良いか、猫を食べても良いか、鯨を食べても良いか、こんなのもA番に当てはまることがらであって、議論以前にその人間の行動を支配する根本、パソコンで言うところのOSなのだ。まぁ、日本の道徳観ってのも、かなり仏教思想の影響を受けているし、国によってはAの行為を法律で定めているところもあるだろうが。

 

 さて、ここで強調したいのは、このA番。これは、あくまでも人によって様々で、国や文化によっては大きく異なると言う点だ。法律で強制されている社会もあれば、あくまでも個人の道徳に依存している社会もある。法律で強制されない社会なら、強制されない以上、ある人間が“正しい”と信じている道徳や宗教と反する行為を行ったとしても、それを非難される言われもない。また、自分が“正しい”と信じる道徳や宗教を嫌がる相手に無理やり押し付ける権利などない。
 それがど〜〜も、日本の中年ブタ親父やウス汚いオバハンたちには、全く理解できないようだ。

ブタ 『大人なんだから、それくらい理解しろよ!』

 …なんて言葉が良い例で、価値観、異文化の強要以外の何物でもない。
 仕事の出来ない無能者ほど、すき好んでこの言葉を使いたがる。
 相手は、精神年齢が低いんじゃなく、そいつの持っている道徳的、文化的背景が違うだけのことなのに、自分の道徳(宗教)が全て正しいと信じ込み、それが出来ない相手を『大人ではない』と決めつけ、自分と同じ道徳(宗教)を信じるように強要する…。

 これは、人権侵害以外のなにものでもない!
 これが理解できないという意味では、この無能者こそ幼稚な連中といえるだろう。

 日本語学校の場合、外国人留学生が相手で多国籍異文化社会だから、当然、全く違う道徳観(価値観)が存在する。その彼らに対し、我々が注意しなければならないことは、『日本社会を支配する道徳観を教えること』であって、それを『強制し、思考改造を行うこと』ではない。思考を変えさせる必要はない。ただ日本人が正しいと信じている道徳を尊重し、日本社会から歓迎されなければ留学の成功などあり得ないという点を指導するだけだ。
 自己と他者の違いを認識し、違いを認め、お互いを尊重しなければならない…って、何も外国人との関係だけでなく日本人同士でも言えることだ。俺はこれまでの人生で、何度、同じ規格に強制されようとしてきたことか!

 外国人、つまり、日本人ではない奴に日本の価値観を強要し、思考改造を行おうとする蒙昧で傲慢な中年ブタ親父!!
 救われないね…。
 二言目には『俺はそうやって育てられたんだ!』とか喚き散らす。
 別にオマエの人生哲学なんぞ、興味がねぇっつうの(爆)!
 この手の連中は、相手の文化を否定することで、自分が優越感に浸りたいだけなんだろう。

 

 さて、先日の外国人留学生特別授業で使った教材を載せておこう。
 これは小学校の道徳副読本で紹介されるお話しで、文部科学省の学習指導要領では、手品師のとった行為を素晴らしいこととして教えるよう指導している、ようだ(笑)。
 残念ながら、私はこの手品師のとった行動を『人間として正しい行為』とは受け取らない。もちろん、ガキの頃、学校で思考統制されていた頃には『人間として正しい行為』と信じて疑わなかったろう。けど、世の中には全く違う価値観が存在し、その価値観にも必ず文化的歴史的背景としての理由が存在すると言うことを悟って以来、その考えは大きく変わった。今じゃ、涙なんぞ微塵も出ず、むしろ、このような価値観を強要してきた日本社会を異常だと思っている。
 うん。
 なもんだから、相手が外国人だと、めちゃめちゃ面白い意見が出てくるんだ。

 

(以下、教材)


 あるところに、腕はいいのですが、あまり売れない手品師がいました。もちろん、くらしむきは楽ではなく、その日のパンを買うのも、やっとというありさまでした。

「大きな劇場で、はなやかに手品をやりたいなあ。」

 いつも、そう思うのですが、今の彼にとっては、それは夢でしかありません。それでも、手品師は、いつかは大劇場のステージに立てる日の来るのを願って、腕を磨いていました。

 ある日のこと、手品師が町を歩いていますと、小さな男の子が、しょんぼりと道にしゃがみ込んでいるのに出合いました。

「どうしたんだい。」

 手品師は、思わず声をかけました。男の子はさびしそうな顔で、お父さんが死んだあと、お母さんが働きに出て、ずっと帰ってこないのだと答えました。

「そうかい。それはかわいそうに。それじゃおじさんが、面白いものを見せてあげよう。だから、元気を出すんだよ。」

と言って、手品師は、帽子の中から色とりどりの美しい花を取り出したり、さらに、ハンカチの中から白い鳩を飛び立たせたりしました。男の子の顔は、明るさを取り戻し、すっかり元気になりました。

「おじさん、明日も来てくれる?」

男の子は、大きな目を輝かせて言いました。

「ああ、来るともさ。」

手品師が答えました。

「きっとだね。きっと来てくれるね。」
「きっとさ。きっと来るよ。」

 どうせ暇な体だ、明日も来てやろう。手品師は、そんな気持ちでした。

 

 その日の夜、少し離れた大きな町に住む仲の良い友人から、手品師に電話がかかってきました。

「おい、良い話があるんだ。今夜すぐそっちを立って、僕の家に恋。」
「いったい、急にどうしたというんだ。」
「どうしたもこうしたものない。大劇場に出られるチャンスだぞ。」
「えっ、大劇場に?」
「そうとも、二度とないチャンスだ。これをのがしたら、もうチャンスは来ないかもしれないぞ。」
「もう少し、くわしく話してくれないか。」

 友人の話によると、今、評判のマジックショーに出演している手品師が急病で倒れ、手術をしなければならなくなったため、その人の代わりを探しているのだというのです。

「そこで僕は君を推薦したというわけさ。」
「あのう、一日のばすわけにはいかないのかい。」
「それはだめだ。手術は今夜なんだ。明日のステージに穴をあけるわけにはいかない。」
「そうか……。」

 手品師の頭の中では、大劇場の華やかなステージに、スポットライトを浴びて立つ自分の姿と、さっき会った男の子の顔が、かわるがわる浮かんでは消え、消えては浮かんでいました。
(このチャンスを逃したら、もう二度と大劇場のステージには立てないかもしれない。しかし、明日は、あの男の子が僕を待っている。)
 手品師は迷いに迷っていました。

「いいね。そっちを今夜発てば、明日の朝にはこっちに着く。待っているよ。」

 友人は、もうすっかり決め込んでいる様子です。手品師は、受話器を持ちかえるときっぱりと言いました。

「せっかくだけど、明日は行けない。」
「えっ、どうしてだ。君がずっと待ち望んでいた大劇場に出られるというのだ。これをきっかけに、君の力が認められれば、手品師として、売れっ子になれるんだぞ。」
「僕には明日約束したことがあるんだ。」
「そんなに大切な約束なのか。」
「そうだ。僕にとっては大切な約束なんだ。せっかくの君の友情にすまないと思うが…。」
「君がそんなに言うなら、きっと大切な約束なんだろう。じゃ、残念だが…。また会おう。」

 翌日、小さな街の片隅で、たったひとりのお客様を前にして、あまり売れない手品師が、次々と素晴らしい手品を演じていました。


 さて、この手品師のとった行動について、どう感じるだろうか?

 

 

 このヒントをもらったのが下の書籍です。推薦します!

松下良平 『道徳教育はホントに道徳的か?:「生きづらさ」の背景を探る 』 日本図書センター

 



 

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