3/4/2017/SAT
『行人』(1913, T2)の漢字とルビ
夏目漱石の小説『行人』(1913, T2)を読んだ。読みながら、漢字とルビの使い方に面白さがあることに気づいた。
面白いどころか、自由奔放。現代のほうが漢字の用法はもっと規則的だろう。
こんなルビの使い方をするのは、私の知るかぎり、「歳時記」と書いて「ダイアリー」、「距離」と書いて「ディスタンス」、「異邦人」と書いて「エトランゼ」と読ませるさだまさしと、「客室乗務員」と書いて「キャビンアテンダント」と読ませる田中康夫と、くらい。
『行人』は青空文庫で読むことができる。難しい漢字の表記に手を借りた。
- 停車場 - ステーション
- 消息 - たより
- 酒精 - アルコール
- 調戯 - からかい
- 薩張りした身装り
- 調戯 - からかい
- 襯衣 - シャツ
- 洋袴 - ズボン
- 洋傘 - こうもり
- 快かつ - 害に谷
- 洋盃 - コップ
- 逍遥いて - ぶらついて
- 少時 - しばらく
- 氷河菓子 - アイスクリーム
- 肉汁 - ソップ
- 屹度 - きっと
- 上履き - スリッパー
- 洋傘 - こうもり
- 素っ裸体 - すっぱだか
- 羞恥家 - はにかみや
- 隠袋 - ポケット
- 喫驚 - びっくり
- 吃驚 - びっくり
- 喫驚 - びっくり
- 無頓着 - むとんじゃく(ちゃく - ではない)
- 旋毛 - つむじ
- お待遠 - おまちどお
- 判切り - はっきり
- 接吻 - キッス
- 私語いた - ささやいた
- 蓊欝 - こんもり
- 歇私的里 - ヒステリ
- 暴風雨 - あらし
- 麦酒 - ビール
- 御凸額 - おでこ
- 給仕 - ボイ
- 石鹸 - シャボン
- 巫山戯過ぎ - ふざけすぎ
- 謝罪まった - あやまった
- 音信れた - おとずれた
- 洋机 - テーブル
- 扉 - ドア
- 象徴 - シンボル
- 茫乎 - ぼんやり
- 強請って - せびって
- 天鵞絨 - びろうど
- 洋卓 - テーブル
- 判然 - はっきり
- 茫然 - ぼんやり
- 普通 - なみ
- 昼餐 - ひるめし
- 精しい - くわしい
- 釦鈕 - ボタン
- 饗応 - もてなし
- 訪問れた - おとずれた
- 特殊 - スペシャル
- 突然 - いきなり
- 目的 - エンド
- 方便 - ミインズ
- 論理 - ロジック
- 自烈ったい - じれったい
- 無頼漢 - ごろつき
- 只管 - ひたすら
- 藻掻く - もがく
- いびき
- 終夜 - よもすがら
- 肝腎 - かんじん(肝心ではない)
- 字面 - じめん(じづら - ではない)
- 御冗舌 - おしゃべり
- 徒爾 - いたずら
- 不図 - ふと
- 四囲 - あたり
- 宅中 - うちじゅう
- 音信 - たより
- 他 - ひと
このほか、「思わずむっとした」という表現がすでに使われていることにも驚いた。
写真は、小金井公園の梅、芳流閣。横に長く枝が伸びている。
さくいん:夏目漱石