第5話 インダストリア


『未来少年コナン』のダイスは、バラクーダ号の船長。『ルパン三世』の銭形警部は、警視庁の警部。二人は、宮崎駿の絵では、風貌がどことなく似ている。

ダイスと銭形警部の共通点。組織人でありながら、一匹狼への憧れも捨てきれない。故郷が逃げ出したいくらい大嫌い、とはいえ、どこへ行くかが定まらないからいつまでも留まっている。下に強く、上に弱い、典型的な中間管理職。

ダイスは委員会の決定には不満でも顔には出さない。でも、地下街でやけ酒をあおることは忘れない。

銭形は、ルパン探索のためにカリオストロ城までは来たものの、素気なく追い返され、すごすごと引き下がるしかなかった。銭形も、やけ酒をあおる。『カリオストロの城』は、テレビ・シリーズで築かれた人物像を下地にしているので、キャラクターの性格を紹介する必要はなく、話がどんどん進んでいく。


『コナン』では、長い時間をかけて登場人物の性格が説明される。作者たちにしても作りながら練ったところがあるらしい。映画では手短かに登場人物を紹介しながら、物語も進めていかなくてはならないから難しい。


今回、モンスリーが黄色いワンピースに白い帽子という洒落た姿で登場する。力を表す戦闘服を着ているときよりも、いらいらしているように見える。少女の頃を思い出そうとして少女らしい服を着てみても、何も思い出せない。かえって過去と今の自分との違いに気づいていないから、苛立ちばかりがつのる。

そこへ、いきなりコナンから「よくもおじいを殺したな」と言われたらたまらない。おそらく、彼女のほうでは殺すつもりはなかっただろうし、自分が殺したとも思っていないだろう。

彼女がもし酒飲みであったなら、その晩、苦い酒を飲んだに違いない。


さくいん:『ルパン三世』