将来も維持可能な並行在来線のために、
富山県もあいの風とやま鉄道鰍焜`ャレンジャーとしての未来戦略を
−県に求められる5つの責務とあいの風とやま鉄道に期待される3つの戦略−
2013年9月3日 公共交通をよくする富山の会
はじめに
あいの風とやま鉄道鰍ヘ、富山・直江津間が1913年(大正2年)4月1日全通し、北陸本線となって100年を越える歴史を受けつぐ第三セクター会社として、2015年春の新たな旅立ちを迎えようとしています。
公共交通をよくする富山の会は、JR北陸本線があいの風とやま鉄道鰍ノ引き継がれても県民生活と地域産業を支える県内公共交通機関の「基幹鉄道」として、また国土をささえる日本海縦貫鉄道として将来も維持可能な鉄道となることを切実に願っています。
そこで、並行在来線を受け継ぐあいの風とやま鉄道鰍ェ、全国の並行在来線・第三セクター鉄道会社を牽引するような新たな峰を築いていくチャレンジャーとしての役割を担うことを期待するものです。その立場から、今年6月のシンボジウム−将来も安定した運行ができる並行在来線経営計画のために−も受け、これまで5次に渡る「提言」なども踏まえて、公共交通をよくする富山の会としての新たな「提言」(第6次)をおこなうものです。
〔1〕県民・利用者の並行在来線を受け継ぐ鉄道に対する要求の方向について
私たちは、これまで3回の住民・利用者アンケート調査を行いました。2002年には、富山市内の高校生を対象に公共交通の利便性について、2010年春と2012春には、それぞれ沿線住民を対象に、並行在来線について行いました。その結果、沿線住民・利用者が持つと思われる、並行在来線を受け継ぐ鉄道に対する要望は、次の3つの事柄―(1)路線の維持 (2)スムーズな移動 (3)低廉な運賃―に集約されます。以下にそれぞれの事柄について具体的な趣旨を提示します。
(1)路線の維持−第三セクター会社が積極的な路線運営に取り組めるスキームを
沿線住民・利用者は、自分たちが依拠する移動手段としての並行在来線が、今後、長期間大過なく維持されるのか、その点に不安を感じています。第三セクター会社が直面する厳しい経営環境を積極的に解消し、沿線住民・利用者の不安をぬぐい去る施策が県・国・JRに期待されています。その施策は整備新幹線の存在と関連づけねばなりません。
なぜなら、新幹線開業によって地域住民全体にその利益がもたらされるとされながら、沿線住民・利用者からみれば、並行在来線の経営分離が行われることに伴って、路線維持についての不安と、運賃値上げなどの不利益を直接的に被るからです。前者と引き替えに後者があるのならば、前者の利益でもって後者の不利益を埋め合わせるべきでしょう。従って、新幹線の経済効果からもたらされる利益を、並行在来線の維持に投入する施策スキームが求められています。
例えば、整備新幹線関連の固定資産税収入を並行在来線の維持運営に投下するなどが考えられます。整備新幹線の貸付料の活用の問題もあります。また、上下分離を行って固定費を引き下げ、第三セクター会社の経営環境を楽にすることも重要です。所有権の分離までいかなくとも、財政の分離を少なくとも行うことが、沿線住民・利用者の不安解消にかなう方向であるといえます。
(2)スムーズな移動−待たなくていい、乗り換えなくていい運行形態を
沿線住民・利用者は並行在来線に、待たずに乗られる鉄道になることが期待されています。即ち、アンケートによれば、7割の人々が待ち時間20分以下を望んでいます。それ以上になると多くの人々にとってもはやアテにされない交通機関に成り下がると言うことです。並行在来線のライバルはマイカーなのですから、それに伍するために日中でも20分間隔の運行を目指すことが求められています。
関西方面、中京方面、新潟方面と結ぶ在来特急の並行在来線内乗り入れについても、沿線住民・利用者はその実現を強く望んでいます。東京方面への利便性が向上したとしても、多方面への利便性が低下するのであればそれは話が違う、と考える人が多いのです。沿線住民・利用者からすれば、乗り換えさえなければ、在来特急の車両を並行在来線内はそのまま快速として走らせてもらってかまわないわけで、乗り換えの不便を強いない形を実現することが求められます。
(3)低廉な運賃−マイカーより便利で安く、マイカーから客を奪う鉄道へ
沿線住民・利用者は運賃について最低でも現状維持を求めています。つまり、現状運賃を上限とした低廉な運賃を望んでいるのです。県が構想する「公共交通の基幹軸としての並行在来線」を実現するためには、並行在来線はマイカーから客を奪わねばならず、運賃設定はその目標に沿って戦略的に考えねばなりません。
「低廉な運賃を」という沿線住民・利用者の望みは、その大前提です。運賃値下げを行って利用客を増やした万葉線の例もあります。マイカー利用にコストがかさむようにする欧州での施策例もあります。マイカーに勝つために、会社戦略と行政施策の組み合わせでもって、「並行在来線を利用すればマイカーより便利でコストがかからない」と思わせる。その第一歩が低廉な運賃です。
JR、隣接第三セクター鉄道、既存私鉄、バス・路面電車など他社路線との乗り継ぎにおいて、乗り継ぎ毎に初乗り運賃がかかることも沿線住民・利用者は不満に思っています。距離による運賃通算か、乗り継ぎ時の大幅な割引が望まれます。予定されているICカードの導入によって運賃通算や割引の仕組みを導入するハードルが低くなるので、ICカード導入と合わせて考えることが必要でしょう。
私たちの姿勢は、「まず沿線住民・利用者の立場に立つ」というものです。その姿勢でこれまでアンケートをはじめとした調査を行ってきました。その結果、私たちが得た沿線住民・利用者の並行在来線に対する要望は、単に「路線が維持されていればいい」というものではなく、「路線が維持され、待たずに乗れて、価格が安い」交通機関になって欲しいというものでした。
”交通弱者への福祉”と言う位置づけを中核にして運行を維持し続けることだけを目的として第三セクター会社があるのであるなら、並行在来線は地域に愛されもせず、公共交通の基軸ともならないでしょう。これから少子高齢化が進むからといって、今より少ない県内人口であった時、富山県内の公共交通を立ちゆかなかったかというと、そうではありません。要するに、マイカーに流れた客を取り戻す、家族連れや20〜60歳台の人々を客として取り戻すしかありませんし、沿線住民・利用者はそのような鉄道になることを望んでいるといえます。次に、そのために県・会社が何をやるべきで、どのような戦略を考えるべきか、私たちの考えを示します。
〔2〕将来も維持可能な鉄道のために、富山県に求められる5つの責務について
富山県は、JR北陸本線の県内区間を受け継ぐ第三セクター鉄道の経営計画(概要)を作成し、あいの風とやま鉄道鰍フ資本金の2分1以上を出資しており、その役割と責務には大きなものがあります。また県は、あいの風とやま鉄道鰍フ将来への展望(未来戦略)を県民とともにつくりあげていくためにも、県に求められる、以下、5つの責務について提言します。
(1)「メンテナンスは予防保全」の考えで、JRに責任を果たさせる
車両・線路・土木・電気・通信など様々な技術が融合して成り立つ鉄道です。各現場の人材が集まって一つの職場をつくる技術集団でもある鉄道です。この鉄道が、将来に渡って維持可能になる基盤の一つが日常的なメンテナンスです。それは安全の保障にもなります。
新しく導入される車両や設備・施設などは、メンテナンス作業は最小限化されます。また、技術の発達によってメンテナンス技術も変化しています。すでにあいの風とやま鉄道鰍ナは、JR出向社員などを受け入れていますが、技術の継承、技術者の養成に向けてプロパー社員の養成が始まっています。
しかし、北陸本線の電化完了は1965年、複線化完了は1969年です。どこにどんな問題が潜んでいるのかも心配になります。あいの風とやま鉄道鰍ェ鉄道の運行を開始する2015年春に向けてJR西日本は、10億円の予算のもとに保守・修理などの作業をおこなっていますが、要員の配置などから、果たしてそれで十分といえるのか疑問の声もあがっています。
県は、2012年9月県議会で、JRに対しては、譲渡後に施設や設備の修理修繕に不備などがあった場合、つまり「JRに瑕疵があった場合」に「瑕疵担保責任」を求めると言明されました。その立場はしっかりと堅持するとともに、その覚悟で臨むべきです。
要は、鉄道のメンテナンスは、故障などが起きてからの「事後保全」ではなく、「予防保全」の考え方に立って、譲渡前の修理修繕は、どこをどう保守・修理するのか、JRとしっかり協議し、具体的な個所付けと必要金額も明らかにして、作業を完了することです。
さらに国に対しては、JR鉄道資産などを譲渡するにあたっては安全が確保されるよう、JRに対して指導を行うよう、求めるべきです。問題があってからは遅いのです。
このことは、あいの風とやま鉄道鰍フ安全確保と安定経営のためには決定的な要素となります。ここに、先行事例などとらわれず、チャレンジャーとしての県の役割・責務として求められる課題です。
さらに、あいの風とやま鉄道鰍フ運行開始後に発生する、JRに依頼する定期検査や検査に伴う修理などや部品の調達価格などは、できうるかぎり安く納入させることです。
メンテナンスの「予防保全」方式は、あいの風とやま鉄道鰍ノとっても安全確保の基本となるものです。
(2)「鉄道でまちづくり」に向けて、積極的な支援をおこなう
脱「クルマ社会」、ポストモータリーゼーションの考え方を持つ人たちが増えています。若者も、働き盛りも、高齢者も自動車に過度に依存した社会や交通政策に疑問を持ち憂いを抱いていことは私たちのアンケート調査でも明らかになっています。
これらの人々を鉄道の潜在的利用者と受け止めて、顕在的利用者に変えていく取り組みができるのかどうかは、あいの風とやま鉄道鰍フ将来展望にもかかわる課題といえます。
この課題を、あいの風とやま鉄道鰍セけに託しても無理があります。あいの風とやま鉄道を県内公共交通の「基幹鉄道」として、県と各自治体の積極的な役割で、路線バス、コミュニティバス、電車などとシームレス(接続が便利)な運行や連携などに取り組むことです。
この分野の運動では、全国的に多様な先行事例や教訓があります。
さらに、100年の歴史を刻む木造の水橋駅やイベントなどでの470系電車の活用、富山の産業遺産の活用と連携などの取り組みも6月のシンポジウムでは提案されています。
現在ある公共交通のための諸制度を活かすとともに、住民や商店街などの自主的な取り組みを県や市町村が支援すること、地域の実態にそった新たな制度などによる積極的で創意的な支援をおこなうことです。そのために、利用者、住民、商店街、専門家、交通労働者などによる沿線自治体などによる「並行在来線鉄道委員会」(仮称)を設置することです。
(3)「北陸新幹線、並行在来線影響実態調査」をおこない地域振興に役立てる
北陸新幹線の開業に伴う経済効果について民間研究機関などの試算結果が発表されるなど様々にその効果が語られています。北陸新幹線を利活用した観光・地域振興についても様々な検討がおこなわれています。北陸新幹線をより有効に活用し、一般的にいわれる「ストロー現象」懸念を払拭し、新たな地域振興を図ってくことは当然といえます。
北陸新幹線が既存の駅で発着するのは富山駅だけです。「黒部宇奈月温泉駅」も「新高岡駅」も新たな地域にできる新駅であり、どのような影響を及ぼすことになるのかは地域社会にとって重要な問題です。同時に、JR特急が廃止になり、特急が停車しなくなった駅とまちはどうなるのか、通勤・通学や日常生活の移動や、駅前商店街など、さまざまな影響が発生することも考えられます。
そこで、北陸新幹線開業とあいの風とやま鉄道の運行開始による影響調査を多面的角度でおこなうことです。調査は、JR城端線や氷見線、高山本線についても検討されるべきです。
さらに、北陸新幹線は物資(生産財など商品や再生産に係わる物資)などを運ぶことはありません。人の交流は多くなっても、製造業が主体の富山県地域経済の生産活動にはどのような影響を及ぼすのか、そのことも調査が必要と考えます。影響調査は、鉄道貨物輸送の荷主に対してもおこなわれなくてはなりません。
そこで、県、各市町村、そしてあいの風とやま鉄道鰍竭シの公共交通機関もかかわる「北陸新幹線、並行在来線影響実態調査」(仮称)を今から準備するよう提言します。
その結果は、各自治体や地域の新たな地域振興策にも結びつくものと考えます。
(4)災害・安全対策や北陸信越の地域振興と連携に県がイニシアチブ発揮する
JRから経営分離する並行在来線は、多くの住民や利用者の願いからすれば残念なことですが、北陸本線も信越本線も県別の第三セクター鉄道会社が運行することになりました。 しかし、県別の第三セクター会社になっても、JR北陸本線が果たしてきた日本海縦貫貨物鉄道である鉄道の動脈には変わりありません。
公共交通をよくする富山の会が2012年に実施した鉄道貨物荷主等調査では、荷主のみなさんは第三セクター鉄道による貨物輸送の「定時制」が保持されるのがどうかを心配しつつ、「国の責任として日本海縦貫貨物鉄道を維持する」「モーダルシフト政策推進のために、国も県も貨物鉄道輸送をもっと推進する」「港湾への鉄道の乗り入れなど港湾との連携」などを求めています。
JR北陸本線の一部区間が第三セクター鉄道になっても、鉄道輸送の動脈としての役割が果たされるよう、降雪時などや事故・災害時などにおける、各県の情報交換や連携、対策など、あらゆる状況を予測し、各県と各県第三セクター会社、国、JR貨物、JR旅客も加わる体制について、いまから準備することです。この安全・事故・災害対策を各県と連携しておこなうよう、富山県は積極的なイニシアチブ発揮すべきです。
北陸本線の車窓からの眺めは、多くの詩や文学・紀行文などで、そのすばらしさが表現されてきました。例えば、「(北陸本線)沿線は日本でも最も興味のある区間であろう、富山から間もなく線路は日本海に沿い、右方にはいつも日本アルプスの険峻(けんしゅん)な連山、富士山ほど高い山々が白雪を帯びて平野を俯瞰(ふかん)し、嶺頭は雪と戯れている」(「日本美の再発見」岩波新書)と日記に書いたドイツの建築家ブルーノ・タウトも注目されます。
最近、のんびりと旅を楽しむ機会を望む声も大きくなっています。北陸信越の各県が連携する観光列車やイベント列車などにも県は積極的な役割を発揮すべきです。
(5)並行在来線が将来も維持される、国の新たな制度確立を求める
あいの風とやま鉄道鰍ヘ、県や県民などの努力で鉄道施設などは簿価よりは安く「譲渡」されても、初期投資にかかる費用や、自治体に協力を仰いだ「経営安定基金」なども考えれば、莫大な重荷を背負っての旅立ちになります。これは、将来の設備投資などの持続可能な鉄道を検討するときの重しにもなります。
沿線自治体や沿線住民に新たな過大な負担を押しつけたうえに、JRの利益だけは守るという国の運輸政策(「政府・与党合意」)は改められるべきではと考えますが、地域によって支えられているというのがJR旅客です。つまり、JR旅客が並行在来線経営から撤退した後も、JR旅客の社会的責任は消えてしまうことはありません。
並行在来線を受け継ぐ地域の第三セクター経営の困難、構造的欠陥は、国がつくり出したものです。だからこそ、国には、将来に渡って並行在来線・第三セクター会社の経営安定に対する支援、そしてJRに対しては、その社会的責任を果たさせる役割と責任があります。
国は、並行在来線関係諸県の要望なども受け入れて、ローカル線施設更新などへの自治体負担に対する国の補助制度も創設しました。しかし、それでも安定経営の道は開かれたとはいえません。
国に対して、安全対策、事故・災害対策や、将来も維持可能な並行在来線の運行が可能となる新しい法律の制定を県民とともに国に働きかけることです。これは県の責務といえます。この新法ができれば、将来への安心のよりどころとなり、さらなる展望も切り開かれるものと確信します。
〔3〕あいの風とやま鉄道に期待する3の未来戦略
あいの風とやま鉄道鰍ヘ、整備新幹線の建設と引き替えに政治的に発足させられた鉄道会社です。県民の要望から生まれた会社でもなく、開業と同時に苦難の経営を強いられ、国・県・自治体・住民の支援を必要としています。
同時にあいの風とやま鉄道鰍ヘ、第三セクター鉄道として、住民に移動の権利を保障する「公共性」「公益性」を有する法人としての交通機関の役割を担うとともに、利益追求だけではない県内自治体・住民と密接不可分なかかわりを持ちながら、より安全でより良質なサービスを提供することと、地域振興などの側面を持っています。
そこで、あいの風とやま鉄道鰍ヘ、県民と歩む受身的ではない未来戦略が求められます。
(1)「基幹鉄道」として利便性創出と、創造的多面的な社会的価値の発信を
あいの風とやま鉄道鰍ヘ県内交通網の「基幹鉄道」です。その役割を担うだけに、人口の多い地域でだけでなく、どちらかといえば過疎地域を抱えての鉄道経営になります。これは、あいの風とやま鉄道が「県民鉄道」として、地域の人々の生活水準の向上を公共交通機関としての側面から担うことも期待されます。
鉄道には、自家用車またはバスという代替交通機関が存在し、絶えず競争にさらされます。そのうえ、鉄道は運行経路を柔軟に選択することは不可能です。しかし、駅と地域の交通アクセスの改善、鉄道駅までのアクセス経路と手段によっては受益者が広範囲で多数にのぼることも可能です。そこで、マイカーから鉄道に乗り換えることの便利性や、車より電車が便利であることを実証していく、自治体と連携した大胆な運動が求められています。
さらに、県民の「基幹鉄道」であるあいの風とやま鉄道を有効に活用することは、地域振興につながることなど利用価値や社会的存在価値などを絶えず明らかにされなくてはなりません。幸い、地球温暖化問題など環境保全などから鉄道に対する認識も変化しており、鉄道は世界的にもみなおされています。環境問題や交通事故などにかかわる便益、時には鉄道廃止に伴う社会的費用増大など、利用者便益と社会的価値を創造的多面的に発信していくことも、あいの風とやま鉄道鰍フ未来戦略につながります。
(2)より良質なサービスを提供し、地域社会に貢献しなが環境を守り、利益をあげる
あいの風とやま鉄道鰍ェ、利用者・住民の願いから、地域振興などにつながるさまざまなイベントをおこなうことはありえます。しかし、イベントの連続で儲ける、利益を上げ続けることは至難の業です。イベント会社になってしまったのでは会社の未来も閉ざされます。
北越鉄道の社長は、私たちが「視察・調査」したとき『イベントなどより一人でも定期乗車客を増やす方が会社経営にとって大事』という趣旨のことを話されていました。この精神は、あいの風とやま鉄道鰍フ未来戦略にしなくてはならないと考えます。
環境問題、高齢社会など社会の新たな変化のもとで潜在的需要者を顕在需要者にすることに力をつくすことです。その意味で、えちぜん鉄道の「鉄道事業者の常識で安全・サービスを考えるのではなく、顧客の視点で考える」という考えは学ぶべきものがあります。それは、地域振興とより良きサービスと安全の向上による経営の安定につながるものです。
(3)利用者・住民参加を具体的に、「第4セクター」への取り組みを
人と環境に優しい公共交通の構築が全国の多くの地域で創造的につくりだされています。その典型として富山市のライトレールや高岡市の万葉線も紹介されています。
あいの風とやま鉄道鰍ニは鉄道の形態も規模も大きく違いますが、利用者・住民との日常的な共同、さまざまな取り組みで沿線自治体と連携し、廃線を乗り越えた「再開」後に、乗客数を目標以上に増やしつづける鉄道に「えちぜん鉄道」があります。
えちぜん鉄道の試みは、沿線自治体、企業、そして住民が支えていく一つのモデルともいえます。県と沿線自治体の支援で「上下分離」を採用し、市民団体や商店街、住民なども出資する、いわゆる「第4セクター」といわれる形態を作り上げたのです。
県や市町村、そして並行在来線をかかえる関係諸県とともに、JRから経営分離した第三セクター鉄道の経営が成り立つ新しい法の整備を国に求めつつ、あいの風とやま鉄道鞄ニ自の未来戦略として、利用者や住民が出資や経営にも参加するいわゆる「第4セクター」についても探求されることを望むものです。
◎参考 並行在来線への公共交通をよくする富山の会の「提言」一覧
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