北陸ならではの創造的な並行在来線・北陸線のために
(第2次提言)
2006年10月7日 公共交通をよくする富山の会
北陸新幹線は、2014年春の金沢開業に向けて建設工事がすすんでいます。これは、JR経営から切り離される北陸本線にとっては新たな旅立です。富山県並行在来線対策協議会は、2010年にはJR西日本の経営から分離する運営会社を設立準備する計画です。
私たちは、2002年に「提言」−孫 ひ孫の時代にも暮らしに便利な北陸本線のために−を発表しました。これを基に、並行在来線・北陸線が生活と産業を支え、地球環境を守る、持続可能な鉄道として発展することを願い新たな「提言」を発表し、県民的な議論を呼びかけます。
1.JR経営から分離した第三セクター鉄道の到達点の上に、並行在来線が生活路線と貨物鉄道輸送の動脈という二重の役割を立派に果たすことを提言します。
毎日の生活と労働と地域経済に限りない便益をもたらし、国の貨物鉄道輸送の動脈という二重の役割を担うと共に、将来を見据えれば、地球の温暖化対策に貢献をする北陸線です。
JR鉄道資産は、中部圏知事会議が国に求めている無償譲渡とともに、JRが無期・無償「貸与」することも検討すべきです。無償譲渡であっても「貸与」であっても、列車の運行とインフラ部分を分ける上下分離とすることです。国に、貨物線路使用料の継続と引き上げを求めます。
また、貨物鉄道輸送の全国ネットワークの維持・発展に向け、EU諸国の貨物鉄道輸送の支援策を生かすことです。インフラ部分は、国道などと同じように国が管理することを提案します。
これら複数の課題の検討は、北陸線が@これまで以上に安全で、快適・低廉・便利な生活路線としての役割を担い、A日本海側の貨物鉄道輸送の役割を立派に果たす、B安定した経営基盤の確立し、Cモーダルシフトに貢献する、D創造的な鉄道をつくることにつながります。
少子化と自動車社会のもと輸送量が低い県境区間などや、採算が危ぶまれる区間は最悪の場合、廃線も考えられます。長野・金沢間の約255q、JR2社と4県にまたがる経営分離の経験は、どこにもありません。隣県との協議は並行在来線の行く末を決めます。長野から金沢までのすべての経営分離区間を見渡して、連続性が保たれる対策を立てなくてはなりません。
大災害や大事故が起これば鉄道の存続そのものが困難になることがあります。災害・事故補償制度の創設を国に求めます。災害などに備え独自「基金」の創設にもとりかかることです。
長野、東北、九州の第三セクター鉄道会社や自治体は、必死の思いで県民の足を守るために知恵をつくしています。有償譲渡となったJR鉄道資産を自治体が買い取ることや、輸送量が減少する県境をつなぎJR貨物の資本参加をさせた肥薩おれんじ鉄道、経営安定のためにJR長野・篠ノ井間の移管を求めるしなの鉄道、貨物線路使用料を引き上げさせたIGRいわて銀河鉄道・青い森鉄道、上下分離方式で経営の安定をめざす青い森鉄道、沿線自治体などが経営安定化基金をつくり通学定期の激変緩和措置制度を一定期間実施したIGRいわて銀河鉄道。
それでも、JR時代に比べると大幅な運賃値上げとなり苦難の経営を余儀なくされています。
JR経営から分離したこれまでの第三セクター鉄道経営の苦難の大本は「政府・与党合意」にあります。この枠組みそのものの再検討が求められています。
2.すべての人びとに安全で快適な移動の自由を保障する並行在来線です。そのために、「県民の声を生かす鉄道」にとりくむことを提言します。
JR経営分離後の並行在来線・北陸線は、公共交通の基幹となる富山県の資源です。
地域社会の一員であり、生活の場を熟知している住民の知識と知恵と経験や思いを、経営形態の枠組み、ダイヤ、車両、運賃の決定などに反映することは、“持続可能な鉄道への創造”という役割を担います。経営形態や運行などの素案作成、計画立案と決定・実施、運行後の評価にいたるすべての段階で、様々な形で「県民の声を生かす鉄道」にとりくむことです。
継続的な意識調査やアンケート、並行在来線対策協議会に公募委員制の導入、パブリックコメント、ワークショップ、公聴会、意見交換会など複数の手続きを組合せた住民参加。また十代の意見を生かすことや、口頭でも意見を受けられる常設の窓口設置にとりくむことです。当然、県民の声には総合的な視点に立っての検討が必要です。県民の意見は公表します。
県民の声を真摯に検討し、経営形態や運営などに反映をするためには、正確で十分な情報の提供が前提条件です。情報を整理し、PRも欠かせません。パンフレット類の発行や説明会を開催することも必要です。希望すれば誰もが情報を知ることができるようにすることです。
「県民の声を生かす鉄道」は、北陸ならではの創造的な鉄道をつくります。鉄道への愛着と利用者のアップにもつながります。JR資産は、簿価で約160億円(県内。北陸本線は約600億円)といわれ、さらに運営のための資金投入などは県財政にとって重大な問題です。だからこそ、行政の側からアクションを起こし、交通権が発揮されるビジョンを確立することです。
3.安全の確保とまちづくりのために、今からとりくむことを提言します。
北陸本線は、北陸の歴史と風土に育まれ、地球環境と共生できる鉄道です。北陸新幹線開業後を見渡し、北陸線の安全性の確保とまちづくりは、今からとりくまなくてはなりません。
並行在来線が、どんな経営形態となっても、鉄道の安全は確保しなくてはなりません。JR経営分離前に、JR自身が北陸本線の集中点検、集中修理などをおこない安全性の確保と、経営分離後の受け皿会社や自治体の保守・修繕などの負担を軽減することです。
北陸線の直接のユーザーである住民・商業者・交通事業者・交通管理者・道路管理者・ボランティアなどが加わった「地域住民委員会」を自治体ごと、地域ごと、駅ごとに設置が求められています。「地域住民委員会」は、ダイヤ編成、駅舎の活用、新駅の設置、駅舎のバリアフリー化などや、駅と地域を結ぶコミュニティバス、パークアンドライド、路面電車などの公共交通の確立などにとりくみます。このことは、県民の日常生活と共に観光にとっても大きな効果を発揮します。
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