孫ひ孫の時代にも暮らしに便利な北陸本線のために
− 提 言 −
 
2002年11月23日 北陸線・ローカル線の存続と公共交通をよくする富山の会
 
 私たちは、富山県の総合的な交通体系の基軸となる北陸本線が、将来にわたって、しっかりと住民の足としての役割を果たすことを願い、この「提言」を発表し、みなさんの論議をよびかけます。
 
身の回りの公共交通を再生し、あらゆる人々に安全で快適な移動の自由を提供する「交通権」の確立と環境にやさしい公共交通を求めます。
 
 マイカーの普及に反比例して、公共交通が縮小しており、身の回りの電車・バスなどの再生を求める声はかつてなく強くなっています。また、地球の温暖化、大気汚染問題などから環境に配慮した多様な公共交通機関の整備、充実を求める声も高まっています。こうしたなかで、世界の交通政策の流れは、暮らしと環境を重視した公共交通の維持と発展を中心にすえるようになっています。
 富山県の一世帯あたりのマイカー保有台数は全国第1位、通勤・通学にマイカーだけを利用者する人は72%と全国第2位です。マイカーに依存せざるをえない郊外型店舗の進出や職住分離の生活空間の広がり、公共交通の不便さなどが大きな要因となっています。
 北陸本線は、県内区間で一日当たり225本運行され、一日平均乗車人員総数は52,423人(平成11年度)普通列車は113本。普通・快速利用者は約9,800人/日:平成10年推計輸送密度。JR貨物列車の輸送量は330万トン、一日の列車本数は45本(平成10年度:断面輸送量)です。JR旅客・貨物は輸送手段の動脈であり、もし、これらの人と貨物が道路を移動することになれば、交通環境や環境問題に重大な影響を与えます。
 人は、だれもが交通機関に依拠しなければ生活も労働も営めません。また、だれもが人生の一定期間は、移動制約者として暮らさざるをえません。私たちの暮らしと地域をささえ、環境にやさしい公共交通の充実のために、交通における公共性の保障、あらゆる人々に区別なく安全で快適な移動の自由を提供する「交通権」の確立が求められています。
 
提言1 関連資料へ
 
 
富山県および関係機関に対して、北陸新幹線開業後の県内交通を総合的に計画する委員会の設置を提案します。
 
 北陸新幹線の開業(2013年頃にフル規格の北陸新幹線を富山まで開業することを政府・与党が合意)が現実のものとなってきました。いまの時期こそ、県内全域を見わたして、鉄道を軸に、総合的な公共交通システムの再編を行わなければ、新たな事態に対応できません。
 そこで、県内交通を総合的に計画する「委員会」の設置を提案します。
@この「委員会」は、交通事業者、交通労働者、専門家とともに「住民参加」とします。第三セクター鉄 道の経営にあたって最悪の事態をも予測した調査や検討も行い、すべての情報を公開します。
A県や各自治体においては、公共交通に関する多様な住民討論の「場」を設けることを求めます。
 
「委員会」では、以下の諸問題を検討することを求めます。
(1)北陸新幹線開業後の県内公共交通網のビジョン
 県内公共交通の主軸としての北陸本線の第三セクター化と、JR支線の取り扱いついて独自に対策を検討し、路面電車(富山地鉄・万葉線)、乗合バス、コミュニティーバスとの連携、パークアンドライド、福祉タクシーなど総合的な公共交通の確立を求めます。
(2)公共交通を軸とするまちづくりのビジョン
 暮らしに便利な公共交通を生かしたまちづくりのために、地域住民が主体性を発揮した計画が、立案・検討されるよう支援することを求めます。
(3)交通権確立のためのビジョン
 交通における「平等性」「安全性・利便性」「環境の保全」「文化性の確保」は、日常生活にとって不可欠です。この交通の公共性を具体化するには国、自治体及び交通事業者の積極的な役割が求められます。これらのことが保障され、交通権が確立されるために、条例や法律の制定を求めます。
 
提言2 関連資料へ
 
公共性と企業性の調和がとれた北陸本線のために、県民的な討論と検討、合意が求められている課題を提案します。
 
(1)国策としてすすめられる北陸新幹線です。第三セクター鉄道の経営がなりたつように、国としての責任を果たす財政的支援(線路・電路・施設などや車両の更新、大規模災害対策など)を要求します。
(2)北陸本線は、県境で分離する第三セクター鉄道とはせず、経営がなりたつ見通しが立つまで、JRでの経営を続けることを求めます。
(3)北陸本線・ローカル線に「乗って活気を、乗せて発展」を趣旨とする住民、行政、交通事業者が共同したイベントなどに取り組むことを求めます。
(4)北陸新幹線が開業すれば、接続する北陸本線やJR支線は、集客の役割を果たすことになります。列車本数を増やすことや駅などの利便性の向上を求めます。
 
 北陸本線の第三セクター化という現実を前に、私たちには何が明らかにされているのでしょうか。それは、JRの経営から分離された後の第三セクター鉄道は赤字が必至であること、そして県境分離の鉄道になるのではないかという懸念もあります。
 北陸新幹線の長野までの開業によって、信越本線の軽井沢〜横川間が廃線になり、「しなの鉄道」が発足しました。東北新幹線の盛岡〜八戸間の開業によって、岩手・青森両県の県境で分離する「IGRいわて銀河鉄道」「青い森鉄道」が運行されることになりました。九州新幹線の建設は、熊本・鹿児島両県の県境をつなぐ第三セクター鉄道を発足させました。これらの県は、JR鉄道資産の買い取りと第三セクター鉄道への譲渡、運賃の激変緩和措置、経営安定のための基金づくり、青森県での公設民営(上下分離)方式の採用、JR貨物の線路使用料の新ルール確立、安全の確保など、JRが手を引いた後の鉄道経営だけに苦難を極めています。
 北陸新幹線の建設は莫大な負担を住民に負わせます。さらに、沿線自治体が第三セクター鉄道を運営することになれば、JR鉄道資産の確保に加え、施設・設備の維持・更新、運営費などの財政負担は一時的な負担に終わらず、ボディブローのように自治体財政を圧迫し続けます。
 北陸本線が住民生活をささえ続けるためには、公共性と企業性の調和が図られなければなりません。そのためにも、国が第三セクター鉄道への財政支援、災害対策の支援を行うことや、JRが鉄道資産の無償譲渡、施設・設備の改善を行うことなども検討されなくてはなりません。
 
提言3 関連資料へ
 
●「提言」の解説へリンク(第2回総会の記録)
●公共交通をよくする富山の会TOPへ